話数単位で選ぶ、2018年TVアニメ10選

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毎年恒例の新米小僧さんの企画に乗っかる。

「話数単位で選ぶ、2018年TVアニメ10選」参加サイト一覧: 新米小僧の見習日記

ルール

・2018年月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。

・1作品につき上限1話。

・順位は付けない。

 

選んだのはこちら。

TVアニメと呼べるかの議論の余地はあるがそれはさて置き。この話のために改めてデビルマンの映像化を、そしてWEB配信限定という流通手段をとったのではないかと思わせるあまりに激しく、倫理観を問われるエピソード。

 

今年最高のアニメからはめぐっちゃんとの別離を描いた5話が外せない。キマリとめぐっちゃんの語りと映像を重ね感動を増幅させる演出は匠の技。人はいつでも旅に出れる。スタートラインに立ちさえすれば。

 

騎士SDガンダムOVAを擦り切れるほど見て育ったのでクライマックスのスペリオルドラゴンパロに泣いた。『ポプテピピック』はネタとして消費され切ってしまった感はあるけれど、恐れを知らないパロディの乱れ打ちにはじまり、声優を変えて繰り返す放送形式や、地上波放送とWEB配信を同時に行い地方格差を無くすなど、アニメの枠を破壊しようとする大胆で戦略的な試みは非常に好印象だった。

 

実際のレース結果(1997年天皇賞)と重ね、ifを描くという、競馬をモチーフにしたアニメならではの練りに練ったエピソード。この回がきっかけで実際の競馬にも興味が湧き、実際に足を運ぶことになったのが思い出深い。

 

日常描写との落差激しい舞台演出。衝撃の幕開け。何が起こったのか理解できず、幾度も見返した。

 

悩みに悩んだが、どのカットもレイアウトがバキバキにキマって映像の快感を突き詰めた5話を推したい。久しぶりのヤマノススメは期待に違わずどの話数も珠玉の出来だった。

 

本渡楓演じる源さくらの見事なラップにノックダウン。ダークホースが大化けした瞬間に立ち会った感動。今年大活躍だったえーでちゃんに主演女優賞をあげたい。

 

  •  『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見るか』 第6話「君が選んだこの世界」

ループする甘美な日常と、決別。東山奈央演じる朋絵の告白シーンに震える。

 

  • 『色づく世界の明日から』 第9話「さまよう言葉」

愛しているのサインが目には見えないもどかしさ。

 

  •  『SSSS.GRIDMAN』 第9話「夢・想」

醒めない夢からの脱出。手垢のついたテーマではあるが、疾走感あふれる現実への帰還シーンにはあふれる涙が止まらない。『青春ブタ野郎』6話ともどこか重なる。

 

現状打破、旅立ち、ステップアップーー私自身が抱えているモヤモヤを解消してくれるアニメに心を打たれ、内省する。そんな1年だったように思う。

以前の10選はこちらから。

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ゼルダの伝説 コンサート2018

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先週12月14日は渋谷Bunkamuraオーチャードホールで開催された『ゼルダの伝説 コンサート2018』を観賞。

今回でゼルダの伝説オーケストラコンサートは4回目の開催とのことだが、聴きに行くのは初めて。最初の25周年コンサートの頃などは「ゼルダの伝説シリーズは好きだけどやったことないのも多いし…」と自分に言い訳していたものの、その後いくつかの旧作にも触れたので大丈夫だろうと意を決した次第。

実際行ってみると、演奏者の上に大画面が設置されており、曲に合わせた映像を映し出すという趣向が凝らされていた。遊んだことのない作品も十分楽しめるので、これなら今まで臆することなんてなかった!

