ユウキズ・ダイアリー

アニメ・映画・ゲームについての雑記

耳をすませて、イスになって。『リズと青い鳥』

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映画『リズと青い鳥』が4月21日に公開された。幸い舞台挨拶付きの回を観賞することになったので山田尚子監督の言葉に聞き入っていると思わぬ発言が。曰く「BGMは校舎内の備品、机やイス、ビーカーなどを楽器に見立てて奏でている」「観客もイスになったつもりで見てほしい」とのこと。

ワタシハイスダ、ワタシハイスダ…。自己暗示をかけながらの奇妙な観賞体験が始まった。

 

liz-bluebird.com

リズと青い鳥』は武田綾乃さんの小説を原作としたTVアニメ『響け!ユーフォニアム』の最新作。アニメ第2期の翌年の時間軸を描いているが、黄前久美子を主人公としたTVアニメシリーズとは打って変わって、久美子の先輩に当たる鎧塚みぞれと傘木希美の2人にフォーカスしたスピンオフ作品となっている。そのためかタイトルから「響け!ユーフォニアム」の文字は廃されている。

劇中では、吹奏楽コンクール金賞を目指しながらも3年生となり受験も控えるみぞれと希美が、互いを想い、すれ違う、どこにでもあるかもしれない、けれど眩しいくらいの青春のきらめきがつぶさに描かれる。

 

観賞前に最も注目していたのがキャラクターデザインの変更だ。TVアニメ版から比べて頭身が上がり、目は小ぶりに、影やディテールの書き込みも随分シンプルになっている。こうしたキャラクターの大幅な変化といえば、『機動警察パトレイバー2 the Movie』や『機動戦艦ナデシコ The prince of darkness』、『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』などを思い出すところだが、最近の作品ではあまり見ない試み。そこには果たしてどういう意図があるのか?

ここで効いてくるのが前述の「ワタシハイス」だ。けれど自己暗示など必要もなく、BGMがいざなってくれるという手法だった。複雑でノイジー、けれど聞き馴染みのある校内備品が奏でる音色を聴いているうちに、自分自身がイスに、というよりも音の一部になって、みぞれ達をそっと校舎の隙間から覗き見ているかのような気持ちになってくる。

そうすると見えてくるのが、シンプルなキャラクターデザインの意図だ。書き込みが最小限ゆえに、ディテールではなく"しぐさ"が、セリフよりも雄弁に観客へ語りかけてくる。揺れる髪、翻るセーラー服、交差する脚、異なる歩幅、まばたき、ゆれる瞳孔、みぞれが幾度も左手でなでつける右の髪。

BGMだけではない。カメラワークはみぞれの鼻先まで迫ったと思ったら離れていき、時にはフレームアウトして表情を隠し、身体の動きばかりを追いかける。またSEも効果的で、上履きが床を踏む音さえ耳に残るようTVアニメ版から変更されている。映画を構成するすべての要素が、キャラクターのしぐさを追うために意図されている。

 

こうした山田尚子監督の演出は前回の監督作『聲の形』をはじめ様々な作品で見られてきたが、今作に見られるしぐさ―言いかえると"アニメーションキャラクターの芝居"に対するこだわりはいままでになくストイックだ。

ストイックゆえに物語上の起伏は少なく、コンクールの行方は描かれないし、セリフ量もTVアニメ版に比べて控えめ。けれどしぐさに注目するだけで、ぐっと豊かな感情が画面を踊るのが見えてくる。

 

響け!ユーフォニアム」シリーズに連なるものの、キャラクターを絞っているので本作から見ても問題ない。私小説的映画や、女性同士の共依存関係―直接的な言い方をすると"ソフトな百合"が好きな方なら、きっと忘れられない一作になるはずだ。

 

俺たちはいつも原作が先かアニメが先か悩むけれど『PERSONA5』は先にゲーム版に触れてほしい

原作を先に読む/遊ぶか、原作には触れずに映像作品を見るかといった問題をメディアミックス作品と対峙する時にはいつも悩まされる。がこと『PERSONA5』に関してはゲーム版に先に触れてほしいと『PERSONA5 the Animation』の第1話を見て感じた。

PERSONA5 the Animation』を卑下するわけではない。けれどゲームとアニメというメディアの差により、『PERSONA5』という"体験"は確実に変質する。変質により一長一短あろうが、アニメ版のそれがゲーム版を上回るかは未知数であるから、確実な感動が待っているゲーム版を私は推す。

p5a.jp

 

