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2017年冬アニメはこれを見ろ!

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

昨年は読んで頂ける方がびっくりするほど増えたので、今年もマイペースに頑張っていきたいと思います。

とりあえず年始は今期オススメアニメから。前期推した『ユーリ!!! on ICE』は想定以上の大ヒットを記録。やっぱり新作アニメは何が起こるかわからないから、面白い。

 

tv.littlewitchacademia.jp制作はTRIGGER、監督は吉成曜氏。元は若手アニメーター育成プロジェクトアニメミライ」で上映されたアニメ作品。youtubeで公開されるや世界中で話題となり、続編映画、そして今回のTVアニメシリーズに漕ぎ着けた次第。

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昨年末から新宿駅地下で展開している広告も超絶かっこよかった。アニメミライ版が大好きなこともあり、今期で一番の期待の星だ。

youtu.be

 

  •  ACCA13区観察課

acca-anime.comオノ・ナツメ原作のアニメ化。制作はマッドハウス、監督は夏目慎吾氏。スペース・ダンディやワンパンマンといった常にハイレベルな作品を仕掛ける夏目慎吾監督の新作とあっては期待しかない。

またキャラデザは久貝典史氏、総作画監督は小田剛生氏ということでワンパンマン参加スタッフのチームワークが見どころか。

youtu.be

 

maidragon.jpクール教信者原作のアニメ化。制作は京都アニメーション、監督は武本康弘京アニのコメディ枠ということで『甘城ブリリアントパーク』みたいなノリだろうか。

とりあえず京アニの新作だから、見ろ!

youtu.be

 

話数単位で選ぶ、2016年TVアニメ10選

年の瀬なので話数単位で選ぶ、2016年TVアニメ10選に参加してみる。

2013年版

2015年版

ルール
・2016年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。

  •  10選結果

この素晴らしい世界に祝福を!』 第9話「この素晴らしい店に祝福を!」

『Go! プリンセスプリキュア』 第48話「迫る絶望…!絶体絶命のプリンセス!」

甲鉄城のカバネリ』 第2話「明けぬ夜」

『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』 第24話「君はまだ歌えるか」

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』 第16話「「狩り」に行こう!」

Re:ゼロから始める異世界生活』 第18話「ゼロから」

モブサイコ100』 第5話「OCHIMUSHA ~超能力と僕~」

『ガーリッシュナンバー』 第2話「天狗な千歳と声なき悲鳴」

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』 第32話「友よ」

『響け! ユーフォニアム2』 第10話「放課後オブリガード」

 

  • 各話コメント

この素晴らしい世界に祝福を!』 第9話「この素晴らしい店に祝福を!」 

脚本:朱白あおい 絵コンテ:亜嵐墨石 演出:久保太郎 作画監督:木下ゆうき、清水勝祐、中澤勇一

ファンタジー世界における性欲発散方法に店舗型サキュバス派遣という解を見出した第9話。萌えアニメにありがちな記号的エロを一切排除し、ヒロイン勢がノーブラである事が明白となる重力感のある着衣パイ描写から始まり、三石琴乃サキュバスの色気、そして背中洗いをカズマに強要される抗えない一糸まとわぬダクネスまで、直球のどエロが徹頭徹尾描かれる。深夜アニメの底力を見せられた感動の1作。

 

『Go! プリンセスプリキュア』 第48話「迫る絶望…!絶体絶命のプリンセス!」

脚本:香村純子 絵コンテ:佐々木憲世 演出:岩井隆央 作画監督:渡邊巧大

人間であるはずのゆいちゃんが自力で絶望の檻から脱出する精神力の強さを見せた第48話。最終回2話前というおそらく制作現場が佳境であろうとも、他の回を凌ぐ線の力強さ、キレのあるカットで動かしまくるのは東映の若手ホープ渡邊巧大作画監督の腕によるものか。

次点は藤井慎吾氏のアクション作画が光る最終回50話。

 

甲鉄城のカバネリ』 第2話「明けぬ夜」

脚本:大河内一楼 絵コンテ:大原実、荒木哲郎 演出:田中洋之 総作画監督:丸藤広貴、江原康之 作画監督:千葉崇明、荒尾英幸、胡 拓磨、丸藤広貴

荒木哲郎監督は富野由悠季リスペクトを公言するだけあり1・2話の展開はまさに『機動戦士ガンダム』。だが第2話で描かれる無名の縦横無尽のアクションや、生駒が自らの身を賭した甲鉄城発進シーンの熱情の高さにはリスペクト以上の凄み見せられた。

次点は1話、4話。

 

『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』 第24話「君はまだ歌えるか」

脚本:會川 昇 絵コンテ:水島 精二・黒川 智之・大塚 健・石平 信司・松尾 衡 演出:大久保 朋・菱川 直樹 作画監督:小平 佳幸・長谷部 敦志・小田嶋 瞳 メカニック作画監督:大塚 健

