ユウキズ・ダイアリー

アニメ・映画・ゲームについての雑記

『君の名は。』は興行収入100億円を超えるのか ―国産アニメ興行収入比較―

君の名は。』は興行収入100億円の大台を超えるのでは?という妄想に取りつかれたのは、好きすぎて慣れない映画レビューを書いてしまったり2週目にして興行収入38億円超えというニュースを見たからなわけだが、実際にその可能性の有無を国産アニメ映画の興行収入推移と比較して検証してみた。結論からを先に言うと、可能性は大いにあると感じている。

 

  • 比較対象

過去10年間の国産アニメ映画の国内興行収入上位8本と、『君の名は。』を合わせた計9本の週間興行収入推移を折れ線グラフにより比較することとした。中途半端な本数だが、『バケモノの子』は超えるだろうと想定してそれ以上の興行収入の映画を選定している。なお、本来入れるべきである『ONE PIECE FILM Z』(興行収入68.7億円)の存在が頭から抜け落ちたままグラフを作成してしまい修正がめんどくさい難しいところまで来てしまったので、ワンピ抜きのグラフとなっていることを了承願いたい。

 ・崖の上のポニョ(2008)155億円

 ・風立ちぬ(2013)120.2億円

 ・借りぐらしのアリエッティ(2010)92.5億円

 ・STAND BY ME ドラえもん(2014)83.8億円

 ・映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!(2014)78億円

 ・ゲド戦記(2006)76.5億円

 ・名探偵コナン 純国の悪夢(2016)63.1億円

 ・バケモノの子(2015)58.5億円

 ・君の名は。(2016)38.7億円(2週目まで)

 

  • 結果

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赤い線が『君の名は。』を示したものである。上記8作と遜色ない、どころかかなり好調な推移をしており、『崖の上のポニョ』と『妖怪ウォッチ』に近い推移をしていることがわかる。

 

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2週目までの結果を拡大したのが上の図だ。『君の名は。』1週目は3日間集計となっているため他の映画と単純比較できないものの、名探偵コナンと同等のスタートを切っているいる。それに対し2週目までの累計興行収入を見ると、過去10年間のどの国産アニメ映画よりも勝っていることがわかる。

 

  • まとめ

君の名は。』の2週目までの興行収入推移を上記映画と比較すると、崖の上のポニョ』と『妖怪ウォッチ』の推移に近く、2週目までの成績はどの映画よりも勝っていることがわかった。

なお、この近い推移の近い2作品の間には最終的な興行収入に大きな隔たりがある。『崖の上のポニョ』はスタジオジブリ作品であるためロングランヒットに成功したのだが、一方ターゲット顧客を子供・家族層に絞っている『妖怪ウォッチ』は4週目、冬休みの終わりを境に失速している。

2週目までの記録的な成績が今後の傾向にどこまで影響するのかは未知数だが、口コミでの評判が非常に良く、平日夜でも満席の映画館が多いという話を聞くに、スタジオジブリ作品に近いロングランヒットの可能性は十分にあると感じている。

以上より、妖怪ウォッチ』とそれに近い『ドラえもん』を抜くのはほぼ確実、上位ジブリ陣にどこまで迫るのか、ひょっとすると100億円を超える可能性はおおいにあり得る、というのが現在の想定である。

いずれにせよ、『妖怪ウォッチ』や『ドラえもん』のような人気IPを利用した映画ではなく、スタジオジブリという強力な看板を背負ってもいない映画がこれほどまでのヒットとなるのは異例の事態である。また、もし100億円の大台を突破することができれば、国内興行収入ランキング30位、国内邦画興行収入ランキング9位にも入る大快挙となる。今後の推移が非常に楽しみだ。

 

2016年9月23日追記

100億円超えました。

「君の名は。」が興行収入100億超 - 共同通信 47NEWS

 

『君の名は。』を傑作たらしめる3つのしかけ

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新海誠監督の最新作『君の名は。』を公開初日に鑑賞。上映後、隣席の女性二人の会話が耳に入ってきた。

 「超よかったね……」

 「うん……」

 「50回くらい泣いた……」

 「今まで見た映画で1番良かった……」

これがいわゆる粟と稗しか食べたことがないってやつか!と一瞬思いかけたが、私の体は正直なのでとめどなく流れる涙と鼻水を拭うので必死になっていた。ごめんおじさんわかるよ君たちの気持ち。1番かもしれない……。

君の名は。』は過去作と比べて何段階もの飛躍を果たした、新海誠監督の新しいスタートラインとなる作品であり、監督自身の歴史に、そして日本のアニメ史に刻まれた傑作となったと思う。また作品としての質もさることながら、公開2日間で7億円の興行成績を叩き出していることから、監督史上最大のヒット作となることは確実となっている。

なぜここまでの傑作となり、大ヒットとなり得たのか、と考えてみると、監督自身の経験と配給会社東宝の歯車がガッチリ噛み合った結果、特に3つの要素が有機的に結び付いて成功を導き出したのではないだろうか。

 