 

PERSONA5 the Animation』は2015年に発売されたPS3/PS4用に発売されたRPGゲーム『PERSONA5』をテレビ向けのアニメーション作品にしたもの。4月7日深夜から放送が開始された。

1話目の筋は原作の序盤通り。主人公のカジノでの逃走劇から逮捕、そして尋問を受ける形で7ヶ月前に記憶が遡り、秀尽高校への転入と竜司との出会い、異世界へ迷い込みペルソナを覚醒するまでが描かれる。

 

ゲームとアニメ、何がそんなに違うのかというと、上記内容がゲームでは数時間に渡り描かれるのに対し(記憶違いでなければ少なくとも2時間は要したはずだ)、アニメでは25分しかかからない。ゲーム本編は100時間近くのボリュームがあるが、アニメが完結してももちろんそんな長時間にはならない。仮に26話なら10.8時間。ゲーム版からわずか1/10程度に短縮されるであろう。

同じ物語なら短時間で接種できる方が効率的、という人が多いことは理解している。けれど『PERSONA5』は無駄にプレイ時間を誇っているわけではない。いち高校生の視点で1年間、仲間たちと苦楽を共にする濃い体験を積み重ねているうちに気づけば100時間経ってしまうのだ。シナリオ自体大変優れたものであることは疑う余地もないが、仲間たちに対する愛着は、長時間のプレイ時間に依るところも大きい。時間が限られるアニメというメディアが、シナリオのベースは同じであっても、駆け足で描かれる時に同じ感動を生み出すことができるだろうか。

体感時間は物語を変化させる要素であるし、これはメディアごとにどうしたって変化する。メディアミックス作品についてはそれを踏まえて、最初にどのドアを叩くか慎重に考えないといけない。どうしたって最初に触れたメディアで一番大きな感動を覚えるし、その感動が大きいに越したことはないからだ。

 

なお『PERSONA5 the Animation』の1話は非常に美麗な映像であったし、監督はゲーム版のアニメパートも監督した石浜真史氏である。アニメならではのアクションや、キャラ同士の掛け合いといった面も見えてくるであろう。アニメはアニメとして、今後の展開を楽しみにしている。

ただそれはそれとして、『PERSONA5』にこれから触れるならばゲーム版を先にプレイすることを強く推したい。 

 

新作アニメはこれを見ろ2018年春

昨年夏に福岡に転勤になったがなんやかんやあってジョブチェンジに成功して東京に戻ってきた。福岡在住中はテレビを買わずにいたが各種定額配信サイトを駆使したらまったくアニメ視聴に困らなかったので定額配信サイトすごい。毎クール判を押したようにお勧めアニメを書いてきたものの、こんなに楽に後から容易に追っかけられるならみんな話題になってから見ればいいのかもしれない。

けどまあ更新ネタとして書くのが楽なのでおもしろアニメがいっぱいあることはいつも声高に叫んでいたいので今期も書く。

 

gundam-bd.net

Figure-rise LABOのフミナさんが何かと話題になっているガンダムビルドシリーズ最新作。フミナさんは出ない。各テレビ局の権利が切れたからか『ガンダムAGE』『Gのレコンギスタ』のアレンジモビルスーツが出るようなのでその点非常に楽しみ(前作では権利関係から『ガンダム00』までの登場だった)。 

 

  • ひそねとまそたん

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hisomaso.com

シン・ゴジラ』の樋口真嗣監督が総監督を務める完全新作アニメ。脚本は『さよならの朝に約束の花をかざろう』を監督したことで話題の岡田磨里さん。キャラクターデザインはNintendoSwitchの音ゲー『がるメタル』の青木俊直氏で主演声優は『アイドルマスターシンデレラガールズ市原仁奈役の久野美咲さん。大好きな黒沢ともよさんも出演している。好きな要素が多過ぎる。

航空自衛隊がドラゴンを使役するというハードな設定に対して、久野ちゃんの電波ボイスと手書き感たっぷりで再現度の高い青木キャラ。どんな化学反応を起こすのか。

 

手短かだけどもこんなとこで。身の回りが落ち着いたので更新頻度を増やす…増やしたい…どうかな…。

 

