ユウキズ・ダイアリー

アニメ・映画・ゲームについての雑記

怪獣の色づく季節―『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』感想

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』を観賞。

ゴジラ映画は2014年から続けざまに実写2作、アニメ3作が作られ『ゴジラ ファイナル・ウォーズ』からの10年に渡る沈黙が嘘のようなお祭り状態。そんな中に投下された最新作が2014年版『ゴジラ』に続く、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』だ。

今度のゴジラは前作以上に過去の日本製ゴジラオマージュが盛り込まれ、オタク心に様々な点を突つかれてくすぐったいのだがそこはゴジラに詳しい諸氏に任せるとして、注目したのはその"色づかい"だ。

 

配色で映像のトーンを統一する映画は少なくないが、本作が面白いのはそのシーンを支配する怪獣により配色が変化すること。

ゴジラが出て来ると青、

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キングギドラは黄、

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ラドンは赤、

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モスラターコイズブルー

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と登場する怪獣により画面全体が怪獣色に染まる。 

ひとたび怪獣同士の戦闘が始まれば、色は混じりあい、優勢な方へと変化していく。

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試写では「全アクションシーンをPCの新しい壁紙に出来る」という海外レビューも聞こえたがまさにその通り。この映画の登場人物はエマにしろ芹沢にしろどこか頭のネジがはずれた怪獣狂信者だらけなのだが、まるで彼らの怪獣に抱く信仰心が、スクリーンをより幻想的に彩り、私たち観客にまで伝播してくるかのようだ。初代ゴジラのモノクロゆえに増幅されるリアリティや恐ろしさを思い起こしたのは私だけではないはずだ。

 

本作は怪獣プロレスディザスター映画として申し分ない出来。ただ畏敬の対象として怪獣をとにかくかっこよく荘厳に描くことに振り過ぎているために、まともな理性を欠いた人間側ドラマにはいくらか物足りなさは感じるが……そこは最近の各々個性的なゴジラ映画群が補いあっているので問題ではないだろう。これだけ多様なゴジラが生まれる時代に生きていることに感謝するしかない(非難の的になる事が多いアニメ版ゴジラ3部作でさえも、ゴジラのSFとしての可能性を広げたという点で意義あるものだろう。あと前日譚『怪獣黙示録』『プロジェクト・メカゴジラ』は『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』と重なる点が多い怪獣災害小説なので必読だ)。

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』ほどの大規模大予算怪獣大集合映画は、もしかしたら今後生まれないかもしれない。来年3月には早くも『Godzilla vs. Kong』の公開が予定されているが、きっとガラリと方向性を変えてくるはず。あなたが怪獣信者の仲間入りをしたければ、今すぐに、なるべく大きいスクリーンを選んで、世紀の怪獣王を目撃するべきだ。

 

Beat Saberがすぐに遊べるOculus Quest最高説

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Oculus Questがついに届いた。これまでいくつもVRバイスを触ってきたので今更VRすごい!感動!というのはないのだが、傑作VRゲーム『Beat Saber』がいつでもどこでもすぐに遊べるのが最高。今からVRバイスを買うならこれ一台で十分!とは思うものの気になる点もあるので書き綴ってみる。

 

  • そもそもOculus Questとは

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かぶれば視界全部を映像に覆われて高い没入感を得られるVRバイスはこれまで様々なタイプが発売されてきた。2016年に発売されたPC接続を要するOculus Rift、HTC Vive を皮切りに、PS VRPS4との接続が必要)、Oculus Go(単体で機動)などだ。

今回発売されたOculus QuestはPCとの接続が不要な単体機動タイプ。と聞くとOculus Goと似たようなものと思うかもしれないが全くの別物。ゲームハードで例えるならGoとQuestは3DSとSwitchぐらい違う。

 

Oculus Goは安価ゆえに性能が低く、特にVR空間内での移動が「360度ぐるり見回す行為のみ」に限られているためにVR内での自由度が低く感じられるものだった。スマホをハコスコ等の専用ケースに入れて被るのと大差ないものだ(とはいえ手軽に持ち歩ける初のVRバイスという利点はあったし、360度映像を見るだけならこれでも十分)。