1.普遍性のある物語

新海誠監督の作品といえば、これまで「男女の距離感」「出会いと別れの奇跡」といったテーマを繰り返し語ってきており、特殊な設定を軸に物語られるそれはいわゆる「セカイ系」に類するものである。これは個人製作からアニメ作りをスタートした監督ならではのテーマではあるが、大きな商いができるものではなく、それゆえに小規模な館数でしか封切られず、知る人ぞ知るアニメ監督という体でしかなかった。

このままでは監督は埋もれしまう、と強く思ったのは2013年に公開された、長編映画としては前作にあたる『星を追う子供』の時である。自身初となる異世界ファンタジーを描こうとした点は大いに評価すべきであろうが、焦点を見失った物語は普遍性を獲得するに至らず、『ゲド戦記』の二番煎じとでも言うようなそれはひどいものであった。監督はそれまで一人で原作・脚本も手掛けてきたが、もうそれは限界で、宮崎駿監督にとっての鈴木敏夫プロデューサーのような優秀なアドバイザーに出会えないと、今後の飛躍は不可能ではないかと思ったものである。

しかし今回は違った。「男女の精神が入れ替わったドタバタから、互いに意識するようになる2人」というある種手垢のついた筋ながら、監督のテーマ性で包み込んだそれは新鮮でピュアな輝きを獲得しており、さらに後半のスペクタクル展開はこれまでの作品にはない新境地であるし、テーマに一層の重みを与えることに成功している。これが普遍性だ。日本の、世界を席巻する娯楽映画になくてはならないものであり、かつてのスタジオジブリ映画が獲得し、現在も細田守監督が掴んだり失敗したり悪戦苦闘しているそれである。

なぜ今回ここまでの強度の高い物語を獲得できたのかを紐解くと、パンフレットに監督自身のこんなコメントがある。

それで『星を追う~』を作り始めた35、36歳くらいの時期から、物語を作るということを一から自分なりに勉強し直しました。今更ながらですが、脚本術の本を読んだり、古典を読み直したり。その上で『星を追う~』という作品を作って、ある程度の手応えも感じられた。それでも公開したら、『秒速5センチメートル』のときと同様に、観客には自分の意図が思うように伝わっていない感覚が残ってしまった。どうしたらもっとううまく語れるのか。そう思いながら次の『言の葉の庭』を作り、その前後にも30秒のCMや小説等で、物語を作るということに向き合い続けました。

またアニメ!アニメ!のインタビューでもこのように語っている。

──新海監督の過去作と比較すると『君の名は。』はエンタテイメント色が強い作品だと思います。制作においてこれまでとの大きな違いは何でしょうか?

脚本段階に関していえば、プロデューサーの川村元気の存在が大きかったですね。東宝から川村さんを紹介したいと言われたのがきっかけでご一緒することになったのですが、彼のようなタイプのプロデューサーは初めて。とても刺激的な経験でした。

──川村さんのどんなところが新海監督にとって新鮮でしたか?

色々 なサジェスチョンをくれるんですよ。脚本を書き進める中で、川村さんが「こことここのピークが離れているけれど重ねたほうがいいと思う」であるとか、「三葉と瀧の入れ替わりは開始15分に収めないと退屈なんじゃない?」とか、構造的な部分で色々なサジェスチョンがありました。これにとても助けられたのが、 これまでの映画づくりと最も異なる点だと思います。

アニメスタジオ出身ではない監督はこれまで誰にも師事せず作品作りに邁進してきたわけだが、過去作の反省を活かし、不断の努力で脚本術を磨いてきたことがわかる。そして作品作りに至っては、近年の東宝のヒット作を多数輩出してきた川村元気プロデューサーとの相乗効果で、普遍性を獲得できたことがわかる。ようやく監督にとっての優秀なアドバイザーを獲得できたのだ。

 

2.極上の品質

いくら物語の幹となる脚本が素晴らしく、監督の持ち味である背景美術の美しさがあっても、作品を支えるスタッフィングが機能しなくては映画の品質を上げることはできない。その点今回は、情報公開時にキャラクターデザインを『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』の田中将賀氏が手掛けることで、若い世代を中心にウケの良い絵面になることはわかっていたし、作画監督を日本屈指のエースアニメーターである安藤雅司氏(スタジオジブリで『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『思い出のマーニー』の作画監督を務めている)が担当するとあっては、作画品質が最上になることは確信していた。

蓋を開けてみると原画マンとして錚々たるメンバーが参加し、全編ハイクオリティな仕上がりとなっていた。かつては美術はすごいけどキャラはあと一歩、という印象が強かったが監督の作品だが、今回に限っては映像を構成するすべての要素が一体となって、映画の品質を向上させることに成功している。これはやはり監督のこれまでの作品への評価、東宝の出資力の賜物なのであろう(あと公開時期周辺に大作アニメ映画がなかったから、という影響もあると思う)。

以下はスタッフリストから抜粋した原画マン、いずれも有名アニメの作画監督クラスのエース級の方たちである。私自身がパッと見でわかる方のみ抜粋したものであるが、こういった名前から一本一本の線が生み出された経緯を想像しながら見るのもまたアニメの楽しみである。