もしも現実世界に超人がいたら、というifの昭和を描いた異色のSFアニメ『コンレボ』。最終回第24話で描かれたのはそこは本当にパラレルワールドであり、お化け・妖怪の類のみ住みやすい世界=私達の住む現実世界に移住するという衝撃の展開。水島精二監督と會川昇がかつて描いた『鋼の錬金術師』劇場版の語り直しだったわけである。

 

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』 第16話「「狩り」に行こう!」

脚本:ヤスカワショウゴ 絵コンテ・演出:古川順康 作画監督・原画:関川成人

スタンド使いと化したネズミを仗助と承太郎が狩る緊張の第16話。ジョジョ4部なんとこの話数のみ、最近では珍しくなった1人作画回。尚且つ他の回を圧倒する程の濃い作画と緊張感で魅せてくれた。良い原作には良い人材が集まるということか。

 

Re:ゼロから始める異世界生活』 第18話「ゼロから」

脚本:中村能子 絵コンテ:長山延好 演出:古賀一臣 作画監督:渡邉八恵子 ・豆塚あす香 / 浅利歩惟

スバルとレムによる、前代未聞、20分に渡る1シーン2人芝居。そこで吐露されるスバルの諦観・絶望に対し、全てを包み込むレムの愛は涙なしには見られない。そしてタイトル回収台詞「ゼロから」には思わず鳥肌が。

『Re:ゼロ』は異世界・タイムリープという設定もさる事ながらストーリー構成が非常にトリッキーで、今年1番次週の放送を楽しみに見ていたアニメとなった。今年最強の(サブ)ヒロイン・レムを生み出したアニメとしても印象深い。

 

モブサイコ100』 第5話「OCHIMUSHA ~超能力と僕~」

脚本:瀬古浩司 絵コンテ・演出・作画監督:藤澤研一

原作者を同じくする『ワンパンマン』と同じく作画アニメ度の高い『モブサイコ100』。特に第5話で描かる校舎を舞台にした超能力戦の激しさ、そして崩壊し天上に舞い上がる校舎の瓦礫の美しさには魅了された。現代に蘇った『AKIRA』と言って過言ではない。


『ガーリッシュナンバー』 第2話「天狗な千歳と声なき悲鳴」

脚本:渡航 絵コンテ:井畑翔太 演出:飛田剛 総作画監督:木野下澄江 作画監督:西田美弥子、加藤弘将

『SIROBAKO』声優版といった趣の真っ黒声優業界アニメ『ガーリッシュナンバー』。このアニメで主人公千歳が演じる劇中アニメ『クースレ』OPのために神アニメーターが起用される、という展開からはじまるまさかの松竹徳幸劇場が見られるのがこの第2話。松竹氏がキャラクターデザイン・絵コンテ・演出・作画監督・原画が手掛けたことで、まさにI.G.時代の『テイルズオブ』シリーズ(特に『テイルズオブシンフォニア』!)を彷彿とさせる仕上がりになっている。原画には吉成鋼氏も参加。なおその後描かれる劇中アニメ本編は散々な仕上がりであった(演出上の都合であるが)。

さすがラノベ作家でもある渡航氏自身が脚本を手掛けているだけあって、業界をシニカルに描くだけでなく千歳を中心とした5人の成長が丹念に描かれており、全体を通して面白く見れた。次点は8話と12話。

 

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』 第32話「友よ」

脚本:岡田麿里鴨志田一 絵コンテ:寺岡巌、綿田慎也 演出:綿田慎也 キャラクター作画監督:渡部貴喜 メカニック作画監督:久壽米木信弥

ガンダムシリーズを通じて描かれてきた「ディスコミュニケーションが招く悲劇」最新版。アストン・タカキ・フウカを中心に描かれたアーブラウ防衛軍編(30~33話)こそ、『オルフェンズ』で描こうとしてきた等身大の戦争を象徴しているではないかと。

『オルフェンズ』は2期に入ってからロボットアクションも岡田麿里氏登板率も増えてぐっと見どころが増えた印象。次点は大張アクションが冴え渡る最新第38話。

 

『響け! ユーフォニアム2』 第10話「放課後オブリガード」
 脚本:花田十輝 絵コンテ・演出:山村卓也 作画監督池田和美

チームビルディングを描いた1期から転じて、各キャラクターの葛藤を掘り下げる『ユーフォ』2期。第10話はようやくまわってきた主人公・久美子のターン。姉・麻美子との別れに泣き、あすか先輩に「吹奏楽を諦めないで」と熱い想いを涙声でぶつける久美子。久美子の泣きの演技はもらい泣き必至。演じる黒沢ともよ自身もアフレコ現場で実際泣いてたとか。

ステージ上での貫禄から「先生」などとも称される黒沢ともよだが、テレビアニメでは初の主人公を射止めた本作を通じて、演技の幅の広がりを感じることができた。まだまだ成長する彼女の末恐ろしい未来が楽しみで仕方ない。

