ユウキズ・ダイアリー

アニメ・映画・ゲームについての雑記

君の名は。ブームの終着点『君は彼方』を見てはいけない

君の名は。』ファンとして気になる映画が先週末から公開している。『君は彼方』だ。なぜ気になるのかは予告編を見れば明らかだと思う。


映画『君は彼方』予告60秒映像

 

タイトルのみならず、映像までも明らかに『君の名は。』『天気の子』を意識しすぎである。

とはいえ『君の名は。』の大ヒット以降、男女が主人公のオリジナルアニメ映画を何となく『君の名は。』風の味付けの予告編で集客するというのはよくある話で、とはいえ中身は全然違うなんて事故もありがちなので(『Hello World』とかね)、実際どんなものかと映画館で確かめてみることにした。

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スクリーンが暗くなるとアニメーションが始まるかと思いきや、煌々と映し出される「a sena yoshinobu film」の文字。もうこの時点で「監督1作目でそんなこと書く人間はろくなもんじゃないな…!」と警戒アンテナはビンビンに。何ならここで席を立つべきだったかもしれない。

見終わった結論としては、見ない方が良い。お金をもらっても、見るべきではない。

 

見てはいけないポイント1 パッチワークがひどい

似てるのなんて予告編の印象だけでしょうと思っていたのだが、中身もまあ新海作品に限らないいくつもの作品のパッチワークだった。

話の大筋としては、主人公の女の子・澪(みお)が友達以上恋人未満の男の子・新(あらた)とちょっとしたことで喧嘩して、仲直りしようと向かっている途中で交通事故に遭い、霊体としてあの世とこの世のはざま(彼女の記憶に沿って作られた池袋そっくりの世界。とにかくこの映画には池袋東口駅前がよく出てくる)でこの世に戻ろうと奮闘するというもの。これ自体はよくある定番の物語。

ただそれを彩る印象的なシーンが、繰り返し4回も5回も描写される「空からの落下」や、澪が繰り返し発する「忘れたくない!」といった新海誠オマージュに加え、千と千尋の神隠し』でおなじみ海を走る列車とそこに乗り込む黒い影や、澪が気持ちを吐露しながら高らかに歌い上げる『アナと雪の女王である。空飛ぶペンギンは『ペンギン・ハイウェイだし、空飛ぶ金魚は『夜は短し歩けよ乙女だ。こうなったら空飛ぶクジラは『海獣の子供』にも見えてくる(『海獣の子供』のクジラは、さすがに飛びはしないが)。

他の作品をオマージュするなんて当たり前のことだし、それを否定する気はさらさらない。ただこの作品でやってることは、近年の方向性の違う作品を、あまりにもダイレクトに、作品になじませないで貼り合わせただけのパッチワークにしか見えないので、大変不快な気持ちにさせられた。

 

見てはいけないポイント2 音響監督の仕事がひどい

公開直後には作画がひどいなんて話も聞こえてきたが、荒れた作画はほとんどないし、この程度の作画の作品はテレビアニメならざらなので、そこはそんなに責めたくはない。エンドロールを見ると原画9人、第二原画2人。むしろよく95分の映画を完成させたと思う。

ただキャストが問題で、澪役の松本穂香はまだ良いとしても、土屋アンナ竹中直人といった完成された俳優らの声はどうしても一般的なアニメとはなじまない。なじませるには、宮崎駿映画や押井守映画、ディズニー映画でもいいが、とにかく精密な作画やリアリティを感じる芝居で、役者に近づけなくてはいけない。今作のテレビアニメ級の作画には全くなじまないので、結果的に作画も声の芝居も、質が低く見えてしまう。

また「松本穂香はまだ良い」と書いたが、絵とのなじみについてであって、芝居、特に叫びのシーンが大変厳しかった。とにかくこの映画、澪(=松本穂香)に叫ばせるのだが、通常の映画であればカットすべき音域まで入れているのか(音響について詳しくないので間違っているかもしれないが)、特に終盤の病院廊下での叫びは、不快なレベルで耳をつんざき、思わず耳を塞ぎたくなってしまった。爆音上映でもあればわかるのだが、これまで普通の映画で耳に不快感を覚えるというのは初めての経験だったし、こんなものは二度と味わいたくない。

