ユウキズ・ダイアリー

アニメ・映画・ゲームについての雑記

今期アニメはこの3本―2022年秋クール

今期は注目作が多いので書くまでもない気もしつつ、新作アニメをだいたい全部見たのでオススメ作を書いておく。

 

機動戦士ガンダム 水星の魔女

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既に話題沸騰中な『機動戦士ガンダム 水星の魔女』はやはり推しておきたい。『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』以来5年ぶりのTVシリーズ向け新作ガンダム

監督は『ひそねとまそたん』、Netflixスプリガン』の小林寛。ガンダムは元よりロボものはほぼ初挑戦なので多少不安はあったが、小林監督なりの固定観念のない誠実さが、フィルムに良い影響を与えてるように思う。

シリーズ構成・脚本は、かつて富野由悠季の元で『OVERMAN キングゲイナー』を作り出し、『コードギアス 反逆のルルーシュ』で人気を博した大河内一楼。富野への理解を持ちつつ、ジュブナイルを得意とする氏の脚本と、小林監督のフレッシュさから生まれる化学反応に期待したい。

g-witch.net

 

チェンソーマン

今期はジャンプアニメ、というか集英社アニメ攻勢がとにかくすごい。9~10月放送開始の新番組だけで、『ゴールデンカムイ』『後宮の烏』『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』『BLEACH 千年血戦篇』『僕のヒーローアカデミア』『ロマンティック・キラー』の計9本である。注目作はまだまだ控えており今後も目が離せないのだが、やはり最注目なのが『チェンソーマン』。

監督の中山竜、OPの絵コンテ・演出を手掛けた山下清悟は『呪術廻戦』をはじめ多数のアクションアニメで腕を鳴らすスーパーアニメーター。第1話から度肝を抜かれたが、今後もアクション面は十分期待できそうだ。

chainsawman.dog

 

Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-

3本目は迷いに迷ったのだが『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』で。

キャラクターデザインは『ヤマノススメ』の松尾祐輔。少ない影塗と線でちゃきちゃき動くキャラクター芝居がたまらない。水彩調の美術と相まって非常に『フリクリ』っぽいルックが大変好み。
今期は今作はじめ、『ぼっち・ざ・ろっく』『アキバ冥途戦争』と只者でない美少女アニメが多い。放送が一歩遅れるが、10月末スタートの『アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】』も注目しておきたい。

diy-anime.com

『Gのレコンギスタ』のポスターを額装するとQOLが上がる

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先日、映画『GのレコンギスタV 死線を越えて』のスタッフトーク付き上映会に参加した。演出・吉沢俊一氏による「GレコⅣには多数の没シーンがあった」というトークは大変刺激的だったのでぜひ下記レポートを読んでもらいたいところだが、

富野監督「このシーンは切る」の真相は!?『G-レコ』スタッフトーク - AV Watch

それはそれとして上映会の最後にチケットの座席番号を元にしたプレゼント抽選が行われ、まさかの吉沢氏のサイン入りポスターを当ててしまった。

ポスターの類はいつも死蔵してしまうのだが、せっかくのもらいものなので額装してみることにした。

 

ポスターフレームについて調べてみるとサイズが何種類もあるようなので、ポスターの横サイズを測ってみたところ51cm……ということでB2サイズと特定。ヨドバシでビューティーパネルB-2(ブラック)を購入してみた。Amazonでの取り扱いはないが近い商品はこのあたりだろうか。

 

 

そして額装したのがこちら。細部まで描き込まれた桑名郁朗氏の美麗イラストに見惚れてしまう。吉沢氏からのさりげないメッセージ「元気のG‼︎」も嬉しい。

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大きさ比較用にパンフレット、Blu-rayディスクパッケージとも並べてみる。

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これだけ巨大なGレコの美麗イラストが自宅にある、というだけでQOL爆増は間違いなさそうだ。

バンダイナムコフィルムワークスさんは商売っ気出して映画ポスターとかポストカードをプレミアムバンダイするべきですよ!