雨と雪とファンタジーと『さよならの朝に約束の花をかざろう』

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脚本家として知られる岡田麿里さんの初監督映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』が2月24日に公開日を迎えた。早速劇場に足を運んだのだが、予想を超える出来に心底震え上がった。いくつものシーンで滂沱の涙が止まらなかった。ファンタジーアニメ映画という鬼門に立ち向かい、真摯な答えを提示した岡田麿里監督には敬意を表したたい。

 

鑑賞前は「なぜファンタジーなのか」という点が疑問に浮かんでしょうがなかった。ファンタジー、ましてや国産のオリジナルアニメ映画となると、宮﨑駿監督作以外にヒット作がない(漫画やゲームのタイアップ、テレビアニメの総集編や続編は当然除く)。他は単に面白くないか、面白くないのに売れてしまったか、面白いのに売れなかったかの、いづれかだ。近年に限らず、そんな博打を打つ企画はほとんど通らず世に出ないのが現状である。脚本家としては『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。』や『心が叫びたがってるんだ。』などのヒット作があるものの、監督としては実績0の岡田麿里さんを監督に据えてファンタジーアニメ映画とは、よくもまあこんな大大博打を打つものである。堀川プロデューサーは肝っ玉だ。

 

人里離れた土地に住む長命な種族イオルフの少女マキアが、あるきっかけを契機に里を離れ、赤子を拾い、女手一つで育てあげるというのが『さよならの朝に約束の花をかざろう』のあらすじ。物語の骨子は細田守監督の『おおかみこどもの雨と雪』とかぶる。おおかみこどもの雨と雪では宮崎あおい演じる主人公・花が人間と狼のハーフを女手一つで育てる姿が描かれた。決定的に違うのは、現代日本を舞台にしたおおかみこどもの雨と雪に対して、異世界を舞台にした純ファンタジーだという点だ。

『さよならの朝に約束の花をかざろうは、女性である岡田麿里監督自身が脚本も含めて手掛けているためか、母と子の関係性とその変化は極めてリアリティがあり、『おおかみこどもの雨と雪』以上に胸を打つ。またおおかみこどもの雨と雪』は公開時、物語の細部が現実的かどうかという無駄な揚げ足取りが一部で行われていたが、異世界ファンタジーであるおかげでそのような隙がない。ファンタジーである理由はここにあるのだろう。現実世界を舞台に据える物語以上に、世代を越え、文化を越えて、誰にでもフラットに受け入れてもらえる。これは所謂俳優の演じるドラマや映画に対するアニメの特性でもあるが、ファンタジーと組み合わさることで相乗効果が生み出される。

 

ただ陳腐なファンタジーであれば逆効果、シラけてしまうところだが、その点『さよならの朝に約束の花をかざろう』のファンタジー強度は高い。歴史、文化、風習、言語を系統立てて構築している。世界観を長々と説明するシーンなどなくても、仔細まで描かれる建築物、衣装、小物で伝わってくる。『十二国記』を彷彿とさせる、と言ったら言い過ぎであろうが、『ブレイブストーリー』『バケモノの子』『メアリと魔法の花』はまとめて束になっても敵わない。凡百のゲームゲ―ムした浅い設定群とは一線を画している。

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監督自身が『オウガバトル』シリーズのファンであるということをきっかけに起用したキャラクター原案・吉田明彦氏が世界感の厚みに寄与しているのは間違いないであろう。

 

ファンタジーアニメ映画というある種のリスクを背負って飛び立った『さよならの朝約束の花をかざろう』は、そのリスク故に世代を越え、文化を越え、更には国を越えて多くの人の琴線に触れるはずだ。リスキーな企画ほど応援したいし、面白い作品なら尚のこと。丁半どっちに転ぶかまだまだ未知数であるが、このご時世なので公開規模に負けず口コミでの人気の高まりに大いに期待したいところだ。

(余談であるが昨年発表されたアトラスの純ファンタジー企画も大いにリスキーだと感じたが、現代日本以外を描くことによるユーザー層の広がりを期待しているのだろうと、今ならわかる。こちらも楽しみにしている)

 

sayoasa.jp

 

2017年映画ベスト20

2017年に見た新作映画を思い返していたら58本もあったので忘れないうちに面白かった映画上位を記録しておく。範囲は2017年に私ユーキが見た新作劇場映画もしくは配信作品。番号は面白いと思った順位。一般的なランキングよかアニメが多いかと思う。

