ユウキズ・ダイアリー

アニメ・映画・ゲームについての雑記

ファイナルファンタジー16をプレイしたらリアスピーカーSA-RS5の音質が向上して天井から水滴が落ちてきた件

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今更ながら、昨年発売の『ファイナルファンジー16』を購入した。

Amazonで激安だったのでもうすぐ『ファイナルファンタジー7リバース』発売なのでテンション上げようと思って買ったのだが、始めてみると「声がぼわぼわ反響っぽく聞こえる」「後ろから音が聞き取りづらい」というのが気になった。

以前本ブログで書いたように、現在「サウンバー HT-A5000」「サブウーファー SA-SW3」「リアスピーカー SA-RS5」という構成で視聴環境を整えているのだが、「天下のFFがこんな音で妥協してるわけがない!」と思い、このゲームをベンチマークとして音響設定を見直してみた。

 

結論から書くと、以下の設定に変更したことで最適化できた。

PS5の設定

HT-A5000(SA-RS5含む)の設定

  • 設定する→詳細設定→マニュアルスピーカー設定(距離、側壁までの距離、天井までの高さを入力)

ボワボワ聞こえた件については、PS5の3Dオーディオが邪魔していたらしく(本体機能で独自に3Dっぽく聞こえるようにする設定のよう)、OFFにしたら聞こえが良くなった。

また後ろからの音が聞き取りづらい件、これは以前から映画鑑賞時などに気にはなっていたのだが、SA-RS5のAmazonレビューを見ると同様の指摘があったのでまあ機器の性能がこんなものなのだろうと思い込んでいた。しかし今回は「もしかして音場設定がうまくいってないのでは?」と勘繰ることにして、通常は機器がオートで行ってくれる音場設定を、わざわざ部屋内の機器間距離をメジャーで測って入力してみた。するとどうだろう、めちゃめちゃ音が立体的に聞こえる!!

音で敵の位置がわかるだけでなく、何より驚いたのが敵の砦に入った時の出来事。なんと天井から滴ってくる水滴の音が本当に上から聞こえる!!びっくりして思わず天を仰いでしまった。音響機器はとことん設定を追い込むのが大事だと、改めて思った次第。

 

FF16のおかげで音響機器設定を見直せたので、これからの自宅映画鑑賞が楽しみで仕方ない。もちろんFF16をプレイするモチベも上がったし、FF7リバースも最高の環境で楽しめそうだ。

地デジ・Switchのボケ感を解消するBRAVIAの「リアリティークリエーション」機能が優秀すぎるのでダンジョン飯で検証してみた

先日アップした2023年振り返り① 買ってよかった編(家電、デジタルゲーム、ボードゲーム) - ユウキズ・ダイアリーの追記。

前述の記事でSONYの4K有機ELテレビ BRAVIA「XRJ-65A80K」を取り上げた際に「地デジのボケ感が気になる」と苦言を呈したのだが、その後「SONYの技術力ならもうちょい何とかなるんじゃないのか?」と訝しんで設定をいじったところ見事に解消することができた。前言撤回の意も込めて記事として残しておく。

 

まずどうしてボケ感が生まれるかについて書いておくと、映像がくっきりはっきりするかはテレビサイズと映像ソースの解像度(画素数)に左右される。代表的な解像度を挙げると以下の通り。

数値だけだとわかりづらいのでこちらの記事中の図を参照してもらうと良いのだが、ようは4Kテレビに対してSwitchやアマプラは28%程度、20%程度しか解像度がないので、テレビ側が頑張ってアップコンバートしているのである(単に拡大表示するだけでなく、良い感じに見えるよう画像処理しているらしい)。

とはいえアップコンバートにも限界があるので、どうしても低い解像度の映像はボケっとした映像になっていた(くもりガラスを1枚挟んでるような感じで、主線がにじんでしまう)。

 

そしてこれに対抗する機能が何かないものか、と設定をいじっていたところようやく辿り着いたのが「リアリティークリエーション」だ。

DRCとは 「デジタルリアリティクリエーション」 ディーアールシー: - IT用語辞典バイナリ

このリアリティークリエーションは標準では「オート」になっているのだが、「マニュアル」に切り替えることで0~100まで設定することができる(標準値は画質モード「スタンダード」で65、「シネマ」は20)。あまり高い値にするとノイズが乗ってくるため、同時にデジタルノイズリダクションもいじる必要があり苦慮したが、最終的に以下の設定に落ち着いた。

