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『劇場版 天元突破グレンラガン 螺巌篇』

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∀ガンダム
ラーゼフォン 多元変奏曲』
機動戦士Ζガンダム
『新世紀ヱヴァンゲリヲン 新劇場版』

ここ数年の間に、TV用に制作された数々のロボットアニメが総集編として蘇りを果たしてきた。その手法は様々で、ちょっとだけ新規映像を加えただけのもの、大昔の映像を掘り起こして加工したもの、脚本自体に大きくメスを入れ全く新たな印象にしたもの、などなど。
今回紹介する『グレンラガン』と同日に上映を開始した『交響詩篇エウレカセブン ポケットが虹でいっぱい』もやはりTV版の映像を流用した総集編映画、と思わせておいて、その実キャラクター設定も世界設定もTV版とは全く異なるものにした完全オリジナル脚本の新作映画という大変大胆な発想の作品だった。事前知識アリで見たものの、あまりの違和感の連続と、畳み掛けるように噴出する小難しい新規設定の連続で、正直言ってついて行くだけで精一杯、一体誰に向けて作った映画なのだろうかと頭を抱えるような映画だったのだが、ここでは割愛する。


そんな『エウレカ』を観た後でも、『劇場版 天元突破グレンラガン 螺巌篇』の出来には期待していた。何せ『紅蓮篇』が、前半はきっちりTV版の編集映像で固めて、後半は新規映像を盛り込んだ大バトル、という『機動戦士Ζガンダム 星を継ぐ者』『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』的な、観客が盛り上がりやすい手法を採用していたのだから、今回も観客目線で楽しめるものを作ってくれるはず。事前情報によると、『螺巌篇』は全編に新規映像を盛り込んでいるとのことなので、『紅蓮篇』よりも前半からテンション高くして見られるのかなあと、そんな軽い期待で観に行くことにした。


そして期待は大きく裏切られた。良い方向に。
前半での新規映像は、作品をよりわかりやすくする方向での追加映像。これを盛り込むことで、ちょっとテンション低めのTV版第3部に当たる部分をささっと終わらせて、盛り上がるべき第4部にバトンタッチ。いやー、「わかっている」時間配分ぶり。
そして後半の第4部。TV版でも、TVアニメとは思えないようなド派手な作画・演出だったので、これ以上いじりようがないだろうに、と思っていたのだが、映画版は再びやってくれた。ネタバレになるので細かいことは伏せるが、あのラストバトルを捨ててまで選んだ新たな展開は、想像の遥かに上を行く、超映画級のスケール。劇場版パンフレットのコメントを借りるならば「東映漫画祭り」的とでも言えば良いだろうか。ここまでやれば、悪ふざけももはや芸術の域。
しかもそんな悪ふざけで終わらせないで、TV版では尺の都合で短かったエピローグについてもきっちりフォロー。特にシモンとニアに対する救いは大きく、TV版で抱いた唐突感はすっかり解消されていた。


『紅蓮篇』で新規映像の少なさにがっかりした人、TV版3部4部に不満を抱いた人にこそ、是非とも観てもらいたい。『螺巌篇』は、もはや新解釈グレンラガン。先に挙げた先人の劇場用ロボットアニメに連ねても名を恥じない、どころか頭1つ飛びぬけて、馬鹿でやんちゃで熱くて泣ける、素晴らしい映画だ。
この2年間で、いっぱいの、勇気とやる気と漢気を分けてくれたグレンラガンに感謝。


前作『紅蓮篇』のレビューはこちら