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去年発売のOculus Go

 

対してOculus QuestはVR空間内で「見回すだけでなく前後左右を歩き回れる」ので、本当にVR世界に入り込んだような錯覚を覚えるもの。PCやPS4接続型と同タイプだがそれらが周囲にセンサーの設置を要したのに対し、Oculus Questでは本体前面のカメラがセンサーの役割を果たすことにより自由移動を実現している。

ケーブル接続無し&外部センサー無しでVR空間を自由に動き回れる。これがOculus Questの唯一無二で最大最高の特徴だ。

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今月発売のOculus Quest

 

更に両手それぞれに指の動きを機敏に検知するコントローラーを持つことで、VR空間内のモノへの干渉、具体的には「掴む動作」が丁寧にシミュレーションされるので、絶大な没入感を発揮している(これはPC接続タイプのOculus Rift同様だがHTC ViveやPS VRしか知らない人は感動することだろう)。

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アプリに目を向けると、単体機動ゆえにグラフィック性能やCPUはPC接続タイプに及ばないようだが、PC用VRゲームが見劣りしないレベルで再現されている。遊んだ範囲でお気に入りなのは、PC・PS4でも人気を博しているぶった斬りダンスゲーム『Beat Saber』XBOX360KinectからまさかのVRリメイクを果たしたDance Centralスターウォーズ世界を体験できる完全新作『Vader Immortal』あたり。

ここまでくると接続しないで遊べるPC用VRバイスみたいなもの。再びゲームハードで例えるならRiftとQuestの関係はPS4とSwitchのような、性能差はあれど近しい存在だ。


Beat Saber Release Trailer


Dance Central: Oculus Quest Mixed Reality Launch Trailer


Vader Immortal - Official Episode Teaser Trailer | Star Wars VR Game

 

  • Oculus Questの将来性

これまで書いた通りケーブルレスで高性能な点は素晴らしいの一言に尽きるのだが、いまひとつ不安なのは将来性だ。発売時にはストアに50ものアプリが揃っているので充実してるかのように見えるが、その多くは他機種からの移植もの。今後はオリジナルタイトルが増えるかもしれないが、これまで発売されたOculus Riftのラインナップを思い返すと楽観もできない。Oculus社がストアラインナップを厳選するとの話もあり、ワンアイディアの小規模なアプリや不道徳なアプリ―DMMビューアーのようなアダルトコンテンツを目的としたものは出ない可能性が高い。当然、PC用のアダルトVRゲームが移植されることもないだろう。

ということで現状のOculus Questを買って満足できるのは以下の条件に当てはまる人だろう。

・Beat SaberやVRChatがやりたいけどPC、PS4が高価で買えない

・もしくはすでにPC、PS4を持ってるけど起動するのが億劫(でもVRゲームがめちゃめちゃ好き)

・接続ケーブルが鬱陶しくてVRの中で自由に動き回りたい

・Oculus Goの性能では満足できない

・ローンチタイトルに欲しいソフトがいっぱいある

・アダルトコンテンツは興味なし

PS VR独占の『エースコンバット7』も『バイオハザード7』も『ASTRO BOT』も『Rez Infinite』も『Tetris Effect』も遊べなくても構わない

 

……まあそんな人がそうそう多くないのはわかっている。けれどOculus Questのケーブルから解き放たれた自由度の高さだけは、本当に想像以上の凄さ。とにかく即起動できるBeat Saberは最高に面白い。そんな凄さ・面白さは触ればわかるけど触らないと一生わからない。

気軽に持ち出せるOculus Questの利点を活かして今後いろんな機会に持ち出してみたいと思う。

 

これまで書いたVR記事はこちらから

yuki222.hateblo.jp

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映像ドラッグ『プロメア』に、100点!