以下は検証用にテレビ映像をスマホで直撮りしたもの。

地デジのDR録画映像・リアリティークリエーション0

地デジのDR録画映像・リアリティークリエーション80



Amazonプライムビデオ(HD)・リアリティークリエーション0

Amazonプライムビデオ(HD)・リアリティークリエーション50

 

Nintendo Switch・リアリティークリエーション0

Nintendo Switch・リアリティークリエーション50

 

スマホからだとパッと見わからないレベルなので拡大画像もあげておく。


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地デジDR録画をリアリティークリエーション0→80で比較。手前のデカライオスの主線のにじみが消えて、後ろのちっちゃい冒険者たちの輪郭がはっきりしてるのがわかるかと思う。

ささいな違いに思えるかもしれないが、実際の65型の大画面で見ると「視力が上がったか!?」と錯覚するほどの劇的な違いだ。ボケ感が気になってるBRAVIAユーザーの方には映像設定を見直してもらいたいし、未所持の方には買い替え時の検討事項にしてもらいたい。

というわけでBRAVIA XRJ-65A80Kへの不満がなくなったので心の底から言えるようになった。買ってよかった!

 

2023年振り返り② 見てよかった編(映画、アニメ、ドラマ、バラエティ)

昨日の「買ってよかった編」に引き続き、2023年の見てよかったを振り返ってみる。

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映画ベスト10

  1. スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
  2. キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
  3. ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3
  4. ゴジラ-1.0
  5. ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー
  6. トランスフォーマー/ビースト覚醒
  7. マイ・エレメント
  8. ダンジョンズ&ドラゴンズ
  9. 窓ぎわのトットちゃん
  10. 君たちはどう生きるか

次点:『長ぐつをはいた猫と9つの命』『BLUE GIANT』『TAR/ター』『ライオン少年』『最後まで行く』『シン・仮面ライダー』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』『パーフェクト・ドライバー』『怪物』『イニシェリン島の精霊』『ザ・フラッシュ』『ガールズ&パンツァー 最終章 第4話』

今年見た新作映画51本の中からベスト10を選んでみた。CGアニメ映画は傑作揃いだったが中でも頭いくつも抜けていたのがスパイダーバースシリーズ2作目の『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』。スピード感と物量とエモさで前作の更に上を行く最先端の映像作品に進化していた。あまりにもピーキーなので人を選ぶかもしれないが、好きなものは好き。スコセッシ監督の新作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は目を背けたくなるような重たいノンフィクションが題材にも関わらず、軽妙でハイテンポな語り口に有無を言わさず圧倒された。試写会で解説トーク込みで見れたのも得難い体験だった。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』はジェームズ・ガン監督のMCU最終作。前作から一転、ロケットを主役に据えた復讐劇に涙。カラフルな宇宙服や擬人化動物星の寂れっぷりなどセンスオブワンダーが随所に光る。MCU作品の中ではトップクラスに好き。他短評はフィルマークスにて。

ユウキさんの映画レビュー・感想・評価 | Filmarks映画

 

アニメベスト

  • お兄ちゃんはおしまい!
  • TRIGUN STAMPEDE
  • スキップとローファー
  • 天国大魔境
  • 呪術廻戦 懐玉・玉折/渋谷事変
  • 無色転生Ⅱ
  • オーバーテイク
  • 葬送のフリーレン

例年なら話数別にあげるところだが、今年は正直なところ各作品を通しで見切れてないので語る資格なし状態。作品別として上記作品をあげるに留めておく。

 

ドラマベスト

  • ロキ シーズン2
  • アソーカ
  • マンダロリアン シーズン3
  • VIVANT

ドラマ、特に地上波は全然見れてないのだけれど、『VIVANT』の地上波ドラマをはるかに超えるスケール感には毎週ワクワクさせられた。MCUドラマ初の2シーズン目を果たした『ロキ』は、これはもうMUCマルチバースもの完結編てことでいいんじゃないかな。『アソーカ』も『マンダロリアン』も不満がないわけではないけれど、アニメシリーズ『反乱者たち』を今年になって全話見たのも含め、SWに楽しませてもらった一年だった。