1.メッセージ
2.スター・ウォーズ/最後のジェダイ
3.ベイビードライバー
4.ブレードランナー2049
5.SING
6.イカロス
7.皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ
8.ラ・ラ・ランド
9.ダンケルク
10.夜は短し歩けよ乙女

11.帝一の國
12.レゴバットマンザムービー
13虐殺器官
14.劇場版 響け! ユーフォニアム~届けたいメロディ~
15.スパイダーマンホームカミング
16.ガーディアンズオブギャラクシーリミックス
17.夜明け告げるルーのうた
18.LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五右衛門
19.IT/イット “それ”が見えたら、終わり。
20.キングコング:髑髏島の巨神

 

いくつかコメント。 

 1.メッセージ

テッド・チャンの傑作SF小説であり、私がSF小説にハマるきっかけともなった『あなたの人生の物語』の映画版。原作ファンなだけにどう料理するのかと期待半分不安半分であったが、宇宙生物の奇妙な形態、宇宙船(?)、象形文字といったSF要素を文面から想像していた以上の表現で映像化しており、またなにより巧みな編集技術には感嘆の声しか出ない。深い思い入れも込みだが、個人的には2017年ナンバー1。同じくドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作である『ブレードランナー2049』と共に必見。
 

2.スター・ウォーズ/最後のジェダイ

過去作を否定する内容に賛否両論巻き起こっているようだが、私は絶賛側。全編通して撤退戦という(スターウォーズとしては)今までにない筋書きが大変面白かった。カイロ・レン役アダム・ドライバー主演の2017年公開映画『ローガン・ラッキー』も、アダム・ドライバーの変わらない素朴さが見れて大変おすすめ。


「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」本予告 

 

6.イカロス

このランキングに挙げるかえらく迷ったNetflixオリジナルのドキュメンタリー作品。劇場公開はしていないが、映画は映画だろう。4gamerの年末企画プラチナゲームズ稲葉敦志氏が絶賛していたのをきっかけに見たらぶったまげた。

途中からのあまりにも劇的な展開に頭をブン殴られるような衝撃を受けました。こんなドキュメンタリー映画はたぶん二度と作れないですし、作ろうと思っても絶対ムリだと思います。

本当に稲葉氏のコメント通り。バレないようにドーピングで自転車レースに挑むというギリギリアウトな内容なのに、途中から更にやばい方向に企画が一変。登場人物らがいつ殺されてもおかしくない状況にヒリヒリしながら最後まで一気見してしまった。世界の裏側を知る、まさにドキュメンタリー映画はかくあるべしな内容だ。www.netflix.com

 

7.皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ

イタリア産だが題材は日本の古典アニメ『鋼鉄ジーグ』。2017年に見たどんなヒーロー映画の中でも一番熱く、恐ろしく、面白かった。続編希望。


日本のアニメ文化から生まれたイタリア映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』が公開

 

10.夜は短し歩けよ乙女

 2016年の『君の名は。』『この世界の片隅に』大旋風に比べると静かだが本数はやたらと多かった2017年のアニメ映画界で一人気を吐いていたのが湯浅政明監督。原作を読んで以来待ちわびていた『夜は短し歩けよ乙女』を最高の形で映像化してくれたことに本当に感謝したい。湯浅監督のオリジナル作『夜明け告げるルーのうた』も素晴らしく、2018年作品になるがNetflixの『デビルマン』もすごいことになっている。日本にとどまらないイマジネーション力に、量産体制まで整えてしまった湯浅監督の今後の活躍が楽しみだ。


『夜は短し歩けよ乙女』 90秒予告

 

 13.虐殺機官

以前感想を書いたのでそちらをどうぞ。

yuki222.hateblo.jp

 

  14.劇場版 響け! ユーフォニアム~届けたいメロディ~

2017年もアニメ映画が大量生産される中、総集編映画という悪しき風習もまた多く生み出されていたわけだが、そんな中でも頭一つ抜けていたのが『響け! ユーフォニアム』TVアニメ版2期の総集編映画。2期後半のエピソードに絞り、主要キャラクターの心情に沿った追加映像と大胆な構成の変更で、まるで違うアニメを見ているかのような印象まで受けた。総集編映画の新しい一面を見せてもらった。


『劇場版 響け!ユーフォニアム~届けたいメロディ~』WEB予告

 

 

新作アニメはこれを見ろ2018年冬

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福岡と東京を行ったり来たりで忙しくしていたら早々に新作アニメが始まってしまった。未放送作を中心に期待作を書いておく。

