ユウキズ・ダイアリー

アニメ・映画・ゲームについての雑記

Switch『GO VACATION』で一足早い夏休み

暑すぎて外に出ると溶けるので最近はもっぱらクーラーの効いた部屋で避暑地に行っている。……もちろんゲームの話だ。

 

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GO VACATIONゴーバケーション)』は元々Wii用として2011年に発売されたタイトルだが、今年7月27日、欧米向けにNintendo Switch用タイトルとしてアップグレード要素を引っさげて移植版が発売された。Wii版がお気に入りだったため、今回無理して海外版を購入して一足早くプレイしている。海外版とはいえなぜか日本語が完全収録されているのでプレイするうえでの言語的ハードルは全くない。

※ちなみに私は、海外の任天堂アカウントを作成→PayPalアカウントを作成→プレイアジアで海外版ニンテンドープリペイドカードを購入(PayPal支払い)→それを使って海外任天堂アカウントからeshopで購入、という無理をしている。通販で輸入版を購入すればもっと楽だろう。

 

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このゲームのウリは4つのリゾート地で50種類以上のスポーツ/バラエティゲームを遊べるという点だ。マウンテン、マリン、シティ、スノーと名付けられた景観に富んだリゾート地で、各地に配置されたゲームを好きな順番で気の向くままにプレイしていく。

移植にあたっての追加要素として特筆すべきは、SD画質からHD画質に映像がぐっとグレードアップしたことだろうか。Wii版はハード固有の画質の低さがネックだったので当然とはいえ嬉しいところ。他にも動物の撮影、釣り、ゆるいオンライン要素(他人のゴーストとタイムアタックできる)、ローカル通信プレイなども追加されている。もちろんSwitchならではの携帯モードやHD振動スクリーンショット撮影や録画にも対応している。

 

ただ遊ぶにつれ気になるのは、Wii版では驚かされたはずのリゾート地の広さに、もはや驚きを感じなくなってしまったこと。実際には狭くなっているわけではないのだが、ゼルダの伝説BotW』や『マリオオデッセイ』、『ゼノブレイド2』などに触れて、任天堂ハードでも広いフィールドが当然と思うようになってしまったためだろう。すでに一度マップを踏破しているから、というのも理由に数えられるだだろうが。

そうすると残る特徴は多種多様なスポーツゲームなのだが、残念なことにいずれも底が浅い。ボリュームがあるとはいえ、難易度は一様に低く、成長要素はなく、ライバルもいなければテクニックも必要ない。逆に言えば初めてゲームを触る人とも気軽に対戦できる、という利点でもあるが、悲しいことにそんな友人は持ち合わせていない。

このゲームを長く遊べるのは、多数のゲームを一つ一つクリアできるマメな人や、ゲームのスコアに一切影響しない衣服や家具を集められるコレクター気質な人ぐらいに違いない。

 

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そんな不満を抱きつつも気がつくとリゾート地に行きたくなってしまうのは、Switchになってもオンリーワンの魅力を失わないから。JOY-CONを両手に持って成りきりながらスキーやローラーブレードでリゾート地を駆け巡る、ただそれだけが楽しい。特にスノーリゾートの「日本のスキー場っぽさ」の再現度は今なお驚くべきもの。クーラーの風を浴びながらスキー場で風になるのは快感である。

 

Wiiからの移植にあたり操作性の問題もあるが(視点移動が停止中にL1を押しながらLスティックとは…Rスティックは飾りか…)、それを除けば良移植といえるだろう。Wii版が好きだった方、気になっている方には国内版が出たらオススメしたい。 

 

子供の想像力は無限大―『未来のミライ』評

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おとうさん、おかあさん、くんちゃんの3人家族に新しく赤ん坊のミライちゃんがやってきた。けれどくんちゃんが「ミライちゃんを守る!」なんて言ってたのは最初のうちだけ。ママの関心は生まれたばかりのミライちゃんを独占し、新米育メンのパパはドジばかり、くんちゃんはストレスを爆発! 癇癪くんちゃんが家の庭に駆け出すと、そこは見たことのないお城の廃墟と、王子と名乗る変なおっさんが――。

 

ここから始まるのは過去と未来を行き来する冒険ファンタジー……ではない。くんちゃんは王子と遊んでいるうちに機嫌が直って元の家にすぐに帰り、癇癪を起こす度に不思議な庭で、女子高生姿のミライちゃんをはじめとした家族にまつわる様々な人物と交流し、成長を積み重ねていく。