 

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セットリスト(パンフレットより)。アンコールは近藤浩二氏によるピアノメドレーと、最後は「Nintendo Switch Presentation 2017 Trailer」

オカリナ、ハープ、アコーディオンという3つの楽器がフィーチャーされた今回の曲目だが、発売後初のコンサートということで『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の曲が気持ち多めで嬉しい。

特に感動したのは初めて遊んだゼルダの伝説シリーズ作の「夢を見る島メドレー」と、最新作から「ブレス オブ ザ ワイルド 英傑のメドレー」。映像付きで振り返ると泣くしかない…ミファー好き…。

そして「ブレス オブ ザ ワイルド メドレー -決戦-」はガノン城に入ってからガノンとの連戦、そしてエピローグで終わる胸熱メドレー。演奏前に青沼英二プロデューサーと藤林秀麿ディレクターの企画書解説コーナーもあってより昂まった。『ブレス オブ ザ ワイルド』のためにアーチェリーまで始めたという藤林Dの意識高い話や、初トレーラーでリンクが最後に見せる表情はドヤ顔だったのを、完成直前に青沼Pの一声でアンニュイな表情に直したという裏話も。宮本茂伝家の宝刀ちゃぶ台返しが引き継がれているのがわかるイイ話。


The Legend of Zelda Wii U Demo - E3 2014

 

音楽はゲームの一要素とはいえ、記憶を刺激し遊んだ当時の感情まで思い起こさせる、掛け替えのない要素だと再認識。次回も開催されるなら是非行きたい。

あと興奮冷めやらぬうちに『英傑たちの詩』をクリアしたい。する。そのうち。年末年始のゲームラッシュが落ち着いたら……。

 

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【名前を付けろ】『スマブラSP』初心者向けガイドと感想【右スティック使え】

大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』(以下スマブラSP)が12/7に発売されたのでこの3日間は寝食を忘れたように遊んでいる。

友人まわりやTwitterでの見知らぬ人からも購入報告が多くあがっている中、気になるのは「難しい」という声。全作触っているものの一向に上達しない私のような下手の横好きプレイヤーとしては、特に難しくなったという感触がないのだが、Switchが広く売れているだけに初めてシリーズに触れた人が多いということに加え、『スマブラSP』は遊べるモードが多いのでどこから手をつければいいのか分かりづらいのが原因だろう。

初めての人は以下の内容だけ気にすると遊びやすいと思う。

 

①操作方法を覚える

・昔のゲームと違って説明書がないのでいきなり操作方法でつまづきがち。タイトル画面を放置していると操作方法ムービーが流れるのでそれを見る(「コレクション」の「ムービー」からも同じものが見れる)。

【12/12追記】そのあと「ヘルプ」(メニュー画面でZRボタンを押すと表示される)の「オプション」内の「ボタン」から各コントローラのボタン配置を確認する。

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Joy-con時のボタン配置。持ってればGCコン推奨。Proコンでも可。

またこのとき名前を登録すること。名前はプレイヤーの上に表示できるので(キャラ選択画面で「プレイヤー1」にカーソルを持ってきてAボタンを押すと選択できる)、僅かでも対戦中の見失い防止になる。このゲームは慣れてきても本当に自キャラを見失いやすい。名前は対戦、1人用問わずどのモードでも使用できる。

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名無しだと1Pと表示

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名前登録後

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名前は最大10文字

・キャラごとに必殺技が全く異なるのでこれは「ヘルプ」から「ワザ表」を見る。戦闘中にも+ボタンを押すと読める。

【12/12追記】慣れてきたら、その他の細かい操作について「ヘルプ」の「テクニック」、「コレクション」の「スマちしき」内の「基本テク」もチェックすること。

・いろいろ読むのがだるいという人は任天堂公式チャンネルのよゐこの動画を見よう。初心者目線でわかりやすい。


よゐこのスマブラで大乱闘生活 第1回

 

②スマッシュ攻撃を覚える

・操作方法のうち、敵をふっとばすための「スマッシュ攻撃」がこのゲームのキモでありながら出しづらい。私自身、64版の時はこれが出せずに友達の家でよくボコられた。スマッシュ攻撃は「左スティックをはじく+Aボタン」。「左スティックを傾ける+Aボタン」では出ない。はじく操作を強いるゲームはスマブラシリーズしか知らない。

