これこそが20年間待ち焦がれていたパトレイバーだ! 『パトレイバーREBOOT』

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現在劇場にて1週間の限定上映中の『ゴーゴー日本アニメ(ーター)見本市』。これはドワンゴスタジオカラーによるWEB配信短編アニメシリーズ『日本アニメ(ーター)見本市』の傑作セレクト上映なのだが、劇場公開にあたり異色の追加作品が制作された。機動警察パトレイバーシリーズ最新作となる『パトレイバーREBOOT』だ。

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パトレイバーは大好きな反面、過去に何度も苦渋を飲まされたこともあるシリーズ。たったの8分間だし期待し過ぎてはいけない、というかチケット2,000円て高過ぎない?、と悶々としながら『ゴーゴー日本アニメ(ーター)見本市』を観賞したのだが……。各短編アニメはWEBで視聴済みとはいえ大画面映えする作品ばかりなので新鮮な気持ちで楽しく見ることができたし、肝心の『パトレイバーREBOOT』は、予想を上回る面白さに度肝を抜かれた。

これこそがもう一度見たかったパトレイバーだ。ここから何かが始まりそうな予感に、今とても、ワクワクしている。

 

機動警察パトレイバーシリーズは、ご存知の通り1980年代末から1990年代始めにかけて、漫画、OVA、TV、映画とフォーマットの垣根を越えて、当時まだ珍しかったメディアミックス展開を実現し大変な人気を博した作品。その根強い人気に後押しされてその後2度のREBOOT(再起動)に挑んだのだが、いずれも成功と呼べるものではなかった。

1度目は2003年に劇場公開された『WXIII 機動警察パトレイバー(パト3)』と『ミニパト』だ。漫画版で描かれた廃棄物13号編をアレンジした『パト3』は1本の作品として完成度が高いものの、『機動警察パトレイバー 2 the Movie(パト2)』以上に、これまでの主人公である特車二課の面々の出番も、パトレイバーの活躍さえもほとんどない展開は、10年ぶりの長編映画への期待に応えるものではなかった。さらに併映された『ミニパト』は、短編ギャグ映画でしかなかった。

そしてさらに10年の時を経て復活した『THE NEXT GENERATION パトレイバー』は、OVA版と劇場版2作品を手掛けた押井守監督が手掛けた実写ドラマ+長編実写映画。押井守監督作品ということで非常にパトレイバーらしい丁々発止の会話劇が楽しめたものの、実写となることで皮肉にもリアリティが落ちた作品世界にかつての魅力が宿ることはなく、『パト2』後の世界線ーつまりレイバー産業が衰退した世界にはこの先の展開を予見できるものは何もなかった。パトレイバーはこれでおしまい、と思うしかないものだった。

 

と思ったところにたった1年の間隔で公開されたのが今回の新生パトレイバーだ。今作は過去2度のREBOOTとは全く異なる点は、正統派のアプローチだということ。パトレイバーという非常に受け皿の広い作品の性質上、レイバー戦があまり描かれない過去2度のREBOOTもそれはそれで「らしい」ものだったと言えるのだが、僕らが本当に見たいのは格好良いレイバーが格好良く闘う姿だ。そこに来て今回は、8分という短い上映時間を目一杯使って濃厚なレイバー戦を描いてくれた。それも昔では描き切れなかったであろうディテール満載のレイバーを、迫力の特撮風あおり気味アングルで、だ。これぞ現代ならではパトレイバーである。

そんな今作を監督したのは吉浦康裕氏。吉浦氏といえば『イヴの時間』に代表される会話劇の人、という印象だが、WEB版『アニメ(ーター)見本市』では『PP33 -POWER PLANT No.33- 』『ヒストリー機関』で迫力の怪獣戦やコメディまでもを描き、多才ぶりを発揮してきた注目の監督。今作では氏の得意分野がパトレイバーという作品にマッチしたことで、相乗効果が発揮されたのではないだろうか。氏のインタビューを読むと特に『パト1』が好きとのことなので、なるほど今作は『パト1』序盤の暴走レイバー戦の現代アレンジと見ることもできる。東京の下町を克明に描いた情景も、とてもパト1している。(あの庵野秀明氏がエグゼクティブプロデューサーに名を連ねているということもあり、重なる点も多い『シン・ゴジラ』序盤のと比較しながら見るのもまた面白い)

またキャラクターデザインを担当したのは『おそ松さん』の大ヒットが記憶に新しい浅野直之氏。原作に寄せる巧みな技を今回も発揮し、ゆうきまさみ氏描き起こし原案があるとはいえ、新主人3人はもとよりモブキャラに至るまで、親しみやすく、時にコミカルで、キメる時はキメる、そんなゆうきまさみ氏の漫画を飛び出したようなキャラクターで統一されている。野明も遊馬も後藤隊長がいなくたって、これなら列記とした特車二課だ。

ゆうきまさみ氏のみならず、音楽は川井憲次氏、監修・メカデザインは出渕裕氏、脚本フィニッシュを伊藤和典氏とお馴染みのメンバーも勢揃い。フレッシュなメンバーと古参メンバーの連携がとれていることも、今回パトレイバーとしての完成度を高めた一因なのだろう。

 

  • 観賞手段は少ないものの、ぜひ見てほしい

ということでとてもオススメな 『パトレイバーREBOOT』なのだが、観賞手段が少ないのが一番のネック。劇場公開は10月21日までだし、BD版も月末に発売するとはいえ5,000円もする(私は興奮して劇場限定の修正作画集付きBD(7,000円)を買ってしまったが……)。

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今作で人気が再燃して、ゆくゆくは吉浦監督による長編を!という夢を見たいので、どうか他の『アニメ(ーター)見本市』作品同様に期間限定WEB配信などの観賞手段が増えることで、今作の観賞者が、ファンが、増えるのを祈るばかりである。過去作を好きだった人にはもちろん、今までシリーズ作品に触れたことがないような人にも絶対に刺さる、極上のエンタメ作品なのだから。


「機動警察パトレイバーREBOOT」上映開始記念PV