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『GのレコンギスタⅣ 激闘に叫ぶ愛』が新規戦闘シーン追加というタブー破りをした理由

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劇場版「Gのレコンギスタ」シリーズ最新作『GのレコンギスタⅣ 激闘に叫ぶ愛』が公開された。各媒体に掲載されていたインタビュー記事から新規カットが非常に多いという情報を得ていたので全5部作の中で最も期待していたのだが……あまりの出来に思わず感涙させられてしまった。80歳にもなる富野由悠季監督のフィルムだからというのは超えて、ロボットアニメとしてべらぼうに面白いのだ。

とはいえ気になったのは「新規戦闘シーンをそこに入れるの!?」という点。劇場で2回観賞し、TV版該当話数もBDで見直したうえで考察してみる。観賞前の方はネタバレ注意。

 

これまでの劇場版Gレコ

2014年~2015年に放映されたTVシリーズGのレコンギスタ』を編集し、映画化したのが劇場版「Gのレコンギスタ」シリーズだ。2019年公開の『GのレコンギスタⅠ 行け!コアファイター』を皮切りに現在第4部まで公開されており、最終作となる第5部も、早くも来週8月5日に公開を控えている。

『Gのレコギスタ』といえばよく言われるのが「わかりづらい」という点。富野監督自身も自覚しているのか、劇場版ではドラマパートを中心にセリフの修正や新規カットが追加されたことでキャラクターの心情が捉えやすくなっている。メインキャラクターであるベルリ、アイーダ、ノレドの描写が特に手厚くカバーされたことで、群集劇然としていたTV版よりも、3人のジュブナイルストーリーとして親しみをもって見ることができる。

また戦闘シーンについては新規カットの追加はほとんど無いものの、主にGセルフが密度のある映画映えするビジュアルに描き換えられており、かっこいい主人公機としてTV版以上に印象的になっている。

各作品についての詳細はこれまで書いてきたレビュー記事を参照してもらいたい。

関東最速上映レビュー 劇場版『ガンダム GのレコンギスタI』はわかりやすくなった再演版!? - ゲーマーズライフ

元気のGは幾千年の未来から 『GのレコンギスタⅠ』「行け! コア・ファイター」 - ゲーマーズライフ

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疾風怒濤の勢いは逆シャアレベル!『GのレコンギスタⅢ 宇宙からの遺産』がTV版より面白い理由 - ゲーマーズライフ

 

新規カット増し増しのGレコⅣ

GのレコンギスタⅣ』も基本的には前項の通りなのだが、大きく違うのが新規カットの量が第3部までと比べ圧倒的に多いこと。今回描かれるビーナス・グロゥブ編(TV版19~22話)は、旅の終着点の割に「何を得られたのかがわからない」「敵であるジット団の魅力がもうひとつ」という、Gレコの明らかな弱点。新規カットが多いという事前情報は納得できるもので、ジット団の戦闘シーンが大増量に違いないと確信していた。

いざ見てみると「何を得たのか」についてはラ・グー総裁とのやり取りの大幅増量で納得いくものになっていた。詳細はここには書かないでおくが、GレコのSF作品的魅力を増すものになったと思う。

「ジット団との戦闘」についても、戦闘シーンの尺を伸ばして各団員の魅力はアップしたように思う。とはいえ事前に聞いていたほど新規カットは多くなかったので若干の肩透かしを食らってしまった。

このまま終幕なのか、と心配したところ最後に爆弾が控えていた。なんと映画のラスト20分が完全新規の戦闘シーンに描き換えられていたのだ。これまでのGレコ、いや初代ガンダムZガンダムまで振り返っても、劇場版になって「映像が綺麗な作画に/かっこいい演出に描き換えられる」というのはあったが、全く別の戦闘シーンに置き換わるというのは今までなかったこと。

一応映画ラストに該当するのはTV版22話「地球圏再会」。TV版では5分にも満たない小競り合いが描かれてはいたが、GレコⅣで描かれたのはカシーバ・ミコシ周辺宙域でのMS同士の大戦争Gセルフのパーフェクトパックのお披露目とベッカー隊との衝突だけは符合するが、あとは全く規模の違うものへと大進化した。

新しいものが見れるのは嬉しいが、ジット団絡みではなくどうしてこのパートにこんなに力を……?と考えさせられるものだった。

新規戦闘シーンの一部はYouTubeでも公開されているので見てもらいたい。


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「地球圏再会」に新規戦闘シーンを追加した理由

複数回見てわかってきたのだが、「地球圏再会」パートに新規戦闘シーンを追加するというのは非常に合理的な選択だ。映画の最後に長尺の戦闘シーンがあるのは楽しい、というシンプルな理由は第一にあるのだが、それ以上にここでカシーバ・ミコシ戦を行うことでGレコに足りなかった様々なピースが埋まるのだ。以下に思いついたものを列挙してみる。

  • Gセルフパーフェクトパックが実は鬼強いということが明らかになる
  • ひいてはビーナス・グロゥブの技術やばすぎるというのを実感する
  • ベルリかわいそう、からの支えてくれるノレドとラライヤの重要性に気付かされる
  • ベルリとマスクのライバル関係が補強される
  • マスクが機体を乗り換える理由が補強される
  • マニィの脱走劇、マスクとの再会が劇的に感動的なものになる
  • Gアルケインの変形モードがようやくお披露目される
  • カシーバ・ミコシが舞台装置になることで奇抜で荘厳な形状が実感できるものになる

特にカシーバ・ミコシについては、TV版でも異様だった形状が劇場版で更にグレードアップして3倍ほどの大きさに成長している。第3部の時点では変更の意図がわからなかったが、本作を見て納得した。新バージョンでないとここまで魅力的な戦闘の舞台とはならなかっただろう。ア・バオア・クーアクシズに並ぶ名舞台として、今後もガンダムを題材としたゲームなどで引っ張りだこになるのは間違いない。

 

GのレコンギスタⅣ』のためにあった劇場版Gレコ

7月24日に行われた舞台挨拶では監督自身「後半20分観て『やっぱりトミノはスゴいよな』と思いました」と発言していたが、全くその通りだ。カシーバ・ミコシ戦は富野作品、ひいてはロボットアニメ史上最高峰の戦闘シーンとして今後も語り継がれることだろう。この第4部のために、劇場版5部作は作られたと言っても過言ではない。

残る第5部公開が迫っているため、残念ながらこの傑作『GのレコンギスタⅣ』の公開期間は2週間しかない。ぜひ劇場で、より多くの人にこの事件を目撃してもらいたい。


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