なお次点は5話、7話、9話、13話。

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好きな回が多すぎるので、冬コミでは思わず原画集までも購入してしまった。この本もまた良い。

 

唯一無二の旅情と失われた作家性 『ファイナルファンタジーXV』クリア後レビュー

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2006年のE3で企画が発表されてから10年の時を経て、ついに発売された『ファイナルファンタジーXV(以下FF15)』。FFシリーズナンバリングタイトル初のアクションRPG且つ、初のオープンワールドゲームという挑戦尽くしの本作は発売前から楽しみで仕方なかったのだが……。クリアした今振り返ると、オープンワールドを活かした「旅情」が強く印象に残った一方で、これまでのFFにあった大切な「作家性」の喪失を強く感じた。

 

  • 唯一無二の旅情

FF15』はシリーズ初のオープンワールドゲーム(定義が曖昧なので、ここではゲーム内の大部分を画面の切り替えなしに移動できる3Dゲームとしておく)であるが、『GTA3』以降盛んに作られたこのジャンルは広大な世界を冒険できる点に圧倒的なリアリティを感じさせるものとして知られてきた。

ただオープンワールドゲームは、本作企画発足当時の2008年はまだしも最近では目新しさも薄れてきた。そこで『FF15』では革新的なシステムにより圧倒的な「旅してる感」を提供することに成功している。

一つが「宿泊システムの刷新」だ。昼夜の経過をゲーム内で表現したものはこれまでも数多くあったが、その多くが景色や出現モンスターの変化程度だった。『FF15』では夜間に最大限のデメリットを与え、代わりに宿泊に最大限のメリットが与えられている。

具体的には夜間には「闇夜はほとんど前が見えない」「強力なモンスター(ゲーム中盤~終盤級)が出現する」「メインの主要移動手段であるオートドライブ機能が封じられる」といったデメリットが発生する。一方宿泊には「レベルが上がる(これまでFFとは異なり、敵撃破時に取得する経験値はストックされ宿泊時にレベルゲージに加算される)」「テント宿泊時には起床後一定時間ステータスアップ(上昇ステータスは作る料理により選択可能)」「宿への宿泊時には取得経験値にボーナス付与(✕1.2倍)」といった最大限の、というかゲームを進めるうえで必須な要素が盛り込まれている。

昼間は冒険して夜は寝た方がマシ(頑張って頑張れないこともないが無理すると危険)という実生活の、ひいては本物の旅がシミュレートされている格好だ。

またもう一つの要素が「AIによるオート撮影システム」だ。最近のゲーム機ではSNSでの拡散を狙ってか、スクリーンショットを撮る機能が標準搭載されるほどとなったが、『FF15』ではパーティメンバーの一人(プロンプト)が勝手に撮影してくれる。これがまた芸が細かく、単純なスクショではなくプロンプトの視点での写真であるから、バトル中の予想外のアングルであったり、そんなシーンなかっただろ!?と疑う街中でのワンショットをバシバシ撮ってくれる。また撮影を繰り返していくとプロンプト自身の自撮りが混じったりフィルター加工を使用したりと、写真撮影の腕が上がっていく。なおこの写真も前述の宿泊時に保存やシェアができるようになっている。とりあえず私のプロンプトのプロカメラマンっぷりを見てくれないか。

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はいイリスちゃん可愛い。イリスちゃんとの思い出もオート撮影でばっちり保存できてしまう。なんと素晴らしい旅ではないか。

これまでのゲームではわざわざゲーム画面を撮影するのなんて承認欲求の強い極一部のプレイヤーに限られていたが、自動化されることで全プレイヤーが均一に、旅の思い出を振り返ることができるようになったのだ。

FF15』はとかくこれらシステム側のサポートにより旅情を味わうことができ、パーティメンバー4人への好感を増す効果を発揮している。「水曜どうでしょう」などと例えられる本作だが、実はかなり的を射た表現とも言えるだろう。

 

  • 失われた作家性

FFシリーズと一口に言っても各作品非常に印象が異なるが、それでも坂口博信氏や、北瀬佳範氏、野島一成氏、松野泰己氏といった各ディレクター、シナリオライターの作家性と、それを表現する最高の技術、その組み合わせこそがFFの個性だと思っていきた。しかし『FF15』ではそんな作家性を感じることができず、技術力だけが空回りしているように感じた。何に起因するのかと考えてみると、やはりゲームの各要素のアンバランスさだろう。

前述した旅に関するに関するシステムや、パーティメンバー4人の個性、訪れる2つの街、2度ある巨大召喚獣戦といった点は突出して作り込まれていて、時には声を出すほどの感動もあった。