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昨日全国公開が始まったばかりの映画『プロメア』を見た。涙の跡が頬に張り付いて開いた口も閉まりきらないまぬけ面を晒して出口に向かうとぴあのお姉さんに捕まる。仕方なく話を聞くと何点だったのかと問うてくる。え、この映画に点数つけるの?今すぐ?無理でしょ?でもちょっと考えてみるか。そうだなここは良かったけどあそこは、いやでも減点するほどじゃないし、というかお姉さんの目が早くしろと言ってるしあんまり難しく考えるべきじゃないな。自分のまぬけ面から点数考えればいいだけじゃん、ってことはうーん……「100点で!」 口に出してみるとしっくり来た。『プロメア』は100点! おしまい。いやもうちょっと書く。

 

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映画『プロメア』は、アニメスタジオGAINAXにて『新世紀エヴァンゲリオン』以来の、そして現時点ではGAINAX最後のロボットアニメ『天元突破グレンラガン』を監督し、その後新スタジオTRIGGERを立ち上げ『キルラキル』を手がけた今石洋之氏と、両作で脚本を務めた中島かずき氏とのゴールデンコンビによる待ちに待った5年ぶりの新作、そして初の劇場用長編オリジナル映画だ。

大好きなコンビの大作と聞いたらワクワクしないわけがないのだが……主人公は『グレンラガン』のカミナにそっくりだけど声が違う? 火消しの話って『出撃!マシンロボレ・シュー』か、はたまた大友克洋の『火要慎』?? これで面白くなるのかな、と半信半疑だったのが正直なところ。

けれど蓋を開けてみると、火消しこと"バーニングレスキュー"と"バーニッシュ"という火を操るミュータントによる体制 対 反体制、わかりやすい二項対立ものが展開。あー流行ってるもんねアメコミ映画、こういうのなら好きだよーと納得して楽しんでいるうちに二転三転し物語のスケールは急速に拡大。幾重にもなる名作オマージュに唖然とし、とどめの『トップをねらえ!』で涙腺崩壊。GAINAX石川賢の闇鍋」とでも呼びたくなる今石・中島のいつものやつが劇場スケールで展開するので過去作のファンは安心して見れることだろう。

 

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いつもどおりにとどまらないのは「絵」と「声」だ。

「絵」―ビジュアルは『グレンラガン』『キルラキル』のような昭和レトロ風ではなくビビッドな色使いで、主線までカラフル。CGはテクスチャをシンプルにしてのっぺり、ときにはやりすぎなぐらい幾何学に(太陽光のゴーストが四角い!?)。作画はCGに寄せて、CGは作画に寄せる調和した画風が独特で、ただCGを使いましたという次元を何段も越えている。今石監督の『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』を進化させたかのような独特なビジュアルは、今年一番の衝撃だったスパイダーマン:スパイダーバース』に匹敵するものさえ感じられた。

「声」―脇を固めるキャストこそ今石・中島一座の面々なのでそれだけで嬉しいところだが、面白いのはメインキャスト3人を松山ケンイチ早乙女太一堺雅人といういずれ劣らぬ演技派俳優が固めているところ。中島かずきが座付き作家を務める劇団☆新感線で大役をこなしてきた3人だけに、俳優ならではの瑞々しい演技にとどまらない迫力の芝居は圧巻。劇場音響で聴く芝居は心の臓までビリビリくるほど。話題作りのためだけにつまらない役者を使う映画はこれをこそ見習ってほしい。

 

唯一不満を述べるなら、描きたいことが膨らみすぎたゆえかバーニングレスキューの日常―レスキュー活動シーンが短いのでチームメンバーに愛着が湧く前にさっさか話が転がってしまうこと。と思ったら来場者特典のQRコードを読み込んだら10分ほどの短編アニメでレスキューシーンが描かれていた。イマ風の抜かりなさに拍手! やっぱり100点!