観賞前こそ冒険ファンタジーものを期待していたが、それは予告映像によるミスリード。子供は何を考えているかわからない、でもあっという間に成長する、どんな家庭にもありがちな育児中あるある話から着想した小さな物語である。

くんちゃんが庭で出会う物語は夢か現か判然としない、けれどくんちゃんの中では現実となって、心の支えになっていく。これは近作を例えに出せば『夜は短し歩けよ乙女』であるし、『思い出のマーニー』だ。ただこれらに及ばないと思うのは、主人公-くんちゃんを愛し難いという点だろうか。4、5歳児程度であろうくんちゃんは当たり前だが自己中心的で子供っぽい。おそらく細田守監督の育児生活で見たままを投影したのであろう、耳が痛くなるほどわんわん騒ぐ子供の姿はリアルで酷。そんなくんちゃんは同情を呼ばないし感情移入もし辛い。

とはいえ良い大人である私たちは、くんちゃんに翻弄されながらも仕事と家庭を両立させようと奮闘するおとうさん、おかあさんの健気な姿に胸を打つ。細田守映画ならではの丁寧な芝居やダイナミックな演出もグッとくる。往年の細田守ファンなら終盤の恐怖描写に『ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』を思い出して泣くことだろう。

 

今作はこの夏を代表する大冒険映画にはなれそうにないが、決して悪い点ばかりではない。これから見に行く方は肩の力を抜いて、『ちびまる子ちゃん』や『クレヨンしんちゃん』を見るようなおおらかな大人の視点で見るべきだ。

ただ、30を超えて独身の身である私自身は、この映画のターゲットとする客層には入らなかったように思う。家庭の有無で感情の振れ幅が変わるはずだ。だから10年後にまた見てみたい。その頃にはきっと幸せな家庭を築いているに違いない、と未来を信じて……。

 

2018年上半期映画ベストは『リズと青い鳥』

2018年上半期映画ベスト10を書いてみる。範囲は今年見た2017年末~2018年6月公開の映画。

1位 リズと青い鳥

yuki222.hateblo.jp

2位 さよならの朝に約束の花をかざろう

yuki222.hateblo.jp

3位 リメンバー・ミー

巧みなシナリオに舌を巻いた。泣いた。

4位 スリー・ビルボード

フランシス・マクドーマンドサム・ロックウェルの演技に震える。

5位 ブラックパンサー

アフリカンなビートに溢れるヒーロー映画。鳴り物を多用した曲と、ひねりの効いた脚本、強くて良い女。完璧。監督は31歳。驚異。

6位 ブリグズビー・ベア

7位 恋は雨上がりのように

小松菜奈から目が離せない。

8位 勝手にふるえてろ

松岡茉優から目が離せない。

9位 GODZIILA 決戦機動増殖都市

眠たい画が続くのは前作ゆずりだが、前作では意図不明だった異星人の配置がようやく機能して後半のドラマには熱くなった。
メカゴジラの扱いには仰天。予想を裏切り期待に応える流石の虚淵&村井さだゆき脚本。

10位 ヴァレリアン 千の惑星と救世主

 

見たリスト(36本)

 

このアニメを見ろ2018年夏

アニメは全部見るのが基本だが、とはいえ今期も視聴前に推しアニメを挙げてみる。

ちなみに前期ハマったのは『ひそねとまそたん』『シュタゲゼロ』『ウマ娘』『多田くんは恋をしない』『ガンゲイル・オンライン』。

 

sirius-the-jaeger.com

監督は伝説的アクション映画『ストレンヂア』から人情劇の『花咲くいろは』まで手がける奇才・安藤真裕氏。キャラクター原案は元カプコン西村キヌさん。制作は『ウマ娘プリティーダービー』が記憶に新しいP.A.WORKS

安藤監督久しぶりのアクション物ということで今期最も期待している。

 

www.harukana-receive.jp

今期きらら枠を映画『ベルセルク』の監督、というよりか『アイドルマスターキャラクターデザイナーとして名を馳せる窪岡俊之氏が監督。なぜ。異色の組み合わせの生む奇跡にほのかな期待。

 

  • プラネット・ウィズ

planet-with.com

漫画家・水上悟志氏のネームを元にしたオリジナルアニメ。『ユーリ on ICE』に習った形か。水上氏の漫画は未読ながら、まだまだ未知数な作り方に挑戦する姿勢に敬意を評して楽しみたい。

 

こんなところで。シリーズ物、原作物について知りたい方は他で確認を。

2018夏アニメ一覧|今期(7月放送開始)新作アニメ情報 | アニメイトタイムズ

Oculus Goで寝ながらNETFLIX

5月2日に突如Oculus Goが発売された。スタンドアローンで動く初のVRデバイスとあってはVR愛好家として黙っていられないので早速購入してみたところ、これが寝ながらにしてNETFLIXを見るのに最適だった。 