けれどもそれをつなぐシナリオ周りがその印象を悪くしている。2国間の戦争状態を描いているはずがいつもの召喚獣巡りに終始しており、敵の幹部は道案内してくれたり定時に帰ったりとまるで緊張感がない。2つの国の主要都市が劇中で明確に描写されない(やっと歩ける場面が出てきても一部を切り取ったダンジョンでしかない)ので、この国を守りたいというモチベーションも、敵国に踏み込んだ時のカタルシスも湧かない。中盤からリニアなゲーム進行に突如変貌し窮屈さを強いられる。パーティメンバー、特にグラディオラスについては突然キレたりいなくなったりと行動に理解が追いつかない。

結局は、魅力的なシーンとオープンワールドというお題目を継ぎ接ぎをしただけで、このゲームを通して訴えたいものが何もない、極めて工業的な作品にさえ思えてしまった。

ただこういった完成形には、なるべくしてなったのだろう。本作は2014年よりディレクターが野村哲也氏から田畑端氏に交代しており、その時点で体制強化をし、発売時期の目処までつけている。今年掲載されたバンダイナムコゲームス原田勝弘氏と田畑端氏の対談を読む限り非常にチームビルディングが上手い人だ。田畑端氏でなければおそらく本作を完成させることができなかったであろう。チームビルディング力と作家性、天は2物を与えなかっただけの話である。購入したプレイヤーにとっては発売されたパッケージが全てであり、裏事情など知ったこっちゃない話であるが。

 

  • まとめ

良い面も悪い面も書いたが、個人的には完成したことそれだけでも評価したいし、個性的なシステム周りやノクティスらメインキャラクターなど気に入った点も多々ある。

またマイナス要素として書いた作家性云々については、本作のスピンオフ映像作品として作られたCG映画『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』では、『FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN』も手掛けた野末武志監督の魂を色濃く感じることができるし、アニメーション作品『BROTHERHOOD FINALFANTASY XV』はアイドルアニメの脚本を多く手がける脚本家綾奈ゆにこ氏の熱量がこもっている。作家性はこれらの作品から十分に補えるので、これからの人は是非プレイ前に観賞することをオススメしたい。

間違いなく言えるのは、このゲームがこれからも長く語り継がれるということだ。どの要素に重きを置くかによってプレイヤーの評価が大きく変わるゲームであるが、一番楽しめる今、やっておいて損はないはずだ。

 

『この世界の片隅に』のリアリティーとミリタリー

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こうの史代先生の原作漫画を映画化した『この世界の片隅に』が公開された。前評判の高さに違わず、初日のテアトル新宿は全上映立ち見の出る満席、私の見た最終回の上映後は拍手喝采であった。

戦時中、広島から軍港呉に嫁いだ主人公すずさんの、その時代にはありきたりだったであろう、しかし過酷な日常を強く生きる姿には、何度涙を流したかわからない。素晴らしい映画だった。

世界が違ったものに見える、人に優しくなれる、一生懸命に生きたくなる、ご飯がおいしく感じられる。いい映画には人を変える力が宿っているものだが、『この世界の片隅に』も、私にとってはそんな映画だ。これから何度も見たくなるだろう。

さて、この映画には幾つもの観点があるが、私は鑑賞中「リアリティー」と「ミリタリー」を考えながら見ていた。

 

  • 設定考証に裏打ちされた庶民視点のリアリティー

本映画を監督したのは片渕須直氏。それなりのアニメ通でもないと名前を聞いたことはないであろうが、過去にも映画『アリーテ姫』『マイマイ新子と千年の魔法』を監督している。また氏が監督したNHKの復興支援ソング『花は咲く』のアニメは見たことがある方も多いのではないだろうか(『花は咲く』はキャラクターデザインをこうの史代さんが務めているのを含め、多くのスタッフが重なっているのでプレ『この世界の片隅に』という側面も強かったのだと思われる)。

www.nhk.or.jp

片渕監督の映画で常に描かれるのは常に庶民の視点だ。主人公はいつも女性・子供。『アリーテ姫』も『マイマイ新子』も、そこからしか見えない世界、それでも強く生きる力、そういったものが描かれてきた。脚本・劇中アニメを監督したフライトシューティングゲームエースコンバット04』でさえそうだ。プレイヤーはエースパイロットなのに挿話は占領下の街に住む少年の物語。プレイヤーが考えることのない空の下からの視点を挿み、次第に交わらせることで、戦争の是非を説いていた。そんなゲーム、後にも先にも他にない。

そして片渕監督といえば圧倒的な設定の作り込み。これまでも『マイマイ新子』で昭和30年代の山口県防府市が徹底的な取材で描かれていたし、TVアニメ『BLACK LAGOON』の架空の街とは思えないヤバい街ロアナプラは、海外ロケと精巧な軍事考証の賜物だろう。

本作では企画から6年の歳月をかけて公開されたが、多くの時間は設定考証に充てられたと聞いている。広島も呉も、戦争によりかつての町並みがすっかり失われたが、この映画の中では、当時の町並みを引き写してきたかのように息づいている。