 

バラエティ番組ベスト

  • オールスター後夜祭'23秋
  • 水曜のダウンタウン「名探偵津田」「スベリ-1GP」
  • ニッポンおもひで探訪
  • 祓除

昨年末に見た『このテープもってないですか?』『カワシマの穴』に感化されてか、特に今年後半は各局のモキュメンタリーが熱かった。中でも『このテープ~』と同じく大森時生プロデュースの『祓除』は、事前番組→テレビ東京開局60周年の生イベント→事後検証番組という3段構えのホラーモキュメンタリーという特殊仕様。イベント配信という後に残らない映像番組ならではの仕掛けにゾッとさせられた。

ここ数年テレビ番組の逆襲が始まっているのか、エッジの効いた番組が次々と生まれているので来年も注目していきたい。

年明け一発目は佐久間宣行の『日本怪奇ルポルタージュ』に期待。

www.tv-tokyo.co.jp

 

以上! よいお年を。

2023年振り返り① 買ってよかった編(家電、デジタルゲーム、ボードゲーム)

今年は春先の引っ越しに伴い必要なものをばたばたと買いそろえてたら終わっていた1年だったので、まずは買ってよかった家電とゲームについて振り返ってみる。

買ってよかった家電

  • 4K有機ELテレビ(SONY XRJ-65A80K+HT-A5000+SA-SW3+SA-RS5)

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今年唯一気合を入れて書いたのが4K有機ELテレビについての記事。なんだかんだ言って今も生活の中心にあるので大変役に立っているが、使っていると65型は非常に難しいサイズだとも実感する。

地上波番組を見たりSwitchのゲームをやるには画面が大きすぎるし(画像がボケる、映像の密度が低い)、4K UHDやディズニー+で4Kの映画を見ても迫力がもう一つ足りない。となるとPS5ソフトをやるしかないわけだがそこまでプレイしなかったという……。もし10年後に買い替えを検討するときは地上波&ゲーム用の55型と、映画用のプロジェクターを用意する気がする。

などと書きながらふと調べてみたところ、最近のアップデートで画面サイズ調整機能が搭載されていた!!

大画面TVでFPSプレイしやすく、ソニーブラビア「画面サイズ調整」体験してみた - AV Watch

これは朗報。とはいえゲームモード限定の機能。Switchソフトの映像ボケ対策にはなるので嬉しいが、是非地上波放送にも適用できるよう更なる改善を図ってほしい。

※1/3追記:もうちょいどうにかならないかと画質設定を見直していたところ、リアリティークリエーションをオートから80に変えたら地上波の画質ボケが劇的に改善!もっと早く設定していればよかった

※1/8追記:リアリティークリエーションについて記事にまとめたので詳しくはこちらを参照してもらいたい

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花粉のひどい時期、雨の多い時期、昼間に洗濯をさぼったときなど、浴室で洗濯物を乾かすときにいつも最高のパワーを発揮してくれた。生活していて一番助けられたのはこの除湿器かもしれない。

 

  • こたつ(ニトリ リビングこたつ)

春夏はテーブルとして、秋冬はこたつとして活躍してくれている。末端冷え性には神。おかげでこの冬は未だにエアコンを使わずに済んでいる。

www.nitori-net.jp

 

  • コリコランワイド

年の瀬に電車内広告を見て衝動買いした期待の肩こり対策マシン。使用し始めて一週間ほどなのでまだ実感は薄いが、首を回すとバキバキなり始めたので多少血行が良くなってきてるのだと思う。半年後、1年後に再検証したい。

 

 

買ってよかったデジタルゲーム

後述のボードゲームとの差別化のためにデジタルゲームとしておく。

今年はほとんどデジタルゲームを遊べなかった。新生活への移行に時間を使った、英語学習を始めたので余暇が減った、暇さえあれば昨年から引き続きスマホゲーの『マーベルスナップ』ばかりやっていた、そもそも金がない、など言い訳はいくらでもできるが……年末になっておおいに反省。

