ユウキズ・ダイアリー

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メトロイドプライム3 コラプション


公式サイト


「俺はサムスだ」(ほぼ日刊イトイ新聞 樹の上秘密基地)

さすがイトイ新聞の言うことは違う。刹那くんの迷台詞の5年ぐらい先をイっちゃってるこの素晴らしい発言は、2003年に発売されたプライムシリーズ1作目『メトロイドプライム』に対して、そのあまりにも深い没入感から思わず漏れた言葉。でも私は、先日Wii用ソフトとして発売されたシリーズ最新作『メトロイドプライム3 コラプション』をクリアした今だからこそ言いたい。
「俺がサムスだ」

  • より没入感のある操作性

元々2Dアクションゲームだったメトロイドシリーズが主観視点(ファーストパーソン)ゲームとして生まれ変わった『メトロイドプライム』は、ただただ複雑になりがちなFPSの典型的な操作法に「待った!」をかけ、移動とカメラ操作を切り離す(同時に行えない)ことでよりGCのコントローラーの特殊性を活かした優れた操作法を実現した。のだが、それは新たな操作法をプレイヤーに植えつける必要があったわけで、ひと通りの操作を頭と手に叩き込むにはかなりの慣れが必要だった(慣れればものすごく快適なんだが)。
それに比べると新ハードWiiでの発売となった『プライム3』は、操作法のわかりやすさがまるで違う。ボタンはフルに使うのでWiiにしては操作が複雑な方ではあるが、移動は左スティック、カメラ操作はリモコン、と誰もが直感的に扱えるデバイスになっているので、以前までと違って移動とカメラ操作が同時にできるにもかかわらず、操作のわかりやすさは段違いに上。
Wiiでの操作をさらに独特なものにしているのが、ヌンチャクによるグラップリングビームだ。これは左手に持ったヌンチャクで敵の盾を引き剥がしたり、天井に撃って宙吊りになったりと戦闘でも探索でもなくてはならないアクションなのだが、これの発動条件が「ヌンチャクを振る」こと。更に盾を引っぺがす時は思いっきり「ヌンチャクを引く」。この動的なアクションがまるで本当に左手からビームを出しているような錯覚を覚えさせ、リモコンで行う射撃アクション以上に、サムスとの一体感を実現している。
リモコンでのカメラ操作、ヌンチャクのグラップリングビームはゲームと現実との距離を一歩縮め、プレイヤーをメトロイドの世界に引きずり込むのに一役買っている。カメラの移動形式もいつでも3段階から変更可能になっており、「俺がサムスだ」感というのは、それこそ初心者から上級者までどんな層のプレイヤーでも味わうことができるだろう。

  • 多彩なステージの数々

メトロイドといえば主人公サムスが惑星のあっちこっちを練り歩いて「知らないところを歩いてて不安で死にそうだったのに気付いたらスタート地点じゃないか! これで回復! 勝つる!」という、不安と安心の繰り返しの末にやがては惑星全土が俺の庭状態になるという「ダンジョンオンリーのゼルダの伝説」形式が常。だが今回はダークサムスとの最終決戦&プライムシリーズ完結編という大役を担うべくスケールもアップ。いつもは役立たずのシップも今回ばかりは乗り回して、いくつもの惑星に起こる汚染(コラプション)を防ぐべく奮闘し、やがて悪の権化ダークサムスの元に! という熱いストーリーが展開。
そういうわけで、それぞれの惑星はそれぞれ充分な広さがあるが、いつものような「俺の庭感」もとい「征服感」というのは若干薄め。そこは期待しているだけに残念ではあるが、これまで以上にゾーンごとの差異が際立っているのはかなり良い方にも働いている。何せ初っ端からスターウォーズもかくやと言わんばかりの大規模宇宙戦闘が窓外で展開する戦艦から始まり、おなじみの古代遺跡風ステージや、今までどんなゲームでも見たことのないほどの足元スースー感が味わえる天空都市など、どこまで行っても新しい景観にワクワクすることができる。ここは今までとは別のスタイルと割り切って、『プライム3』が新たに築いたメトロイド像に乗っかるべき。

  • 魅力的なハンターたち

いくつもの惑星が舞台、何人ものハンターが出てくる、となると外伝的作品『メトロイドプライム ハンターズ』と多々被る部分もある。が、本家プライムシリーズとは違うNST製の『ハンターズ』は、個性的なハンターが揃いながらも強く印象に残るものはなく、それぞれの惑星ボスがほとんど同じ形という手抜きっぷりには失望を隠せないものだった。
それに比べて『プライム3』に登場する3人のハンターの魅力と言ったら比べるのも失礼なぐらい。会話シーンはそれぞれ余り多くはないが、その短いシーンでも彼らのかっこよさは嫌でも伝わってくる。そして物語の展開上、否が応でも銃を向け合うことに……。彼らと戦うのは本当に辛かった。
特にランダス! 彼のかっこよさといったら格別で、メトロイド史上に残る超名曲のBGMと序盤にしては狂ったような難易度と相まって『プライム3』中で最も印象に残る戦いになった。ランダス、ああランダス。



熱いストーリーや親切なガイド、2ボタンで見られるヒント、少しのリスクで最大限の力を発揮するハイパーモードの導入など、『メトロイドプライム3』はこれまでのシリーズ作品と比べると若干自由度は低いし、幾分かストイック性に欠けるきらいもある。だがそれがなんだというのだろうか。アメリカで幾ら人気があっても日本ではマイナーゲームの枠を出ることのできないメトロイドが、Wiiという最大の武器を手に入れて再び表舞台に立とうとしているのだから、初心者を最後まで導くだけの親切心を持っていても悪いことはない(一部のボス戦、特にランダスとモゲナーが強敵なところにはメトロイドがもつ天然の高難易度化がはたらいてしまっているので、そこだけは初心者は覚悟して、熟練者は楽しみにしていい)。
プライムシリーズ3作目、しかも完結編というストーリー上の問題が購入の最大の壁かもしれないが、私自信2作目はすっとばしてのプレイだったが何の問題もなかったし、公式サイトにはこれまでの丁寧なストーリー解説が載っている。むしろストーリー性が薄かったメトロイドが熱いストーリーを引っさげてやってきたのだから、今回からプレイしない手はない。Wiiを持っていてハードでバイオレンスなゲームを求めている人、丁寧で完成度の高いゲームを求めている人は是非とも挑戦してみてほしい。
誰もが、サムスになれるのだから。