そしてこの音響監督を務めたのは、本作で他に企画・原作・プロデューサー・監督・ワードコンテ・絵コンテ・声優・挿入歌作詞をも兼任する、瀬名快伸氏だ。エンドロールで氏の名前が繰り返し表示されるのを眺めながら、冒頭で感じた警戒心が正しかったことに気づかされたのである。

 

というわけで『君は彼方』は見ない方が良い。コロナ禍でハリウッド映画は全滅だが、幸いアニメに限れば今は『鬼滅の刃 無限列車編』をはじめ、『羅小黒戦記』や『ウルフウォーカー』といった粒ぞろいだ。終わりの見えないしんどい世の中だから、せめて面白い映画を見てほしい。間違っても今見るべきは、『君は彼方』ではない。

『マリオカート ライブ ホームサーキット』は富豪じゃなくてもレンタルスペースを借りればいい

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新型ガジェットはとりあえず買いたくなるマンなので任天堂が発売したリアルラジコンでマリカー体験ができるという触れ込みの『マリオカート ライブ ホームサーキット』もとりあえず買ってはみたものの、長らく開封せずに放置してしまっていた。どう考えても広い場所がないと楽しくないからだ。

ただこのままじゃいかんと思い立ち、同様に積んでいる友人を巻き込んで走行会を開催することにした。問題は場所だが……以前VRゴーグル体験会をやったのを思い出し、今回もレンタルスペースを借りることにした。そこでカシカシというレンタルスペース紹介サイトで、都内のとにかく広い部屋はないか?と探していると目に留まったのが、レンタルスペースin部室だ。

レンタルスペース部室in麻布|レンタルスペースサイト「カシカシ」

映えそうな小物がやたらと置いてあるし、何より広い。85㎡!これならコース設営にも十分そうだと決め打ちした。

 

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走行会当日は、平日夜にも関わらず友人10名ほどが集まってくれた。やる前こそ「みんなで1つずつコースを考えて持ち寄ろう!」などと意気込んでいたのだが、最初はオーバルコース(だ円状コース)、次に8の字コース、と遊んでいたら2時間以上経過してしまい、最後に会場全体を使った外周コースを走っていたら3時間でタイムアップ。思ったようにはいかなかったけれど、ただ走らせるだけでみんな楽しかったからだと思う。

シンプルなコースでも、思い通りに曲がれたり、追い抜くだけで興奮するので、プレイヤーも、順番待ちしてる観客も、終始笑いが絶えなかった。ラジコンを触るのはもちろん初めてなら、Switchを触るのも初めてという人もいたけれど、遊んでいるときの感覚は「いつものマリカー」なので、誰もがすんなりレースにのめりこんでいたように思う。

 

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マリオカートだからこその親しみやすさを改めて思い知ったし、ラジコンならではの「実車を走らせる面白さ」を知ることができて、大変楽しい3時間だった。これでたったの、一人1000円! やはりレンタルスペースは、富豪じゃないぼくらの味方だ。

 

【COCOAバグ】新型コロナウイルス接触確認アプリから通知が来たけどアプリに表示されないときに、どう対処すればいいか

去る9月12日土曜日の朝方、やつはやってきました。そう、「COCOA」こと「新型コロナウイルス接触確認アプリ」からの通知です。

自分にだけは来ないんじゃないかという「まさか」と、いつかは来るんじゃないかと思っていた「ついに」、ない交ぜの気持ちで恐る恐るアプリを立ち上げると……そこには「陽性者との接触は確認されませんでした」の文字……なんで??

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とここで思い出したのが、「COCOA」にはバグがあるという話。つまり私は「COCOA」からの通知とバグを一遍に体験することになってしまったわけです。

というわけで今回は趣向を変えて、「COCOA」のバグにどう対処したかとその後の顛末を記しておくことで、同じ目にあった人、これからあう人の役に立てればと思います。

ひとまず最初に結論だけ書いておきます。

・通知が来たもののアプリに表示されない場合は、「接触した」と思って行動した方が良い。

・アプリに表示されなくても、スマホの設定画面で見れる「一致したキーの数」により接触有無が確認できる。キーの数が「1」なら接触

・キーの数の下部に表示される「HASH」から接触した日付は確認できる。

接触が確認できたら住んでいる自治体の保健所に電話すべし。

  

