ユウキズ・ダイアリー

アニメ・映画・ゲームについての雑記

話数単位で選ぶ、2022年TVアニメ10選

絵コンテ・演出:高橋 賢 / 総作画監督補佐:坂東美佳、佐藤美幸 / 作画監督佐藤哲人、藤原将吾、緒方美枝子、秋山幸児、茂木貴之、塩島由佳、永森雅人、外崎春雄

後半のアクションシーンはHDDが擦り切れるまで見た。

 

  • 『その着せ替え人形は恋をする』#8「逆光、おすすめです」

脚本:冨田頼子 / 絵コンテ:川上雄介 / 演出:川上雄介 / 作画監督:小林恵祐

突然の彼氏彼女の事情みにしびれた。

 

脚本:中西やすひろ / 絵コンテ:渡部穏寛、畠山守 / 演出:菊池貴行 / 総作画監督:針場裕子、田中紀衣 / 作画監督:横山穂乃花、斉藤準一、世良コータ

EDのラップに仰天。

 

  • 『ワンピース』第1015話「麦わらのルフィ 海賊王になる男」

脚本:山崎亮 / 演出:石谷恵 / 作画監督:森佳祐、伊藤公崇、小島崇史、山本拓美

石谷牛乳劇場再び。FILM REDに負けていないというか、もはや超えてるのでは。

 

脚本:瀬古浩司/ 絵コンテ・演出:矢嶋哲生作画監督:西谷泰史

1話限りの作画回。校舎全体を駆使した立体的な演出が見事。

 

  • 『ぼっち・ざ・ろっく!』#7「君の家まで」

脚本:吉田恵里香 / 絵コンテ:アマタジャンチキ / 演出:篠原啓輔 / 作画監督:けろりら、Park Se Young、 石田一将、川妻智美

8話、12話を挙げる人が多そうだが、最もトンチキな7話を推したい。『その着せ替え人形は恋をする』もそうだが、Clover Worksにはカレカノ好きが潜伏してるのだろうか。

 

脚本:立川譲 / 絵コンテ・演出・作画監督:伍柏諭

モブサイコ100のアクション回ではお馴染みの伍柏諭の、まさかの日常回。イマジネーション溢れる異星描写に脱帽。

 

【BUMP-BOO-CRUSADERS】脚本:ジャブ林 / 監督・絵コンテ・演出:篠原ぱらこ / キャラクターデザイン・作画監督:伊藤憲子 / 美術監督:中村千恵子 / 制作:コントレール

片渕須直監督率いるコントレール制作アニメが地上波の、しかもポプテピピック内で見れるとは。90年代アニメの再現度に舌を巻いたが、その後90年代の面影をふりきった『THE FIRST SLAM DUNK』が上映されたことでこのエピソードがより際立ったように思う。

 

脚本:大河内一楼 / 絵コンテ:金澤洪充、綿田慎也、小林 寛 / 演出:倉富康平、綿田慎也 / 作画監督:菱沼義仁、戸部敦夫、丸山修二、宍戸久美子 / 作画監督協力:飯野利明

沖浦啓之が原画に参加! ミオリネがスレッタを追うシーンだろうか。

 

脚本・絵コンテ:山本裕介/演出:重原克也/作画監督:牧茶、髙橋瑞紀、松尾祐輔総作画監督松尾祐輔

長く続いたシリーズのおそらく最大のクライマックス。高山病にかかった苦しい富士山登頂を重ねながら見た。カトキハジメコンテ回の4話アバンや、松本憲生の5話Aパート1人原画、吉成鋼の各話別EDなど、シリーズ通して見どころが多かった。

 

年始から『鬼滅の刃 遊郭編』を見せられてもう今年はこれを超えるアニメに出会えないんじゃないかと危惧していたが、年間を通して豊作で、特に10月開始クールが傑作揃い。10作選ぶのに非常に苦慮した。

顕著なのがClover Worksの躍進だろう。脅威のクオリティを見せつけた『明日ちゃんのセーラー服』『その着せ替え人形は恋をする』の連続放送にとどまらず、今年最大の話題作『SPY× FAMILY』をWIT STUDIOと共同制作し(主に偶数話を担当)、とどめに『ぼっち・ざ・ろっく!』である。2023年も最注目のスタジオであることは間違いないだろう。

 

 