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著者近影

 

Oculus Goを触って気付かされるのがこれまで買ってきたVRデバイスの不便さだ。

Oculus RiftはPCと、PSVRPS4との接続が必須であるし、接続ケーブルの距離内でしか移動ができない。スマホのVRアプリを使うにはスマホの保護ケースを外してハコスコ規格の箱に突っ込まなくてはいけない。起動させるまでにえいやっと気合いを入れないと取り組めないので自然と使用頻度が下がっていた。 

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Go近影

それがスタンドアローンタイプのOculus Goだとどうだろうか。デバイスを被って電源ボタンを押すだけである。移動距離の制限もないのでなんなら外でも使用できる。さらにはヘッドホンも付けずに360度サラウンド音声が聴こえてくる。

アプリケーションはというと特にNETFLIXが素晴らしく、映画館並みの大画面で、寝ながらにして映画やアニメを楽しめる。これは会う人会う人に必ず言っているのだが、NETFLIXなら今期最高に面白いアニメ『ひそねとまそたん』が見ることができるので最高と言うしかない。

またYouTubeAmazonプライムビデオなどもインターネットブラウザ経由で見ることができる。

余談であるがDMMのVR動画も見ることができる。

 

もちろん全てが優れているわけではない。  PSVRなどとは異なりVR空間内で徒歩移動ができないし、外部媒体のマシンパワーが使えないのでリッチなゲーム体験はできない。ゲーム系のアプリは今のところいまひとつに感じるが、そこは安価であることを考慮すると仕方なしか。32GB版が23800円、64GB版が29800円。香港からの発送となるがなぜか送料は無料だ。

 

昨年Nintendo Switchが出た時には家庭用ゲーム機が場所を問わずに体験できるという驚きがあったが、Oculus GoはVR界にとってのSwitchのように思える。安価で手軽に触れるエントリーモデル。現在は公式サイトからしか購入できないが、販路が増えれば日本国内でもかなり受け入れられるポテンシャルがありそうだ。

 

映画『レディ・プレイヤー1』で、屋外でVRを楽しむ様を見たときにそんな未来はすぐに来るわけがない、と高を括っていたのだが。未来はあまりにも早く来てしまった。

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著者近影

 

  • 2年前に書いたVR記事 

yuki222.hateblo.jp

 

  • Oculus Go 公式サイト

www.oculus.co

 

耳をすませて、イスになって。『リズと青い鳥』

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映画『リズと青い鳥』が4月21日に公開された。幸い舞台挨拶付きの回を観賞することになったので山田尚子監督の言葉に聞き入っていると思わぬ発言が。曰く「BGMは校舎内の備品、机やイス、ビーカーなどを楽器に見立てて奏でている」「観客もイスになったつもりで見てほしい」とのこと。

ワタシハイスダ、ワタシハイスダ…。自己暗示をかけながらの奇妙な観賞体験が始まった。

 

liz-bluebird.com

リズと青い鳥』は武田綾乃さんの小説を原作としたTVアニメ『響け!ユーフォニアム』の最新作。アニメ第2期の翌年の時間軸を描いているが、黄前久美子を主人公としたTVアニメシリーズとは打って変わって、久美子の先輩に当たる鎧塚みぞれと傘木希美の2人にフォーカスしたスピンオフ作品となっている。そのためかタイトルから「響け!ユーフォニアム」の文字は廃されている。

劇中では、吹奏楽コンクール金賞を目指しながらも3年生となり受験も控えるみぞれと希美が、互いを想い、すれ違う、どこにでもあるかもしれない、けれど眩しいくらいの青春のきらめきがつぶさに描かれる。

 

観賞前に最も注目していたのがキャラクターデザインの変更だ。TVアニメ版から比べて頭身が上がり、目は小ぶりに、影やディテールの書き込みも随分シンプルになっている。こうしたキャラクターの大幅な変化といえば、『機動警察パトレイバー2 the Movie』や『機動戦艦ナデシコ The prince of darkness』、『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』などを思い出すところだが、最近の作品ではあまり見ない試み。そこには果たしてどういう意図があるのか?