そんな中でも時間を割いて遊んだのが上記3本。特に『ゼルダの伝説 ティアーズ・オブ・ザ・キングダム』は他の時間を犠牲にして1か月ほど一心不乱にプレイしてクリアした(その前月には前作『ブレス・オブ・ザ・ワイルド』をリプレイしたので2か月ゼルダ漬けだった)。前作はこれまでの人生のベストゲームと思ったものだが、今作も甲乙つけがたい面白さ。世界の広がり、ダンジョンの巧妙さ、物語の感動は確実に前作を超えていると思う。クリアを優先して放置したクエストは多いので、来年は時間を作って落ち穂拾いを行いたいところ。

ピクミン4』はやめ時がなく一気に遊んでしまったので面白かったのは確かなのだが、プレイ感が他のゲームに例えようがないのでどう面白いのか説明し難い。やることが多すぎず少なすぎず、コンプを狙いやすいところが好き。あとオッチンが可愛い。

『スイカゲーム』の中毒性は危険レベル。新規パズルゲームで久々にハマった。

来年はどれだけできるか……23年のやり残しゲーム『FF16』『スパイダーマン2』『アーマードコア6』『ホグワーツレガシー』『バルダーズゲート3』『スーパーマリオワンダー』『スーパーマリオRPG』『デイヴ・ザ・ダイバー』を遊んでから前に進みたい。

 

買ってよかったボードゲーム

最後にボードゲーム。今年はコロナを気にせずボードゲームやるぞと決めていたので各所に顔出したり自分で主催したり、とにかくボードゲームを遊ぶ場所を作った。そんな中で最も遊んで気に入ってるはが上記3本。

中でも『Splendor MARVEL』はこれまで遊んだ中で一番好きなボードゲームかもしれない。人気の拡大再生産ゲーム『宝石の煌めき』をベースに、マーベルキャラクターに変更&ルールに多少アレンジが加わったもの。マーベル好きには堪らない傑作。最近韓国限定のポケモンバージョンも発売されたと聞いたので、なんとか輸入してプレイしたい。

『チャレンジャーズ!』は今年発売するやいなや大人気のデッキ構築対戦ゲーム。最大8人で疑似カードゲーム大会を開いて最強を決める――ただし戦闘は超シンプルな坊主めくり方式、という枠組みとデッキ構築にしぼったデザインが美しい。

スターウォーズ/クローン・ウォーズ』はパンデミックスターウォーズ版。スターウォーズ好き同士で遊んだら楽しくないわけがない。

未プレイゲームはまだ山と積まれているので、来年も積極的にプレイしていきたい。

 

明日は「見てよかった編」を更新予定。

失なわれたものと残った輝き 映画『君たちはどう生きるか』レビュー

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見終わった印象は「宮﨑駿も楽しい夢を見せられなくなったのか」という残念さと諦念と、けれどどこか清々しさをも入り混じるものだった。

 

7月14日に公開された宮﨑駿監督・スタジオジブリ最新作『君たちはどう生きるか』は、事前PRなしという異例のPR戦略のもと公開された。どんな内容なのかと期待に胸を膨らまさせられたのでまんまと戦略にのってしまったわけだが、蓋を開けてみればオーソドックスな行きて帰りし物語だ。

舞台は第二次世界大戦の緊張感が走る昭和10年代の日本。火災で母を亡くした主人公の少年・眞人(マヒト)は、父の再婚相手である夏子の生家で暮らし始める。眞人はその家で出会ったしゃべるアオサギにいざなわれ、家の庭にある不思議な洋館、そして地下に広がる謎の世界へ向かうが…というのが序盤のあらすじ。

 

宮﨑駿のフィルモグラフィーを振り返ると、初期の『未来少年コナン』『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』は空想科学世界を描き、『となりのトトロ』『魔女の宅急便』『紅の豚』では現実世界に空想が溶け込んだ世界を創造し続け、それらの集大成である『もののけ姫』が大ヒット。そして後期の『千と千尋の神隠し』『崖の上のポニョ』『風立ちぬ』は現実世界から空想世界へ越境する物語へと変容を遂げた(後期作品の中では『ハウルの動く城』のみ断絶を感じるが、細田守監督予定作を救済した企画ゆえか)。

これを踏まえると今作『君たちはどう生きるか』も完全に後期作品の流れに乗った越境ものである。そして『千と千尋の神隠し』『崖の上のポニョ』ではあいまいな描き方にとどめいたが、今作ではあちら側を明確に死後の世界として描いている。場面によっては地獄とも極楽とも呼ばれており、生命の誕生を示唆するシーンもあったので生死全てを内包する世界なのだろう。