 

yuki222.hateblo.jp

富野由悠季の集大成『GのレコンギスタⅤ 死線を越えて』

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富野由悠季総監督による「Gのレコンギスタ」シリーズ完結編『Gのレコンギスタ死線を越えて』が公開された。圧巻の映像は身じろぎせず見入ってしまうもので、これぞ富野由悠季氏の集大成と呼ぶにふさわしい映画となっていた。TV版は「ドタバタロボット活劇」という言い方しか出来なかったGレコだが、劇場版として再編集されたことで「テクノロジーへの警鐘」「愛こそが生きていくのに必要なもの」というテーマを明確に受け取れる映像に大きく進化していたのだ。

 

イデオン 発動編』を彷彿とさせる破滅的戦場描写

劇場版「Gのレコンギスタ」シリーズは、事前のアナウンスから「TV版からの変化は最小限」「第4部のみ大きくテコ入れ」と聞いており、確かに第4部の変化は目を見張るものだった。

『GのレコンギスタⅣ 激闘に叫ぶ愛』が新規戦闘シーン追加というタブー破りをした理由 - ゲーマーズライフ

そのためテレビ版最終23話から最終話(26話)までを編集した今作第5部のバトルシーンには過度な期待はしていなかったのだが、息継ぎもできないバトルの連続は圧巻という他ないものだった。1つの大きな戦闘を局面を変えながら描くという構成は、富野作品としては『イデオン 発動編』以来だろうか。テレビ版とほとんど変わらないはずなのに、一連の戦闘と見ることで、複数の陣営による混戦がすっとわかりやすいものになっていた。

兵器の性能に溺れ、次々と命を落としていくキャラクターの末路もやはり『イデオン 発動編』そのもの。イデオンに限らず富野氏が繰り返し描いてきた「テクノロジーへの警鐘」、直近のインタビュー記事から言葉を借りるなら「ポスト資本主義」を強く感じるものだった。

映像の力はもちろんだが、ロシアのウクライナ侵攻に揺れ、エネルギー不足、急激なインフレに苦しむ2022年だからこそ、このメッセージからより強い危機感を感じてしまう。テレビ版『Gのレコンギスタ』が放送されたのは2014年だというのに! 富野由悠季の先見の明には驚かされるばかりだ。

 

『劇場版Zガンダム』を思い起こす人間模様

ドラマパートについても、エピローグを除けば大きな追加シーンはない。ないにも関わらず、テレビ版と同じシーンでも全く違う印象を抱いてしまうのがこの映画の一番のマジックだ。劇場版Gレコシリーズではこれまでの4作に渡り、キャラクターの関係性を掘り下げるシーン追加によって

「ベルリは人並みに苦しむ、思春期まっさかり鈍感男子」

アイーダはがんじがらめの責任感を乗り越え、覚悟を決めた未来のリーダー」

「ノレドのベルリへの愛情はんぱない」

といったことが見えてきた。既に掘り下げが完了したところからスタートする本作では、余計なシーンを足さずとも、声をあてる演者側も、受け取る我々観客側も、テレビ版と違う気分で接することができるようになったということだろう。徐々にキャラクターの心象を方向修正し、「愛」をテーマにテレビ版からガラッとエンディングを変更した『劇場版Zガンダム』と同じ手法が用いられたように思える。

 

ターンエーガンダム』なエピローグ

そうした方向修正が帰結するのがエピローグパートだ。エピローグでは複数のシーン・セリフが追加されたことで、各キャラクターに抱く印象が大きく変わるものになっているのだが、4部までの掘り下げがあるからこそ唐突に感じることはなかった。

ラストシーンについては、以前のインタビュー記事から予想していたものから大きく異なるものではなかったが、予想を超える演出には唸らされた。『ターンエーガンダム』が重なる描写にグッと来るし、なんなら勝手に『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』さえ重ねてしまった。ただこれらが「閉じる」終わり方だったのに対し、Gレコは「開いた」終わり方。ターンエーから20年経って、未来のある終わりを提示してくれたGレコには嬉しさを覚える。