すずさんの時にやわらかく、時に気高い真に迫った演技(アニメーション)は、まさに片渕監督の得意とするところだと思うが、作り込まれた確かな設定考証を背負っているからこそ、胸に刺さるリアリティーとなり、画面を越えて観客に迫るのであろう。

 

  • 本物のミリタリーアニメ

先日早稲田大学の文化祭でガンダム富野由悠季監督が講演を行われていたため聴講させて頂いたのだが、その際に富野監督は『ガールズ&パンツァー』や『艦これ』を名指しで批判、とまではいかないが、若年層に軍事ものへの抵抗感がなくなっていることに危機感を覚えていた。

この世界の片隅に』はすずさんを中心に描かれるとはいえ、周囲を取り巻く戦争、兵器も無視できない存在だ。私自身、以前『艦これ』をかじっていたので「大和」や「利根」「青葉」なんてワードが出てきて「おっ!」と思ってしまったのも事実。だがこの映画に出て来る兵器は、女子高生は乗っていないし美少女型でもない。もちろん猫耳つけた下着姿でもない。とても恐ろしい、日常の破壊者として描かれる。町は壊され、人は死ぬ。映画館の音響効果は、焼夷弾の音を、爆弾の音を腹の奥まで響かせる。恐ろしいけど、だからこそ映画館で見て、感じて欲しい。

私自身、ミリタリーアニメに対してこの数年で抵抗感がなくなっていたことに無自覚であったが、先日の講演会、そしてこの映画で目の覚める思いとなった。アニメというフィルターは、時に実写作品以上に戦争を考えさせる力を持っている。本作は『火垂るの墓』以来の、本物のミリタリー映画と呼んで過剰ではないだろう。

 

  • まとめ

リアリティーとミリタリーという観点で書いてみたが、本当は書きたいことが山ほどある。のんこと能年玲奈さんの演技力には圧倒されたし、アニメ版『ああっ女神さまっ』も手掛けた松原秀典作画監督の力がすずさんのうなじに宿っているのを私は見逃さなかった。見る人それぞれ、多くの感想を持つことだろう。

君の名は。』のようなエンタメ大作でもなければ、『聲の形』のような少年誌の人気漫画が原作でもないので、爆発的なヒットとなる映画ではないだろう。けれどそれらのおかげで非ジブリのアニメ映画を見ることへの抵抗が減っているのなら喜ばしいとも思う。映画の秋に選ぶ1本として、年代を問わず、多くの人に見てもらえることを望むばかりである。


映画『この世界の片隅に』予告編

 

「黒川塾 バーチャルリアリティの未来へ 4」でVRトップクリエイターの知見に触れる

黒川塾 四十壱「バーチャルリアリティの未来へ 4 ~ あれから2年」で錚々たるVRクリエイターのお話を聴講できると聞き、10月28日夜、会社帰りにふらっと寄ってみた。

peatix.com

登壇者はPSVRを発売したばかりであるSIEの吉田修平氏バンダイナムコゲームスでサマーレッスンを手がける原田勝弘氏、同じくバンナムでVR ZONE Project i Canを指揮したコヤ所長こと小山順一朗氏、そしてOcuFesのGOROmanことOculusの近藤義仁氏。なんだかすごいところに来てしまった。

以下当日のメモより。意図が伝わるように編集している箇所があるのはご容赦を。

 

  • VR ZONEと呪いの世代

小山氏

・VR ZONEは計画の250%達成で大成功。

最初は渋谷パルコで開催することを計画していたがお台場に。

・「さあ、取り乱せ」のキャッチコピーが効いた。効きすぎて取り乱す系タイトルに人気が集中。

・どうしてボトムズを選んだのか。自由移動ができるから。でもガンダムだと自分が18mの巨人になるかのような体験になってしまうので無し。そしてボトムズ=鉄の棺桶。取り乱す。

・VRというテーマが強いのか、IPが強いのか見極めるため開始当初はIPを入れなかった。当初20代中心の客層が、10代と40代が伸びる結果に。

・40~50代はバーチャルガッカリ世代。呪いの世代。けれどボトムズ目的で来てくれた。

・呪いの時代。当時ナムコとしても、舛添元知事がプレイしたことでも有名なバーチャリティ2000をゲームセンターに導入。けれど全然プレイされなかった。やった人も怒りだす出来。

リッジレーサーでさえ当時は「バーチャルリアリティ体験」として売っていた。「バーチャルリアリティ世代」と「VR世代」は線引きされている。

 

  • サマーレッスンとVR体験

原田氏

・サマーレッスンは圧倒的売上1位。

・ユーザーの感想は3種類。①VRのすごさに声が出ない。②内容を知っていたうえで「こういうことか!」と納得。③既存のゲームの延長線上で評価。

VRは体験

・某メディアのインタビューを(校正ができないので)断ったから、というのは冗談だが、サマーレッスンの事をボロクソに書かれた。だがバットマンでさえ「ゲームとしては」29ドルはどうなのか?と批判されている。