2022年映画ベスト10

  1. NOPE
  2. トップガン・マーヴェリック
  3. RRR
  4. すずめの戸締まり
  5. GのレコンギスタⅣ 激闘に叫ぶ愛
  6. THE FIRST SLAM DUNK
  7. 犬王
  8. ゴーストバスターズ/アフターライフ
  9. ザ・バットマン
  10. さかなのこ

今年見た新作映画(映画館&配信)は64本、旧作映画(映画館&配信&地上波)は52本。例年通り海外SF、国内アニメ多めの観賞履歴から選んだベスト10は上記の通り。正直ベスト5は順不同と言いたいくらいの、傑作揃いの1年だった。

観賞時にフィルマークスに記載した感想を一部修正のうえ転記しておく。

 

  • NOPE

父親が死んで落ち目の牧場を切り盛りする兄妹。馬を売って生計を立てるギリギリの暮らしの中、ある夜UFOらしきものを目撃したのをきっかけに更なる事件が…。
という導入こそ『ET』でも始まりそうな宇宙人SFだか、そこは『ゲットアウト』のジョーダン・ピール監督なので一筋縄ではいかない。
変遷する映画ジャンルに翻弄されていくうちにそもそも映画とは何か、というメタ的なことまで考えさせられる。最終的にはなんだろう…カウボーイ映画を見た気にさせられた。

ジョーダン監督に対しては「テーマ性をはらんだホラー映画の人」というカテゴライズをしてたのだが、今回『インターステラー』『TENET』のホイテ・ヴァン・ホイテマ撮影監督と組んだことで一気に映像がグレードアップ。一線級のエンタメ映画が撮れる人として認識を改めた。

まあ小難しいこと考えずに、すごい役者が広大な舞台でめちゃくちゃな目に遭う映像は面白いだろ!という映画の原初的な快感が味わえる映画だ。

 

映画とは映像の発明の歴史でもあると思うのだが、今回は久々に歴史の更新に立ち会えた。

ストーリーは、トム演じるマーヴェリックがトップガンに帰還し、高難度ミッションに取り組むという実にシンプルなもの。とはいえ前作のしこりの解消やオマージュをきっちりやっていて、前作を見てる人は嬉しいし、今回からの人でも十分わかる作り。

なんといってもすごいのが空戦シーンで、前作はトムキャットに乗ってるように見えるだけの演出だったのに対し、今作は本当に乗っている! 見せかけではなく、実景だからこその迫力がとてつもない。列車が走るだけで観客が飛び上がったという最初期の映画の衝撃が分かった気がする。

 

  • RRR

英国植民地時代のインドを舞台に、英国政府要人にさらわれた妹を救い出そうとするビームと、英国政府に認められ成り上がろうとする警察官ラーマ。
身分を隠して出会った2人の間に熱い友情が芽生えるが、お互いが責務を果たそうとしたために絆が引き裂かれ…という愛と友情と炎と水と熱血と筋肉の物語。

バーフバリゆずりの想像を超えるアクションの連続に血がたぎりっぱなし。今回はバイクを駆使するし、何と言っても最強の乗り物「肩車」には舌を巻いた。
3時間に及ぶ上映時間ながら、冗長に感じるシーンは一切なかった。インド映画ならではのダンスシーンはあるが、劇中で披露されるのは1シーンだけ。唐突感もないのでインド映画見慣れてない人でも見やすいだろう。

血の気の多い映画ではあるが、ブロマンスなシーンも多いので男女問わず楽しめると思う。

 

  • すずめの戸締まり

今回大きな挑戦だと感じたのが、公開前から謳われていた「ロードムービー」であるという点。新海誠監督は以前にも、地下世界アガルタを女の子が冒険する『星を追う子ども』でロードムービーに挑戦したのだが、興行収入も作品評価も芳しいものではなかった。演出や絵面にジブリ作品のイメージが色濃く出ており、そこに当時の新海誠の内面そのままを描いたようなひっ迫感・焦りが融合して、死の影が常に付きまとう暗い作品になってしまっていた。

11年ぶりのロードムービーとなった今作は、天真爛漫な女子高生を主人公に据え、相棒は椅子である。物語には暗い側面もあるのだが、主人公2人のキャラクター性はもちろん、旅先で出会う個性あふれる面々の放つエネルギーが凄まじく、死の影を跳ねのけていた。

