ユウキズ・ダイアリー

アニメ・映画・ゲームについての雑記

ゼルダの伝説 夢幻の砂時計 その3

2Dのマリオシリーズにおいて、マリオがいくつかのステージをクリアして最後に待ち受けるクッパを倒す、という定型が決まっているように、ゼルダにも定型がある。やはり同じように、いくつかのダンジョンを攻略して最後のボスを倒すというものだが、その定型を守りながら、作品ごとに全く違った遊びを組み合わせることでプレイヤーを飽きさせないのがゼルダシリーズの魅力である。そして今作においてはそのダンジョン以外の要素が見事に機能したことにより、ゲームとしての深みを今まで以上に増すことに成功している。

  • 海王の神殿

ゲームの根幹にあり、プレイ中に何度も足を運ぶことになるのが「海王の神殿」。最初に訪れるダンジョンでありながら、最終階層にはラストボスまでいるという特殊な構造を持つこのダンジョンを支配するのは「時間」。ダンジョンに入ってから一定の時間を越えると主人公リンクの体力はみるみる減少していき、ゲームオーバーを迎えてしまうため、序盤は深くまで潜ることができないようになっている。

そこで活きてくるのが世界各地のダンジョン。海を渡って訪れる各島のダンジョンを攻略することで手に入る「砂」によってリンクは行動時間を延ばし、より深くまで潜れるようになる。

逆に見れば「海王の神殿」が各ダンジョンを結びつける「柱」の役割を担っているのだ。

  • 船のパーツ収集

各島の間に横たわるのが広大な海。何もなければそれはただの平野と代わらないのだが、ただ宝の地図があるだけで、そこは夢とロマンに溢れた神秘的な海洋へと様変わりする。

リンクは冒険の途中、店の軒先や深いダンジョンに眠る宝箱の中、人助けのお礼など、様々なところで何枚もの宝の地図を発見することになる。それらに記された箇所でサルベージというちょっとしたミニゲームを行うことで、宝箱を得ることができる。

プレイヤーにアイテムを渡すためであれば、こんなまどろっこしいことはする必要はない。ゲーム製作者側は地図の代わりに目的のアイテムを置いておけばいいのだから。しかしそこに「宝の地図」が介されることによって、「海」が島と島の間に横たわるただの「面」ではなく、擬似的な「深さ」を伴ってプレイヤーに認識される。世界が立体感を持つのだ。

また、宝箱から出てくるのはお金からステータスアップのためのアイテムまで様々だが、特に多いのが船のパーツ。どんなパーツをつけようと船がパワーアップするわけではないのだが(外見を統一すると体力が上がる、というのだけはあるが)、いくら宝箱を引き上げてもリストが埋まらないほどの膨大なパーツ量は、宝箱回収の意欲を増すのに一役買っている。

  • 通信対戦

購入前は単なるおまけ程度にしか考えていなかった通信対戦要素。しかし実際に遊んでみると、決しておまけとは言えないほどの遊び応えに舌を巻くことになった。

プロデューサーの青沼氏がドイツのボードゲームスコットランドヤード』にインスパイアされて作ったというそのルールは、無敵のモンスター「ファントム」と、攻撃を一度でもくらえば即死するひ弱な主人公リンクを交互に操作する、非常にスポーツライクで奥深いもの。

ここで使用するファントムこそ、前述の海王の神殿においてプレイヤーを悩ませるモンスターであり、プレイヤーは対戦モードでファントムの動きに慣れれば慣れるほど、神殿の攻略でも余裕をもって対処できるようになる。

さらに通信相手とは船のパーツの交換も可能。一人では集めきれないアイテムなだけに、積極的に通信対戦をすることによる恩恵は大きい。



各島のダンジョンを結びつけるのが「海王の神殿」であり、「海王の神殿」と「パーツ収集」を結びつけるのが「通信対戦」。すべての要素が有機的に結びついている今作の見事なゲームデザインは、シリーズ屈指の完成度と言っても過言ではない。