ガンダムエース」誌面にて2010年10月に公開されたプロローグ小説『はじめたいキャピタルGの物語』からはや12年。2014年のテレビ版で完結と思いきや、2019年から劇場版が始まり、併せて「富野由悠季の世界」展も開催。このところ供給過多に嬉しい悲鳴をあげる毎日だったが、ついに終わりを迎えてしまった。

終わるのは寂しいけれど、こんなに前向きな劇場版を見せてくれたのだ。晩年を賭して、最高の作品を最後まで描き切ってくれた富野由悠季総監督には大きな感謝と、敬意を表したい。受け取ったメッセージを大事にして、これからは自分と、社会を豊かにすることを考えて生きていこうと思う。

 

Gのレコンギスタ死線を越えて』は全国劇場にて絶賛公開中。前作『GのレコンギスタⅣ 激闘に叫ぶ愛』も引き続き公開中だ。

 


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『GのレコンギスタⅣ 激闘に叫ぶ愛』が新規戦闘シーン追加というタブー破りをした理由

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劇場版「Gのレコンギスタ」シリーズ最新作『GのレコンギスタⅣ 激闘に叫ぶ愛』が公開された。各媒体に掲載されていたインタビュー記事から新規カットが非常に多いという情報を得ていたので全5部作の中で最も期待していたのだが……あまりの出来に思わず感涙させられてしまった。80歳にもなる富野由悠季監督のフィルムだからというのは超えて、ロボットアニメとしてべらぼうに面白いのだ。

とはいえ気になったのは「新規戦闘シーンをそこに入れるの!?」という点。劇場で2回観賞し、TV版該当話数もBDで見直したうえで考察してみる。観賞前の方はネタバレ注意。

 

これまでの劇場版Gレコ

2014年~2015年に放映されたTVシリーズGのレコンギスタ』を編集し、映画化したのが劇場版「Gのレコンギスタ」シリーズだ。2019年公開の『GのレコンギスタⅠ 行け!コアファイター』を皮切りに現在第4部まで公開されており、最終作となる第5部も、早くも来週8月5日に公開を控えている。

『Gのレコギスタ』といえばよく言われるのが「わかりづらい」という点。富野監督自身も自覚しているのか、劇場版ではドラマパートを中心にセリフの修正や新規カットが追加されたことでキャラクターの心情が捉えやすくなっている。メインキャラクターであるベルリ、アイーダ、ノレドの描写が特に手厚くカバーされたことで、群集劇然としていたTV版よりも、3人のジュブナイルストーリーとして親しみをもって見ることができる。

また戦闘シーンについては新規カットの追加はほとんど無いものの、主にGセルフが密度のある映画映えするビジュアルに描き換えられており、かっこいい主人公機としてTV版以上に印象的になっている。

各作品についての詳細はこれまで書いてきたレビュー記事を参照してもらいたい。

関東最速上映レビュー 劇場版『ガンダム GのレコンギスタI』はわかりやすくなった再演版!? - ゲーマーズライフ

元気のGは幾千年の未来から 『GのレコンギスタⅠ』「行け! コア・ファイター」 - ゲーマーズライフ

富野由悠季の目にも涙――『GのレコンギスタⅠ』「飛べ! コア・ファイター」女の力Dayレポ - ゲーマーズライフ

『GのレコンギスタⅡ』「ベルリ撃進」公開初日レビュー - ゲーマーズライフ

疾風怒濤の勢いは逆シャアレベル!『GのレコンギスタⅢ 宇宙からの遺産』がTV版より面白い理由 - ゲーマーズライフ

 

新規カット増し増しのGレコⅣ

GのレコンギスタⅣ』も基本的には前項の通りなのだが、大きく違うのが新規カットの量が第3部までと比べ圧倒的に多いこと。今回描かれるビーナス・グロゥブ編(TV版19~22話)は、旅の終着点の割に「何を得られたのかがわからない」「敵であるジット団の魅力がもうひとつ」という、Gレコの明らかな弱点。新規カットが多いという事前情報は納得できるもので、ジット団の戦闘シーンが大増量に違いないと確信していた。