過去2作と違い直接的に特定の災害に触れている点は、新海監督なりの覚悟と自信と受け取り好感を覚えたが、多少なりとも反発は免れないだろう。

 

各媒体に掲載されていたインタビュー記事から新規カットが非常に多いという情報を得ていたので全5部作の中で最も期待していた本作だが……あまりの出来に思わず感涙させられてしまった。
80歳にもなる富野由悠季監督のフィルムだからというのは超えて、ロボットアニメとしてべらぼうに面白いのだ。

『Gのレコギスタ』といえばTV版放映時によく言われるのが「わかりづらい」という点。『GのレコンギスタⅣ』はⅢまでと同様にわかりやすく編集されているのだが、新規カットが圧倒的に多いのが特徴だ。
今回描かれるビーナス・グロゥブ編(TV版19~22話)はくわの終着点の割に「何を得られたのかがわからない」「敵であるジット団の魅力がもうひとつ」という点が弱点だった。
本作ではラ・グー総裁とのやり取りの大幅増量し、戦闘シーンの尺を伸ばして各団員の魅力をアップすることで弱点が完全にカバーされていた。

ただそれだけでなく、映画のラスト20分を完全新規の戦闘シーンに描き換えられていたことが大きな衝撃だった。
ラストに長尺の戦闘シーンがあるのはシンプルに嬉しい。ただそれ以上に、この戦闘ひとつでGレコに足りなかった様々なピースが埋まった気がする。Gセルフの本当の強さやカシーバ・ミコシという舞台設定の見事さ、ベルリとマスクのライバル関係、マニィがマスクを想う強さ、など。

カシーバ・ミコシ戦は富野作品、ひいてはロボットアニメ史上最高峰の戦闘シーンとして今後も語り継がれることだろう。この第4部のために、劇場版5部作は作られたと言っても過言ではない。

 

来年は年始から春にかけて、『バビロン』『アントマン&ワスプ クワントマニア』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVol.3』と続いて、夏にはいよいよ宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』が待っている。2023年も多くの傑作映画に出会えることを祈るばかりだ。

 

 

『すずめの戸締まり』試写会レビュー ―新海誠の挑戦と覚悟

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明日11月11日から公開される新海誠監督の新作映画『すずめの戸締まり』を、一足早く完成披露試写会にて見させてもらった。公開前なので極力ネタバレを避けつつ、魅力を伝えたいと思う。

 

  • あらすじ

宮崎に住む女子高生・すずめが、廃墟にたたずむ謎の扉を発見し、これを開けたことで災いが発生してしまう。扉を探していた青年・草太と協力してなんとか扉を封じるも、中から出てきた謎の猫・ダイジンの力で草太は椅子に変身させられてしまう。
各地の扉を閉め、そして元の姿に戻るため、2人は旅に出る……というのが物語のはじまり。

 

今回大きな挑戦だと感じたのが、公開前から謳われていた「ロードムービー」であるという点。新海誠監督は過去にも、地下世界アガルタを女の子が冒険する『星を追う子ども』でロードムービーに挑戦したのだが、興行収入も作品評価も芳しいものではなかった。演出や絵面にジブリ作品のイメージが色濃く出ており、そこに当時の新海誠の内面そのままを描いたようなひっ迫感・焦りが融合して、死の影が常に付きまとう暗い作品になってしまっていた。

その後『言の葉の庭』で自身の得意とする「恋愛ドラマ」「誰よりも美しく描く東京」に立ち戻り、『君の名は。』『天気の子』で大成功を収めたわけだが、そこからあえて再挑戦するところにロマンを感じざるを得ない。

11年ぶりのロードムービーとなった今作は、天真爛漫な女子高生を主人公に据え、相棒は椅子である。物語には暗い側面もあるのだが、主人公2人のキャラクター性はもちろん、旅先で出会う個性あふれる面々の放つエネルギーが凄まじく、死の影を跳ねのけてしまった。間の3作を経て、本当に人間を描くのが達者になったと感じる。

オトナになったと感じる一方で、ジブリへの目くばせを忘れないのが新海誠の茶目っ気だろうか。探さないでもわかるあまりの露骨さなので、大先輩へのリスペクトとして受け取らせてもらった。

今作は『君の名は。』後の新海誠にしか描けないロードムービーなのは間違いない。だが『星を追う子ども』の設定が下敷きになっている部分も強く感じるので(続編かどうか云々ではなく、あくまでベースとして)、『すずめの戸締まり』観賞前後にぜひ比較として見てもらいたい。やはり『星を追う子ども』なくしては描けなかったとも言えよう。