・VRはプレイしないと伝わらない。文章では伝えられない。サマーレッスンは実況プレイ向けと言われたのは意外だったが、見てみたら確かにその通りだった。

小山氏

VR ZONEではゲームではなくアクティビティと呼ぶことにしていた。

・ゲーマー視点の人はゲームとしてのアドバイスをしてくる。けれどBGMをあえて無くすなど、リア充をびっくりさせることに重点を置いて作ることにしていた。

原田氏

・お台場には体験目的でお客が来てくれた。PSはゲームとして見られてしまう

小山氏

・自動で始める、自動で終わるという仕様にしなかった。結果、スタッフに裁量を持たせることで、プレイヤーの驚き方が変わるようになった。

原田氏

・アーガイルシフトはスタッフが冒頭に設定を言うようになってから没入感が増すようになった。

 ・サマーレッスン体験版ではサウンドチームが頑張ってくれて、最初に3秒間だけ効果音、ノイズが鳴る時間を設けたら没入感が格段に上がった。

小山氏

・VR ZONEのガンダムのアクティビティでは、何も知らずに体験させた人と、「ザクが襲い掛かってくる、逃げないと死ぬ」という設定を聞かせてから体験させた人では全然反応が違った。(会場ではその際の動画を再生。設定を聞かされて体験した人のリアクション芸人かのようなオーバーリアクションは会場中を湧かせた)

 

  • OculusのSocialとMedium

 近藤氏

サンノゼで開催されたOculus Connect 3。日本からも50~60人参加。注目は「Social」と「Medium」。

・Socialで全然違うところにいる複数人が交流したり、360度動画を共有できる。運動会に来れない田舎のおじいちゃんに運動会を見てもらう、なんてことができるようになる。生活の不便を解消できる。

・Touchを使った3D造形ソフトMediumは今までフレームに捉われていたオペレーションが自由になる。今まで習得に1週間かかった3D造形が10分で済むようになる。3Dプリントもできる。CADは再定義される。

 

  • VR部

 原田氏

・VRに興味を持った時、周りはやれやれ言っても金は出ない。鵜之澤(当時副社長?)には「こういうことは部活としてやれ」と言われた。

・なんとか部活としての体制を組んで、完成したものには皆反応がよく、社内の空気は今ではガラッと変わった。

・鵜之澤は「部活でやれば良いものになると言った通りだろ!」とまで言うように。

小山氏

・今では部署としてのVR部ができた。

・呪いの世代が経営判断しているので、VR ZONE含め最初は上層部の動きが鈍かった。

・アーケードは右肩下がりなので今やるしかないと思った。新しいものはコンテンツの価値を高める。だからVR ZONEは1,000円以上に設定しても成功できた。

 

  • ビジネスとしてのVR

原田氏

・VRには未だに発見がある。ビジュアル面でもサウンド面でも。サマーレッスンでそんな発見を発信していきたい。一度のお祭りではなく、長い期間続けたい。

・これからは人工知能(AI)も注目。AIが完璧な反応をするのは過渡期だから。いずれ不完全なもの、つまりは生物になる。

アイマスはアーケード初期から見守ってきて、それこそ(ヒロインの1人)伊織と一緒に働いているんだという自分だけのバーチャル体験をしてきた。そんな体験がVRとAIでエンタテインメントになる。

MMORPG格闘ゲームをAIとプレイする時が来る。OFF会をやったら誰も来ない、けとまたゲーム内であったら「おいおい来てただろう」と。実はAIは監視カメラでOFF会会場を見ていた…、なんてことも起こりうる。

・VRはメンタルケアにもなる。死んだ父の疑似AIからVR越しにアドバイスを受ける、なんてことだって実現するかもしれない。

近藤氏

・VRはマネタイズが大変。けれどPC黎明期は同じだった。VRは開発者にとって公平にチャンスがある。ゲームエンジンも揃っている。みんながチャレンジできる。

・VRは体験なので1回で飽きてしまう。何度も遊びたくなる、遊ぶために早く帰りたくなる、仕事中に一緒にいてくれる。そんなコンテンツを作っている。

原田氏

伊織が隣にいたら仕事しないよ。

小山氏

・例えばマリオカートのワンワン、ドラゴンボール元気玉でも、VRならすごいことになる。日本のIP独自の想像力を高められる。海外にIPを買われる前に向き合うべき。

吉田氏

・(PSVR発売後の反応はどうかという問いに対し)社内は静か。視線が左寄りになる不具合は調査中。タイトルによっては酔いが激しいのは想定内。驚くほど良いスタートを切った。

 

  • Q & A

ーー気分によって酔う時も酔わない時もある。ゲームだと思って遊ぶと酔う気がするがどうか?

