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元気のGは幾千年の未来から 『GのレコンギスタⅠ』「行け! コア・ファイター」

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11月29日より富野由悠季総監督による映画『GのレコンギスタⅠ』「行け! コア・ファイター」が公開された。

9月の先行上映以来2度目の観賞となったので、今回は改めてGのレコンギスタ(以下G-レコ)』という作品の魅力について考えながら見てみることにした。

 

作品のあらすじやTV版との細かい相違点については、先行上映時の感想ブログを参照してほしい。

yuki222.hateblo.jp

 

数千年先の未来世界という魅力

『G-レコ』の1番の魅力は何だろうか。公開日以来ずっと考えてみた結論は、"リギルド・センチュリー"という『G-レコ』の作品世界そのものだ。

 

『G-レコ』はいわゆるロボットアニメ、SFアニメというジャンルに属する。そこではこれまで『機動戦士ガンダム』、『AKIRA』、『攻殻機動隊』といったヒット作が生まれてきたが、けれどそれらで描かれたビジョンから長い間アップデートされないまま今日に至ってしまったように思える。

 

そこにくると『G-レコ』は、上記作品より遥か遠い未来が舞台である。

機動戦士ガンダム』では西暦後に到来したとされる宇宙世紀0079年が舞台だった。その宇宙世紀の終焉後に訪れたのがリギルド・センチュリーとされている。『G-レコ』の時代設定はリギルド・センチュリー1014年。西暦も宇宙世紀もそれぞれいつ終わったのかボカされているが、とにかく2019年よりも千年以上先の未来には違いない(映画パンフレットには宇宙世紀リギルド・センチュリーの間に4000年の空白があり、その間人類が絶滅しかけたことがあるとも書かれている)。
これだけはるか未来まで文明が継続した先の社会を描いた映像作品というのはなかなかお目にかかれない(余談だが近年のSF小説では『天冥の標』が、これから先800年の人類史を描いており大変読み応えがあった)。

 

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幾千年先の未来。衣装も建築も技術も宗教も、現代とはかけ離れた世界。そこで巻き起こるボーイミーツガールからはじまる金星往還譚が『G-レコ』だ。こんな途方もないビジョンに胸躍らないわけがない。

 

本来の魅力が十分に発揮される劇場版

しかし2014年に放映されたTV版『ガンダム Gのレコンギスタ』では、遠未来設定ゆえに生まれたであろう各キャラクターの言動の突飛さばかりが前に出過ぎてしまい、本来は視聴者のフックになるべきキャラクター形成やストーリーテリングがおざなりになっていたように思える。

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モビルスーツの戦闘シーンこそ冴え渡っていたので最後まで楽しく見れたが、そこがフックになる視聴者ばかりではないのだろう。番組終了後に聞こえてきたのは「わかりにくい」という声一色だった。

 

では劇場版『GのレコンギスタⅠ』「行け! コア・ファイター」はどうだろう。

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冒頭からして主人公ベルリのデレンセン大尉への生意気な口答えがなく丸くなり、ヒロイン・アイーダ姫のぴっちりしたインナースーツに目を輝かせる様子には彼も年相応の男の子だったんだと安心させられる。

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アイーダ姫だって悲しみに暮れてる時に感謝のダンスは踊ったりはしない。悔しいときにはちゃんと怒ってちゃんと泣く。

もちろんこれら以外にも作品理解を助けるための修正・追加カット、セリフ変更が随所に見られる。その結果、特にベルリ、アイーダの2人は感情の発露が素直になり、共感を生むキャラクターへと変化を遂げた。

 

キャラクターへの理解を邪魔するノイズが減ると、ようやく立ってくるのがリギルド・センチュリーという世界観だ。

軌道エレベータ・キャピタルタワーとは?
宇宙の果てから送られてくるエネルギー源・フォトンバッテリーとは?
世界を支配する宗教・スコード教とは?
禁忌の技術・ヘルメスの薔薇の設計図とは?

この映画版では本来富野総監督が見てほしかったであろう、数千年先の世界の満ちる謎に視点が向くようになっている。


劇場版の評判でやたらと耳にする「わかりやすい」とは、つまりキャラクターへの理解度が増したことで、魅力的な作品世界の構造にようやく気付けたということではないだろうか。

 

タイトルから「ガンダム」を消すという覚悟

未来を描くSF作品は、転じて現代の社会をどう生きるか、未来に何を目指すのかを考える道しるべとなる。

鉄腕アトム』や『機動戦士ガンダム』は今もロボット研究の目標だ。『G-レコ』も宇宙開発やエネルギー政策、宗教戦争といった現代の社会問題を考える一助となるかもしれない。

もちろんそんな難しいことを考えなくても大丈夫。78歳のおじいちゃん監督による無限の想像力を見せつけられたら誰だって負けてられない!と奮起するきっかけになるはずだ。


また今回の劇場版は、元々タイトルに冠していたガンダム」の文字が消え『ガンダム Gのレコギスタ』から『Gのレコギスタ』へと変更された。

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TVシリーズBDパッケージ記載の英語タイトル(ガンダム有り)

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映画版のパンフレット記載の英語タイトル(ガンダム無し)

Gのレコンギスタ』のGには「ガンダム」の意味が込められているので、ガンダムシリーズから外れたということを意味するものではない。

これまでガンダムを見ていなかった人、現代を生きる世界中の人にあまねく見てほしい、見れるものにしたぞ、という富野総監督の覚悟の現れと受け止めるべきだろう。

 

劇場版『GのレコンギスタⅠ』「行け! コア・ファイター」は11月29日から2週間限定で上映中(1月10日からはセカンドランとして新たに14館で追加上映されることも決定した)。レンタル配信・セル配信も上映と同時にスタートしている。

 
この機会にTV版未見の人も、途中でやめてしまった人も、改めて『G-レコ』という世界に触れてみてほしい。

見終えたらきっと、明日を生きるための新しいエネルギーが胸の中に燃え上がっているはずだ。それこそがきっと、この作品の謳う「元気のG」に違いない。

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