 

  • 災害映画3部作完結編としての覚悟

隕石落下という架空の災害を描写することで東日本大震災への願いをも描いた『君の名は。』、度重なる水害を受けて描かれた『天気の子』と、直近2作はSF要素を色濃く交えながら「日本と災害」を描いてきた。そこに続く今作は、当初の触れ込みだと「扉を閉める」という何のことやらイメージしづらいものだったのだが、蓋を開けてみると今回も災害映画だった。オフィシャル情報として宣伝はされてないので言明は避けるが、公開されている冒頭映像を見れば勘づくことだろう。

今作では過去作とは違い、直接的に特定の災害に触れており、そこは新海監督なりの覚悟と自信を強く感じた。生半可な気持ちで描いては、バッシングされ兼ねないからだ。

公開され、世間の評価に接するのはこれからなのでどういった受け止められ方をするのかまだわからないが、試写会の帰りに「当事そこにいたから覚えてるけど、星が綺麗だったんだよね」という声が聞こえてきたので、少なくとも当事者には届く作品になったのだろう。当事者以外にも、きっと響く作品になっているはずだ。

 

  • まとめ

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明日から公開の『すずめの戸締まり』は、今までにない挑戦と覚悟を感じる、まさに新海誠監督の集大成といえる作品に仕上がっていた。試写会で見たとはいえ、すでに2度3度と見返したくなっている。

この傑作は是非劇場での観賞をおすすめしたい。きっと日本に住むすべての人が感動を覚えるはずだ。

 

【関連記事】

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今期アニメはこの3本―2022年秋クール

今期は注目作が多いので書くまでもない気もしつつ、新作アニメをだいたい全部見たのでオススメ作を書いておく。

 

機動戦士ガンダム 水星の魔女

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既に話題沸騰中な『機動戦士ガンダム 水星の魔女』はやはり推しておきたい。『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』以来5年ぶりのTVシリーズ向け新作ガンダム

監督は『ひそねとまそたん』、Netflixスプリガン』の小林寛。ガンダムは元よりロボものはほぼ初挑戦なので多少不安はあったが、小林監督なりの固定観念のない誠実さが、フィルムに良い影響を与えてるように思う。

シリーズ構成・脚本は、かつて富野由悠季の元で『OVERMAN キングゲイナー』を作り出し、『コードギアス 反逆のルルーシュ』で人気を博した大河内一楼。富野への理解を持ちつつ、ジュブナイルを得意とする氏の脚本と、小林監督のフレッシュさから生まれる化学反応に期待したい。

g-witch.net

 

チェンソーマン

今期はジャンプアニメ、というか集英社アニメ攻勢がとにかくすごい。9~10月放送開始の新番組だけで、『ゴールデンカムイ』『後宮の烏』『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』『BLEACH 千年血戦篇』『僕のヒーローアカデミア』『ロマンティック・キラー』の計9本である。注目作はまだまだ控えており今後も目が離せないのだが、やはり最注目なのが『チェンソーマン』。

監督の中山竜、OPの絵コンテ・演出を手掛けた山下清悟は『呪術廻戦』をはじめ多数のアクションアニメで腕を鳴らすスーパーアニメーター。第1話から度肝を抜かれたが、今後もアクション面は十分期待できそうだ。

chainsawman.dog

 

Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-

3本目は迷いに迷ったのだが『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』で。

キャラクターデザインは『ヤマノススメ』の松尾祐輔。少ない影塗と線でちゃきちゃき動くキャラクター芝居がたまらない。水彩調の美術と相まって非常に『フリクリ』っぽいルックが大変好み。
今期は今作はじめ、『ぼっち・ざ・ろっく』『アキバ冥途戦争』と只者でない美少女アニメが多い。放送が一歩遅れるが、10月末スタートの『アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】』も注目しておきたい。

diy-anime.com

『Gのレコンギスタ』のポスターを額装するとQOLが上がる

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先日、映画『GのレコンギスタV 死線を越えて』のスタッフトーク付き上映会に参加した。演出・吉沢俊一氏による「GレコⅣには多数の没シーンがあった」というトークは大変刺激的だったのでぜひ下記レポートを読んでもらいたいところだが、