1.接触有無の確認方法

ここからは順を追って経過を書いていきたいと思います。なお、使用している端末はiPhone11になります。Andoroidでの対応方法は異なると思いますがご容赦ください。

まずアプリ内でバグへの対処方法があるかと思って探してみましたが、見つからない。次に通知を再度確認する方法を調べましたが、これも無いようです。通知が来た瞬間にスクリーンショットを撮っておけばよかったと反省。

次にアプリ外で接触を確認する方法があるんじゃないかと思いTwitterで検索をかけるとと、同じ目にあっている人が大勢いる! いろんな方の対応方法を参考にして確認することができました。

具体的な手順としては、まずiPhoneの設定画面から「接触通知」→「接触のログ記録の状況」→「接触チェックの記録」と辿ると以下のような一覧画面を見ることができます。

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※9月12日時点では「プライバシー」→「ヘルスケア」→「接触ログ記録」→「接触チェックの記録」でも見れましたが、9月15日時点ではアップデートがかかったのか上記手順に変更になっています。

これを上から全部開いていって「一致したキーの数」を確認していきます。

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キーの数が0ならセーフ。

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キーの数が1ならアウト。やはりアウトでした。通知があったのでは気のせいではなかったことが確認できました。

 

2.接触した日付の確認方法

ただ本来アプリ上であれば接触した日付も表示されるそうなのですが、ここには表示されません。そこで役に立つのがキーの数の下部に表示される「HASH」。

どうやらHASHの冒頭何文字かを下記サイトに入力すると、接触した日付を教えてくれるそう。

cacaotest.sakura.ne.jp

入力してみると、接触があったのは「9月2日9時~9月3日9時」の間ということがわかりました。

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実に10日前のこと。そんなの今さら言われても……。

 

3.その後の顛末

晴れて接触があったことと、接触した日付まで確認できましたがさてどうするか。

本来なら連絡先もアプリに表示されるそうなのですがやっぱりよくわからないので、調べてみると住んでいる自治体の窓口に電話するのが良さそう。私の場合は渋谷区の受診相談窓口に電話してみました。

www.city.shibuya.tokyo.jp

ただあいにく土曜日だったので、休日用の窓口に電話すると東京都の案内窓口につながり具体的な検査日程などがわからなかったので、再度9月14日(月)に改めて渋谷区に電話しました。双方から得た回答をまとめると以下のような内容でした。

・通知があったからといって必ずしも濃厚接触者ではないケースが多いので過度の心配は不要。

・身近に陽性者の心当たりがないのであれば、普段通りの生活を送って構わない。

・ただしもし濃厚接触があった場合は、接触から14日間(9月16日まで)は発症する可能性があるとも考えられる。

・心配なら無料でPCR検査を受けることが可能。ただし検査希望者が多いため14日、15日はすでに埋まっている。検査可能なのは16日以降。結果通知には更に2日ほどかかる(土日問わず)。

上記回答をもって勤務先とも相談し、最終的に検査は受けず、16日までは在宅勤務でやり過ごすこととなりました。理解のある勤務先に感謝。

 

 

顛末は以上です。通知はいつでも来る可能性があるし、バグもある。私も軽く慌てましたが、対処法さえわかればなんとでもなります。

もし我が身に降りかかっても、鳥のフンが落ちてきたとでも思ってやり過ごしていきましょう。

10年越しのクリアを達成させるレベルの顔の良さ――『ゼノブレイド ディフィニティブ・エディション』

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2010年にWiiで発売されたRPGゼノブレイド』。当時ソフトが枯渇していたWiiに降臨した大規模RPGということで大変興奮したのだが、そのあまりの大規模っぷりにモチベーションが保てなくてエンディングを迎えることができなかった。仕事が忙しかったり、他のゲームに浮気してしまったり、理由はまあ色々あったんだと思う。

その後1年ほどしてからWii版をやり直したり、2015年に発売した3DS版をやったりと何度も挑戦して、その度に失敗してきた、この10年で最大の喉に引っ掛かかった骨が『ゼノブレイド』だった。