いざ見てみると「何を得たのか」についてはラ・グー総裁とのやり取りの大幅増量で納得いくものになっていた。詳細はここには書かないでおくが、GレコのSF作品的魅力を増すものになったと思う。

「ジット団との戦闘」についても、戦闘シーンの尺を伸ばして各団員の魅力はアップしたように思う。とはいえ事前に聞いていたほど新規カットは多くなかったので若干の肩透かしを食らってしまった。

このまま終幕なのか、と心配したところ最後に爆弾が控えていた。なんと映画のラスト20分が完全新規の戦闘シーンに描き換えられていたのだ。これまでのGレコ、いや初代ガンダムZガンダムまで振り返っても、劇場版になって「映像が綺麗な作画に/かっこいい演出に描き換えられる」というのはあったが、全く別の戦闘シーンに置き換わるというのは今までなかったこと。

一応映画ラストに該当するのはTV版22話「地球圏再会」。TV版では5分にも満たない小競り合いが描かれてはいたが、GレコⅣで描かれたのはカシーバ・ミコシ周辺宙域でのMS同士の大戦争Gセルフのパーフェクトパックのお披露目とベッカー隊との衝突だけは符合するが、あとは全く規模の違うものへと大進化した。

新しいものが見れるのは嬉しいが、ジット団絡みではなくどうしてこのパートにこんなに力を……?と考えさせられるものだった。

新規戦闘シーンの一部はYouTubeでも公開されているので見てもらいたい。


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「地球圏再会」に新規戦闘シーンを追加した理由

複数回見てわかってきたのだが、「地球圏再会」パートに新規戦闘シーンを追加するというのは非常に合理的な選択だ。映画の最後に長尺の戦闘シーンがあるのは楽しい、というシンプルな理由は第一にあるのだが、それ以上にここでカシーバ・ミコシ戦を行うことでGレコに足りなかった様々なピースが埋まるのだ。以下に思いついたものを列挙してみる。

  • Gセルフパーフェクトパックが実は鬼強いということが明らかになる
  • ひいてはビーナス・グロゥブの技術やばすぎるというのを実感する
  • ベルリかわいそう、からの支えてくれるノレドとラライヤの重要性に気付かされる
  • ベルリとマスクのライバル関係が補強される
  • マスクが機体を乗り換える理由が補強される
  • マニィの脱走劇、マスクとの再会が劇的に感動的なものになる
  • Gアルケインの変形モードがようやくお披露目される
  • カシーバ・ミコシが舞台装置になることで奇抜で荘厳な形状が実感できるものになる

特にカシーバ・ミコシについては、TV版でも異様だった形状が劇場版で更にグレードアップして3倍ほどの大きさに成長している。第3部の時点では変更の意図がわからなかったが、本作を見て納得した。新バージョンでないとここまで魅力的な戦闘の舞台とはならなかっただろう。ア・バオア・クーアクシズに並ぶ名舞台として、今後もガンダムを題材としたゲームなどで引っ張りだこになるのは間違いない。

 

GのレコンギスタⅣ』のためにあった劇場版Gレコ

7月24日に行われた舞台挨拶では監督自身「後半20分観て『やっぱりトミノはスゴいよな』と思いました」と発言していたが、全くその通りだ。カシーバ・ミコシ戦は富野作品、ひいてはロボットアニメ史上最高峰の戦闘シーンとして今後も語り継がれることだろう。この第4部のために、劇場版5部作は作られたと言っても過言ではない。

残る第5部公開が迫っているため、残念ながらこの傑作『GのレコンギスタⅣ』の公開期間は2週間しかない。ぜひ劇場で、より多くの人にこの事件を目撃してもらいたい。


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今期アニメはこの3本―2022年夏クール編

2022年夏クールのアニメ新番組をだいたい全部見たので注目作を紹介してみる。

ちみも

1本目は『ちみも』。人気イラストレーター・カナヘイがキャラクター原案ということでファミリー向けのゆるふわアニメと思いきや、1話目のサブタイトルからして「地獄のはじまり/地獄の使者」と大変物騒。

