文章表現の豊かさに感動して思わず涙が出そうになるなんて、初めて村上春樹を読んだとき以来だろうか。それほどの衝撃を久方振りに味わった。
物語はとてつもなく可愛らしい「彼女」と、それを追いかけ続ける「私」の主観が交互に入れ替わりながら進行。夜の木屋町、下鴨神社の古本市、京都大学?学園祭と、季節を越え色鮮やかに移り変わる情緒豊かな京の都を舞台に、行く先々で「彼女」は天真爛漫な可愛らしさを発揮。「私」は汗水垂らして追いすがるが、頑張れば頑張るだけ空回り。
横たわる溝が一向に埋まらない2人の関係はいじらくも愛らしく、「もっともっと逃げまくれ!」と意地悪な声援を送りたくなってしまうのは私だけではないだろう。
秀逸なのは「彼女」の(というか「彼女」のために筆者が選んだ)文章表現の鮮烈ななんともいえない可愛らしさ!
電気でお酒をつくるなんて、いったい誰がそんなオモチロイことを思いついたのでしょう。
達磨をお腹に抱え、ぽてぽてと歩いていると、
ちっちゃな頃だけ悪ガキでした。
神様の御都合主義万歳! なむなむ!
なんだか、誰もが寝静まる真夜中に、一人寝床で目を覚ました子どものような心持ちです。
彼女の言葉を借りるなならば、この本は格別に「オモチロイ」。