かつてのサービス精神旺盛な宮﨑駿なら、それでも賑やかで愉快なテーマパークのような世界を描いていたかもしれないが、今回のあの世はアルノルト・ベックリンの「死の島」で幕を開け、江戸川乱歩の「幽霊塔」で終わる。住んでるのはペリカンとインコばかり。レイアウトや演出も精細を描いており、かつて見た場面を想起させるものは多くとも新鮮は感じられなかった。狂気のような鳥の群像にこそ驚いたが、過去作に比べれば作画カロリーも抑え気味だ。

楽しい気持ちを持って帰ってもらおうという気はサラサラない、というかもはやそういったイマジネーションは枯渇し、深層心理に沈殿するかつて触れてきた文学と絵本と芸術の断片を必死に繋ぎ合わせた世界があれなのだろう。かつての輝きは既になく、人は老いるのだという現実を突きつけられるようだった。

 

ただそれが悪いことばかりでなく、宮﨑駿に残ったものが一層輝いて見えた。最も印象深いのが魅力的なキャラクターたちだ。主人公・眞人の利発さにはやられたし、サギやインコといったキャラクターのユニークさ、力強い父やお婆ちゃんたち、そして可憐なヒロイン。今回作画監督に抜擢された本田雄の助けが大きかったのは間違いないが、やはりここは宮﨑駿ならではとしか言いようがない。

そして現実世界の鋭い描写力だ。あの世が恐ろしかったのに対し、戦火が迫る昭和日本の当時ならではの活気と厳かさを、独特の光景と丹念な所作で描いていた。『風立ちぬ』でもこの点が非常に優れていると感じたが、今作でもその冴えはまだまだ衰えていない。

 

人は老いるが、築いてきた輝きは僅かでも残る。これが今作の物語上からも、宮﨑駿の筆致からも表現されているのだからなんと美しい映画ではないか。

君たちはどう生きるか』――随分と説教臭いタイトルを付けたなとは思ったが、見終わって振り返るとこれは説教ではなかった。「老いるのも悪いばかりではない」「これを見た君たちはどう生きるか」という、長年アニメを作り続け栄光を掴んだ老人からの問いかけなのである。

現実という地獄をどう生きて、死ぬか。酷な問いだが、各々受け止めて、考え続けるしかない。

 

SONYの4K有機ELテレビ BRAVIA XRJ-65A80Kを買ってはいけない(とことん追い込んで性能を引き出す気がなければ)

BRAVIA XRJ-65A80K パーフェクトモード

前回のエントリにも書いた通り先日SONYの4K有機ELモデルBRAVIA XRJ-65A80Kを購入し、それから1ヶ月かけて満足いく状態まで持ってこれたのだが、この1ヶ月のことを考えるとおいそれとオススメはできないなと感じている。

もちろん性能は非常に高いのだが、それを引き出すには金と時間がどうしてもかかるし、予期せぬ事態も待ってるかもしれない。それでも購入を検討している、BRAVIAが気になるという人に向けてメリットデメリットを書いてみる。

 

メリット

  • とにかく映像がデカくてきれい

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もうこの一言に尽きる。デカくてきれいな画面は正義。長年30インチの液晶テレビと向き合ってきた身からするともう別次元で、テレビというかもう向こうに別世界が広がってるんじゃないかと錯覚することさえある。

ただ注意は必要で、地上波デジタル放送だとどうしても映像がぼやっとしてしまう。これは地上波の画素数が1440×1080しかなく、3840×2160の4Kテレビはそれをアップコンバートして表示してるから。とはいえBRAVIAのアップコンバート性能は他社に比べて優秀らしいし、画面から離れればそこまで気にならない。

本領を発揮するのはやはり4K配信映像や4K UHD再生時。『シン・エヴァンゲリオン』も『シン・ウルトラマン』も最高の画質で楽しめるのでその点は文句なしだ。

 

デメリット

  • 初期設定がめちゃくちゃ

はじめて映像を映した時に感じたのが「色味キツくない?」「動き変じゃない?」ってことで、正直けっこうがっかりした。設定項目を触りまくってようやく理解したのが、初期設定の画質モード「スタンダード」は全然スタンダードじゃないということだ。「ダイナミック」は問題外。誰に向けてこんな設定を用意したのだろうか。