新海誠作品常連系:土屋堅一、西村 貴世、田澤潮、四宮義俊

・元ジブリ系:廣田俊輔、稲村武志、田中敦子

・I.G.系:黄瀬和哉、中村悟、沖浦啓之

・シャフト系:龍輪直征

・A-1系:錦織敦史谷口淳一郎

・フリーアニメーター系:井上鋭、濱洲英喜、松本憲生橋本敬史

特に田中将賀氏については、以前新海誠監督と手掛けたZ会のCMが本作と符合する点が多いので比較しながら見ると面白い。作画監督も務めているのでより「らしい」絵柄になっている。

www.youtube.com

また四宮義俊氏は過去に新海誠監督の短編『言の葉の庭』のポスターイラストを手掛けている他、監督としてCM「Mottainai」を制作。新海誠テイストの仕上がりになっているのでこちらも要チェックである。

www.youtube.com

 

3.東宝の配給力

作品の質が極上となればヒットするのかというとそういうわけでもない。宣伝力、公開館数という絶対的な大人の力に左右されるのだが、今回東宝は大博打を打った。前回東宝と組んだ短編『言の葉の庭』では23館での公開だったのに対し、296館でのスタートである。やはりそこには東宝の、ひいては川村元気プロデューサーの慧眼があったとしか思えない。

また各種タイアップによる大規模な宣伝活動も各地で行われている。その中でも全車両を広告で貸し切った山手線に乗ることができたのだが、3画面構成の予告 映像も見ることができた。単純に3画面で同じ映像を流すのではなく、時には異なる映像を対比的に映す効果的な演出が感動を増すものになっている。

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幸い9/2までの間、新宿ユニカビジョン(西武新宿駅前から見えるやつ)で同様の3画面予告が見られるので都内在住者にはぜひその目で見てもらいたい。

 

まとめ

今回、新海誠東宝の思惑が合致した結果、物語、品質、配給力すべての要素が結実し『君の名は。』という傑作が生まれるに至ったと考えている。

監督自身も朝日新聞8/27夕刊において

「自分としても40代のうちにあと2本は東宝で作りたい」

 とのコメントを残しており、やはり成功体験となったことを自覚しているのであろう。花開いた才能・新海誠監督と、それを見出した東宝がこれからどんな作品を私たちに見せてくれるのか。

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楽しみで仕方がない私は、買い漁った関連書籍に目を通し、映画館に通iい『君の名は。』をこれから何度でも反芻したい心境である。

宇宙は美しくて退屈 『No Man's Sky』発売直前レビュー

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国内PS4版を明日に控える今夏最も話題のゲーム『No Man's Sky』。既に販売が開始されているPC用ゲーム配信サイトSteamでは今年最大の同時接続者数を記録したとも喧伝されており、世界的な注目の高さがうかがえます。

幸い今年のというか毎年お盆休みは何の予定もなかったため、山にも海にもプールに行かず『No Man's Sky』で一人黙々と宇宙探査に励んでいました。いやー、予定がないって素晴らしい。ただゲームの内容自体は、良くも悪くもプレイ前に想像していた通りだったことを最初に報告しておきます。

dic.nicovideo.jp

 

  • 『No Man's Sky』とはどんなゲームなのか

このゲームが注目を集める由縁は、1844京6744兆737億955万1616個もの惑星を冒険できるという未だかつてない大規模なゲームだからです。惑星はプロシージャルに(一定の計算に基づいて)生成されるため、一つとして同じ星はないとか。なんというか、想像を絶する技術です。こんなゲームを遊べてしまう世の中になったことが、遊んだ今でも信じられないぐらです。

もちろん惑星はただ浮いているだけでなく、プレイヤーが着陸できるし、動植物が生息しています。ゲームの目的は、新種生物・鉱物を発見しお金を貯め、鉱石を採掘して燃料を稼ぎ、179,000光年の彼方にある宇宙の中心を目指すことです。

179,000万光年って何……?という感じですが、とにかくこのゲームはあらゆる点が大規模で、となりの惑星までリアルタイムに2時間かかったりします。そんな距離も燃料を使ってとばせば1分に縮まるので不便なこともなく、宇宙の広大さを思う存分味わうスパイスになっています。

 

  • 『No Man's Sky』は美しい

各惑星は地球では見たことのない色彩、動植物にあふれており、目を奪われることが幾度となくありました。ゲーム内を観光するのが好きな私はプレイ中、カメラ片手に、じゃなくてスクリーンショットボタンに指を置いてカメラ小僧と化していました。

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  • 『No Man's Sky』は退屈

しかし、いくつかの惑星を渡り歩いていると、気づいてしまいます。確かに大なり小なり違いはあれど、そんなに変化がないことに。

現実の惑星は、もちろん地球は変化に富んでいますが、それは文明と生物の宝庫だからであって、他の惑星は何の感動もない陸地が続いているだけです。たぶん。行ったことありませんが。

『No Man's Sky』に出てくる惑星には文明というものがありません。だから生物と陸地に思いを馳せるしかないわけですが、プロシージャルという神の見えざる手は、どの惑星も「同じ感じ」に生成してしまいました。広大な宇宙空間を産んだ功罪です。見たことのない景観は、プレイしているうちにどの星にもあるお馴染みの景観と化してしまいます。

大きすぎる星、小さすぎる星、生物の住めない星、強敵のいる星、原始人のいる星、超文明の発達した星……ゲームなんだから色々あってもいいものを、色々はありませんでした。

 

