「黒川塾 バーチャルリアリティの未来へ 4」でVRトップクリエイターの知見に触れる

黒川塾 四十壱「バーチャルリアリティの未来へ 4 ~ あれから2年」で錚々たるVRクリエイターのお話を聴講できると聞き、10月28日夜、会社帰りにふらっと寄ってみた。

peatix.com

登壇者はPSVRを発売したばかりであるSIEの吉田修平氏バンダイナムコゲームスでサマーレッスンを手がける原田勝弘氏、同じくバンナムでVR ZONE Project i Canを指揮したコヤ所長こと小山順一朗氏、そしてOcuFesのGOROmanことOculusの近藤義仁氏。なんだかすごいところに来てしまった。

以下当日のメモより。意図が伝わるように編集している箇所があるのはご容赦を。

 

  • VR ZONEと呪いの世代

小山氏

・VR ZONEは計画の250%達成で大成功。

最初は渋谷パルコで開催することを計画していたがお台場に。

・「さあ、取り乱せ」のキャッチコピーが効いた。効きすぎて取り乱す系タイトルに人気が集中。

・どうしてボトムズを選んだのか。自由移動ができるから。でもガンダムだと自分が18mの巨人になるかのような体験になってしまうので無し。そしてボトムズ=鉄の棺桶。取り乱す。

・VRというテーマが強いのか、IPが強いのか見極めるため開始当初はIPを入れなかった。当初20代中心の客層が、10代と40代が伸びる結果に。

・40~50代はバーチャルガッカリ世代。呪いの世代。けれどボトムズ目的で来てくれた。

・呪いの時代。当時ナムコとしても、舛添元知事がプレイしたことでも有名なバーチャリティ2000をゲームセンターに導入。けれど全然プレイされなかった。やった人も怒りだす出来。

リッジレーサーでさえ当時は「バーチャルリアリティ体験」として売っていた。「バーチャルリアリティ世代」と「VR世代」は線引きされている。

 

  • サマーレッスンとVR体験

原田氏

・サマーレッスンは圧倒的売上1位。

・ユーザーの感想は3種類。①VRのすごさに声が出ない。②内容を知っていたうえで「こういうことか!」と納得。③既存のゲームの延長線上で評価。

VRは体験

・某メディアのインタビューを(校正ができないので)断ったから、というのは冗談だが、サマーレッスンの事をボロクソに書かれた。だがバットマンでさえ「ゲームとしては」29ドルはどうなのか?と批判されている。

・VRはプレイしないと伝わらない。文章では伝えられない。サマーレッスンは実況プレイ向けと言われたのは意外だったが、見てみたら確かにその通りだった。

小山氏

VR ZONEではゲームではなくアクティビティと呼ぶことにしていた。

・ゲーマー視点の人はゲームとしてのアドバイスをしてくる。けれどBGMをあえて無くすなど、リア充をびっくりさせることに重点を置いて作ることにしていた。

原田氏

・お台場には体験目的でお客が来てくれた。PSはゲームとして見られてしまう

小山氏

・自動で始める、自動で終わるという仕様にしなかった。結果、スタッフに裁量を持たせることで、プレイヤーの驚き方が変わるようになった。

原田氏

・アーガイルシフトはスタッフが冒頭に設定を言うようになってから没入感が増すようになった。

 ・サマーレッスン体験版ではサウンドチームが頑張ってくれて、最初に3秒間だけ効果音、ノイズが鳴る時間を設けたら没入感が格段に上がった。

小山氏

・VR ZONEのガンダムのアクティビティでは、何も知らずに体験させた人と、「ザクが襲い掛かってくる、逃げないと死ぬ」という設定を聞かせてから体験させた人では全然反応が違った。(会場ではその際の動画を再生。設定を聞かされて体験した人のリアクション芸人かのようなオーバーリアクションは会場中を湧かせた)

 

  • OculusのSocialとMedium

 近藤氏

サンノゼで開催されたOculus Connect 3。日本からも50~60人参加。注目は「Social」と「Medium」。

・Socialで全然違うところにいる複数人が交流したり、360度動画を共有できる。運動会に来れない田舎のおじいちゃんに運動会を見てもらう、なんてことができるようになる。生活の不便を解消できる。

・Touchを使った3D造形ソフトMediumは今までフレームに捉われていたオペレーションが自由になる。今まで習得に1週間かかった3D造形が10分で済むようになる。3Dプリントもできる。CADは再定義される。