それが今回、Switch用に生まれ変わったゼノブレイド ディフィニティブ・エディション』でついにエンディングを迎えることができた。クリアタイムは77時間(高難易度クエストは除く)。感無量である。

 

改善点①:顔が良い

クリアできたのには、生活上の優先順位を最上位にするとか、クリアするまで他のゲームを一切やらないと自分に課したこともあるが、何と言ってもゲーム内の変化が大きい。まず顔が良い。

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Wii版『ゼノブレイド』の唯一無二の弱点が顔のモデリングだった。これは『ゼノブレイド』というゲームが広大な背景描写を優先するためにキャラクターに容量を割けなかったという特殊な事情によるものだが……ハード性能向上によりみんな顔が良くなったことで、自然とモチベーションが高まった。

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参考にWii版の画像も貼っておく(『ゼノブレイド』公式サイトより)

 

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元々動きで魅せていたイベントシーンは、顔が良くなったことで完璧なものに。出来が良いなあと思って調べたらイベントシーンは元からProduction I.Gグラフィニカが参加してたとか。Switch版ならイベントシアターで見直せるのも嬉しいところだ。お気に入りのシーンがあればも本体機能で簡単にスクショを残せるのもまた嬉しい。

 

改善点②:クリアしやすくなったサブクエス

またサブクエストがクリアしやすくなったのも大きな改善点だ。大量のサブクエ×複雑な地形によりWii版では時間を要したサブクエストが、今回はクリアまでのルートが地図に表示されるようになったので大幅に楽になった。

あまりに簡単になりすぎて冒険心を削ぐ点でもあるが、もう10年も前のゲームだし、ルート表示はON/OFF切り替えできるし、これぐらいあっても良いだろう。社会人ゲーマーとしては最高の改善点だと声高に叫んでおきたい。

 

クリア後のおまけ「つながる未来」

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Switch版はただの本編リマスターではなく、「つながる未来」という新たなエピソードも入っている。こちらは本編クリア/未クリアに関わらず最初から遊ぶこともできるので、もう1本のゲームが入っている感覚だ。

クリアまでは11時間ほど。本編に比べればごく短いが、本編中で訪れることができなかった没マップとして有名な巨神左肩を歩くことができシュルクとメリア、そしてメリアと関係の深い某キャラの本編から1年後の活躍を見ることができるのは堪らない。

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特にメリアは本編では不遇なサブヒロインポジに甘んじていたが、今回は唯一の女性キャラとして大活躍。某キャラとの絡みも含めて、完全にメリアのための物語となっている(シュルクの影は薄い)。

このために買うのは少々高くつくかもしれないが、Wii版クリア済の人にこそ遊んでほしいエピソードになっている。

 

まとめ

難点をあげるとすれば、モデリングが向上しているのは主要キャラの顔や新規衣装に限るので、既存の衣装や、背景グラフィックなどは元のままというところ。Wiiとしては最高レベルの背景も、Switchのゲームとして見ると解像度が低くボケっとした印象を感じてしまうことが度々あった(気候や近景・遠景など条件によるが)。

またSwitchの携帯モードで遊ぶと解像度が落ちるので(テレビモード:720p→携帯モード:520p)、携帯モードで基本的に遊ぶという人や、Switch Lite(テレビ接続できない)で遊んでいる人は注意が必要だ。

 

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とはいえ難点はその程度。Wiiで最高評価を受けるRPGだけに、今遊んでも古さを感じない面白さを誇っている。巨神の身体という、広大で高低差のあるマップを冒険する体験は、かつて果てしなく広い世界に感じていたSFC・PS時代のRPGの原体験そのもの。RPG本来の楽しさを思い出させてくれる傑作だ。

はじめてプレイする人はもちろん、私のように未クリアだった人にはぜひ本作で再挑戦してもらいたい。

 

コロナで147本ゲーム断捨離したら1万円のソフトもあって懐が温かくなったので焼肉食べたい

新型コロナウイルスによる長い自粛期間、ほとんど家にこもりっきりだったわけだが、そうなると流石に住環境を良くしたくなるわけで、最初に思いついたのがゲームソフトの断捨離だった。

最近ではパッケージソフトを買うことが少なくなったものの、それでも生まれてこの方買い続けたゲームの山は果てしなく積み上がり、どこに何があるやらわからない状態が長く続いていたのでこの際すっきりさせることにした。

