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関東最速上映レビュー 劇場版『ガンダム GのレコンギスタI』はわかりやすくなった再演版!?

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テレビ版の放映終了からはや4年。待ちに待った劇場版『ガンダム GのレコンギスタI』「行け!コアファイター」の全国公開を前に、ぴあフィルムフェスティバルにて関東最速の先行上映会が行われたのでいち早く見ることができた(世界最速上映はパリ、日本最速は福岡で行われたので3番目に甘んじてしまったが……)。

あの難解なテレビ版がどう変われるのか、と見る前こそ期待と不安が入り混じっていたのだが、わかりやすい物語に変貌した姿に驚きを隠せないのが正直な気持ちだ。

 

「わかりづらい」と言われるテレビ版Gレコ

まずテレビシリーズ『ガンダム Gのレコンギスタ』について振り返ってみる。Gのレコンギスタ…略してGレコは、『機動戦士ガンダム』の生みの親である富野由悠季氏が1999年放送の『∀ガンダム』以来、実に15年ぶりに手がけたテレビ向けガンダム作品だ(2014年放送)。

時代設定としては『機動戦士ガンダム』のいわゆる宇宙世紀の遥か未来(『∀ガンダム』の正暦より先の未来という話もあるが定かではない)、リギルドセンチュリー1014年が舞台。

主人公は、軌道エレベーター"キャピタル・タワー"を要する"キャピタル・テリトリィ"に住む少年ベルリ・ゼナム。ベルリは自衛組織"キャピタル・ガード"のタワーでの実習中にガンダム"Gセルフ"に乗る海賊部隊のアイーダ・スルガンを撃退。奪取したGセルフに乗るうちに行きがかり上アイーダと共に海賊部隊に同行することになり、自分とアイーダの出生の秘密、そして歪んだ世界の構造を知るためにキャピタル・タワーの終着駅の更に先―月の裏側に位置するスペースコロニー群"トワサンガ"、そして金星近傍の"ビーナス・グロゥブ"をやがて目指すことになる。

機動戦士ガンダム』のようないわゆる二項対立の戦争物語ではなく、貴種流離譚であり、行きて帰りし物語と言えるだろう。ただこの物語構造が見えづらいのが大きな問題だった。ベルリとアイーダの行く手を邪魔するように二項どころか四、五、六と次々出て来る新たな国家やそれらの内部組織同士が複雑な対立模様を見せ、更にそこへ富野由悠季総監督ならではな理解し難いセリフまわしが拍車をかけた結果、放送当時は「わからない」「わかりづらい」という声が大きかったように思える。

 

ようやく決まった前代未聞の五部作映画

さてそんなGレコ放映終了後、富野総監督から映画化したいとの声が上がり、待てど暮らせど形にならないのでそろそろ諦めなくてはいけないのか…と思い始めたころにようやく正式決定、そしてトントン拍子に今年11月の2週間限定上映が決定したのが今回の劇場版だ。

g-reco.net

ただしタイトルに"Ⅰ"と付いてるように、複数作にまたがるものになった。では『∀ガンダム』のように二部作なのか、『機動戦士ガンダム』や『機動戦士Zガンダム』のように三部昨かと思いきや、なんと全五部作になるとアナウンスされている。

テレビ作品を基にした映画化、というくくりでは前代未聞であろう。そんな超大作としてまとめたい監督と期待値の低い会社側の葛藤が、期間限定というイベント上映形式と上映館数の少なさに透けて見えるようである。

 

わかりやすいぞ劇場版

ではなぜそこまでして監督は五部作にこだわるのか。それは実際に見ることでようやく実感することができた。

今回の第一部で描かれるのはテレビ版1〜5話のエピソード(+6話の冒頭少し)。1話22分とすれば約110分。対する劇場版は90~100分程度。その差はおよそ10~20分しかない。短くなっているとはいえ、エピソード単位でばっさり削られてきた過去のガンダム映画に比べれば微々たるもの。残り21話分を4部作で描くのなら、今後もエピソード単位のカットはほぼ無いと見て間違いないだろう。

ではただ各話をくっつけて垂れ流しているだけかというとそんなことはなかった。なんといってもわかりやすい! 