 

月刊Newtypeで連載されていた長谷敏司氏のSF小説をアニメ化。『楽園追放』『コンクリート・レボルティオ』などを手掛けた、ハードSFにかけてはアニメ界で右に出るものがいない水島精二氏が監督するとあっては期待しないわけにはいかない。氏が繰り返し描いてきたのは、この世界と、ここではないどこかの対比構造。『BEATLESS』ではどんな未来を見せてくれるのか。GARNiDELiAが主題歌を手掛けるのも楽しみだ。(Amazonプライム・ビデオでも配信予定)
 
  • ダーリン・イン・ザ・フランキス

darli-fra.jp

TRIGGERとA-1 Picturesによるオリジナル新作ロボットアニメ。TRIGGER的には前身であるガイナックス制作『天元突破グレンラガン』以来となるロボットアニメ。行き場のない少年少女たちがぴっちり制服で戦う設定からは『トップをねらえ2!』を想起せずにいられない。

監督はアニメ『THE IDOLM@STER』以来の登板となる錦織敦史氏。錦織監督の持ち味はキャラクター、特に女の子の多面的な表現であろう。繊細さ、儚さ、そしてとびっきりの可愛らしさ。共同でシリーズ構成を務める『シュタインズ・ゲート』の林直孝氏と紡ぐ危うい物語には、今から期待が高まる。(Amazonプライム・ビデオでも配信予定)

 
  • ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン

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京都アニメーションお抱えであるKAエスマ文庫からのアニメ化作品5本目。監督は『境界の彼方』以来となる石立太一氏。作画の美麗さでは業界屈指の京都アニメーションにあってなお目を引くのが、同スタジオ作では今までにない大人びたキャラクター像と、それを形作る密度の高い描き込み。『響け! ユーフォニアム』という大傑作を生み出してもなお留まるところを知らない京都アニメーションからは今年も目が離せなさそうだ。(Netflixでも配信予定) 

 

話数単位で選ぶ、2017年TVアニメ10選

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冬コミの待ち時間が寒くて長いので、今年も新米小僧さんの企画に参加してみる。

ルール
・2017年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。

「話数単位で選ぶ、2017年TVアニメ10選」参加サイト一覧: 新米小僧の見習日記

 

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脚本:田辺茂範/絵コンテ・演出:たつき作画監督:伊佐佳久
サーバルちゃんのピンチに旅を通して出会ってきたフレンズたちが一堂に会するシーンには感極まった。最終話に集まる期待、それを超える熱い展開は近年のまどか☆マギカ、ガールズ&パンツァーに勝るとも劣らないだろう。たつき監督ありがとう。

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冬コミでは新作告知チラシを監督から直接いただいた。"TVアニメ始"とは。

 

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脚本:野﨑まど/絵コンテ・演出:りょーちも作画監督:澤良輔、真庭秀明
映画「シン・ゴジラ」と「メッセージ」のミキシングかのようなSF群像劇「正解するカド」。第5話では電力を無尽蔵に生み出すワムを受け渡すように国連から命じられた日本政府が、ワムと同じ形であれば折り紙でさえワムになり得るという事実を全世界に公表する一大プロパガンダが繰り広げられる。

世界がひっくり返る瞬間は痛快極まりなく、これから世界の変容する様が描かれると確信してドキドキしたものだ。このあと尻すぼみになったのは残念で仕方ないが、第5話が最高に面白かったのもまた事実である。

 

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脚本:待田堂子/絵コンテ:Team P.A/作画監督藤井康雄作画監督:森島範子、杉光登、川面恒介、秋山有希
矢一郎の玉蘭への告白、弁天の惨敗が描かれる納涼船合戦。京都上空に浮かぶ叡山電車で告白という摩訶不思議でセンチメンタルなシチュエーションが如何にも森見登美彦氏で大好きだ(同じく森見登美彦氏原作で今年映画化された「夜は短し歩けよ乙女」も大傑作であった)。

 

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脚本:入江信吾/コンテ:倉川英揚/演出:筑紫大介/作画監督:鍋田香代子、辻智子、阿部美佐緒、髙橋瑞紀、市原圭子、岩崎亮、福井麻記、末田晃大