  • 宇宙にロマンを求める人へ

というわけでこのゲームは『太陽のしっぽ』です。原始時代を駆け回るだけの彼のゲームのように、広大な宇宙―1844京6744兆737億955万1616個を擁する銀河―をひたすら突き進むゲームです。

そこには何もないかもしれませんが、それこそが最大の魅力。正直言うと私自身、すでにこの『No Man's Sky』宇宙には飽きてしまいましたが、飽きるまでには長い至福の時間があったのもまた事実です。値段分は楽しみつくしました。

なので私は万人におすすめはしません。ですが宇宙にロマンを求める人は、絶対に感じ入る部分があるはず。SF映画の中でも『2001年宇宙の旅』と『インターステラー』が好き、なんていうSF耐性のある方にはぜひ手にとってもらいたい次第です。

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怪獣王が目覚めさせた庵野秀明  『シン・ゴジラ』レビュー

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シン・ゴジラ』を初めて映画館で見たとき、溢れ出る涙が止まらなかった。クライマックスとかエンディングではなく、もう最初の最初、ゴジラの尻尾が海面に現れたあたりから。胸の中を1つの気持ちが満たしていたからだ。

「ああ、ゴジラ庵野が帰ってきた」

 

私がゴジラに出会ったのは幼稚園児の頃に映画館で見た『ゴジラVSキングギドラ』。怪獣を見るのが初めてだったばかりか、未来人も恐竜もサイボーグもてんこ盛りのトンデモストーリーに熱狂した幼少の私は、ムック本を飽きることなく読み耽りすっかりゴジラ大好きキッズになっていた。その後も毎年量産される『VS』シリーズを観賞するのは我が家の恒例行事となったのだが……、シリーズは『ゴジラVSデストロイア』で突然の終止符を迎えた。それ以来、日米を跨いで何度か復活を遂げてはいたが、技術的にも内容的にもリアリティを感じない『ゴジラ2000 ミレニアム』で日本製ゴジラにはすっかり辟易してしまったし、2014年のギャレス・エドワーズ監督の『ゴジラ』も映画としてはよくできているが、自分の見知ったゴジラとは同じ怪獣には思えなかった。

私の中のゴジラは1995年以降、眠りについたままだった。

 

そして庵野氏本人も、長いこと眠りについていたのだと思う。

ゴジラと入れ替わるかのように、リアルタイムでエヴァンゲリオンを視聴していた私ではあるが、小学4年生当時の身では終盤の展開には全く理解が追いつかず、あまり傾倒するようなことはなく社会現象を一歩引いた目線で見ていたに過ぎなかった。

ブームが去ったあと、庵野氏の作品は幾つも視聴し、エヴァンゲリオンも見直して、不世出の天才だと思うに至ったのだが……、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』として戻ってきたエヴァには、どうにも庵野氏の匂いが感じられずにいた。シリーズで1番好きなのは『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』だが、新キャラマリや『破』独特の軽妙さは鶴巻和哉監督作品のもつそれだし、それこそ『序』は後半のコンテを切った樋口真嗣氏の、『Q』は新参戦の前田真広監督の匂いが色濃いと思っている。そこには初監督アニメ『トップをねらえ!』から、テレビアニメ監督作としては現在最後となっている『彼氏彼女の事情』まで紡いできた庵野氏の美学が、魂がこもっておらず、お仕事として、エヴァンゲリオンを終わらせようとしているだけに感じられてしまった。実際のところ、『Q』制作後は鬱になってしまい、シリーズを停滞させてしまったことを後述している。

 

そんな庵野氏が総監督として、ゴジラを目覚めさせてくれた。私が『シン・ゴジラ』に感激したのは、「庵野秀明が全力で好きなものをさらけ出して、怖いゴジラを撮ってくれた」からだ。

今回のゴジラに対して、やれ震災がどうだ、九条がどうだ、右だ左だという批評も多く上がっているようだが、そういった裏読みは本質ではないと思う。今の時代に最も観客を震え上がらせる怖さを持っているのが地震津波放射能汚染という3.11の記憶であり、それをメタファーとすることで「怖いゴジラ」、幼少の時分では確かに思っていた、怖くて、強くて、かっこよくて、神々しい、そんなゴジラをもう一度スクリーンに呼び戻してくれただけなのだ(もちろん裏読みしたい人には勝手にどうぞとぶん投げてもいるのだろう)。

またそういった3.11後のゴジラという大義名分を笠に着て、庵野氏がやり遂げたのは全力の自己表現だ。開始5分で次々と繰り出される庵野氏の得意技(素早いカット割り、独特のレイアウト)や、画面を埋め尽くすガジェット(自衛隊の各戦力や、工場、鉄道、電線、プロトンビーム、モニタに映るアニメ、ファイルの表紙に踊る2199の文字に至るまで)には監督の愛と遊び心と、自身が見たいもの、見せたいものを目一杯詰め込んだのだろう。それらは巨匠から継承したスキルであったり、自身のただの趣味ではあるが、アニメという、エヴァという枠のなかで培われたものを実写映画の世界で昇華することで、今まで表現したかった、できなかったことをあらん限りの力で実現できたのだと思う。

ゴジラ庵野氏自身をも目覚めさせてくれたのだ。

 

