ユウキズ・ダイアリー

アニメ・映画・ゲームについての雑記

3分間ヴァイキング『Bad North』

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男なら誰しも漫画『ヴィンランド・サガ』のトルフィンのように、生きるか死ぬかの世界で悪逆非道のヴァイキングと戦いたいという気持ちを抱いているだろう。そんな夢を叶えてくれるのがNintendo Switch向けに先日配信された『Bad North』だ。

 

ec.nintendo.com

強いてジャンルを問うならリアルタイムストラテジーだが、体力ゲージの一つもないゲームシステムはシンプル。小さな島に建つ僧院目掛けて周囲の海から海賊たちが襲いかかってくるので、プレイヤーは海賊の通り道に兵士のユニットを配置するだけ。兵士は海賊とぶつかると勝手に戦ってくれる。島を一つ救うと次々と海図が広がっていくので、海を渡り連戦していくことになる。

 

このゲームの肝はどんな島も大概3分程度でクリアできるところだ。最初こそユニットも敵も少なく頭を使わずクリアできるが、連戦を重ねるうちに選択できる兵士の種類(剣、槍、弓)も配置できるユニットの数(最大4ユニット)も増えていく。選択肢が増えるとこの兵士を・このスキルを試したい、もっと成長させたい、と連戦したくなってしまう。リアルタイムストラテジーの皮を被っているが、そのくせミニマルで止め時を失う触り心地はパズルゲームのようである。

次第に海賊の力が増し、裏をかかれ、ユニットが一つまた一つと全滅していくと、ああ、これが海の男の世界か…と絶望し、そこがシビれる(ユニットは1人の隊長と8人の一般兵で編成されている。一般兵は死んでもすぐに補充されるが、しんがりの隊長は死ぬとその島をクリアしようと蘇生されずユニットが減る。4ユニットが3ユニットになるだけでじり貧になっていく)。1ユニットだけ命からがら島から逃げ出すも、ゲームオーバーして一からやり直すため、負け戦と分かっていてもなお単騎で死地に赴く時の絶望感といったら、堪らない。

 

なおSwitchではボタン操作よりもむしろタッチパネル操作が快適。すでに他ハードやPCへの移植が決まっているが、タッチパネルはSwitch版ならではだろう。もっと複雑でプレイヤーの介入要素があっても、と思わないでもないが、思い切ったシンプルさはこれはこれで好みである。

 

フミコの告白take.3『ペンギン・ハイウェイ』

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森見登美彦原作、スタジオコロリド初長編映画となる『ペンギン・ハイウェイ』が8月17日から公開されたので早速初日に観賞した。

 

スタジオコロリドを率いる石田祐康監督は京都精華大学在学中に制作した短編アニメ『フミコの告白』で一躍注目を浴び、スタジオコロリド在籍後も『陽なたのアオシグレ』の監督、『台風のノルダ作画監督などを務めてきた。スタジオコロリドはパズドラマクドナルドといった企業CMも得意としており、それらを見たことがある人は多いに違いない。

 

今回の『ペンギン・ハイウェイ』は利発な少年アオヤマ君とおっぱいの大きなお姉さん、そしてペンギンを巡る物語。原作を読んだ当時は、それまでの森見登美彦作品に多い青年主人公の作品との隔たりを強く感じてしまいあまり頭に入らなかったのだが、映像作品として再度向かい合ったことでするっと理解することができた。そうかこれは小さな世界と世界の果てを描いた物語なのだと。『フリクリ』であり『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』であり『未来のミライ』だ。

なるほどそう考えるとお姉さんの声を演じる蒼井優の個性的な声は『フリクリ』のハルハラハル子を彷彿とさせる―余談だがアオヤマ君の親友・ウチダ君の釘宮理恵ショタボイスも秀逸だ。

 

しかし1本の長編アニメーションとしては、クライマックスシーンの疾走感こそ鳥肌モノであるが、他のシーンはどうしても精彩を欠いて見えた。キャラクター、ビジュアル、キャストの芝居、ストーリー、いずれも眼を見張るものがあるのに、もう一歩物足りない。もっと面白くアニメーション、できるんじゃないか。