 

  • VR部

 原田氏

・VRに興味を持った時、周りはやれやれ言っても金は出ない。鵜之澤(当時副社長?)には「こういうことは部活としてやれ」と言われた。

・なんとか部活としての体制を組んで、完成したものには皆反応がよく、社内の空気は今ではガラッと変わった。

・鵜之澤は「部活でやれば良いものになると言った通りだろ!」とまで言うように。

小山氏

・今では部署としてのVR部ができた。

・呪いの世代が経営判断しているので、VR ZONE含め最初は上層部の動きが鈍かった。

・アーケードは右肩下がりなので今やるしかないと思った。新しいものはコンテンツの価値を高める。だからVR ZONEは1,000円以上に設定しても成功できた。

 

  • ビジネスとしてのVR

原田氏

・VRには未だに発見がある。ビジュアル面でもサウンド面でも。サマーレッスンでそんな発見を発信していきたい。一度のお祭りではなく、長い期間続けたい。

・これからは人工知能(AI)も注目。AIが完璧な反応をするのは過渡期だから。いずれ不完全なもの、つまりは生物になる。

アイマスはアーケード初期から見守ってきて、それこそ(ヒロインの1人)伊織と一緒に働いているんだという自分だけのバーチャル体験をしてきた。そんな体験がVRとAIでエンタテインメントになる。

MMORPG格闘ゲームをAIとプレイする時が来る。OFF会をやったら誰も来ない、けとまたゲーム内であったら「おいおい来てただろう」と。実はAIは監視カメラでOFF会会場を見ていた…、なんてことも起こりうる。

・VRはメンタルケアにもなる。死んだ父の疑似AIからVR越しにアドバイスを受ける、なんてことだって実現するかもしれない。

近藤氏

・VRはマネタイズが大変。けれどPC黎明期は同じだった。VRは開発者にとって公平にチャンスがある。ゲームエンジンも揃っている。みんながチャレンジできる。

・VRは体験なので1回で飽きてしまう。何度も遊びたくなる、遊ぶために早く帰りたくなる、仕事中に一緒にいてくれる。そんなコンテンツを作っている。

原田氏

伊織が隣にいたら仕事しないよ。

小山氏

・例えばマリオカートのワンワン、ドラゴンボール元気玉でも、VRならすごいことになる。日本のIP独自の想像力を高められる。海外にIPを買われる前に向き合うべき。

吉田氏

・(PSVR発売後の反応はどうかという問いに対し)社内は静か。視線が左寄りになる不具合は調査中。タイトルによっては酔いが激しいのは想定内。驚くほど良いスタートを切った。

 

  • Q & A

ーー気分によって酔う時も酔わない時もある。ゲームだと思って遊ぶと酔う気がするがどうか?

原田氏

・VRへの興奮度が高いと酔うかも。またVRに慣れるといろんなところを見るようになって酔うのかもしれない。メンタルで変わる。

ーー任天堂はNintendo Switchが失敗したら、10年以内にソフトメーカーになる。VRでマリオを。ソニーからアプローチを続けてほしい。※注:質問者はルイージコスのピョコタン

吉田氏

任天堂のゲームがもっと多くの人に遊ばれてほしいとは思っている。

ーースターブレードギャラクシアンをVRリメイクしてほしい。

小山氏

・そのままリメイクするとコクピットに座るだけになる。当時そのままでいいのか、妄想力を広げて、当時の世界観を広げるのか。

原田氏

・(実現するとしても)単なるリメイクで良いとは思わない。

ーーVR ZONEの「高所恐怖SHOW」は家庭だと実現できないのか?

吉田氏

・短いものならPSVRでもできる。映画「ザ・ウォーク」のVRデモも作った。

小山氏

・(家庭でVRを行うと)安全なものが危険にもなる。注意が必要。

 

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「VRは体験。既存のゲームの延長線上で捉えるべきではない」という考えが特に印象に残るもので、VR ZONEに感じていた物足りなさにようやく得心がいった。そもそもゲームとして作っていなかったのか……。ゲームの表現方法とばかり考えていた自分にこれはショックなことだった。VRにはゲーム性以外の評価軸を持って接する必要がある、ということを知ることができたのだ。その他、多くの知見に触れられた素晴らしい講義だった。

そして原田勝弘氏の伊織愛も本物だった。VRの進化には期待しかない。