手放すゲーム

・10年後を想像して絶対やらないもの

・面白くても思い入れが薄いもの

クソゲー

残しておくゲーム

・10年後にやらないかもしれないけど、それでも残しておきたい思い入れが強いもの

・面白くて思い入れが強いもの

・クリアしてなくて未練があるもの

 

だいたいこんな指針で手放すゲームを決めることにした。面白いけど、とはいえ思い入れが薄いものはこの際ばっさり手放すことにした。『街』とか、『キャプテン・ラヴ』とか。面白いけど、きっとやることはないだろう。

というわけで選び抜いた147本、駿河屋に預けてきた。預けた後に、これはやっぱりやめとけばよかった…というのもあるのだが、時間が解決してくれると願いたい。

ちなみに一番高かったのは『ワンダーウィッチプレイヤー』だった。1万円。『ダイシングナイトピリオド』はソフトのみでも1万2千円と言われたが、なんか惜しくなってやめた。

 

数を減らすと、目端が利く。自分の大切なものもより明確に見えてくる。『メタルギアソリッド』、『エースコンバット』、『メトロイド』、『ゼルダの伝説』シリーズは手放せなかった。任天堂プラチナゲームズモノリスソフトナムコ(PS後期~PS2初期)のタイトルもかなりの割合でとってある。このあたりが自分のど真ん中ということなんだろう。

 

だいぶ少なくなり少々寂しい気もするが……それでも残りは176本。これを機に、たまには昔のゲーム機にも火を入れて、好きだったゲームのことを思い出していきたい。

1回10分の宇宙船共同生活シミュレーション『グノーシア』クリアレビュー

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Nintendo Switch用テキストアドベンチャーゲーム『グノーシア』をクリアした。……いやテキストアドベンチャーと呼んでいいのだろうか。特殊なゲームをプレイすると一般的なジャンル付けがあまりに無力に感じる。

このゲームは体裁こそテキストアドベンチャーであるが、プレイ中に想起したのはシミュレーションゲーム高機動幻想ガンパレード・マーチ』だ(ガンパレもシミュレーションと呼んでいいのか悩むところだが)。テキストシミュレーションゲームという造語でも作るのが適切かもしれない。

 

『グノーシア』は元々Playstation Vita用に2019年に発売されたソフトで、今年4月にNintendo Switch移植版が発売された。2019年に今更Vitaで?と思ってVita版には手を出さなかったのだが、数少ないプレイヤーからはとにかく絶賛の声しか挙がらない。どんなものか気になって仕方ないので移植を機にプレイしてみた次第だ。買う前に聞いていた触れ込みは「人狼ゲームを元にしたアドベンチャーゲーム」。

人狼ゲームは本来、正体不明の「人狼」と「村人」に分かれて争う犯人当てパーティーゲーム。1、2度プレイしたことがあるくらいで特別興味を惹かれる題材ではなかったし、それをデジタルゲームにして面白いものになるのか?プレイ前は疑問符だらけだった。

 

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プレイしてみると、確かにゲームの根幹は人狼ゲームだ。ただし設定はSF風味。タイトルにもなっているグノーシアは、いわゆる「人狼」のゲーム内での呼称。プレイヤーは乗員(村人)として、時にはエンジニア(占い師)、ドクター(霊能者)など力を借りながら、村…ではなく宇宙船内に潜むグノーシアを見抜いてコールドスリープして(吊るして)いく。過半数がグノーシアになったら乗員側の負け、逆にグノーシアを全員コールドスリープすれば乗員側の勝利だ。

慣れれば1ゲーム10~15分程度で、プレイ前に乗員数(プレイヤー含めて最大15人)やその内のグノーシア数(最大6人)、プレイヤー自身の役職も自由に変更でき、グノーシアとして殺戮に興じることもできる。

 

これがなんでそんなに絶賛されるのか、とプレイ当初こそ懐疑的だったのだが、気づくと10周、20周……エンドロールを迎えたときには150周中近くになっていた。

何周遊んでも苦にならないのはひとえにキャラクターの魅力だろう。SF少女漫画風のキャラデザが良いとか、ループの先を目指す壮大なシナリオが良いとかではなく(いやもちろんそれらも秀逸なのだが)、何せ人狼ゲーム中の各キャラの挙動が良い。