森見登美彦原作アニメは『有頂天家族』『夜は短し歩けよ乙女』などいずれも傑作揃いのため、どこか厳しく比べてしまうところもあるだろうが、最後まで見た印象は『フミコの告白』『陽なたのアオシグレ』と大きく変わらないものだった。いい感じのビジュアルだけで引っ張る初期の新海誠作品とも重なる。

 

ただ、オリジナルの長編映画が作れる国内のスタジオ、監督がまだまだ少ない中で、こんなにも純粋な作品を生み出せる石田祐康監督(30歳!)は稀有な存在。生真面目でまっすぐなアオヤマ君と石田監督の姿が重なり、思わずこちらの背筋が伸びる。今後のコロリド、石田監督の作品も注目していきたい。

 

Switch『GO VACATION』で一足早い夏休み

暑すぎて外に出ると溶けるので最近はもっぱらクーラーの効いた部屋で避暑地に行っている。……もちろんゲームの話だ。

 

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GO VACATIONゴーバケーション)』は元々Wii用として2011年に発売されたタイトルだが、今年7月27日、欧米向けにNintendo Switch用タイトルとしてアップグレード要素を引っさげて移植版が発売された。Wii版がお気に入りだったため、今回無理して海外版を購入して一足早くプレイしている。海外版とはいえなぜか日本語が完全収録されているのでプレイするうえでの言語的ハードルは全くない。

※ちなみに私は、海外の任天堂アカウントを作成→PayPalアカウントを作成→プレイアジアで海外版ニンテンドープリペイドカードを購入(PayPal支払い)→それを使って海外任天堂アカウントからeshopで購入、という無理をしている。通販で輸入版を購入すればもっと楽だろう。

 

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このゲームのウリは4つのリゾート地で50種類以上のスポーツ/バラエティゲームを遊べるという点だ。マウンテン、マリン、シティ、スノーと名付けられた景観に富んだリゾート地で、各地に配置されたゲームを好きな順番で気の向くままにプレイしていく。

移植にあたっての追加要素として特筆すべきは、SD画質からHD画質に映像がぐっとグレードアップしたことだろうか。Wii版はハード固有の画質の低さがネックだったので当然とはいえ嬉しいところ。他にも動物の撮影、釣り、ゆるいオンライン要素(他人のゴーストとタイムアタックできる)、ローカル通信プレイなども追加されている。もちろんSwitchならではの携帯モードやHD振動スクリーンショット撮影や録画にも対応している。

 

ただ遊ぶにつれ気になるのは、Wii版では驚かされたはずのリゾート地の広さに、もはや驚きを感じなくなってしまったこと。実際には狭くなっているわけではないのだが、ゼルダの伝説BotW』や『マリオオデッセイ』、『ゼノブレイド2』などに触れて、任天堂ハードでも広いフィールドが当然と思うようになってしまったためだろう。すでに一度マップを踏破しているから、というのも理由に数えられるだだろうが。

そうすると残る特徴は多種多様なスポーツゲームなのだが、残念なことにいずれも底が浅い。ボリュームがあるとはいえ、難易度は一様に低く、成長要素はなく、ライバルもいなければテクニックも必要ない。逆に言えば初めてゲームを触る人とも気軽に対戦できる、という利点でもあるが、悲しいことにそんな友人は持ち合わせていない。

このゲームを長く遊べるのは、多数のゲームを一つ一つクリアできるマメな人や、ゲームのスコアに一切影響しない衣服や家具を集められるコレクター気質な人ぐらいに違いない。

 

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そんな不満を抱きつつも気がつくとリゾート地に行きたくなってしまうのは、Switchになってもオンリーワンの魅力を失わないから。JOY-CONを両手に持って成りきりながらスキーやローラーブレードでリゾート地を駆け巡る、ただそれだけが楽しい。特にスノーリゾートの「日本のスキー場っぽさ」の再現度は今なお驚くべきもの。クーラーの風を浴びながらスキー場で風になるのは快感である。

 

Wiiからの移植にあたり操作性の問題もあるが(視点移動が停止中にL1を押しながらLスティックとは…Rスティックは飾りか…)、それを除けば良移植といえるだろう。Wii版が好きだった方、気になっている方には国内版が出たらオススメしたい。 