・スマッシュ攻撃を出すのに慣れないうちは簡易操作方法である、「右スティックを傾ける」もしくは「A+Bボタン同時押し」の方が簡単なので強くオススメ。

・なおスマッシュ攻撃は溜め撃ちができる。左スティック+ Aボタン時は「左スティックはじき+Aボタン押し続ける、からの離す」、右スティック時は「右スティックを傾け続ける、からの離す」で溜め撃ち。スキは大きいがいっぱい飛ぶので気持ちいい。

 

③目標を持って遊ぶ

・対戦相手がいる人は対戦しているだけで楽しいが、相手がいないとCPUと対戦してもオンライン対戦しても心が折れるのでまずは一人用モードから。メインのアドベンチャーモードも長大で楽しいが、トリッキーなルールばかりで最初は操作できるキャラもわずかなので、まずは「いろんな遊び」から「勝ち上がり乱闘」。いわゆる格闘ゲームのアーケードモードみたいなものなので、キャラ毎の操作に慣れやすい。難易度も細かく調整できるのではじめてでも安心。ここできっと得意なキャラが見つけられるはずだ。

・その先はアドベンチャーを遊びながらキャラクターのコンプリートを目指し、さらにクリアゲッター(「コレクション」からコンプ状況が見れる)を埋めるのを目指すと目標を持って遊べるはず。

・【12/12追記】余談だが楽曲やMiiファイターのコスチュームを集めるために、ゲームの起動時やモード変更時など定期的に「コレクション」の「ショップ」を覗くクセをつけた方が良い。

 

 

今作はいつにも増して遊べる要素が多くてごちゃっとしているが(桜井政博ディレクターのゲームはいつもそう)、スマブラはハマると奥が深くて中毒性が高い。探せばちゃんと初心者向けガイドがゲーム内にあるのだから、はじめての人も挫けないでほしい。

個人的な感想としては、前作『大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U』でこれ以上の拡張・拡大に限界を感じ、Switchにスマブラが出るとしても『マリオカート8 DX』同様の移植+αだと思っていたので想像以上に新規要素があってうれしい。が前作までと異なり、対戦ステージのほとんどが既存ステージで新規ステージは僅か、あとは有料ダウンロードコンテンツで!という割り切った作りはなんだか昨今のPS4アイドルマスターみたいだなぁ、などと思ってしまう。

別にそれが悪いと思ってるわけではなく、本当にシリーズの完成形まで来てしまったのだろうと思うと感慨深い。

 

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パルテナに憑依したセレスの食肉を阻止しろ

あとスピリットまわりの仕様が細かすぎて伝わらない任天堂大辞典みたいになってるところに桜井ディレクターのこだわりを感じる……が、スピリット戦の「塔の上でセレス(『パンドラの塔 君のもとへ帰るまで』ヒロイン)が肉を食うのを阻止するステージ」って何だよ…! それモンスターの生肉だろ! わかるけど、それはいろいろアウトだろ!!

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7年前(!)にレビューを書いてた『パンドラの塔 君のもとへ帰るまで』はWiiの名作アクションゲームだ。『スマブラSP』は思い出が多ければ多いほど楽しい。

 

公式が解釈違い『機動戦士ガンダムNT』

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11月30日から公開となった映画『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』を見た。

ガンダムの完全新作映画としては『機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-』以来の実に8年ぶり4本目となる(テレビシリーズの映像をベースにしたものやOVAの劇場公開などは除く)。それだけに期待値は大きかったのだが……。

 

物語は福井晴敏氏による『機動戦士ガンダムUC』の番外編小説『不死鳥狩り』を元に再構築したものらしく(未読)、時代背景こそ『ガンダムUC』の一年後であるものの、キャラクターやMSは一新。連邦軍兵士のヨナ・バシュタ、ルオ商会のミシェル・ルオを中心に、ユニコーンガンダム3号機フェネクスを巡るネオジオン残党との抗争が描かれる。