ここで効いてくるのが前述の「ワタシハイス」だ。けれど自己暗示など必要もなく、BGMがいざなってくれるという手法だった。複雑でノイジー、けれど聞き馴染みのある校内備品が奏でる音色を聴いているうちに、自分自身がイスに、というよりも音の一部になって、みぞれ達をそっと校舎の隙間から覗き見ているかのような気持ちになってくる。

そうすると見えてくるのが、シンプルなキャラクターデザインの意図だ。書き込みが最小限ゆえに、ディテールではなく"しぐさ"が、セリフよりも雄弁に観客へ語りかけてくる。揺れる髪、翻るセーラー服、交差する脚、異なる歩幅、まばたき、ゆれる瞳孔、みぞれが幾度も左手でなでつける右の髪。

BGMだけではない。カメラワークはみぞれの鼻先まで迫ったと思ったら離れていき、時にはフレームアウトして表情を隠し、身体の動きばかりを追いかける。またSEも効果的で、上履きが床を踏む音さえ耳に残るようTVアニメ版から変更されている。映画を構成するすべての要素が、キャラクターのしぐさを追うために意図されている。

 

こうした山田尚子監督の演出は前回の監督作『聲の形』をはじめ様々な作品で見られてきたが、今作に見られるしぐさ―言いかえると"アニメーションキャラクターの芝居"に対するこだわりはいままでになくストイックだ。

ストイックゆえに物語上の起伏は少なく、コンクールの行方は描かれないし、セリフ量もTVアニメ版に比べて控えめ。けれどしぐさに注目するだけで、ぐっと豊かな感情が画面を踊るのが見えてくる。

 

響け!ユーフォニアム」シリーズに連なるものの、キャラクターを絞っているので本作から見ても問題ない。私小説的映画や、女性同士の共依存関係―直接的な言い方をすると"ソフトな百合"が好きな方なら、きっと忘れられない一作になるはずだ。

 

俺たちはいつも原作が先かアニメが先か悩むけれど『PERSONA5』は先にゲーム版に触れてほしい

原作を先に読む/遊ぶか、原作には触れずに映像作品を見るかといった問題をメディアミックス作品と対峙する時にはいつも悩まされる。がこと『PERSONA5』に関してはゲーム版に先に触れてほしいと『PERSONA5 the Animation』の第1話を見て感じた。

PERSONA5 the Animation』を卑下するわけではない。けれどゲームとアニメというメディアの差により、『PERSONA5』という"体験"は確実に変質する。変質により一長一短あろうが、アニメ版のそれがゲーム版を上回るかは未知数であるから、確実な感動が待っているゲーム版を私は推す。

p5a.jp

 

 

PERSONA5 the Animation』は2015年に発売されたPS3/PS4用に発売されたRPGゲーム『PERSONA5』をテレビ向けのアニメーション作品にしたもの。4月7日深夜から放送が開始された。

1話目の筋は原作の序盤通り。主人公のカジノでの逃走劇から逮捕、そして尋問を受ける形で7ヶ月前に記憶が遡り、秀尽高校への転入と竜司との出会い、異世界へ迷い込みペルソナを覚醒するまでが描かれる。

 

ゲームとアニメ、何がそんなに違うのかというと、上記内容がゲームでは数時間に渡り描かれるのに対し(記憶違いでなければ少なくとも2時間は要したはずだ)、アニメでは25分しかかからない。ゲーム本編は100時間近くのボリュームがあるが、アニメが完結してももちろんそんな長時間にはならない。仮に26話なら10.8時間。ゲーム版からわずか1/10程度に短縮されるであろう。

同じ物語なら短時間で接種できる方が効率的、という人が多いことは理解している。けれど『PERSONA5』は無駄にプレイ時間を誇っているわけではない。いち高校生の視点で1年間、仲間たちと苦楽を共にする濃い体験を積み重ねているうちに気づけば100時間経ってしまうのだ。シナリオ自体大変優れたものであることは疑う余地もないが、仲間たちに対する愛着は、長時間のプレイ時間に依るところも大きい。時間が限られるアニメというメディアが、シナリオのベースは同じであっても、駆け足で描かれる時に同じ感動を生み出すことができるだろうか。

体感時間は物語を変化させる要素であるし、これはメディアごとにどうしたって変化する。メディアミックス作品についてはそれを踏まえて、最初にどのドアを叩くか慎重に考えないといけない。どうしたって最初に触れたメディアで一番大きな感動を覚えるし、その感動が大きいに越したことはないからだ。

 

なお『PERSONA5 the Animation』の1話は非常に美麗な映像であったし、監督はゲーム版のアニメパートも監督した石浜真史氏である。アニメならではのアクションや、キャラ同士の掛け合いといった面も見えてくるであろう。アニメはアニメとして、今後の展開を楽しみにしている。

ただそれはそれとして、『PERSONA5』にこれから触れるならばゲーム版を先にプレイすることを強く推したい。