 

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始めたばかりの頃は、なんで勝ったのか負けたのかもわからないままもやもやとするばかり。それがゲームに慣れてくるとそれぞれの発言、行動から「このキャラは嘘が下手」「人に媚びて平気で嘘つく」「論理的だけど信用されない」「助かるためには土下座も厭わない」など性格が見えてくる。

キャラクターも周回が進むごとに極端な行動をとりだし、より性格付けがはっきりしていく。はっきりしてくるとキャラクターの動きが読みやすくなり、「こいつとこいつは裏で手を握ってるな」「この発言は嘘じゃないな」というのが分かってくる。目に見えないパラメータをだんだんと手の内に掌握し、コントロールしていく感覚、とでも言えばいいだろうか。

 

そこで思い出したのが前述の『高機動幻想ガンパレード・マーチ』だ。熊本の学校を舞台にしたこのゲームは、毎日学校に通いながら同級生たちと友情や恋愛を育み、時に戦地に赴き死闘を繰り広げるという自由度の高いシミュレーションゲーム。とりわけ同級生たちの自由なふるまいが面白く、まるでゲームの中に生きているかのような錯覚を覚えるものだった。

『グノーシア』はテキストアドベンチャーだが、プレイ感は『高機動幻想ガンパレード・マーチ』に通ずるところがある。人狼ゲームを繰り返しているだけなのに、それが14人のAIとのかけがえのない数日間の共同生活を過ごしている気分になってくるのだ。

なおこのゲームで機能しているのはAIではなく「アフォーダンス」というらしい。詳しくは下記インタビューを参照のこと。

jp.ign.com

 

長い共同生活を過ごしていると時には単調な展開が続いてダレることもあったが……それはそれで『シュタインズ・ゲート』や『涼宮ハルヒの憂鬱』の無限ループをリアルに味わっているような妙な感覚もあり、苦しい時期も良い思い出になった気がする。

そう、今はもうエンディングを迎えてしまったのだ。楽しかった思い出と、大きな喪失感が胸に去来している。なるほど絶賛されるのも納得である。

 

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このゲームを遊ぶにあたって「人狼ゲーム」は入り口の一つすぎない。内容的には『シュタインズ・ゲート』に代表されるループもののゲーム/アニメ、世界観的には萩尾望都手塚治虫といった古典SFが好きな人に特におすすめだ。

『グノーシア 』は14人のキャラクターとの忘れられない思い出作りを楽しめる新感覚ゲーム。ぜひ多くの人に遊んでもらいたい。

 

グノーシア|NintendoSwitch版公式サイト

FF13ティザートレーラーの実現化とコンフリクト――『ファイナルファンタジーⅦリメイク』クリアレビュー

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ファイナルファンタジーⅦリメイク』(以下FF7R)をようやくクリア。タイムは43時間。PS版『ファイナルファンタジーⅦ』(以下FF7)の序盤――ミッドガル編までのストーリーをリメイクした内容だと事前に聞いていたのでここまでの大ボリュームだとは思っていなかった。長く楽しめた一方、このボリュームこそが『FF7R』の優れた演出のパワーを削いでしまったように思う。

 

  • FF13ティザートレーラーの呪いとその実現化

『FF7R』の最も気に入っている点は戦闘時の演出だ。

そもそもファイナルファンタジーというシリーズはゲームという媒体で物語を如何に表現するかという点で長年挑戦し続けてきた。戦闘中にセリフを挿入し、召喚獣をど派手に呼び出すなど様々な工夫を続けるなか、プレイヤーに特別な衝撃を与えたのが『ファイナルファンタジーFFXIII』(以下FF13)のティザートレーラーだった。

www.youtube.com

2006年のE3(14年前!)で発表されたこのトレーラー内の、カットシーンなのかプレイアブルシーンなのか判別できない流れるような戦闘演出は次世代のゲームを予感させるのに十分すぎるものだった。しかしあまりに先駆的だったためか、実際の『FF13』では実現されなかったのだが……。