 

MSの戦闘シーンは非常に多く、特にコロニー内での戦闘にはグッとくるカットも一部あり『NTガンダムのプラモ欲し〜』という気分にさせられたのでまずその点は良かった。バンダイもにっこりであろう。

ただニュータイプの解釈について納得することが出来ず、シラけた気持ちが大きく膨らみ気持ちのいい観賞体験にはならなかった。

 

かつてのガンダムシリーズにおけるニュータイプは「人類が宇宙に進出した結果、感性がより鋭敏になったことで、心を通わせ、その祈りは時に奇跡も起こす」というような描かれ方だったと認識している(作品により程度の差はあれど)。今作でのニュータイプは、人智を超えたただのオカルトであり、いやそれがアクセント程度ならまあ良いかと流すところだが、物語の中心に据えられているのでタチが悪い。フェネクスはオカルトガンダムである。ターンエーガンダムよりむしろ恐ろしい。原作のみならず直接脚本も書いた福井晴敏氏の「俺ニュータイプ論」が顔を覗かせすぎである。

私自身はガンダムの生みの親であるところの富野由悠季監督を信奉しているので、富野由悠季監督同様にもはやニュータイプはどうでもいい(これ以上描く必要ない)と思っている。そのためまだニュータイプを持ち出して拡大解釈を続ける福井晴敏氏の姿勢には頭が痛い。富野由悠季氏の生き霊を降霊した大川隆法、と言ったら言い過ぎか。『最後のジェダイ』に怒る人たちに今更ながら共感を覚えてしまった。

 

それでも『最後のジェダイ』を好いているのは優れた演出が多いと思っているからだが、『ガンダムNT』の演出は平凡の域を出ない。映画のみならずアニメ初監督となる吉沢俊一氏には、よく重責を乗り切ったとエールを送りたいところではあるが、過去のガンダム映画がいずれも傑作揃いだったことを思うと、まだまだ芝居に個性が見られず残念であった。

もっとフィルムに怨念を込めてほしい。フィルムに写っていたのは福井晴敏氏の呪いだけではないか。

2018年の『2001年宇宙の旅』70mm版特別上映

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HAL9000君1号2号がお出迎え

国立映画アーカイブにて10月6日から始まった『2001年宇宙の旅』70mm版特別上映は、クリストファー・ノーラン監修の元、当時のフィルムの色合いを最大限当時のままに再現したというもの。初日には庵野秀明監督、樋口真嗣監督も観賞する姿も見られるなど、業界人からも注目を集めているようだ。

世界中を巡回している1本だけの貴重なフィルム、日本で観れるのは今回の6日間限りという触れ込みのため前売り券は即完売。完全に諦めていたのだが、どうやら朝一に並べば当日券が入手できるらしいという聞きつけたので上映2日目に並んでみた。朝の6時から。5時間並んだら本当に当日券が手に入った。

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ポスター

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スケジュール

 

私自身はDVDでしか見たことがないので当時の色合いを本当に再現しているのか、という点は正直のところ判断しかねる。けれど自宅での観賞を遥かに超える環境(しかも当時と同じく幕の開け閉め、休憩時間までも再現!)で向き合ったことで、ようやくこの映画のことを、少しは、理解できたような気がする。

なお色合いの違いは下記動画がわかりやすい。


2001: A Space Odyssey - 50th Anniversary Trailer Comparison

 

それにこの2018年に、AIが日常的な話題に挙がり、前澤友作が民間人初の月周回旅行に参加することを発表し、ボイジャー2号が出発から41年目にして太陽圏外へ旅立つ2018年に、『2001年宇宙の旅』を、70mmの重いフィルムを映写技師が15分ごとに交換しているのを想像しながら観賞するというのはなんとも詫びさびを感じる貴重な体験であった。 