『VS』シリーズを見て育った私としては、怪獣プロレスもまた見てみたい。『シン・ゴジラ』でハードルの上がった観客の目を満足させなくてはいけない東宝はこれから大変だろうが、今作に負けない「リアリティのある怖さ」を持った怪獣映画をこれからも生み出してもらいたい。

ただそこには庵野氏は必要ないと思う。役目を果たした庵野氏は自分の会社カラーで『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』を終わらせて、その先も見据えてほしいと思うのがファンとしての願いだ。カラーの近作としてはPS4ソフト『GRAVITY DAZE 2』の同梱アニメや、短編アニメ『機動警察パトレイバーREBOOT』(エグゼクティブプロデューサー庵野秀明!)などが予定されている。既にエヴァだけの会社ではないのだ。

既に『もののけ姫』当時の宮崎駿氏と同じ年齢、とすると作家人生はあと20年ほどかもしれないが、目覚めた庵野氏がこれからどんな映像作品を残していくのか、楽しみで仕方がない。

 

これはまさに"海ノ旅ビト" 『ABZŪ』レビュー

夏といえば海。海といえばそう、海洋探索アドベンチャーゲーム『ABZŪ(アプスー)』の、PCゲームサイトSteamでの配信が始まりました。

公式サイト

 

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『ABZŪ』は何といっても、アーティスティックな海の描写が格別。『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』を想起させる温かみのある映像表現で作り込まれた海の世界は、これまで生み出されたどんなゲームよりも、いやこの世界に広がるどんな海よりも美しいと言っても、言い過ぎではありません。息を呑む美しさとは、まさに『ABZŪ』のためにある言葉です。

 

このゲームをプレイしたきっかけは、PS3の傑作『Flowery』『風ノ旅ビト』でアートディレクターを務めたMatt Nava氏の率いる新興スタジオGiant Squidのデビュー作だから。遊んでみると確かに、短時間のゲームプレイに美しい描写をぎゅっと詰め込んだ点は過去作ゆずりです。大きく違うのは「密度」と「変化」でしょうか。

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画面いっぱいに多彩な海洋生物を映し出すのは相当な演算処理が必要なはず。PS3では表現できなかったことでしょう。

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また過去作はいずれもシンプルな世界感でしたが、今作は彩り豊かな生き物たちで溢れかえっています。彼らの存在により画面が絶えず変化するので、ぼーっと眺めていても飽きることがありません。

ただあんまりにも過去作に寄りすぎているきらいもあります。ゲームの展開が『風ノ旅ビト』そのもの……。ただもうそこは、砂漠が海に変わった続編と思うことにしました。私は『風ノ旅ビト』大ファンなので問題なし。過去作に触れていない人は新鮮な気持ちで驚きをもってプレイ出来ることでしょう。

 

本作は現在Steamで英語版のみ購入可能。海外ではPS4でも配信中ですが日本からは買えず、国内販売予定も未定、とハードルは少々高いですが、台詞は一切なく、画面に出る文字は魚の名称くらいなのでSteam版でもプレイには全く支障はありません。

プレイ時間は駆け足でクリアすると映画1本分くらい(社会人に優しい)。短くとも濃密なゲームプレイは、値段分以上の満足感を得られるはずです。

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過去作や、『ICO』のような所謂「雰囲気ゲー」が好きな人には、この夏1番のおすすめです。

夏のアキバで波動拳! 「UNITY VR EXPO AKIBA」レポート

遠くアメリカ・ロサンゼルスで格闘ゲームの祭典「EVO2016」が開催されていた7月17日、私も秋葉原波動拳にいそしんでいました。

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というわけで「UNITY VR EXPO AKIBA」に行ってきました。

この展示会はUNITYで制作されたVRゲームを実際にプレイできるというもの。Rift、Viveが発売されたこともあって関心が高まっているのか、出展数も来場者も非常に多く、熱気に溢れている印象でした。

会場でプレイできたタイトルそれぞれの感想などを書いてみたいと思います。

 

  • 『HADO』

www.youtube.com

公式サイト

ハード:スマホ

ポケモンGOでも話題になっている、現実空間にゲーム映像を映し出すAR技術を使った2on2のバーチャルスポーツゲーム、とでも呼べばいいのでしょうか。顔に装着したスマホにバーチャル映像の乗った現実世界が見え、そのまま体を動かして対戦をするというとても新鮮な体験でした。

なお冒頭の写真は手に巻いたセンサーを反応させてHADOを放っている私。画面上にはHADOがちゃんと見えたんです。本当ですってば。

 

ハード:Vive

フィットネス機器JOVAに乗って体験する『パンツァードラグーン』。

これが初めてのViveに触れる機会でしたが、Riftよりも確かに視野が若干広いし、モーションコントローラの精度もぴったりでとても良いものでした。うちわで風をあおいでくれるお姉さん効果でとても快適な空の冒険を満喫。

 

ハード:スマホ

視線の先の物体の名称を英語で知ることで英単語を覚えよう、という目的の英語学習アプリ。VRを知育に活用するという観点に驚き。

 

  • 『アニュビスの仮面』

www.youtube.com

公式サイト

ハード:スマホ

世界で唯一のVRボードゲーム! 1分間だけVR空間をのぞき込んで自分の周りの状況をみんなに言葉で伝える、ということを複数人で繰り替えしてダンジョン全体をマッピングするという、ダンジョンRPG好きとしては堪らない協力型ゲームです。