富野監督「このシーンは切る」の真相は!?『G-レコ』スタッフトーク - AV Watch

それはそれとして上映会の最後にチケットの座席番号を元にしたプレゼント抽選が行われ、まさかの吉沢氏のサイン入りポスターを当ててしまった。

ポスターの類はいつも死蔵してしまうのだが、せっかくのもらいものなので額装してみることにした。

 

ポスターフレームについて調べてみるとサイズが何種類もあるようなので、ポスターの横サイズを測ってみたところ51cm……ということでB2サイズと特定。ヨドバシでビューティーパネルB-2(ブラック)を購入してみた。Amazonでの取り扱いはないが近い商品はこのあたりだろうか。

 

 

そして額装したのがこちら。細部まで描き込まれた桑名郁朗氏の美麗イラストに見惚れてしまう。吉沢氏からのさりげないメッセージ「元気のG‼︎」も嬉しい。

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大きさ比較用にパンフレット、Blu-rayディスクパッケージとも並べてみる。

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これだけ巨大なGレコの美麗イラストが自宅にある、というだけでQOL爆増は間違いなさそうだ。

バンダイナムコフィルムワークスさんは商売っ気出して映画ポスターとかポストカードをプレミアムバンダイするべきですよ!

 

yuki222.hateblo.jp

富野由悠季の集大成『GのレコンギスタⅤ 死線を越えて』

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富野由悠季総監督による「Gのレコンギスタ」シリーズ完結編『Gのレコンギスタ死線を越えて』が公開された。圧巻の映像は身じろぎせず見入ってしまうもので、これぞ富野由悠季氏の集大成と呼ぶにふさわしい映画となっていた。TV版は「ドタバタロボット活劇」という言い方しか出来なかったGレコだが、劇場版として再編集されたことで「テクノロジーへの警鐘」「愛こそが生きていくのに必要なもの」というテーマを明確に受け取れる映像に大きく進化していたのだ。

 

イデオン 発動編』を彷彿とさせる破滅的戦場描写

劇場版「Gのレコンギスタ」シリーズは、事前のアナウンスから「TV版からの変化は最小限」「第4部のみ大きくテコ入れ」と聞いており、確かに第4部の変化は目を見張るものだった。

『GのレコンギスタⅣ 激闘に叫ぶ愛』が新規戦闘シーン追加というタブー破りをした理由 - ゲーマーズライフ

そのためテレビ版最終23話から最終話(26話)までを編集した今作第5部のバトルシーンには過度な期待はしていなかったのだが、息継ぎもできないバトルの連続は圧巻という他ないものだった。1つの大きな戦闘を局面を変えながら描くという構成は、富野作品としては『イデオン 発動編』以来だろうか。テレビ版とほとんど変わらないはずなのに、一連の戦闘と見ることで、複数の陣営による混戦がすっとわかりやすいものになっていた。

兵器の性能に溺れ、次々と命を落としていくキャラクターの末路もやはり『イデオン 発動編』そのもの。イデオンに限らず富野氏が繰り返し描いてきた「テクノロジーへの警鐘」、直近のインタビュー記事から言葉を借りるなら「ポスト資本主義」を強く感じるものだった。

映像の力はもちろんだが、ロシアのウクライナ侵攻に揺れ、エネルギー不足、急激なインフレに苦しむ2022年だからこそ、このメッセージからより強い危機感を感じてしまう。テレビ版『Gのレコンギスタ』が放送されたのは2014年だというのに! 富野由悠季の先見の明には驚かされるばかりだ。

 

『劇場版Zガンダム』を思い起こす人間模様

ドラマパートについても、エピローグを除けば大きな追加シーンはない。ないにも関わらず、テレビ版と同じシーンでも全く違う印象を抱いてしまうのがこの映画の一番のマジックだ。劇場版Gレコシリーズではこれまでの4作に渡り、キャラクターの関係性を掘り下げるシーン追加によって

「ベルリは人並みに苦しむ、思春期まっさかり鈍感男子」

アイーダはがんじがらめの責任感を乗り越え、覚悟を決めた未来のリーダー」

「ノレドのベルリへの愛情はんぱない」

といったことが見えてきた。既に掘り下げが完了したところからスタートする本作では、余計なシーンを足さずとも、声をあてる演者側も、受け取る我々観客側も、テレビ版と違う気分で接することができるようになったということだろう。徐々にキャラクターの心象を方向修正し、「愛」をテーマにテレビ版からガラッとエンディングを変更した『劇場版Zガンダム』と同じ手法が用いられたように思える。

