ユウキズ・ダイアリー

アニメ・映画・ゲームについての雑記

テイルズオブイノセンス


テイルズらしさ」とは何か?と聞けば、おそらく多くの人は「アクション性の高い戦闘」「ボイスをふんだんに使ったキャラクター同士の掛け合い」とか、まあその辺りを挙げると思う。少なくとも私はこの2点がテイルズシリーズに欠かせないものだと思っている。いや、性格には「思っていた」だ。このゲームをプレイするまでは。


テイルズオブイノセンス』は昨年12月にニンテンドーDS用に発売された、テイルズシリーズの最新作。DSにおける前作『テイルズオブテンペスト』は、そのあまりの手抜きっぷりにテイルズシリーズのファンさえなかなか手を出すことができなかったいわくつきの代物だったが、今作は汚名を返上すべく、2007年のテイルズシリーズを支える「マザーシップタイトル」として大々的に発表された。


今作の開発元は『ガンパレードマーチ』などで有名なアルファシステムテイルズスタジオ製でもないのに「マザーシップタイトル」などという造語を使ってまで大見得切って大丈夫なのかと心配してみたが、プレイしてみると確かに、力を入れて作っているというのがヒシヒシと伝わってくる。
まずOPアニメーションからして、DSなのにブロックノイズが発生しない=相当な容量をOPに割くことで第一印象に気を使ってるし、ボイス入りのイベント量はPS用ソフトかと思うぐらい多い。
肝心の戦闘も『アビス』と『デスティニー』を融合させた最新型のシステムを採用しており、スピーディーで気持ち良い。これだけ見れば、確かに「テイルズらしい」テイルズだ。DSでも充分テイルズ本編が作れているように思えるし、バンナムが「マザーシップタイトル」と言いだすのもわかる。


だがテイルズは、「テイルズらしく」ある以前に、面白いRPGでなくてはならないはずだ。『テイルズオブイノセンス』はゲームとしてはあまり褒められたものではない。


「キャラクター同士の掛け合い」は大量に詰め込まれいるので、確かにテキストの総量はDSにしてはかなり多い。そこは評価すべき点ではある。だがそこに注力しすぎているために、メインのキャラクター以外のテキストはおざなりになっているのが問題だ。
今までのテイルズであれば各町ごとに大きな特徴があり、多くのRPGと同じように民家に入って住民の暮らしぶりを覗き見ることができた。しかし今作においては、ほとんどの町は宿と店があるだけの、単なる補給ポイントと化している。住民たちのためのサブイベントがほとんど存在しないので、2大国が戦争状態にあるというテイルズには珍しい設定も活かされず、結局は主人公と敵たちとの狭い範囲の物語に終始してしまっている。
物語終盤にはせっかく飛行船が手に入るというのに、ただ1つの隠しダンジョンへいくためだけの足にしかなっていないのももったいない。せっかくのワールドマップなのだから、もっと飛行船でしか行けない場所を設定すればよかったものを。これなら飛行船などあってもなくても変わらない。


戦闘システムはスピーディで面白い。だが、それを活かすためのダンジョンが最低のつまらなさだ。斜め型のダンジョンにするのは構わないのだが、似たような十字路やT字路が続き、視点が近いので極端に迷いやすい。しかもオートマッピング機能さえなく、ダンジョン最奥からの帰還アイテムもない。ギルドダンジョンはランダム生成だからつまらない形になるのも仕方ないが、クエストの内容が似たり寄ったり(指定のモンスターを倒すか、新型武具を試すか、夢遊病患者を連れて帰るか)。作業感がぬぐえず、やり込む気が湧かなかった。


キャラクターや世界設定、戦闘、OP、EDなど、気合が入っている点には好感が持てた。だがそれを帳消しにするぐらいにストレスに感じる点も多いのが、非常にもったいない作品だ。「アクション性の高い戦闘」「ボイスをふんだんに使ったキャラクター同士の掛け合い」を用意する以前に、RPGとしての面白さこそを大事にしてほしかった。
ゼルダ世界樹DQ、FFなど、DSは据え置き機と比べて遜色のないゲームが多く出すぎてしまっている。既に「テイルズらしさ」を装っただけのゲームでは満足できないハードだ。もし次があるのなら、「テイルズらしい」ではなく、「据え置き用テイルズにも負けないぐらいに面白い」作品になって帰ってきてもらいたい。