スマホVRの操作性の悪さを逆手にとってゲーム性に落とし込んでいるのがお見事。そして制作した濱田隆史さんが元ハル研究所社員と知って納得。

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あんまり惚れ込んだので会場で買おう、と思ったら完売だったのでイエローサブマリンまで行って確保してしまいました。もっと遊びこんでみようと思います。

 

  • 『忍VR』

ハード:Rift

自分の前に3方向から迫ってくる敵を倒す単純なディフェンスゲームと思いきや、Rift前面に取り付けたLeap motionにより、手で結んだ「印」を読み込み連動した忍法を放つという斬新なシューティング。

Leap motionの精度がとても高いおかげか、思った通りの忍法が出せるのがとても爽快。これあればOculus Touchいらないやんけ!って思いましたが、Leap motionの認識範囲から手が離れたら読みこなまくなるとか問題もあるんだろうなあ。

 

  • 『LABOTA』

ハード:Vive

Viveのモーションコントローラを使って、VR空間内でミニ四駆を組んだり疑似的にプログラムを組んだり。電池を入れたらあらぬ方向に走ってしまったミニ四駆に思わず笑ってしまった。開発の方たちも笑っていた。これは楽しい。

ものをつかむ感触まで伝わってくるようでViveコンの面白さを再認識しました。あー、Viveも欲しい。

 


まとめ

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これまで参加したVRの体験会では「個人で遊ぶ新しいゲーム機」ぐらいの観点でしか捉えていませんでした。

ですが『HADO』『アニュビスの仮面』のように見せ方の面白いもの、『えいごーぐる』『LABOTA』のように知育・学習方面に特化したものなどを見ると、VRを多様な場面に活用しようという、業界の発展性みたいなものが感じ取れてとても興味深いイベントでした。自分がRiftを手に入れてそういうものを見る余裕が出てきたから、かもしれませんが。

『HADO』に至っては既にナンジャタウンゴジラコラボイベントの一環として遊べるようになっているようです。夏の思い出にみんな撃ちましょう。波動拳

 

event.namco.co.jp

 

Oculus Riftを買うべきではない5つの理由と、それでも魅力的な3つのソフト

『アイドルマスター シンデレラガールズ』のVR対応ソフトも発表され益々話題沸騰のVR界隈ですが、私はいち早くVRヘッドマウントディスプレイ(以下HMD)を手に入れることができました。Oculus社製の『Rift』です。

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この『Rift』は、2014年春のニコニコ超会議で心を奪われてから約2年間待ち焦がれ、製品版予約開始日に即ポチって手に入れた念願の代物。もう興奮が抑えきれず諸々環境を揃えてからこの1週間は寝る間も惜しんで触り倒しました。現在最高に楽しんでいます。

ですが……現状この『Rift』には超えなくてはいけないハードルと欠陥が多すぎます。決して万人には薦められるものではありません。とはいえ永年ゲームに触れ、バーチャルリアリティに憧れ続けた私にとっては、非常に魅力的なハードウェアであることもまた事実。

せっかく手に入れた高価なおもちゃですので、良いも悪いもひっくるめて、この『Rift』を解説したいと思います。

 

 

1.VRHMD、そして『Rift』とはそもそも何なのか?

VRHMDとは何かを知らないと後段を読んでもよくわからないと思うので、まずは簡単に解説したいと思います。

とりあえずざっくり例えるなら、VRHMDは「ゲームの世界に入れるすごいメガネ」です。

これまでいわゆるテレビゲームは、自分とモニタの間に超えられない壁があり、どんなにドラマチックなイベントがモニタの中で繰り広げられても、あくまで客観的に操作する、鑑賞するだけものでした。

ですがVRHMDをかぶると、360度どこを見渡してもゲームの世界が広がり、まるでゲームの世界に入ったかのように、主観的に体感できるようになる、というハードウェアです。『マトリックス』や『ソードアート・オンライン』、『攻殻機動隊』、『ニューロマンサー』等々、数々のSF作品で描かれたヴァーチャルリアリティーに、ついに現実が追いついたのです。

今年はこのVRHMDの本命と言われる3機種が発売されるため、VR元年などと呼ばれメディアで取り上げられることが多くなりました。PS4と連動するSONYの『PlayStationVR』、PCゲーマーにお馴染みのSteamを運営するValveとHTC社が開発した『Vive』、そしてOculasの『Rift』です(他にもスマホのGalaxyと連動する『Gear VR』、視線誘導機能も備えた『FOVES』など、3機種に限らずVRHMDは増え続けています)。それぞれの機種に細かい違いはあるのですが、追い追い書いていきたいと思います。

 ※なお現在発売されているVRHMDはほとんどが単体稼働するものではなく、あくまでモニタ代わりのデバイスなので、稼働させるための機器(PCやゲーム機)が別途必要になります。

 

 

2.購入意欲を削ぐ5つのハードルと欠陥

さて前述のように『Rift』には、購入するまで・購入してからのハードル、触ってわかる欠陥がいくつもあります。一つ一つ解説していきたいと思います。どこかで挫ける人は回れ右しましょう。