どんな中身かと見てみると『PUI PUI モルカー』や『リラックマとカオルさん』を彷彿とさせるちょいブラックコメディで、地獄からやってきた魑魅魍魎こと「ちみも」と「地獄さん」が、江ノ島在住の三姉妹と繰り広げる日常もの。

ちみもの愛くるしさに癒されるのはもちろんだが、個人的注目ポイントは地獄さん役・諏訪部順一さんと長女の鬼神むつみ役・能登麻美子さんの役へのハマりっぷり。2人の芝居を聞いているだけで最高に楽しい。脚本も見事だと思ったら『スペース☆ダンディ』に参加していたうえのきみこだったので納得。

放送を重ねるうちにハネる気がしてならない今期のダークホースだ。

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anime.shochiku.co.jp

 

リコリス・リコイル

夏クール開始前から最も楽しみにしていたのが足立慎吾初監督作『リコリス・リコイル』。XEBEC所属時の『流星のロックマン』から注目していたアニメーターで、『WORKING!』『ソードアート・オンライン』と人気作でキャラデザインを務めてからの、満を持しての監督作!これが面白くないわけがない。

女子高生×殺し屋というありがちネタはひと昔前のアニメを思わせるが、ハイクオリティな絵面は流石『ソードアート・オンライン』を長期に渡って手掛けてきた足立慎吾 × A-1 Pictures。主人公2人の生っぽいアニメ芝居はアニメーター出身監督ならではという感じを受ける。

ここスキポイント

ところで今年の1月開始クールでは『明日ちゃんのセーラー服』『その着せ替え人形は恋をする』を連続放送してCloverWorks推しをしていたアニプレックスが、今クールでは『Engage Kiss』『ソードアート・オンライン(セレクト放送)』『リコリス・リコイル』とA-1 Pictures作品を連続放送。スタジオ推しがトレンドなのだろうか。丸戸史明が脚本を手掛ける『Engage Kiss』も、ニトロプラスエロゲーテイストなバイオレンスアクションアニメで非常に面白い。今期のアニプレ枠も大注目だ。

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lycoris-recoil.com

 

異世界おじさん

最後に取り上げるのは、流行りの異世界転生ものを一捻りした『異世界おじさん』。17年ぶりに目覚めたおじさんが、異世界での思い出を甥っ子・たかふみに語るという異世界回想アニメ。

原作者の「殆ど死んでいる」先生は、自身のブログに掲載していた涼宮ハルヒコードギアスの二次創作ギャグ漫画が度々話題になっていた人気作家。長く追いかけていた作家さんだけに、アニメ化まで果たしたのは感慨深い。

アニメになっても作品の勢いは衰えず、おじさん役・子安武人とたかふみ役・福山潤の時にハイテンション、時にダウナーな息の合った掛け合いは『エクセルガールズ』『NieA_7』といった初期の深夜コメディアニメのよう。際どいセガネタを版権をとってきっちりやってくれるのも嬉しい。

原作付き作品だと他に『よふかしのうた』も注目作として挙げておきたい。監督は「物語」シリーズの板村智幸だけに、ライデンフィルム製なのにシャフト風味。深遠な夜空の描写に目を奪われてしまった。こちらも掛け合いが楽しい作品だ。

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isekaiojisan.com

 

以上3本+αが今期の個人的注目作ということで。

自分のための、初めてのウルトラマン―映画『シン・ウルトラマン』レビュー

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ようやく自分のためのウルトラマンに出会えた―それが映画『シン・ウルトラマン』を観て一番に嬉しかったことだ。

 

三つ子の魂百までとはよく言ったもので、幼少期に見た特撮作品は忘れがたいものだ。私の場合、スーパー戦隊シリーズは『高速戦隊ターボレンジャー』、仮面ライダーは『仮面ライダーBLACK RX』、メタルヒーローは『特警ウインスペクター』、ゴジラなら『ゴジラVSキングギドラ』といったあたりが原体験なのだが、ことウルトラマンに至ってはこれといった記憶がない。というのも『ウルトラマン80』から『ウルトラマンティガ』までの15年間は新作TVシリーズが作られておらず、その時期と幼少期が重なってしまったからだ。

