作画のレベルの高さなら業界で1、2を争うアニメ製作会社BONESによる初の完全オリジナル長編劇場映画『ストレンヂア 無皇刃譚』。1年以上前に雑誌にちらっと紹介されていたカットを見た瞬間に一目惚れし今か今かと公開を待ち望んでいただけに、公開二日目には観に行ったのだが、うん、残念な感じだった。BONESは病気なのかもしれない。
ガンダムなどで有名な制作会社サンライズの生み出した数々の作品の中でも、『天空のエスカフローネ』や『カウボーイビバップ』といった未だにファンの多い傑作を作ったのが南プロデューサー率いる第2スタジオ。そこが母体となって独立したのがBONES。サンライズ時代よりも更に磨きのかかった作画センスは他社の追随を許さないのが、どういうわけだか『ラーゼフォン』にしろ『エウレカセブン』にしろ、良い脚本に恵まれなかったばっかりに一定以上の評価を得られていない。アニメゴールデンタイムの土6枠で始まった『天保異聞 妖奇士』だって作画だけは悪くないのだが、いかんせん脚本のつまらなさから人気が出ず、2クールで打ち切りをくらう始末。
BONESの映画としては過去に映画テレビシリーズの人気から『劇場版エスカフローネ』や『劇場版カウボーイビバップ 天国の扉』なども作られ、これらも決して絶賛できるほどの脚本だとは言えないのだが(それでもすごく好きな映画なのだが)、今回の『ストレンヂア』はそれを何倍も上回るほどの脚本のつまらなさ。
少年を守って旅をすることになる謎の侍、という設定自体は構わない。時代劇である以上、自然と過去の作品と似たり寄ったりの筋になってしまうものだろう。しかしそれにしたって旅の過程で意外性のある展開がまるで起こらないし、キャラクターの魅力も伝わってこない。いつ盛り上がるんだろうワクワク!と思ってるうちに終わってしまい、最後まで映画の世界にはまることができなかった。
「アクションシーンの派手さ」だけで見れば『ヱヴァンゲリヲン新劇場』さえ超える今年の作画映画NO.1なので、「すごいアニメ」が見たいのならば見る価値はある。なぜか主演に抜擢されたTOKIOの長瀬智也も意外にも上手い。しかしだからこそ、もうちょっと面白い脚本だったら口コミで人気が出たかもしれないのに。もったいない。
予告はかっこいいのだが。
『ジーニアス・パーティ』しかり、作画にばっかり注力して中身がない映画を見せられるのはきつい。