 

『アベンジャーズ/エンド・ゲーム』に苦い思い出を浄化してもらった話

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ネタバレ無し。

 

以前『アベンジャーズ』1作目を劇場で観た際、隣で観ていた父親は大層楽しんでいた(興味がないとすぐ寝てしまうのだがこの時ばかりは最後まで起きていた)。けれど私は「前半はヒーローがいがみ合ってばかりだし、後半のNY決戦シーンのアクションも眠たいし」「ダークナイトと比べると…」とか小難しいことを考えてしまい、けれども父が楽しんでる手前、黙りこくって独り「あんまり面白くなかった映画」のレッテルを貼ってしまった。

ほどなくして父は急死し、最後に一緒に見た映画は「あんまり面白くなかった」『アベンジャーズ』に。ひねくれて映画を観てしまう自分の性根を悔いたものだ。

 

あれから7年、地上波で放送するというので久しぶりに『アベンジャーズ』を観た。隣に父はいないけれど、今度は心から楽しんで見ることができた。ようやくマイナスイメージのレッテルを破り捨てることができたのだ。

心境の変化は『アベンジャーズ/エンド・ゲーム』を観たからに違いない。

 

アベンジャーズ/エンド・ゲーム』は『アイアンマン』から続くMCU(マーベルシネマティックユニバース)22作目にして区切りとなる作品だ(これでMCUが完結というわけじゃない)。

クライマックスだけに、これまでのどのMCU作品よりも熱く、泣けて、笑えて、驚きに満ちている。とんでもない感動の渦に飲み込まれる奇跡のような映像体験に、涙が止まらなかった。

この映画を観たことで、これまでのMCU作品がより好きになる、そういう物語であり、体験だった。もちろん1作目の『アベンジャーズ』も、だ。改めて観た『アベンジャーズ』はやっぱりヒーローがいがみ合ってるしアクションは眠たいけど、なんでもないシーンで泣きそうになってしまった。アイアンマンが、キャプテンアメリカが、ソーが、アベンジャーズメンバーが一緒の画面にいるだけで特別な映画なんだとようやく理解することができた。

苦い思い出の映画『アベンジャーズ』を浄化してくれた『アベンジャーズ/エンド・ゲーム』には、感謝の念しかない。

 

というわけで全人類早く映画館で見ろ、と言って終わりたいのだが過去作が21本もあって見てられないという人もいるだろう。この11年間冬眠してたのか?と問い詰めたいがここはぐっと我慢する。

こういう時どの作品をどの順番で見ればいいかを訥々と語りたくなるのがオタクの常なので一応書いておくと…最初に見るのは実際のところどれでも良いと思う(『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』と『アベンジャーズ/エンド・ゲーム』は除く)。ただし順番通りに今から全部観るのは荷が勝ちすぎるに違いない。だからとびきり面白いのをとりあえず一本観ればテンション上がって助走がつくはずだ。

そんなとびきり面白いMCU作品は以下の7本だ。

※個人の感想です

 

上記作品を観てなんか面白いかも、と思ったらきっとアベンジャーズの一員になる素養があるはず。そんな君は『アベンジャーズ エンド・ゲーム』に連なる重要な作品を順番に見ていけばいい。なーに、たったの10本しかない。

※個人の感想です

 

などと訥々と書いてみたが、どうせ『エンド・ゲーム』は1ヶ月はやってるだろうし、GWは長い。時間が作れるなら過去作21本順番通りに全部見るのが一番だ。全人類早くMCU全部見ろ!

 

宇宙最速ネタバレなしレビュー 『劇場版 響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜』

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本日開催された完成披露上映会で『劇場版 響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜』を見た。おそらく一般人ではじめての目撃者となった。

 

TVアニメ版1期から、2期、そして映画『リズと青い鳥』と随分遠いところに行ってしまった『響け!ユーフォニアム』だが、映画最新作はここにきて1期の感触に揺り戻してきたようだ。

主人公・黄前久美子は2年生となり、目指すは昨年果たせなかった全国大会金賞。しかし目下の問題は一癖も二癖もある後輩部員。友情に恋に、そしてもちろん演奏にと、悩み多き日々を冷静な視点で、時に熱く感情を吐露して乗り越える久美子の姿は、まるで1期のリフレイン、いや変奏曲とでも呼ぶべきか。

TV版から比べてしまうと多少駆け足なのは否めないが、久美子の、そして北宇治高校吹奏楽部員らの青春はやはり眩しくどこか懐かしく、自分の過去と対話しているような不思議な感覚を覚える。これこれ、ユーフォはこうでなくちゃ。