原田氏

・VRへの興奮度が高いと酔うかも。またVRに慣れるといろんなところを見るようになって酔うのかもしれない。メンタルで変わる。

ーー任天堂はNintendo Switchが失敗したら、10年以内にソフトメーカーになる。VRでマリオを。ソニーからアプローチを続けてほしい。※注:質問者はルイージコスのピョコタン

吉田氏

任天堂のゲームがもっと多くの人に遊ばれてほしいとは思っている。

ーースターブレードギャラクシアンをVRリメイクしてほしい。

小山氏

・そのままリメイクするとコクピットに座るだけになる。当時そのままでいいのか、妄想力を広げて、当時の世界観を広げるのか。

原田氏

・(実現するとしても)単なるリメイクで良いとは思わない。

ーーVR ZONEの「高所恐怖SHOW」は家庭だと実現できないのか?

吉田氏

・短いものならPSVRでもできる。映画「ザ・ウォーク」のVRデモも作った。

小山氏

・(家庭でVRを行うと)安全なものが危険にもなる。注意が必要。

 

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「VRは体験。既存のゲームの延長線上で捉えるべきではない」という考えが特に印象に残るもので、VR ZONEに感じていた物足りなさにようやく得心がいった。そもそもゲームとして作っていなかったのか……。ゲームの表現方法とばかり考えていた自分にこれはショックなことだった。VRにはゲーム性以外の評価軸を持って接する必要がある、ということを知ることができたのだ。その他、多くの知見に触れられた素晴らしい講義だった。

そして原田勝弘氏の伊織愛も本物だった。VRの進化には期待しかない。

Nintendo Switchは4年前から予見されていた

あれっくすさんはなんでも知っている

  •  Nintendo Switchの発表

すでにご存知の通り2016年10月20日23時に任天堂の新据え置きゲーム機『Nintendo Switch(以下NS)』が発表された。以前より発売が予告されていたNXの正式名称及び概要が公表された形だ。


【初公開映像】Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)

www.nintendo.co.jp

詳細はリンク先を見て頂くとして、こうした「携帯可能な据え置き機」が発売されることは実は4年も前に予見されていたのだ。任天堂の老舗ファンサイトN-Stylesを運営するあれっくすさんによって。

 

  • 予見されていたNintendo Switch

遡ること4年前、任天堂への情熱と若さが有り余っていた私は任天堂ハード偏向同人誌『ウィーゲー』(全2号)をコミックマーケットで頒布したのだが、2号掲載用の企画としてあれっくすさんへのインタビューを行なった。

そしてその記事を転載したのが以下のエントリである。

yuki222.hateblo.jp

この中であれっくすさんは以下のように語っている。

「あとは、次の世代は据え置き機と携帯機が一体化するんじゃないかって気がします」

―そこまで行っちゃいますか!?

「1つの会社で(据え置き機、携帯機の)2つのラインを持つのがそろそろきついんじゃないかと。家庭でしか出来ないゲーム、持ち運べるゲーム、両方で遊べるゲーム、とソフトの種類は複数になるけど、ハードは1つにして。

 家の方には、テレビと携帯機を繋ぐ受信機と、高性能なプロセッサと大容量のハードディスク。携帯機にはパワーの劣るCPUと、液晶画面とコントローラ。このアイディアは結構いけるんじゃないでしょうか」

このインタビューを収録した2012年5月は、Wii Uの発売6ヶ月前、さらに言うと翌2013年1月に報道された任天堂の携帯・据え置き開発体制一本化のニュースよりも前のことである。

唯一異なるのは記憶媒体とプロセッサも(おそらく)携帯機側に搭載されたことぐらいだろう。いずれにせよ、あれっくすさんの先見性には感服するしかない。

あれっくすさんは既にNintendo Switchについての考察記事を書いているのでみんな読もう。

n-styles.com

 

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なおウィーゲー2号は4年経った現在も在庫を抱えてる絶賛発売中だ。購入希望の方は連絡ください。

 

これこそが20年間待ち焦がれていたパトレイバーだ! 『パトレイバーREBOOT』

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現在劇場にて1週間の限定上映中の『ゴーゴー日本アニメ(ーター)見本市』。これはドワンゴスタジオカラーによるWEB配信短編アニメシリーズ『日本アニメ(ーター)見本市』の傑作セレクト上映なのだが、劇場公開にあたり異色の追加作品が制作された。機動警察パトレイバーシリーズ最新作となる『パトレイバーREBOOT』だ。

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パトレイバーは大好きな反面、過去に何度も苦渋を飲まされたこともあるシリーズ。たったの8分間だし期待し過ぎてはいけない、というかチケット2,000円て高過ぎない?、と悶々としながら『ゴーゴー日本アニメ(ーター)見本市』を観賞したのだが……。各短編アニメはWEBで視聴済みとはいえ大画面映えする作品ばかりなので新鮮な気持ちで楽しく見ることができたし、肝心の『パトレイバーREBOOT』は、予想を上回る面白さに度肝を抜かれた。

これこそがもう一度見たかったパトレイバーだ。ここから何かが始まりそうな予感に、今とても、ワクワクしている。

 