70mm版は今回の6日間限りであるが、会期はまだ残っているし、10月19日からは2週間限定のIMAX上映(国立映画アーカイブより大きいスクリーンで見るならここしかない!)、11月21日には4KBDの発売も予定されている。

思い思いの最高の環境で、今改めて見ることで新しい発見がきっとあるはずだ。

 

『フリクリ プログレ』は誰がためのフリクリか

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また懲りずに期待を込めてフリクリTシャツで挑む著者近影

映画『フリクリ プログレ』が9/28に公開された。本作は2000年から2001年に発売された前6巻のOVAフリクリ』の続編企画として制作された映画のひとつで、内容的にもOVAフリクリ』の続きとして描いている、ように見える(いくつか矛盾を感じる点もあるので納得はしていないが)。ちなみに9/7に公開された『フリクリ オルタナ』はOVAフリクリ』の前日譚のようである(これも明言はされていないが)。

制作は『フリクリ オルタナ』から引き続きPloduction I.G、総監督 本広克行、脚本 岩井秀人とメインスタッフは重なるが、各話で別の監督が立てられている点は大きくことなる(映画と銘打ってはいるが、北米で先行放送された6話のアニメを連続で流すだけなので話数の区切れが存在する)。OVAフリクリ』制作スタッフはほとんど関わっておらず、鶴巻和哉がスーパーバイザー、the pillowsが主題歌・劇中歌を担当している程度である。

なお『フリクリ オルタナ』の出来が惨憺たるものだったことは以前本ブログに書いたとおり。

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まずほとんど見どころのない『フリクリ オルタナ』に比べると、見応えのあるカットはいくつかあった。1話のアバンタイトルは本作の盛り上がりを期待させるに十分な迫力ある映像であったし、1話と2話の間に流れるオープニングアニメーションは伍柏諭(ご はくゆ)が手がけているだけに『フリクリ』と『フリクリ プログレ』の間を埋める絵物語を鮮烈な映像で描いている(伍柏諭は伝説の作画アニメFate/Apocrypha』22話の絵コンテ・演出・作画監督を務めたことで名高い)。

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1話冒頭のかっちょいいメカヒドミ(『フリクリ プログレ』本PVより)

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オープニングアニメーションのアトムスクは荘厳ささえ感じる(『フリクリ プログレ』本PVより)

そして末澤慧監督による第5話は、『かぐや姫の物語』を想起させる手描きの勢いを活かした描線や、AI動画の活用、めばち(めばち (@mebachi) | Twitter)によるコミック風アニメなど実験的手法に富んでおり見応えがあった。

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荒々しい描線が特徴的な5話の井出(『フリクリ プログレ』本PVより)

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ただそれはそれとして、映画全体を俯瞰するとやはり厳しい出来と言わざるを得ない。前作ファンという無形のものをターゲットにした結果か、誰をも幸せにできない映像作品になってしまった

 

フリクリ オルタナ』はまだ、女子高生4人組を主人公に据えた物語とすることで、OVAフリクリ』とは違うものを、萌えであったり、女子の共感を得ようとする気概は感じた(それが達成し得たかは大きく疑問であるが)。

一方『フリクリ プログレ』は、主人公であるヒドミ、井出の生活空間にエキセントリックな2人の女、ハルハ・ラハルとジンユ(2人はOVAフリクリ』のハル子の分裂体であるらしい)が表れたことをきっかけに、井手の頭から多足型のロボットが表れたり、ヒドミに角が生えたりしながら、ラハルはなんやかんやあってジンユと一つになった後、目的である大海賊アトムスクとの邂逅を果たす。つまるところ、ナオ太の役割をヒドミ/井出、ハル子をラハル/ジンユに分割しただけのOVAフリクリ』の語り直しである。

語り直し自体はよくある手法であるし、『スターウォーズ』だって『ガンダム』だってやっている。だが語り直す必然性が必要だ。現代の観客に通じる要素や、解釈、技術を加える必要がある。だが『フリクリ プログレ』にはそんな必然性はまるで感じないし、むしろマイナスにさえ感じる。

