ユウキズ・ダイアリー

アニメ・映画・ゲームについての雑記

スター・ウォーズは終わらない――新世代監督らがしのぎを削る新シリーズ『マンダロリアン』から目が離せない!

  • 本当は怖いAT-ST

枝葉を折る音、森の暗闇から迫る巨大な影。現れたのは鋼鉄の体躯とそれを支える2本脚――AT-STだ。惑星エンドアでイウォーク族の丸太攻撃に窮していた鳥脚の棺桶を思い出すが、仄かに光る赤い瞳はどこか様子が違う。

村に迫ると予感が的中。注意深く罠を察知し、レーザーキャノンで圧倒する姿はまるで別物。実はAT-STは恐ろしい存在だった……!?

ファンにお馴染みのクリーチャー、メカニックの新たな一面に胸が踊る『マンダロリアン』は、いま大注目の最新スター・ウォーズだ。

 

www.disney.co.jp

スター・ウォーズといえばエピソードⅨ『スカイウォーカーの夜明け』をもって9部作が完結した……と思われがちだが、まだまだシリーズは終わりを迎えたわけではない。

早くも昨年12月26日より、動画サービス「ディズニーデラックス」限定のWEBドラマシリーズ『マンダロリアン』の配信が始まった。

舞台はエピソードⅥ『ジェダイの帰還』から5年後。T字のメットで顔を隠した主人公・マンダロリアンは腕利きの賞金稼ぎとして名を轟かせていたが、ベビーヨーダことザ・チャイルドと出会ったことをきっかけに自らも追われる立場になってしまう、という物語。

各惑星の住民たちとの交流や懐かしの面々の登場、そしてなんといってもベビーヨーダのキュートさが旅路に花を添え、武骨なマンダロリアンを愛すべき主人公に仕立て上げている。

 

本作のスタッフリストの中でひときわ目を惹くのが、大ヒットシリーズMCUの第1作目『アイアンマン』を手掛けたジョン・ファヴローが企画・原作・製作総指揮・脚本といった主要なポストを務めている点だ。

ヒットメーカーである彼の起用には、スター・ウォーズ新3部作(エピソードⅦ~Ⅸ)を手掛けてきた製作陣の葛藤が透けて見える。

というのも新3部作は、ルーカス・フィルム社長であるキャスリーン・ケネディが各エピソードごとに監督を立て、彼らの個性を尊重するという作り方で臨んだ。しかしその結果、主人公レイの出自や大ボスの存在などあらゆるものが次々と移り変わり、全体としてちぐはぐな印象が拭えないものとなってしまった。

そこで今回手綱を握るのは、自らがクリエイターであるジョン・ファヴロー

各話監督はアニメシリーズ『クローン・ウォーズ』総監督のデイヴ・フィローニや、アカデミー賞ノミネートでも話題の映画ジョジョ・ラビット』監督のタイカ・ワイティティなど、新世代の旗手ら5人が全8話を分担している。

西部劇さながらの銃撃戦や巨大モンスターとの肉弾戦、小ネタ満載の惑星タトゥイーン回などバラエティ豊かなエピソードばかり。とはいえ全体を統括するジョン・ファヴローの存在によりキャラクター形成に迷いがなく、回を増すごとに魅力は増すばかりだ。

 

  • 愛情と闘争の第4話

なかでもグッときたのが第4話「楽園」だ。

追われる身のマンダロリアンとベビーヨーダは身を隠すため、辺境の惑星ソーガンに降り立つ。マンダロリアンは村人らに腕を買われ、クラトゥイニアンからの防衛を依頼される。

調査の結果、敵がAT-STを持っていることに気づいたマンダロリアンは勝ち目がないことを村人らに諭す。それでも逃げない彼らに根負けし、戦闘訓練を施し襲撃に備えるが……。

冒頭の戦闘シーンはついに襲ってきたAT-STの描写である。ロボットアニメか怪獣映画かと言わんばかりの怖ろしい絵面に、さぞ名監督がメガホンをとったに違いないと思いエンドロールを確認すると、そこには監督:ブライス・ダラス・ハワードの名が。ジュラシック・ワールド』のヒロイン役として活躍する彼女が、監督として抜擢されたのだ。

見事なアクションシーンの演出は、彼女の出演歴から来るものか、はたまた『ラッシュ』、『ハン・ソロ』などを手掛けた名匠ロン・ハワードの娘としての血が成せる技だろうか。

意識しながら見返すと、マンダロリアンと背中を預けて共闘する女性兵士キャラ・デューンとの信頼関係や、未亡人オメラからマンダロリアンへのほのかな恋慕、ベビーヨーダと村の子供らとの友情など、繊細な心理描写はこれまでのシリーズではあまり見られなかったもの。こういった面に二児の母親でもある彼女ならではの演出力が発揮されているのでは、と思わされる。

実写シリーズでの女性監督の起用はデボラ・チョウ監督(3、7話監督)と併せて今作が初。これもまた新世代のスター・ウォーズならではの試みと言えるだろう。

 


スター・ウォーズ実写ドラマ「マンダロリアン」予告編

『マンダロリアン』は毎週金曜0時に順次配信中。2月14日には最終話を迎えるが、この秋には第2シリーズの配信も予定されている。この先の展開もまだまだ目が離せなさそうだ。