『大人も泣けるクレヨンしんちゃん」こと『モーレツ大人帝国の野望』『アッパレ戦国大合戦』を生み出した原恵一監督待望の、初の長編オリジナルアニメーション映画。
異性物(河童)と少年の交流という手垢のついたテーマを取り扱っているが、河童の存在を認知した時に行われるであろう「今」の日本人のリアルな反応や、子供向け映画ではギリギリな残酷なシーンを正面から描いているところなどは、ただの子供向け映画で終わろうとしない原監督の態度がよく表れている。小学生の繊細なしぐさもさすが長年真摯に子供を描いてきただけあって、本物らしさを持って迫ってくる。
ただクレヨンしんちゃんは河童のクゥの原作本を参考にしていたと言うだけあって、今回の映画版は逆にクレヨンしんちゃんらしさを強く感じてしまう。監督もあえてそう捉えてほしいのか、主人公の家族構成はしんちゃんとまったく一緒で、さながら「小学生版クレヨンしんんちゃん」。自らの枠に収まりすぎているのが見ていて残念に感じてしまった。せっかく個性も才能も育んできているのだから、次回作では新境地に踏み出すことを期待したい。