 

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以下、監督・キャストトークショーで印象に残ったこと。

・収録中もユーフォ1楽しかったと楽しそうに話す黒沢ともよは今日も楽しそう。

・緊張する雨宮天

・秀一&久美子に嫉妬する朝井彩加

・珍しい秀一と麗奈のシーンにて、リハでは意識せずとも怖い芝居をしてしまうが、ただでさえ麗奈は怖いのだからと鶴岡音響監督にセーブされたという安済知佳

・作中シーンを意識して衣装をキメてきた安済知佳

・収録中も観賞中も心地良い疲労感を覚えたと雨宮天

・石原監督曰くこの映画は「青春の犇めき(ひしめき)」

黒沢ともよの見どころは演奏シーン。それまでの過程は全て演奏のためにあったと。

 

なお観賞前に必ず『リズと青い鳥』を見るべし。『リズ〜』後の希美、みぞれを目で追わずにはいられないはずだ。

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脚本:フィル・ロードの異常な愛情『スパイダーマン:スパイダーバース』

いよいよ本日3月8日から全国公開の映画『スパイダーマン:スパイダーバース』。IMAX上映館のみの先行上映で先週いち早く見させてもらった。

去る2月25日にはアカデミー長編アニメ映画賞を受賞したばかりということもあり期待値高めで鑑賞したのだが……期待を上回る面白さに全編興奮しっぱなし。クライマックスでは溢れる涙を抑えることができなかった。大傑作!

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ハマると関連書籍を買い漁りマン(あとサントラも買った)

 

本作は度々(2002年以降6度も!)実写映画化されてきた『スパイダーマン』シリーズの新作映画だが、続編ではない完全新作。そして他と大きく異なるのは初のアニメ映画であり、主人公がおなじみピーター・パーカーではなくマイルス・モラレスPS4の『スパイダーマン』にも登場した彼)だという点だ。

マイルスがやはり蜘蛛に刺され、スパイダーマンとして自覚し、痛みを乗り越え、成長する姿が描かれる……という大筋はいつものアレだが、大きなアクセントとなるのが多次元宇宙(スパイダーバース)という設定。平行世界から現れた5人ものスパイダーマンが時に友人として、師として、仲間としてマイルスを支え、キングピンと戦う姿は、いつも孤独に悪を討つピーターばかり見てきた身には新鮮に映る。

そこでどれどれコミック版も見てみよう、とダン・スロット著『スパイダーバース』を読んでみると更に驚かされるた。コミック版は100人近いスパイダーマンとインヘリターズ(映画には未登場)の血みどろの戦争が描かれており、マイルスに至ってはあくまで端役。映画はあくまでスパイダーバース設定を借りたオリジナルストーリーということなのだろう(未読だがマイルス周りの設定はUltimate Comics版を元にしているようだ)。

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コミック版には東映スパイダーマンからレオパルドンも!(『スパイダーバース』より)

 

とするとやはり立役者はやはり製作・脚本のフィル・ロード&クリス・ミラーだろう(脚本はフィルのみ)。近年数々の名作を送り出してきた彼らの作品はいずれも「大人になったら忘れてしまう、好きなものへの愛情」が尋常ではないほど満ち溢れており、そこにいつも胸を突かれてきた。彼らが製作を務めた『ブリグズビーベア』では着ぐるみ番組への、そして監督・脚本の『LEGOムービー』(これも大傑作だ!)はもちろんLEGOへの愛情だ。

本作へ注がれた彼らの愛情も過去作同様、いやそれ以上。コミック版『スパイダーバース』を換骨奪胎してマイルスのヒーローオリジンストーリーとして構成し直した脚本には並々ならぬスパイダーマンへ愛を感じずにはいられない。「誰もがヒーローになれる」というメッセージは様々なヒーロー映画で繰り返し語られてきたものだが、本作のそれは歴代のどれよりも熱く、純粋で、胸に沁みるものだった。