 

ターンエーガンダム』なエピローグ

そうした方向修正が帰結するのがエピローグパートだ。エピローグでは複数のシーン・セリフが追加されたことで、各キャラクターに抱く印象が大きく変わるものになっているのだが、4部までの掘り下げがあるからこそ唐突に感じることはなかった。

ラストシーンについては、以前のインタビュー記事から予想していたものから大きく異なるものではなかったが、予想を超える演出には唸らされた。『ターンエーガンダム』が重なる描写にグッと来るし、なんなら勝手に『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』さえ重ねてしまった。ただこれらが「閉じる」終わり方だったのに対し、Gレコは「開いた」終わり方。ターンエーから20年経って、未来のある終わりを提示してくれたGレコには嬉しさを覚える。

ガンダムエース」誌面にて2010年10月に公開されたプロローグ小説『はじめたいキャピタルGの物語』からはや12年。2014年のテレビ版で完結と思いきや、2019年から劇場版が始まり、併せて「富野由悠季の世界」展も開催。このところ供給過多に嬉しい悲鳴をあげる毎日だったが、ついに終わりを迎えてしまった。

終わるのは寂しいけれど、こんなに前向きな劇場版を見せてくれたのだ。晩年を賭して、最高の作品を最後まで描き切ってくれた富野由悠季総監督には大きな感謝と、敬意を表したい。受け取ったメッセージを大事にして、これからは自分と、社会を豊かにすることを考えて生きていこうと思う。

 

Gのレコンギスタ死線を越えて』は全国劇場にて絶賛公開中。前作『GのレコンギスタⅣ 激闘に叫ぶ愛』も引き続き公開中だ。

 


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『GのレコンギスタⅣ 激闘に叫ぶ愛』が新規戦闘シーン追加というタブー破りをした理由

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劇場版「Gのレコンギスタ」シリーズ最新作『GのレコンギスタⅣ 激闘に叫ぶ愛』が公開された。各媒体に掲載されていたインタビュー記事から新規カットが非常に多いという情報を得ていたので全5部作の中で最も期待していたのだが……あまりの出来に思わず感涙させられてしまった。80歳にもなる富野由悠季監督のフィルムだからというのは超えて、ロボットアニメとしてべらぼうに面白いのだ。

とはいえ気になったのは「新規戦闘シーンをそこに入れるの!?」という点。劇場で2回観賞し、TV版該当話数もBDで見直したうえで考察してみる。観賞前の方はネタバレ注意。

 

これまでの劇場版Gレコ

2014年~2015年に放映されたTVシリーズGのレコンギスタ』を編集し、映画化したのが劇場版「Gのレコンギスタ」シリーズだ。2019年公開の『GのレコンギスタⅠ 行け!コアファイター』を皮切りに現在第4部まで公開されており、最終作となる第5部も、早くも来週8月5日に公開を控えている。

『Gのレコギスタ』といえばよく言われるのが「わかりづらい」という点。富野監督自身も自覚しているのか、劇場版ではドラマパートを中心にセリフの修正や新規カットが追加されたことでキャラクターの心情が捉えやすくなっている。メインキャラクターであるベルリ、アイーダ、ノレドの描写が特に手厚くカバーされたことで、群集劇然としていたTV版よりも、3人のジュブナイルストーリーとして親しみをもって見ることができる。

また戦闘シーンについては新規カットの追加はほとんど無いものの、主にGセルフが密度のある映画映えするビジュアルに描き換えられており、かっこいい主人公機としてTV版以上に印象的になっている。

各作品についての詳細はこれまで書いてきたレビュー記事を参照してもらいたい。

関東最速上映レビュー 劇場版『ガンダム GのレコンギスタI』はわかりやすくなった再演版!? - ゲーマーズライフ

元気のGは幾千年の未来から 『GのレコンギスタⅠ』「行け! コア・ファイター」 - ゲーマーズライフ

富野由悠季の目にも涙――『GのレコンギスタⅠ』「飛べ! コア・ファイター」女の力Dayレポ - ゲーマーズライフ

『GのレコンギスタⅡ』「ベルリ撃進」公開初日レビュー - ゲーマーズライフ

疾風怒濤の勢いは逆シャアレベル!『GのレコンギスタⅢ 宇宙からの遺産』がTV版より面白い理由 - ゲーマーズライフ

 