当時最新の映像ソフト用作品『ウルトラマンG』は児童館で何話か見た気がするし、アニメ『ウルトラマンキッズ』や、児童向け雑誌でウルトラ怪獣を覚えたりはしたので、ウルトラマンという概念を意識はしていたのだが、夢中になったという思い出はなかった。

そのまま時は経ち2019年8月、「監督:樋口真嗣、脚本:庵野秀明コンビで『シン・ウルトラマン』を撮る」というアナウンスを聞いたときは、正直困った。樋口・庵野コンビの新作は気になる。でもウルトラマンがわからない。仕方ないので付け焼刃で2019年以降の新作『ウルトラマンタイガ』『ウルトラマンZ』『ウルトラマントリガー』は見たし、旧作にも触れておこうと初代『ウルトラマン』と、樋口監督が参加していた『ウルトラマンパワード』も見た。色々見た結果、なるほど子供が夢中になるわけだとわかったし、『ウルトラマンZ』に至っては毎週の放送が楽しみに思うくらいの熱い作品だった。とはいえ心のどこかで「でも子供向け作品だしなあ」と線を引いてしまっている自分がいて、夢中になるまでには至らなかった。

なので『シン・ウルトラマン』には、「なるほど」で終わってしまう不安と、それを超えてきてほしいという期待があったのだが……蓋を開けてみると期待通り。おっさんになってしまった自分にも楽しめる丁度いいポイントを的確に突いてきてくれたのだ。

 

ストーリーの大枠は初代『ウルトラマン』そのもの。主人公のハヤタ隊員ならぬ神永新二がウルトラマンとなり、次々襲い来る禍威獣(怪獣)ネロンガや外星人(宇宙人)ザラブらをやっつけていくというもの。

シン・ゴジラ』と違ってかなりの度合いで原作をなぞってくるので、ともすると荒唐無稽な物語になりそうなところだが、庵野秀明らしい理屈っぽさでギリギリのリアリティを担保してくれる。どうやって巨大化するのか、どうして禍威獣は出現するのか、なぜウルトラマンは人間を守るのか。今作ならではの解を用意することで、SF映画としてのウルトラマンが成立している。

これはまさに『ウルトラマン』を見ていた子供たちが、心の中で育て、美化してきたイメージを具現化した映像世界なのだろう。

 

総集編かのような物語運びはあまりに性急だし、iPhoneで撮影したという実相寺風アングルは多様しすぎで効果が薄く、画質や音質の劣化なシーンが多すぎてIMAXで見たとき気になって仕方なかった。もっとこうしていれば、と思うシーンは多々あるのだが……そんな気持ちを超えるくらい、ウルトラマンに惚れてしまったのだからこちらの負けである。

土煙をあげながら襲い来るネロンガ&ガボラの迫力は平成『ガメラ』シリーズを彷彿とさせるし、外星人のずる賢さにはシビれ(山本耕史ばかりが注目を浴びているが、津田健次郎ボイスのザラブも大好きだ)、最終ボスの圧倒的強さにはいかにも庵野作品な絶望を覚えた。

何より銀色の巨人・ウルトラマンがとてつもなくかっこ良い。人類のために命を賭して戦う姿を見ているうちに、巨大な神様を拝んでいるかのような気持ちになった。子供の頃にウルトラマンに夢中になっていたら、きっと心の柱になっていたのだろうと想像してしまった。

 

『シン・ウルトラマン』は、子供の頃から抱えていた「ウルトラマンを通らなかった世代」の葛藤をようやく晴らしてくれた。自分のウルトラマンができたことで、これからはどんなウルトラマンでも楽しく見れそうだ。

今この時、最高のチームで制作してくれたことには感謝しかない。

 

最新携帯ゲーム機『Playdate』が従来のゲームライフをひっくり返すかもしれないという話

数日前に海外から怪しい小包が届いたので数日放置していたのだが、開封したらゲーム機が出てきたのでびっくりした。すっかり忘れていたが、そういえば1年前に新型ゲーム機『Playdate』を注文していたのだ。