1ヶ月付き合ってみて納得いったのが以下の設定だ。

 画質モード:シネマ
 色温度:エキスパート1
 モーションフロー:OFF
 シネマドライブ:OFF

他の項目は個人の好みにもよると思うが、この4点はマストで変えるべき。画質モードと色温度で適正な色味になり、モーションフローとシネマドライブを切ることで余計な映像補完がなくなる。映像に違和感がある方はぜひ試してみてもらいたい。

 

  • 音がしょぼい

買う前からわかっていたことではあるが、テレビ本体の音がしょぼい。改善できるだろうとサウンドバーHT-A5000を購入したがまだ音がこもり気味。サブウーファーSA-SW3を付けたらようやくマシになって、リアスピーカーSA-RS5で完璧になった。元々追加機器を買うつもりではあったが、とはいえいきなりかなりの出費に……。
サウンドバー1本買えば済むなどとは思ってはいけないと肝に銘じることにした。

 

設定も音も時間となんとかなるが、初期不良が一番痛かった。起こり得るというのはわかっていてもどこか他人事に考えていたのが、自分の身に振ってきてようやく実感した。本当にある。保証書は絶対に大事に保管すべき。

私の場合2つも初期不良に当たったので解決までにかなりの時間を要してしまったし、メーカーとのコミュニケーションストレスはかなりのものだった。これがあるからオススメできないと言っていい。

 

初期不良①:センタースピーカー機能を使うとノイズが載る

BRAVIAサウンドバーとBluetoothで接続するのだが、更に音声ケーブルを接続するとTV本体のスピーカーから声のみ出力できるという機能がある。これの不良でケーブル接続した途端に音声にノイズが載ってしまい、到底聞けるものではない音声になってしまった。同様の不具合は私以外でも発生しているようだ。

bbs.kakaku.com

こちらについては修理サポートの方を呼び、基板交換をしてもらって解決した。

 

初期不良②:画面に黒い影が出る

BRAVIAの映像に概ね満足していたのだが、『ヱヴァンゲリヲンQ』の4K UHD再生時、冒頭のブースター点火のシーンで画面に黒い影が出て非常に気になる。同じ色味をPCのペイント機能で出力してみたところ、グレー(RGB100:90:100)で再現することがわかった。

この辺に黒い影が見える

これについてもやはり修理サポートの方にモニタを交換してもらったのだが、完全には解決しなかったので(別の位置にやはり影が出る)、結局別の新品と交換してもらうことになった。

モニタ交換後。左手の影は消えたが3本縦線が見える

新品交換後。影がない‼

モニタ製造元のLGが悪いのかSONYが悪いのか自分の運が悪いだけなのかわからないが、残念ながらBRAVIA…というか有機ELテレビ全般を信用できなくなってしまった。

なお新品と交換しても問題がないわけではなく、真っ白の画面だと輝度の違いがはっきりと出てしまい、中心と外縁で色味が変わってしまう。地上波放送を見ているとそういった画面が出ることは稀なのだが、ゲームや映画だとちょいちょい出くわすのでその度に気になってしまう。いずれ慣れるとは思うのだが……。

ポケモンスカーレット起動画面。中央は明るいが、画面端に行くほど暗くなってしまう

有機ELは黒が得意だが白が苦手」と聞いたことはあったので、目で見てようやく仕様として理解することが出来た(納得はしてないが……)。

昨今台頭してきたMini LEDはもしかしたらこの点が解決しているのかもしれないので、将来買い替え時には検討してみたい(黒が青みがかると聞いて今回はスルーしてしまったが)。

www.sony.jp

 

まとめ

というわけで長々と書いたが、BRAVIA XRJ-65A80Kは良いところと悪いところがある。概ね金と時間をかければ解決するが、仕様上どうしようもないところもある。高価だから買えば全部揃ってる最上のもの、というわけではないので、もし買う場合はその点を考慮して買うべきだ(これはSONY製品に限らずだろうが)。