機動警察パトレイバーシリーズは、ご存知の通り1980年代末から1990年代始めにかけて、漫画、OVA、TV、映画とフォーマットの垣根を越えて、当時まだ珍しかったメディアミックス展開を実現し大変な人気を博した作品。その根強い人気に後押しされてその後2度のREBOOT(再起動)に挑んだのだが、いずれも成功と呼べるものではなかった。

1度目は2003年に劇場公開された『WXIII 機動警察パトレイバー(パト3)』と『ミニパト』だ。漫画版で描かれた廃棄物13号編をアレンジした『パト3』は1本の作品として完成度が高いものの、『機動警察パトレイバー 2 the Movie(パト2)』以上に、これまでの主人公である特車二課の面々の出番も、パトレイバーの活躍さえもほとんどない展開は、10年ぶりの長編映画への期待に応えるものではなかった。さらに併映された『ミニパト』は、短編ギャグ映画でしかなかった。

そしてさらに10年の時を経て復活した『THE NEXT GENERATION パトレイバー』は、OVA版と劇場版2作品を手掛けた押井守監督が手掛けた実写ドラマ+長編実写映画。押井守監督作品ということで非常にパトレイバーらしい丁々発止の会話劇が楽しめたものの、実写となることで皮肉にもリアリティが落ちた作品世界にかつての魅力が宿ることはなく、『パト2』後の世界線ーつまりレイバー産業が衰退した世界にはこの先の展開を予見できるものは何もなかった。パトレイバーはこれでおしまい、と思うしかないものだった。

 

と思ったところにたった1年の間隔で公開されたのが今回の新生パトレイバーだ。今作は過去2度のREBOOTとは全く異なる点は、正統派のアプローチだということ。パトレイバーという非常に受け皿の広い作品の性質上、レイバー戦があまり描かれない過去2度のREBOOTもそれはそれで「らしい」ものだったと言えるのだが、僕らが本当に見たいのは格好良いレイバーが格好良く闘う姿だ。そこに来て今回は、8分という短い上映時間を目一杯使って濃厚なレイバー戦を描いてくれた。それも昔では描き切れなかったであろうディテール満載のレイバーを、迫力の特撮風あおり気味アングルで、だ。これぞ現代ならではパトレイバーである。

そんな今作を監督したのは吉浦康裕氏。吉浦氏といえば『イヴの時間』に代表される会話劇の人、という印象だが、WEB版『アニメ(ーター)見本市』では『PP33 -POWER PLANT No.33- 』『ヒストリー機関』で迫力の怪獣戦やコメディまでもを描き、多才ぶりを発揮してきた注目の監督。今作では氏の得意分野がパトレイバーという作品にマッチしたことで、相乗効果が発揮されたのではないだろうか。氏のインタビューを読むと特に『パト1』が好きとのことなので、なるほど今作は『パト1』序盤の暴走レイバー戦の現代アレンジと見ることもできる。東京の下町を克明に描いた情景も、とてもパト1している。(あの庵野秀明氏がエグゼクティブプロデューサーに名を連ねているということもあり、重なる点も多い『シン・ゴジラ』序盤のと比較しながら見るのもまた面白い)

またキャラクターデザインを担当したのは『おそ松さん』の大ヒットが記憶に新しい浅野直之氏。原作に寄せる巧みな技を今回も発揮し、ゆうきまさみ氏描き起こし原案があるとはいえ、新主人3人はもとよりモブキャラに至るまで、親しみやすく、時にコミカルで、キメる時はキメる、そんなゆうきまさみ氏の漫画を飛び出したようなキャラクターで統一されている。野明も遊馬も後藤隊長がいなくたって、これなら列記とした特車二課だ。

ゆうきまさみ氏のみならず、音楽は川井憲次氏、監修・メカデザインは出渕裕氏、脚本フィニッシュを伊藤和典氏とお馴染みのメンバーも勢揃い。フレッシュなメンバーと古参メンバーの連携がとれていることも、今回パトレイバーとしての完成度を高めた一因なのだろう。

 

  • 観賞手段は少ないものの、ぜひ見てほしい

ということでとてもオススメな 『パトレイバーREBOOT』なのだが、観賞手段が少ないのが一番のネック。劇場公開は10月21日までだし、BD版も月末に発売するとはいえ5,000円もする(私は興奮して劇場限定の修正作画集付きBD(7,000円)を買ってしまったが……)。

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今作で人気が再燃して、ゆくゆくは吉浦監督による長編を!という夢を見たいので、どうか他の『アニメ(ーター)見本市』作品同様に期間限定WEB配信などの観賞手段が増えることで、今作の観賞者が、ファンが、増えるのを祈るばかりである。過去作を好きだった人にはもちろん、今までシリーズ作品に触れたことがないような人にも絶対に刺さる、極上のエンタメ作品なのだから。


「機動警察パトレイバーREBOOT」上映開始記念PV