Playdateは海外のメーカーPanicが開発した業界久々の携帯ゲーム機。どれぐらい久々かというと、2011年発売のPlayStation Vitaとニンテンドー3DSから数えれば11年ぶり、モノクロ表示しかできない携帯機としては1999年発売のワンダースワン以来、実に23年ぶりだ。

そう、スマホNintendo Switchなど便利なデバイスしかないこのご時世に、モノクロ表示しかできない携帯ゲーム機が出ること自体が大事件である。

 

パッと見はクランクの付いたゲーム〇ーイ

十字キーにA・Bボタンと見た目はほぼゲー〇ボーイなのだが、特徴は側面のぐるぐる回るクランク。ボタン操作だけでなく、クランクを使用した特別なゲームが沢山楽しめる!はずなのだが、もう一つの特徴である特異なソフト提供方式により現時点では最大限楽しめていない。

クランク持ち手は収納できるし、別売りのカバーを付ければ画面も傷つかない

その提供方式というのが「1週間に2本ずつ、全24本の新作ゲームを自動的に配信する」というもの。最初から遊べるのは2本だけなので、あと11週待たないと全てのゲームが遊べないのだ(24本分のソフト代は本体価格に入っている)。これは全ユーザーに適用されるので、今から11週後にPlaydateを購入したとしても、手元に届いてからやはり1週ごとに提供される仕組みとなっている。

一見不便に思えるが、裏を返せば全ユーザーが全てのソフトを1週間ずつ遊びこめるということ。大量のソフトがすぐに消費される現代社会へのアンチテーゼと思えば、実に現代的なゲーム提供方式といえるだろう。

 

噛み応えのあるスルメゲー『Whitewater Wipeout

購入時にプレイできる2本は、クランクを回してピントを合わせる鳥撮影アドベンチャーゲーム『Casual Birder』と、クランクをサーフボードに見立てたアーケードライクなミニゲーム『Whitewater Wipeout』。『Casual Birder』は英語テキスト多めで、『Whitewater Wipeout』はクランク操作がシビアで難しい。

この2本がローンチタイトルで良いのか…?という感もあるが、『Whitewater Wipeout』は最初こそ2桁スコアがやっとだったのがやり続けていたら4桁が余裕になってきた。実はクランク操作の絶妙な操作感を味わうのにうってつけのタイトルかもしれない。スキマ時間にちょっとだけ遊ぶには最高のスルメゲーだ(ちなみに開発したのは京都のインディーゲームメーカーChuhai Labs)。

ただ今のところ1番感動したのは、ゲーム起動時に遊べるチュートリアルかもしれない。音と映像、操作の一体感が気持ち良く、人に貸す時はまず最初に触ってもらおうと思っている(起動後もSettings→ System→Replay introで再プレイ可能だ)。

 

本体サイズはGBASPの折り畳み状態とほぼ同じ(薄さは半分!)。画面サイズはGBミクロより大きく、スワンクリスタルと同等、GBASPより小さい

ゲーム機は結局遊べるゲーム次第なので、2本しかプレイできない現時点では正直なところ判定しようがない。とはいえ携帯性抜群のサイズも、触り心地も、なによりキュートな見た目も今のところバッチリなので、これから化ける可能性は十分あり得る。今後の配信タイトルとしては塊魂のクリエイター高橋慶太氏の『Time travel adventure』の提供が決まっているし、『Return of the Obra Dinn』のルーカス・ポープ氏の『Mars After Midnight』も開発中とのことで、なかなか期待が持てそうだ(24本のシーズン1提供後に、シーズン2以降も予定されている)。とりあえずこれから先3か月はゲームライフが充実しそうなのでワクワクして仕方ない。

他機種の最新ゲームはできないし、モノクロ表示、バックライトがないなど不便な点も多い。スマホやSwitchしか知らない世代に全力で勧められるものではないが、レトロゲー好きのアーリーアダプターゲーマーには是非ともオススメしたい逸品だ。

 

play.date

Playdateは現在公式サイトにて179ドル(約23000円)で発売中。