ソーマブリンガー

聖剣伝説の出ない理由」
とはスクウェア(当時)が『ゼノギアス』を宣伝する際に用いた文句。そのメインスタッフの新作が『聖剣伝説』を彷彿とさせるアクションRPGを開発するとは何とも皮肉な話だ。


先週任天堂から発売された『ソーマブリンガー』は、ここ数年任天堂が力を入れだした「従来の任天堂っぽくないゲーム」。開発を担当したのは、元スクウェア組が中心となって設立され、任天堂の子会社化したばかりの「モノリスソフト」。しかもプロデューサーは高橋哲哉(『ゼノギアス』ディレクター)、作曲は光田康典(『ゼノギアス』作曲)、シナリオは嵯峨空哉(『ゼノギアス』原案)とあって、昔のスクウェアっぽいというか、もはや傑作ロボットRPGゼノギアス』を思い出さずにはいられない最強の布陣。設定資料集を買ったぐらいの『ゼノギアス』好きとしては期待しないわけがない。


しかし蓋を開けてみると、アクの強いソフトばかりのモノリス作品とは思えない、良くも悪くも実に任天堂らしい手触りの良いRPGに仕上がっていて驚かされた。
3人パーティーで冒険を進めるアクションRPGと聞いたときは『聖剣』っぽいなと思ったが、実際にプレイしてみると広い広いマップ上で大量に湧く敵を狩りまくり、ランダムで落ちるドロップアイテムに一喜一憂するのがゲームの大部分を占めているところが、なんともオンラインゲームっぽい印象。『ディアブロ』っぽい、『PSO』っぽいという意見をよく耳にするが、それらをプレイしていない身からすると、同じくマップが広くて3人パーティーでバトル中心な『FF12』を強く思い出した(『FF12RW』はあれはあれで『FF12』っぽかったが、真っ当に携帯機向けに落とし込んだらきっと『ソーマブリンガー』みたいになれたはずなのに)。
広いマップはゲームの持つ広大な世界観をストレートにプレイヤーに感じさせることができるのでそう悪いものでもないが、広いだけでギミックがなかったり、同じ風景ばかりが続くとストレスを感じて本末転倒。昨年末にプレイした『テイルズオブイノセンス』はそこが非常にまずい部分だったが、さすがに任天堂のソフトは配慮が違う。
いつでもセーブ可なのはもちろんのこと、帰還アイテム(すぐにその場に往復することも可能)はいつでもどこでもボス戦中にだって置けるし、マップは端から端まで表示されるので目的地まで迷うこともない。強い敵に苦戦して倒されたらいくらかの経験値を失えどゲームオーバーすることはないし、与えたダメージは累積するのでどんなに強い敵に出会ってもいつかは絶対に勝てる。
ここまで親切設定だと確かにヌルさは感じる。実際クリアまで何十回も主人公の墓を拝んだが、苦戦してor行き先がわからなくて詰まるということは一度としてなかった。
けれども『ソーマブリンガー』には強敵に阻まれるストレスを感じられないかわりに、面倒くさくなって投げ出してしまうようなストレスもない。DSでは類を見ないような美しい背景グラフィックが拝めるし、羽ばたきだけで目には映らない鳥の姿を思い描くことができるほどの、作り込まれた音がある。シナリオこそゼノっぽい専門用語が序盤から頻出してとっつき辛いが、世界観を理解するにつれ面白くなっていったし、イベントシーンはバトルを邪魔しすぎないぐらいにまとめられていて好感がもてた。


これまで私は(難易度の高さに感じる意味での)ストレスがないゲームなんてゲームじゃないぐらいに思っていたが、今回のプレイでその気持ちは揺らぐこととなった。これだけ良い雰囲気を感じられるゲームが誰でも最後まで進められるのだ。それだけで意義のあることかもしれない。
ストレスを感じるゲームが好きなことには変わりないが、快適にダラダラとプレイできるゲームというのも、たまには悪くはない。