 

OVAフリクリ』は各話の演出が一番の魅力だと思っているが、それを彩る脚本/台詞も大変面白かった。各キャラクターの台詞は一見、マシンガンのように繰り出される意味不明で理解不能な台詞の連続であるが、何度も見返すと意味も意図も味わい深く、散りばめられたギャグやパロディーは作り手の愛やこだわりを強く投影したものばかりだった。

一方『フリクリ プログレ』においても意味不明な台詞の多様が見られるが、本当に意味も意図もないことが一見してわかってしまうし、ギャグもパロディもまるで冴えない。脚本に引っ張られるかのように(上記の一部を除いて)演出も淡々としており、各話で監督を分けて個性を出すことにも成功していない。

 

背景美術が酷いのも気に触って仕方なかった点だ。OVAフリクリ』では『機動警察パトレイバー the Movie』も手がけた名匠・小倉宏昌(アニメ『SHIROBAKO』でも小倉正弘としてネタにされていた人物)が美術監督を務めることで、独特で余白の多い、故にどこか懐かしい世界観を形作るのに一役買っていた(鶴巻和哉はインタビューで、背景を写実的にしないことで漫画的表現を目指していたと述懐している)。

フリクリ プログレ』は背景を写実的にしない点こそ真似てはいるが、漫画的であることを履き違えた、ただただ拙く、幼稚でデッサンのおかしい背景が延々と続くので気が狂いそうになる。同じく拙さは感じたものの、『フリクリ オルタナ』はパステル調な別の方向性を目指しているだけまだマシであった。

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見つめていると気が狂う1話背景(『フリクリ プログレ』本PVより)

庵野秀明の言葉を借りるなら「背景美術が作品の世界を決める」のであり、そこの手を抜かれると脱力するしかない。『フリクリ プログレ』をもしこれから観る方がいるなら、背景、特に1話の街並みや2話のスラム街、3話の浜辺は要注目である。

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フリクリ プログレ』は全編を通して、ただただ『フリクリ』を上っ面だけで舐めて真似しました、以上の意思が感じられない。それは語り直しではなく、劣化コピーであり、出来の悪い二次創作だ。そこには現代を生きる人間に、若者に向けた視点や、物語、メッセージを露程も感じられない。当時中学~高校時代を過ごしていた私に大きな爪痕を残した『フリクリ』とは、明確に異なる。

これは想像でしかないが、『フリクリ』には海外にファンが多いという話を聞くに、今回の2本の映画も海外ファンを意識して制作されたのであろう。ただ、「海外のファン」というふわっとした存在をターゲットにした結果、明確な意思も意図もない、誰も満足させられない映像が生み出されてしまったように思える。これは同じくProduction I.Gが手がけた『攻殻機動隊 ARISE』でも感じたことであるので、「またか……」という想いで一杯である。

 望まないが、次があるなら、同じ轍を踏まないことを願う。

 

今回の映画化2本立て企画は大失敗だと思うが、OVAフリクリ』の新作グッズを沢山作ってくれたこと、そして積極的に見直す機会を与えてくれたことだけは、感謝しておきたい。

 

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荒んだ心は劇場版『若おかみは小学生!』公開記念原画展(有楽町マルイで10/8まで開催中)で癒やされた。若おかみはいいぞ。

 

息づくスタジオジブリのDNA 映画『若おかみは小学生!』

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この卵焼き作画がすごい2018(本予告のキャプチャーより)

10年も前にDVD屋でバイトをしていたころに「スタジオジブリ作品と勘違いされる映画No.1」の地位に燦然と輝いていたのがマッドハウス制作・高坂希太郎監督による『茄子 アンダルシアの夏』だった。