そして各スパイダーマンの個性やアレンジ、アニメーションに至るまでこだわり抜かれており、監督でないとはいえど彼らの血を強く感じる出来栄えだ。特にコミックや日本のアニメを意識したのであろう数々の表現――全編を通した背景のボカし、異色スパイダーマンノワール、ハム、ペニー)をより際立たせる個別のアニメーション表現、アニメ感を出すための低フレームレート――から、実写ではなくアニメ映画を選択した意義を強く感じる。こういった表現は日本こそ得意としていると思っていたので何歩も先を行かれたようで悔しい、が面白いのだからしょうがない。

彼らの今後の作品である、脚本を務めた『LEGOムービー2』(3月公開)、そして次の監督作と噂されているアンディ・ウィアー原作『アルテミス』も楽しみに待ちたい。もちろん叶うならば『スパイダーマン:スパイダーバース』の続編も、だが。

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ペニー・パーカーのアレンジは鮮烈。ぜひ単独シリーズ化を!(映画秘宝4月号より)

 

というわけでとにかく最高の映画なので、普段海外アニメ、ヒーロー映画に興味がない人も、偏見を捨てて一度見てほしい。アカデミー長編アニメ映画賞は伊達じゃない。

そして最後になるが、本作は既に公開中の『アリータ:バトルエンジェル』と同様に3D演出が非常に巧みで、爽快感抜群の映像に一役買っているのは間違いない。観るなら是非とも、3D版で。

 

『テトリス99』でようやくバトロワ理解した

この週末、そろそろ未着手の『キングダムハーツ3』を始めるかはたまた購入したばかりの『キャサリン フルボディ』をサクッとクリアするかと目論んでいたのに、結局『テトリス99』に全てを持っていかれてしまった。人類の生産性を著しく低下させる悪魔のソフトウェアだということがわかったのでもうアンインストールしたい。

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任天堂の悪魔

テトリス99』は先週2月14日に突如発表と同時に配信されたテトリスの最新作だ。配信元は『テトリスDS』以来約13年ぶりとなる任天堂、開発は『テトリス ザ・グランドマスター』シリーズで知られるアリカ。任天堂のオンラインサービスNintendo Switch Onlineの加入者向けに無料で配信中だ。

 

最大の特徴は99人で同時対戦するバトルロワイヤルモードに特化していること(逆に1人用の他のゲームモードは搭載していない)。無料ということもあってか本作は99人対戦なのにサクサクマッチングするのでいくら負けても次はきっと勝てる!という根拠のない自信に突き動かされて延々とプレイしてしまう。

大人気の『PUBG』に『Fortnite』、スマホの『荒野行動』、突如現れた新星『Apex Legends』と世はバトロワゲームの戦国時代だが、いずれもTPS/FPSということもあって私自身はあまりやってこなかった。けれどテトリスなら得意、とまでは言えないがそこそこ遊べるので、多人数で同時対戦するバトロワゲームの面白さにようやく触れられたような気がする。昨年発売された『テトリスVR』で音と映像のシャワーを浴びるの大好きだが、他人と無限に遊べる『テトリス99』は更にハマり度が高い。テトリスバトロワの組み合わせを考えた人は間違いなく天才だ。

 

なおテトリスに対戦のイメージがない人もいると思うが、本作では列を消した分だけ相手の最下段に送る(せり上げる)ことができる。またその攻撃により相手を倒すとバッジというものを入手でき、バッジの量により攻撃の威力(送る列の数)も増加する。

99人も対戦相手がいると任意に相手を指定するのは困難だが、ランダム、カウンター、バッジねらい、とどめうち、という4種の作戦をワンボタンで切り替えることで、自動的に相手を選択することができる。面倒に思えるかもしれないが、ドラクエのさくせんコマンドみたいなものと思えば簡単だ。

 

不満点としてはカウンター時のギラギラがまぶしいことと、フレンド対戦ができない点。要改善希望。曲と壁紙は有料でもいいから追加課金させてほしい。時間がドロドロに溶けてしょうがないのでもうやめたいのだが、最高順位が未だ5位というのが悔しいので1位になるまで頑張りたい。 

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ドン勝はまだ遠い