テレビ版、特に序盤のベルリときたら天才肌という設定ゆえかつかみどころがなく飄々としており、何を考えて戦ってるのか、どういう思惑で組織間を渡り歩くのかを掴みづらかった。対するアイーダも、想い人をベルリに殺されて怒ってるのかと思えば感謝のダンスを始めたり(身体の動きで感情を表現するのがこの世界の流儀らしいと後でわかるが)、いちいち感情の振れ幅が極端でやはり捉えどころがなかった。

それが劇場版だとどうだろう。ベルリの飄々としてる様は若干鳴りを潜め、複雑な心境はモノローグで語りだしたではないか。なんといってもテレビ版4話のドニエル艦長との"お互いに答える気がない面妖な会話劇"も一度で理解できる会話内容に修正されてる! アイーダアイーダで、ダンスはやめてちゃんと怒るし、5話で突然泣き出す前にはちゃんと葛藤するシーンを挿入している。キャラクターの感情の流れが自然になっているのだ。

テレビ版視聴時に強く望んだ「富野由悠季脚本をリライトしてくれる人がいれば……」という希望が富野総監督自身の手で達成されてしまった。富野総監督は反省できてエライ!

これだけテレビ版のママであり、且つテレビ版よりわかりやすく変化を果たした本作はいわゆる総集編映画の枠に収まるものではないだろう。芝居でいう"再演"とでも呼ぶのが適切なように思うがどうだろうか。

 

テレビ版より広い世界へ

第一部の追加シーンは上記のような人物描写がメイン。目立った追加メカ描写は冒頭と、1~2話間の新規移動シーン、あとはメガファウナ内のコア・ファイターのカットぐらいだろうか。けれどGセルフに限っては大部分のシーンでより安田朗氏のデザインに沿ったものに描き直されており、安田メカ好き的には嬉しいところ。Gセルフは瞳が新たにデジタル処理もされていて、よりキャラクターとして意志を持っているように見えるのも面白い趣向だ。

とはいえ本作を絶賛するのか、と問われるとそうも言いきれない。終盤のGセルフの凛々しさとアイーダの追加シーンでほだされてちょっと泣けたのも事実だが、初見でそんな気持ちをどれだけの人が喚起できるのか。やはりテレビアニメの5話までをくっつけたものであり、映画らしい起承転結の流れを見出すのは困難だ。また比較的わかりやすくなったとはいえ、似通った専門用語の多さや登場キャラクターの多さに混乱を覚えるのは必至。"キャピタル・テリトリィ"、"キャピタル・ガード"、"キャピタル・アーミィ"なんて単語を誰でもすぐに区別できるものではない。1週ごとに1話ずつ何度も見て理解を重ねることができるテレビ版とは違い、映画が初見なら全てを把握するのはどだい無理な話だろう。TV版とほぼ同じOP映像に映画としての高揚感を感じられなかったのも残念なところだ。

ただ富野総監督の過去のインタビューでは後半に行くにつれ新規作画シーンが増える旨の発言があり、今回の上映後に行われた講演でも「第二部以降OPが変わる」「結末は同じだがそこまでは全く違うものになる」「テレビ版より広い世界を描いていると確信している」といった発言があったので、第二部以降はより映画的な仕掛けが込められることだろう。

新たに再演される物語はきっとより豊かなものに生まれ変わるはず。まずはうまいこと良いスタートを切るためにテレビ版のファンはもちろん、テレビ版でノリきれなかった人にも見てもらいたい。きっと2周目&新規カットで随分見える世界が変わるはずだ。そしてテレビ版未見の方は、わかる/わからないは気にしないで良いと思う。Gレコの一番の魅力は、他のアニメではお目にかかることのできない個性豊かなキャラクターとメカニックによる活劇だ。そこに注目してもらえば、きっと好きになってもらえるはずだ。

まずは11月29日から始まる全国公開を楽しみに待っていてほしい。

 

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