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フミコの告白take.3『ペンギン・ハイウェイ』

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森見登美彦原作、スタジオコロリド初長編映画となる『ペンギン・ハイウェイ』が8月17日から公開されたので早速初日に観賞した。

 

スタジオコロリドを率いる石田祐康監督は京都精華大学在学中に制作した短編アニメ『フミコの告白』で一躍注目を浴び、スタジオコロリド在籍後も『陽なたのアオシグレ』の監督、『台風のノルダ作画監督などを務めてきた。スタジオコロリドはパズドラマクドナルドといった企業CMも得意としており、それらを見たことがある人は多いに違いない。

 

今回の『ペンギン・ハイウェイ』は利発な少年アオヤマ君とおっぱいの大きなお姉さん、そしてペンギンを巡る物語。原作を読んだ当時は、それまでの森見登美彦作品に多い青年主人公の作品との隔たりを強く感じてしまいあまり頭に入らなかったのだが、映像作品として再度向かい合ったことでするっと理解することができた。そうかこれは小さな世界と世界の果てを描いた物語なのだと。『フリクリ』であり『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』であり『未来のミライ』だ。

なるほどそう考えるとお姉さんの声を演じる蒼井優の個性的な声は『フリクリ』のハルハラハル子を彷彿とさせる―余談だがアオヤマ君の親友・ウチダ君の釘宮理恵ショタボイスも秀逸だ。

 

しかし1本の長編アニメーションとしては、クライマックスシーンの疾走感こそ鳥肌モノであるが、他のシーンはどうしても精彩を欠いて見えた。キャラクター、ビジュアル、キャストの芝居、ストーリー、いずれも眼を見張るものがあるのに、もう一歩物足りない。もっと面白くアニメーション、できるんじゃないか。

森見登美彦原作アニメは『有頂天家族』『夜は短し歩けよ乙女』などいずれも傑作揃いのため、どこか厳しく比べてしまうところもあるだろうが、最後まで見た印象は『フミコの告白』『陽なたのアオシグレ』と大きく変わらないものだった。いい感じのビジュアルだけで引っ張る初期の新海誠作品とも重なる。

 

ただ、オリジナルの長編映画が作れる国内のスタジオ、監督がまだまだ少ない中で、こんなにも純粋な作品を生み出せる石田祐康監督(30歳!)は稀有な存在。生真面目でまっすぐなアオヤマ君と石田監督の姿が重なり、思わずこちらの背筋が伸びる。今後のコロリド、石田監督の作品も注目していきたい。