 

子供の想像力は無限大―『未来のミライ』評

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おとうさん、おかあさん、くんちゃんの3人家族に新しく赤ん坊のミライちゃんがやってきた。けれどくんちゃんが「ミライちゃんを守る!」なんて言ってたのは最初のうちだけ。ママの関心は生まれたばかりのミライちゃんを独占し、新米育メンのパパはドジばかり、くんちゃんはストレスを爆発! 癇癪くんちゃんが家の庭に駆け出すと、そこは見たことのないお城の廃墟と、王子と名乗る変なおっさんが――。

 

ここから始まるのは過去と未来を行き来する冒険ファンタジー……ではない。くんちゃんは王子と遊んでいるうちに機嫌が直って元の家にすぐに帰り、癇癪を起こす度に不思議な庭で、女子高生姿のミライちゃんをはじめとした家族にまつわる様々な人物と交流し、成長を積み重ねていく。

観賞前こそ冒険ファンタジーものを期待していたが、それは予告映像によるミスリード。子供は何を考えているかわからない、でもあっという間に成長する、どんな家庭にもありがちな育児中あるある話から着想した小さな物語である。

くんちゃんが庭で出会う物語は夢か現か判然としない、けれどくんちゃんの中では現実となって、心の支えになっていく。これは近作を例えに出せば『夜は短し歩けよ乙女』であるし、『思い出のマーニー』だ。ただこれらに及ばないと思うのは、主人公-くんちゃんを愛し難いという点だろうか。4、5歳児程度であろうくんちゃんは当たり前だが自己中心的で子供っぽい。おそらく細田守監督の育児生活で見たままを投影したのであろう、耳が痛くなるほどわんわん騒ぐ子供の姿はリアルで酷。そんなくんちゃんは同情を呼ばないし感情移入もし辛い。

とはいえ良い大人である私たちは、くんちゃんに翻弄されながらも仕事と家庭を両立させようと奮闘するおとうさん、おかあさんの健気な姿に胸を打つ。細田守映画ならではの丁寧な芝居やダイナミックな演出もグッとくる。往年の細田守ファンなら終盤の恐怖描写に『ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』を思い出して泣くことだろう。

 

今作はこの夏を代表する大冒険映画にはなれそうにないが、決して悪い点ばかりではない。これから見に行く方は肩の力を抜いて、『ちびまる子ちゃん』や『クレヨンしんちゃん』を見るようなおおらかな大人の視点で見るべきだ。

ただ、30を超えて独身の身である私自身は、この映画のターゲットとする客層には入らなかったように思う。家庭の有無で感情の振れ幅が変わるはずだ。だから10年後にまた見てみたい。その頃にはきっと幸せな家庭を築いているに違いない、と未来を信じて……。

 

2018年上半期映画ベストは『リズと青い鳥』

2018年上半期映画ベスト10を書いてみる。範囲は今年見た2017年末~2018年6月公開の映画。

1位 リズと青い鳥

yuki222.hateblo.jp

2位 さよならの朝に約束の花をかざろう

yuki222.hateblo.jp

3位 リメンバー・ミー

巧みなシナリオに舌を巻いた。泣いた。

4位 スリー・ビルボード

フランシス・マクドーマンドサム・ロックウェルの演技に震える。

5位 ブラックパンサー

アフリカンなビートに溢れるヒーロー映画。鳴り物を多用した曲と、ひねりの効いた脚本、強くて良い女。完璧。監督は31歳。驚異。

6位 ブリグズビー・ベア

7位 恋は雨上がりのように

小松菜奈から目が離せない。

8位 勝手にふるえてろ

松岡茉優から目が離せない。

9位 GODZIILA 決戦機動増殖都市

眠たい画が続くのは前作ゆずりだが、前作では意図不明だった異星人の配置がようやく機能して後半のドラマには熱くなった。
メカゴジラの扱いには仰天。予想を裏切り期待に応える流石の虚淵&村井さだゆき脚本。

10位 ヴァレリアン 千の惑星と救世主

 

