ピアノの森

日本の深夜アニメを語るうえで外せない監督といえばマッドハウスの小島正幸、と言っても知らない人は少なくないだろう。
日本テレビは深夜アニメが始まった当初から大人向けの原作付きアニメに積極的に取り組んでいるのだが、ベルセルク以来断たれることのないこの火曜深夜枠の歴史において『マスターキートン』『花田少年史』『モンスター』と三度取り組んできた人こそがこの小島正幸監督。氏の作品には決して派手さはないものの、その丁寧な演出は時に原作以上の感動を呼び起こすものがあり、特に『花田少年史』は涙なしには観られない傑作アニメと言える出来。
そんな小島監督の初の長編アニメは、『花田少年史』の原作者・一色まことの現在も連載中のマンガ『ピアノの森』のこの劇場版である。


小島監督の作品は何度も観ていただけに前情報なしに心配しないで観に行ってみたところ、これがやっぱりなんとも良い映画に仕上がっていた。
始まってすぐはメインキャストにほとんど声優を使っていないために感じる違和感があるものの、聞いているうちに慣れてくる、というか主演の上戸彩に関してはかなり上手いんじゃないかと思えてくるので問題なし。
小島監督も良い意味でテレビアニメを手がけるときと変わることなく、小学生同士の不器用な交流の歯がゆさや、音楽の感動を十二分に感じられる演出は職人気質の小島監督らしい丁寧なもの。
確かにマッドハウスの最近の作品(『時をかける少女』『パプリカ』)と比べると派手さは足りないが、派手な原作でもないのだからこれで充分(後半のあるシーンは思わず噴出すほどおかしかったが)。『時をかける少女』にも通じる影なし作画は、シンプルな分どのシーンも見劣りすることなく最後まで安心して観賞することができた。


ほとんどの映画館では今日までの上映だったので観られなかった人も多いと思うが、DVD化された際は是非手に取ってもらいたい良作。きっと誰もが忘れてしまった子供心とやさしい感動を味わえるはず。