 

① 高価過ぎる

まず初期投資費用が高すぎます。私の場合は30万円近くかかりました。

Rift本体: 83,800円(599ドル)※日本への送料約1万円は納品遅延に伴い割引

PC  :180,144円(Core i7-6700/メモリ16GB/グラボGTX1070

モニタ : 18,900円(24インチ)

合計  :282,844円(税込み)

まあこれはゲーミングPCを一から購入したから、また長く使うことを考慮して高めのスペックのPCを買ったから、という理由があるのですが、そもそも『Rift』を動かすのに必要とされるPCのスペックが高すぎるので(Core i5-4590、メモリ8GB、グラボGTX970またはAMD290)、ゲーミングPCを持っていても相当数の人はスペックアップが必要になると思います。

なお現在は円高により1ドル=約100円になっていることや、今週安価なグラボGTX1060が発表されたばかりということもあり、もっと安く環境を整えられるはずです。

ちなみに他のVRHMDに目を向けると、『Vive』も同程度の仕様のゲーミングPCが必要で、本体価格は更に高い税別99,800円/税込み107,784円。ただし国内販売が今週から開始されたので法外な送料はかかりません。『PlayStationVR』は最も安価な税別49,980円/税込み53,978円ですが、別途PS4も必要となります(税別34,480円/税込み37,778円)。要はどれもそれなりに高価です。

 

② 納期が長過ぎる

予約開始日は今年1月7日、出荷開始が3月28日。アメリカの製品なのですぐには届かないだろう、と覚悟はしていたものの、ようやく届いたのは6月6日のことでした。発売日に予約しても出荷開始から2か月かかるっておい……。

今から注文したらもっと納期短いだろうとは思いますが、ある程度長期戦になることを覚悟しておいた方が良いと思います。なお『Vive』は国内発売が始まったので、店頭在庫さえあればすぐに入手できるはず。『PlayStationVR』は10月13日発売予定です。

 

③ 英語が多過ぎる

『Rift』は日本国内の販売代理がありません。なので公式サイトから注文しないといけないのですが、販売ページのほとんどが日本語化されていないため、日本の通販サイトしか触ったことがない人は住所の入力の仕方でさえ戸惑うと思います。

ようやく手元に届いても、セットアップ手順が全て英語。私の場合は下記ブログを参考にさせて頂きました。

VR HMD「Oculus Rift CV1」をレビュー ~セットアップ方法紹介編~ : 自作とゲームと趣味の日々

それでも途中どうしてもエラーが出てセットアップが完了しないため、こちらのブログをさらに参照。

Oculusのインストールにはまる - Tutti Lab

エラーログが「%LOCALAPPDATA%OculusOculusSetup.log」に記載されているということがわかったので、ソフト側で開けなかったフォルダに飛んでアクセスを許可する、マカフィーをアンインストールする、という2つの手順で解決しました。

しかし現在もSteamの一部ソフトがVRモードで起動しない、Oculusで購入したソフト『Project CARS』のゲームデータがセーブできないというバグが発生中。海外のフォーラムを読んで周っているものの解決の目途が立たない状況です。困った。英語こわい。

なお同じく海外製の『Vive』(開発のHTCは台湾、運営するValveはアメリカの会社です)は、Steamサイト内に日本語のセットアップガイドが掲載されています。Steamで日本語化には一日の長があるとはいえ、Oculusにも頑張ってもらいたいところです。

 

④ サイズがアメリカン

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アメリカ人は鼻が高いんだなあと改めて痛感。『Rift』はちょうど鼻の位置にスペースが空いているのですが、あまりに大きいので光が漏れまくり、外界見えまくりです。解決するためにはスポンジや布を充てるなど、工作して穴を埋める必要があります。

また私の場合は細いフレームのメガネを使用しているので難なくメガネの上から装着できたのですが、メガネの形状によっては『Rift』内に収まらないため、新調が必要な場合もあるようです。

平たい顔族のメガネ野郎には相当厳しい設計となっています。

 

⑤ コントローラが有線

『Rift』は頭を振り回すので、ケーブルが邪魔にならないよう、せめてコントローラは無線式で、と願いたいところですが無慈悲にも付属のXBOX Oneコントローラは有線式。しかも日本だけ。

これはXBOX One用の無線LANアダプタが国内の電波法に則った技適の審査を受けていないからなのですが、マイクロソフト株式会社は仕事しろ!と声を大にして文句を言いたいところです(同梱品のうちXBOX Oneコントローラのみマイクロソフト製)。

今のところ、両手の動きに連動する無線モーションコントローラ『Oculus Touch』が発売予定ではありますが、今年後半発売と発表されているのみ。『Vive』はモーションコントローラが同梱、『PlayStationVR』は発売済みの『PlayStationMove』が対応していますので、少しでも早い発売を望みたいところです。

  

 

3.非常に魅力的な3つのソフト

ここまで『Rift』の悪い点ばかりを挙げてきましたが、それでも買って良かったと思っています。なぜなら、私にとって魅力的なソフトに出会うことができたから。ただしいずれも、今ままでに無い先鋭的なソフトばかりです。

 

① 無限に広がるVR世界を体験できる『Destinations Workshop Tools』

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公式サイト

価格:無料(Steamで配信中)