高坂希太郎監督は『耳をすませば』以降多くのジブリ作品で作画監督を務めていただけにキャラクターが宮﨑駿作品に自然と寄ったのだろうと思うが、キャラクターの芝居や、特に自転車の機構まで緻密に描写する作画など、内容にしてもさすがジブリを背負う高坂氏ならではの見どころの多い映画だった。……そんな高坂希太郎監督の15年ぶりの映画が『若おかみは小学生!』だ。

www.waka-okami.jp

脇を固めるメンバーも錚々たる面子。作画監督は映画『君の名は』、『コクリコ坂から』の廣田俊輔、脚本は『ガールズ&パンツァー』シリーズや、映画『聲の形』、『リズと青い鳥』の吉田玲子、音楽はゲーム『MOTHER』や映画『東京ゴッドファーザーズ』の鈴木慶一

原作は青い鳥文庫で刊行されている児童文学で、今年4月から9月までTVアニメも放映されていた。通常こういった映画はTVアニメの番外編や総集編であることも多いが、今回はTVと映画で同じ原作小説を元にしながら、全く別の作品として制作されているので、私自身原作やTVアニメ版未見であるものの特に予備知識なく見ることができた

 

この映画で特筆すべきはその細やかな芝居だ。両親と死別した主人公の小学生・おっこが祖母の旅館で若おかみを務める、というのが筋書きだが、このおっこの一挙手一投足がすごい。高く蹴り上げる廊下の雑巾がけや、両親の布団に足元から潜り込むカットには特にシビれる。 

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この蹴り上げの高さよ(本予告のキャプチャーより)

もちろんそこまで注視せずとも、コロコロと変化する表情や動作におっこの快活さが自然と表れている。おっこの顔はデフォルメが効いていて目がクリっと大きいが、それを強調し、かつ破綻しない寄りめのカットが多いのも見どころ

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寄りのカットが面白い(本予告のキャプチャーより)

 

おっこ以外に目を向けると、板前の康さんの卵焼きを切る仕草や、菜箸での盛り付けといった細やかな所作にプロ意識が見える。眼鏡ダンディな旅館のお客様たちの横顔は、メガネの厚さによる輪郭や瞳の歪みまで表現している(これは高坂監督が作画監督を務めた『風立ちぬ』でも絶賛された技法)。

ここにあげたのは一例で、どんなキャラクターの芝居にも一貫して魂が、それはもしかしたらスタジオジブリ作品で息づいていたDNAが、息づいているのかもしれない(ジブリ作品の経験がある作画スタッフも多く参加しており、そういった面々の力も大きいのだろう)。

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ジブリ顔のパパとメーテル顔のママ(本予告のキャプチャーより)

 

クオリティを重視した児童文学の映画化というと(ジブリ作品を除くと)、片渕須直監督の『アリーテ姫』や『マイマイ新子と千年の魔法』を思い出すところだが、原作の知名度の低さや、大人向けのストーリーやキャラクターというところで興行的にはパッとしない印象だった。

だが『若おかみは小学生!』については、子供への目配せも行き届いており、キャラクターデザインは原作イラストやTVアニメ版に寄せた可愛らしいテイストであるし、ストーリーは特に前半、おっこと幽霊たちとの絡みがコメディ色豊かに描かれている。また後半は一変して、おっこと死別した両親との関係性にフォーカスしており、大人でも涙なしには見ることができない。親子と生死をテーマにしているという点では映画『リメンバー・ミー』とある種対比して見ることもできるし、超えている点も少なくないように思える。

 

タイトルに「小学生」と入っているため躊躇する大人は多いだろうが、そんなことは気にせずに良い芝居、良い映画を求めて劇場に足を運んでもらいたい。今年ベスト映画候補と言っても過言ではない。もちろん子持ちの方は、ぜひ連れ立って見てもらいたい。

そして最後に。黒ロン(黒髪ロングのこと)が好きな人は絶対に見ること。グローリー・水領さんにヤラれるはずだ。私はヤラれた。

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グローリー・水領・かっこいい(劇場で販売中のポストカードより)

 


【公式】『若おかみは小学生!』9.21(金)公開/本予告