バス路線の廃止が決まった限界集落の爺さん婆さん達が、失われる文化のデジタルアーカイブという継承手段を得て、果てはデマンドバスを確保する挿話。今までデジタルデバイスに親しみがなかっただろうに物覚えが良すぎる様はおとぎ話のようであるが、高齢化の進む日本社会においては目の前に起きている問題として真面目に取り組まないといかんわけである。

あと単純に絵面として、田舎と電子化社会のミスマッチが「攻殻機動隊S.A.C.」や「電脳コイル」、「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム」を想起して大変好みだ。

 

  • NEW GAME!! 第6話「ああ……すごいなあ……」

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脚本:得能正太郎/絵コンテ:おざわかずひろ/演出:守田芸成/作画監督:久保茉莉子、天﨑まなむ、板倉健、海保仁美、谷口元浩山崎淳総作画監督:菊池愛

原作者脚本回。2期は後輩との衝突や目標である先輩との別離など、もう新人とは言っていられない社会人2年目である青葉の苦難と成長を描いているが、とりわけ青葉が実力の壁にぶつかり涙する第6話は大変身につまされる。もういいおっさんなので仕事と家族の話に弱い。今年選出した作品、話数にもそんな傾向が自然と現れてしまった。

あと主演の高田憂希さんは北九州出身声優として今私が住む福岡で凱旋イベントをよくやってくれる元気っ娘なので推したいというのはとても個人的な感想である。

 

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脚本:ふでやすかずゆき/絵コンテ:柳沼良和/演出:松浦直紀/作画監督:長尾祐希子
木の上からにゅるっと現れるリリィの笑顔に胸を撃ち抜かれた。夢中で遊んでたら朝5時になってた、というMMO RPGに初めて触れた頃のあるあるネタも胸に込みあげるものがある。

しかし「ネト充のススメ」は仕事で疲れた体に能登麻美子さんと上田麗奈さんの声がスーッと入ってくる清涼飲料水のようなゆるくて甘いラブコメだった。毎週欠かさず聴いていたタイアップラジオ番組にも大変楽しませてもらった。

 

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脚本:井上美緒/絵コンテ・演出:京極尚彦/CGディレクター:茂木邦夫
松本憲生氏の作画をCGでトレースしたことでも話題になったアンターク篇後編。異形になり、それでもアンタークを追いすがるフォス、そして演じる黒沢ともよさんの芝居には息を止めて見入ってしまう。この静謐で美しくも儚い、宝石たちによる遥か未来の物語には今年1番夢中になった。

 

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脚本:三輪清宗/絵コンテ・演出:伍柏輸/作画監督:伍柏輸・浜友里恵・りお
歪む空間、唸る轟音、天高く伸びる爆発光。空間認識能力の限界をはるか飛び超えて描かれる対アタランテ、カルナ戦はまさに超人たるサーバントならではのもの。シリーズを通して戦闘描写に定評のあるApocryphaだが、伍柏輸氏の手掛けた22話は出色の出来。動いてなんぼであるアニメーションの真髄をここに見た。NARUTO 133話にも匹敵する伝説として後世語り継がれることだろう。

 

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脚本:加茂靖子/絵コンテ・演出:佐々木美和/作画監督:長谷部敦志、横屋健太、藤田しげる、林祐己、佐々木美和/総作画監督川元利浩
授業参観に来てくれないのかとひがむ子供に対し、VRメガネで作戦行動に務めつつ授業参観に出席するK・Kのクレイジーな母の愛情が重くて尊い。K・Kと、それを演じる折笠愛さんにはママオブザイヤーを与えたい。

松本理恵監督のはずれた2期には物足りなさを感じることも少なくなかったが、それでもやはりこういう回を見るとBONESの地力の高さを感じる。

 

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脚本:末満健一/絵コンテ・演出:板津匡覧/作画監督:名倉智史、奥野治男、折井一雅、千葉崇洋、本田真之
多々良の瞳に映る千夏。いつ訪れるかも知れないと思った2人が1つになる瞬間がついに訪れた。コミックス既刊9巻では未だ描かれていない試合の行方には泣いた。原作漫画の濃密な作画をどう料理するのかと放送前は心配で仕方なかったものだが、想像を超える熱く丁寧な演出にはシリーズ全編を通して感心しきりだった。

ボールルームへようこそ」は今年1番の、誰にでもオススメしたいアニメ。Amazonプライム会員は全話無料なのでこんなとこ読んでるぐらいなら見てほしい。原恵一氏参加の11話、米林宏昌氏参加の21話もおすすめだ。