対応HMD:『Rift』『Vive』

『Destinations Workshop Tools』はValveの作ったVR空間作成ツールです。特筆すべきなのは『Star Wars バトルフロント』でも使用されたフォトグラメトリー技術が使われている点で、写真をもとに真に迫る空間を構築できるというものです。

さすがに自分で作成するのは難度が高いので、Valve製のサンプルや、他のユーザーが作成した空間に行くばかりですが、質の高いVR空間に入ると本当に声が出ません。イギリスの協会、火星の地表、seattle gum wall、本当に自分がそこにいるような気さえして、ぼーっと雰囲気を楽しんでしまうほどです。

またここで活躍するのが『Rift』の優秀な画素密度。残念ながら『Vive』は直接触ったことがないので直接の比較はできないのですが、GAME Watchの以下のエントリによれば、視野角は『Vive』が勝るものの、画素密度の勝る『Rift』の方が鮮明とのこと。

【佐藤カフジのVR GAMING TODAY!】3Dキャラを鮮明・魅力的に描くハイエンドVR「Oculus Rift」 - GAME Watch

実際、VR上の壁に迫って緻密なテクスチャを鑑賞できたりするのでとても優秀です。『PlayStationVR』は何度か触ったことがありますが画面の鮮明さは一段落ちる印象がありましたので(安価な以上やむなしですが)、この点はどのVRHMDよりも『Rift』が長けています。

なお『Vive』にはルームスケールといって、一定の大きさのVR空間を歩き回る機能があって、このソフトでも活用することができます。ここは心底うらやましい。

 

②モーションコントローラの可能性を感じる『The Climb』

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公式サイト

価格:4,990円(49.99ドル/Oculusストアで配信中)

対応HMD:『Rift』

『The Climb』は非常に珍しいロッククライミングを題材にしたゲーム。私は他に『DEAD OR ALIVE Xtreme3』しか知りません(あれはロッククライミングをする水着女子鑑賞ゲームみたいなものですが)。

私はボルダリングをかじったことがある程度なのであまり専門的なことは言えませんが、このゲームは確かに、自分の体験したものに非常に近い感覚を味わうことができました。

操作は至ってシンプル。つかみたい岩に視線を向けて、XBOX OneコントローラのR/Lトリガーを押すと右手/左手でつかむというもの。この視線でつかむ岩を探す感覚と、高所にたどり着いたときの達成感、高所のドキドキ感(下を向くと怖い!)はまさにクライミングのそれだと感じました。

ただしこのソフトはまだ本領を発揮していません。年内発売予定の『Oculus Touch』に対応して、手の動きまでリアルにゲームに投影される、らしいです。『Vive』より高性能と言われるこのモーションコントローラがあればVR空間への没入感が格段に増すはずなので、『Oculus Touch』の発売は本当に待ち遠しいです。

www.youtube.com

 

 

③ アダルトサマーレッスン『カスタムメイド3D2』

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公式サイト(18禁注意)

価格:税抜き9,800円(各種ダウンロード販売サイト及び専門店で発売中)

対応HMD:『Rift』『Vive』

『PlayStationVR』ではバンダイナムコが『サマーレッスン』という女子とイチャラブできるゲームを発売するということで大変話題となっていますが、PC用VRHMDにはPC用にしかできないことがあります。そう、アダルトです。どんな先進的なメディアの拡大もアダルトが先陣を切って推し進めてきたと言っても過言はありません。

細かい説明は割愛しますが、このソフトは自分の好きな容姿にカスタマイズした女子とアレやこれやできるという、男子の夢を体現したかのようなゲームです。通常のモニタでも遊べますが、VRHMDを使うと大変なことになります。母親にプレイ中の姿を決して見られてはいけないやつです。『火の鳥 未来編』のムーピーゲームってこんな感じだったのでしょうか。

出生率の低下を危ぶんで政府が規制しないことを望むばかりです。

 

 

4.まとめ とにかくどこかで触ってみてほしい

上記のソフトに魅力を感じ、多少の欠点はものともしないVR紳士にはぜひとも『Rift』の購入をお勧めしたいところですが、そこまで出来る人はそう多くないということはわかっています。

ですが少しでも気になる要素がある人には、ぜひとも一度触ってもらいたい。VRHMDは本当に面白いのですが、新し過ぎるハードウェアなのでいくら私が文字を書き連ねても魅力を伝えきることができません。

幸いVR元年と言われるだけあって、国内で安価にVRHMDを触れる機会が増えてきました。特にバンダイナムコの運営するVR ZONEは、『装甲騎兵ボトムズ』を題材にしたシミュレータが登場することでも話題になっています。

project-ican.com

skycircus.jp

www.interpia.ne.jp

こういった機会に触ることでVRに魅力を感じた人は、まずは安価で大手パブリッシャーの有名ゲームが揃うであろう『PlayStationVR』を、そしてもっとマニアックな体験を求める人は、『Rift』や『Vive』の購入を検討されるのが良いと思います。いやもう本当に、VR『カスタムメイド3D2』が凄いですから。私はそれを言いたいだけです。

現実世界にお別れを言う日はそう遠くなさそうですが、その日が来るまでの間は、面白いVRソフトに出会ったら紹介していこうと思います。