新規カット増し増しのGレコⅣ

GのレコンギスタⅣ』も基本的には前項の通りなのだが、大きく違うのが新規カットの量が第3部までと比べ圧倒的に多いこと。今回描かれるビーナス・グロゥブ編(TV版19~22話)は、旅の終着点の割に「何を得られたのかがわからない」「敵であるジット団の魅力がもうひとつ」という、Gレコの明らかな弱点。新規カットが多いという事前情報は納得できるもので、ジット団の戦闘シーンが大増量に違いないと確信していた。

いざ見てみると「何を得たのか」についてはラ・グー総裁とのやり取りの大幅増量で納得いくものになっていた。詳細はここには書かないでおくが、GレコのSF作品的魅力を増すものになったと思う。

「ジット団との戦闘」についても、戦闘シーンの尺を伸ばして各団員の魅力はアップしたように思う。とはいえ事前に聞いていたほど新規カットは多くなかったので若干の肩透かしを食らってしまった。

このまま終幕なのか、と心配したところ最後に爆弾が控えていた。なんと映画のラスト20分が完全新規の戦闘シーンに描き換えられていたのだ。これまでのGレコ、いや初代ガンダムZガンダムまで振り返っても、劇場版になって「映像が綺麗な作画に/かっこいい演出に描き換えられる」というのはあったが、全く別の戦闘シーンに置き換わるというのは今までなかったこと。

一応映画ラストに該当するのはTV版22話「地球圏再会」。TV版では5分にも満たない小競り合いが描かれてはいたが、GレコⅣで描かれたのはカシーバ・ミコシ周辺宙域でのMS同士の大戦争Gセルフのパーフェクトパックのお披露目とベッカー隊との衝突だけは符合するが、あとは全く規模の違うものへと大進化した。

新しいものが見れるのは嬉しいが、ジット団絡みではなくどうしてこのパートにこんなに力を……?と考えさせられるものだった。

新規戦闘シーンの一部はYouTubeでも公開されているので見てもらいたい。


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「地球圏再会」に新規戦闘シーンを追加した理由

複数回見てわかってきたのだが、「地球圏再会」パートに新規戦闘シーンを追加するというのは非常に合理的な選択だ。映画の最後に長尺の戦闘シーンがあるのは楽しい、というシンプルな理由は第一にあるのだが、それ以上にここでカシーバ・ミコシ戦を行うことでGレコに足りなかった様々なピースが埋まるのだ。以下に思いついたものを列挙してみる。

  • Gセルフパーフェクトパックが実は鬼強いということが明らかになる
  • ひいてはビーナス・グロゥブの技術やばすぎるというのを実感する
  • ベルリかわいそう、からの支えてくれるノレドとラライヤの重要性に気付かされる
  • ベルリとマスクのライバル関係が補強される
  • マスクが機体を乗り換える理由が補強される
  • マニィの脱走劇、マスクとの再会が劇的に感動的なものになる
  • Gアルケインの変形モードがようやくお披露目される
  • カシーバ・ミコシが舞台装置になることで奇抜で荘厳な形状が実感できるものになる

特にカシーバ・ミコシについては、TV版でも異様だった形状が劇場版で更にグレードアップして3倍ほどの大きさに成長している。第3部の時点では変更の意図がわからなかったが、本作を見て納得した。新バージョンでないとここまで魅力的な戦闘の舞台とはならなかっただろう。ア・バオア・クーアクシズに並ぶ名舞台として、今後もガンダムを題材としたゲームなどで引っ張りだこになるのは間違いない。

 

GのレコンギスタⅣ』のためにあった劇場版Gレコ

7月24日に行われた舞台挨拶では監督自身「後半20分観て『やっぱりトミノはスゴいよな』と思いました」と発言していたが、全くその通りだ。カシーバ・ミコシ戦は富野作品、ひいてはロボットアニメ史上最高峰の戦闘シーンとして今後も語り継がれることだろう。この第4部のために、劇場版5部作は作られたと言っても過言ではない。

残る第5部公開が迫っているため、残念ながらこの傑作『GのレコンギスタⅣ』の公開期間は2週間しかない。ぜひ劇場で、より多くの人にこの事件を目撃してもらいたい。


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