自分の親が買うと言ったら全力で止めるか、初期設定につきっきりになるしかないが、親世代が安心して買えるTVは今もあるのだろうか。こんな心配させないで欲しいので、TVメーカー各社は初期設定を改めてほしい。あとサウンドバーとサブウーファーはセット売りすべき。TV単体で買うもんじゃない。

仮面ライダー愛の重さ故の歪さ『シン・仮面ライダー』

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シン・ゴジラ』を見てからというものの、庵野秀明監督による「シン・」シリーズには「過去の人気作を、誰もが受け入れられる現代エンタメとして最新映像でリブートする作品」を期待するようになっていたのだが、『シン・ウルトラマン』の時点で原作濃度が濃い作品になっていたし(それでも樋口真嗣監督らしいアクション描写の痛快さでバランスが取れていたが)、今回公開された『シン・仮面ライダー』はさらに原作愛が発揮され、それ故に歪な作品に見えてしまった。

 

前提として私の観賞条件を書いておくと、昭和ライダーは「BLACK」と「BLACK RX」を見た記憶が朧気にある程度(初代『仮面ライダー』は今回の観賞に向けて1、2話だけ視聴)。平成ライダーは半分程度は視聴済で、放映中の「ギーツ」は視聴中。好きなライダーは「クウガ」と「W」。『シン・仮面ライダー』は舞台挨拶ライブビューイング付き上映をバルト9ドルビーアトモス環境で観賞した。

 

『シン・仮面ライダー』は本郷猛が仮面ライダーに変身し、悪の組織ショッカーと戦うという初代『仮面ライダー』を踏襲したストーリー。彼を改造し変身能力を与えた緑川博士の娘、緑川ルリ子と共に悪の怪人(今作では「オーグ」と呼称される)たちとの死闘を繰り広げていく。

 

諸手を挙げて賞賛できない理由は、まず庵野監督の愛が重すぎる故か、原作らしさを強く押し出しているところ。急に無駄な場面転換したり、冗談みたいな怪人がわんさと出てくるし、わざとらしく誇張気味なカットや芝居を見せつけてくる。

原作がそうなのか、庵野フィルターを通した原作がそうなのかはわからないが、あくまで特撮映画、あくまでジャンル映画という体なので、『シン・ゴジラ』のように大衆娯楽作として万人に薦めることは難しい。もっと自然に、現代人に受け入れやすい演出、ストーリーに中和しようと思わなかったのだろうか。

 

また画質のばらつきや不自然なカメラワーク、かっこいいと言い切れない殺陣にチープさを感じるCG演出、マスク越しゆえに聞き取りづらい台詞、暗く見づらい環境での戦闘など、単純に映像作品として引っ掛かりを感じる部分が多い。

大衆的内容でなかろうとも映像の快感が閾値を突破していればそこを推すことはできたのだが、それも難しい。

 

ではダメダメなのかというと……、嫌いにもなり切れない。

まず主演3人の純粋で朴訥な芝居が彼らの良さを引き出していて、特にヒロイン浜辺美波と中盤から活躍する柄本佑が大変魅力的。池松壮亮演じる内向的な本郷猛にフォーカスして展開するストーリーはエヴァンゲリオン的でさえある。

庵野秀明作品らしい遠景ショットはいちいちキマっているのも好きなポイント(ここはシン・ウルトラマンよりずっと優れていると思う)。

庵野作品初参加の岩崎琢サウンドは時に激しく、時に抒情的でばっちりハマっているし、ライダーやオーグ、バイクなどのディテールやギミックは特撮好きとして興奮しっぱなしだった。

 

ウルトラマン仮面ライダーに偏愛を注ぎ、ゴジラはそこそこだったという庵野少年は今作に可能な限り偏愛を注ぎまくったのだろう。結果的に、客観的に描けた『シン・ゴジラ』は大衆性を帯び、『シン・ウルトラマン』『シン・仮面ライダー』はノスタルジックな色の強いジャンル映画となった。そこはきっと狙い通りだったのだろうと思いつつ、見たかったものとの乖離が生まれてしまったのは残念だった。

 

この3作を通じて庵野監督は「やりたいこと」はもうやりきったのかもしれない。ただ同時に見えてきた「自分一人でできること/できないこと」「自身に求められているもの」も自覚したはずだ。庵野秀明監督の今後に「御期待」したい。

 

yuki222.hateblo.jp

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