もう4回目になる『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』の話だが、今回は「庵野秀明の匂いがするから好き」という話をしたい。
そりゃ当たり前だろうと思うかもしれないが、新劇場版シリーズは庵野総監督の匂いが希薄だと思って見てきた。
庵野総監督の作風にはいろいろな見方があるだろうが、個人的には
- ロマンあふれるSFマインド
- 理屈抜きにかっこ良さを追求したアニメーション
- 既存のアニメ文法から逸脱した手法
- 監督自身の深層心理の発露
の4点だと思っており、このあたりが良い塩梅に煮詰まった『トップをねらえ!』~『彼氏彼女の事情』期の庵野作品が好みどんぴしゃだった。
ただ新劇場版シリーズを見ていったとき、
『ヱヴァ:序』は後半のヤシマ作戦の絵コンテを担当した樋口真嗣さんお得意のSF×軍事作戦感が印象的だし、
『ヱヴァ:破』は軽妙なノリとメリハリのあるアクションが鶴巻和哉監督の作風だし、
『ヱヴァ:Q』の邪悪で退廃的な世界感はイメージボード、デザインワークスも手掛けた前田真宏監督の映画だと思った。
それぞれの作品に庵野総監督の意思はもちろん感じるのだが、自身の作風は表に出さず、むしろ上記のメインメンバー及び周囲のスタッフを立て、名刺代わりになるよう、敢えて抑え込んでるように思えてならなかった。
それが『シン・エヴァ』に至っては、庵野秀明が解放されていた。
見たことないようなアクションシーンはおなか一杯になるまで見せてくれるし、バーチャルカメラも使用しながらプリヴィズから画コンテを起こしたという制作手法は従来の国産アニメの作り方から逸脱している(バーチャルカメラは『ライオンキング(2019)』や『マンダロリアン』でも使用されており、ディズニー+配信中の『マンダロリアン』メイキング映像でその手法が確認できる)。
そして『トップをねらえ!』はじまったか?とさえ思わされるSFワードの乱舞に、危うい心理描写である。これこそ見たかった庵野秀明映画だ!と終盤は拍手喝采したい気持ちでいっぱいだった。
世間では「庵野は変わった」なんて声も聞こえてくるが、むしろブレない、もしくは基本に立ち返った、庵野秀明総監督の姿を『シン・エヴァ』で見ることができた気がする。
今日話したかったのはこれぐらい。