見たリスト(36本)

 

このアニメを見ろ2018年夏

アニメは全部見るのが基本だが、とはいえ今期も視聴前に推しアニメを挙げてみる。

ちなみに前期ハマったのは『ひそねとまそたん』『シュタゲゼロ』『ウマ娘』『多田くんは恋をしない』『ガンゲイル・オンライン』。

 

sirius-the-jaeger.com

監督は伝説的アクション映画『ストレンヂア』から人情劇の『花咲くいろは』まで手がける奇才・安藤真裕氏。キャラクター原案は元カプコン西村キヌさん。制作は『ウマ娘プリティーダービー』が記憶に新しいP.A.WORKS

安藤監督久しぶりのアクション物ということで今期最も期待している。

 

www.harukana-receive.jp

今期きらら枠を映画『ベルセルク』の監督、というよりか『アイドルマスターキャラクターデザイナーとして名を馳せる窪岡俊之氏が監督。なぜ。異色の組み合わせの生む奇跡にほのかな期待。

 

  • プラネット・ウィズ

planet-with.com

漫画家・水上悟志氏のネームを元にしたオリジナルアニメ。『ユーリ on ICE』に習った形か。水上氏の漫画は未読ながら、まだまだ未知数な作り方に挑戦する姿勢に敬意を評して楽しみたい。

 

こんなところで。シリーズ物、原作物について知りたい方は他で確認を。

2018夏アニメ一覧|今期(7月放送開始)新作アニメ情報 | アニメイトタイムズ

Oculus Goで寝ながらNETFLIX

5月2日に突如Oculus Goが発売された。スタンドアローンで動く初のVRデバイスとあってはVR愛好家として黙っていられないので早速購入してみたところ、これが寝ながらにしてNETFLIXを見るのに最適だった。 

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著者近影

 

Oculus Goを触って気付かされるのがこれまで買ってきたVRデバイスの不便さだ。

Oculus RiftはPCと、PSVRPS4との接続が必須であるし、接続ケーブルの距離内でしか移動ができない。スマホのVRアプリを使うにはスマホの保護ケースを外してハコスコ規格の箱に突っ込まなくてはいけない。起動させるまでにえいやっと気合いを入れないと取り組めないので自然と使用頻度が下がっていた。 

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Go近影

それがスタンドアローンタイプのOculus Goだとどうだろうか。デバイスを被って電源ボタンを押すだけである。移動距離の制限もないのでなんなら外でも使用できる。さらにはヘッドホンも付けずに360度サラウンド音声が聴こえてくる。

アプリケーションはというと特にNETFLIXが素晴らしく、映画館並みの大画面で、寝ながらにして映画やアニメを楽しめる。これは会う人会う人に必ず言っているのだが、NETFLIXなら今期最高に面白いアニメ『ひそねとまそたん』が見ることができるので最高と言うしかない。

またYouTubeAmazonプライムビデオなどもインターネットブラウザ経由で見ることができる。

余談であるがDMMのVR動画も見ることができる。

 

もちろん全てが優れているわけではない。  PSVRなどとは異なりVR空間内で徒歩移動ができないし、外部媒体のマシンパワーが使えないのでリッチなゲーム体験はできない。ゲーム系のアプリは今のところいまひとつに感じるが、そこは安価であることを考慮すると仕方なしか。32GB版が23800円、64GB版が29800円。香港からの発送となるがなぜか送料は無料だ。

 

昨年Nintendo Switchが出た時には家庭用ゲーム機が場所を問わずに体験できるという驚きがあったが、Oculus GoはVR界にとってのSwitchのように思える。安価で手軽に触れるエントリーモデル。現在は公式サイトからしか購入できないが、販路が増えれば日本国内でもかなり受け入れられるポテンシャルがありそうだ。

 

映画『レディ・プレイヤー1』で、屋外でVRを楽しむ様を見たときにそんな未来はすぐに来るわけがない、と高を括っていたのだが。未来はあまりにも早く来てしまった。

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著者近影

 

  • 2年前に書いたVR記事 

yuki222.hateblo.jp

 

  • Oculus Go 公式サイト

www.oculus.co