そして時は流れ『FF7R』では、このなんちゃって演出を完全に実現。派手な敵登場カットシーンからそのままに戦闘へ移行し、特別な攻撃演出や敵の形態変化も流れるようにバンバン挿入。これが1度や2度の特別な演出ではなく、何十回も出くわすもはや当たり前のものなのだ。

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『FF7R』の野村哲也ディレクターの携わった過去作品(『キングダムハーツ』シリーズや『ファイナルファンタジーXV』)でもこのカットシーンとプレイアブルシーンの一体化には長年挑戦し続けてはきたが、14年の時を経てようやく完成形になったと思うと胸が熱くなる想いだ。

 

  • 演出とボリュームのコンフリクト

ただ、このバトル演出とカットシーンの美しい連続性に水を差すのが、度々挿入される水増し要素だ。FF7』では10時間にも満たなかったミッドガル編を1本のゲームに仕立てるためか、『FF7R』は幾度となく原作にはなかった脱線をしながら物語が進行していく。

序盤のジェシーの両親を訪れるシークエンスはまだ良い方で(ジェシーがかわいいので)、幽霊を昇天させるだの、逃げたコルネオを追っかけるだのといった長時間の寄り道で、危機感ある物語が弛緩していく一方だ。

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幽霊退治の一幕。このパートいる?

またダンジョンがいちいち複雑化しており、あっちのスイッチを押しこっちのスイッチを押し、と行ったり来たりを繰り返すこと多数。終盤、もうすぐクリアだと意気込んで新羅ビルに突入したのに、ダンジョン化した北条の研究室内を行き来しているときは本当にゲンナリしてしまった。

 

  • 気持ちよくないバトルバランス

バトル演出自体は大変気持ちいい反面、バトルバランスが気持ちよくないのも問題だ。

今回はバトルシステムがガラッと刷新されており、アクションバトルとコマンドバトルの良いとこどりとなっている。敵の攻撃を避けつつ通常攻撃(□ボタンを連打)でATBゲージ貯める→貯まったらアビリティor魔法を発動、という繰り返しが基本の動き。アビリティor魔法の選択時は時間が止まるのでじっくり考えながら行動を選択できるので、ここはコマンドバトルっぽさがある。

この流れ自体は面白いアイデアなのだが、バトルバランスがなんとも気持ちよくない。何せ通常攻撃は非常に微弱で、序盤から終盤まで通して2桁台の攻撃しか与えられない。対するアビリティ・魔法は3~4桁台。序盤~中盤の雑魚戦こそ気にならないが、ボス戦や終盤の敵は4桁5桁が当たり前。通常攻撃をいくら繰り返しても微動だにしない壁を殴っているかのようで、完全にATBゲージを貯めるための手段にしかなっていない。

難度もかなり高めで、ゲームオーバーになった回数は数知れず。本作は敵の総数が決まっているため、レベルを上げて物理で殴る作戦は無効だ。知恵とテクニックが必要なゲームは好きではあるが……、少々やりすぎに思う(とはいえイージーモードもあるので、アクションが苦手な人もご安心を)。

 

  • まとめ

そんなわけで手放しでおすすめできるゲームではない。本作だけでストーリーは完結しないし、そのくせ水増ししているから冗長で、バトルは気持ちよくない。

けれども最初から最後まで、バトル演出とカットシーンは途轍もなくかっこいい。投入されている技術も、制作規模も、業界トップクラスなのは間違いない。最新のすごいゲームを味わうのにこれ以上のものはそう無いだろう。

そしてストーリーは、非常に意味深だ。序盤から出てくる旧『FF7』には存在しない謎の存在"フィーラー"は終盤にかけて存在感を増していき、物語は謎を残しつつ一旦の幕を引く。本作単体で見たときには旧作からの物語上の決定的な変化があるわけではないが、もしかしたら次作以降、カミーユが壊れない『新訳Ζガンダム』のように、トウジが死なない『新劇場版ヱヴァンゲリヲン』のように、何かが起こるのかもしれない。

その時をリアルタイムで迎えることを考えれば、完結してから一気にやるなどと言うものではない。そもそも10年先に完結しているとも限らない。何せ『キングダムハーツ』は3部作完結に17年も要したのだ。この先のお祭りに参加したいなら、今すぐに遊ぶことをおすすめしたい。