ユウキズ・ダイアリー

アニメ・映画・ゲームについての雑記

『GUILD01』全ゲームプレイ後レビュー 


タクティクス・オウガ、ベイグラント・ストーリー、ファイナルファンタジー12。今や珍しいハードファンタジーゲームを手がけ続ける松野泰己氏が大好きなので、氏のLEVEL5移籍後最初のゲームが収録された『GUILD01』を当然購入した。
このゲームは、有名クリエーターの手がけた4本のショートゲーム集。LEVEL5にはあまり良い印象を抱いていなかったので、松野泰己氏の作品だけでも面白ければいいかな、とハードルを下げて挑んでみたのだが、遊んでみると意外や意外。どれもこれも中毒性が高いうえに、独創的で、面白い! XBOXLIVEアーケードなどの、短くて骨太でオリジナリティの高いゲーム大好きな身としては、大満足な出来だった。以下に一挙紹介。

  • 解放少女

4本のうち1番短いこのゲームは、『ノーモアヒーローズ』や、もうすぐ発売の『ロリポップチェーンソー』を手がけた須田剛一氏による全方位スクロールミッションクリア型シューティングゲーム
ファイアーエムブレム覚醒』でブイブイ言っているコザキユースケ氏デザインの日本国大統領兼プレイヤーキャラクターの大空翔子、BONES製の豪華アニメーション、劇中挿入歌など色物要素ばかりが印象に残るが、敵国が飛ぶ技術を持っていないということを理由に、タッチペンによる爽快ロックオン爆撃シューティングに仕立てているのが斬新。無理やり過去作を引き合いに出すと、レイストームエースコンバットをくっつけてアニメ調に装飾した感じか。
4本中最も爽快ながら、最もゲームクリアまで短いというボリュームの少なさ、あと男坂エンドが難だが、どっちも須田剛一ゲームのお約束みたいなものなのでそこはご愛嬌。

  • エアロポーター

シーマン』や『大玉』といったオリジナリティの塊しか作れない斉藤由多加氏の新作は、荷物運びローターを題材にしたパズルゲーム風空港経営シミュレーターというこれまたオリジナリティ溢れる作品。
こんなゲーム見たことない!と思ったけど、荷物を素早く的確に仕分ける感覚はビットジェネレーションの傑作デジドライブに近い。つまり脳汁ドバドバ系パズルゲーム
あえて欠点を言うと、難易度毎のエンドレスモードがなく、難易度を下げるためにはリセットするしかないという漢らしい仕様か。4本中最も難しく、やり応えがある。

  • レンタル武器屋deオマッセ

アメリカザリガニ平井善之氏のデビュー作は、なんとも珍しい武器屋シミュレーション。
小さな王様と約束の国』『ゆけ!勇者』などの放置系RPGに、武器屋生成の簡易音ゲーをミックスしたプレイ感覚が面白いが、何と言っても楽しいのがツイッターをもじった「ドナイナッター」。冒険者の様子が常に上画面に流れていくので、客が来ない暇な時間も、短調な武器磨きも、全てドナイナッターが時間を潰してくれる。どの冒険者の様子もはじめこそコメディ調だが、魔王復活に向けて全てのキャラクターが、成長し、1つの目標に収束していくのが胸を熱くする。その動きを全てドナイナッター1つで伝えてくるという表現方法が上手く、ニンジャスレイヤーを代表とする、流行りのツイッター小説を上手くゲームに落とし込んだ初のゲームじゃないかとさえ思う。
現実に引き戻される酷いオチにさえ目をつぶれば、4本中最も止め時を失う中毒性の高いゲーム。糸井重里氏の『MOTHER』シリーズに次ぐ傑作芸能人ゲーム、と言ったら言い過ぎか。

  • クリムゾンシュラウド

最も期待していた松野氏の松野氏による松野ファンのための松野ゲー。あるいはゲームブックRPG
RPGのお約束である「街」「移動」「イベントムービー」「レベル上げ」の全てを取っ払って再構築した結果誕生したのがきっと本作。地図上を選択移動して、テキストを読んで、バトルするだけのすっきりした内容なので、サクサク進行する……と思いきやそこは松野ゲー。雑魚戦などという生やさしい概念はなく、ゲーム初期から、本気で補助魔法合戦をしないと最下級のゴブリンにさえ殺されるマゾい難易度。とはいえ魔法が揃ってくると、効率的なバトル方法を考える余地が出てきて、熱いバトルと豊富な財宝を求めていくらでも戦いたくなってくる。この感覚は言うなればコマンド戦闘式『ベイグラントストーリー
お馴染みのハードで毒がある松野節は健在。それを彩る崎元節ももちろん健在。遂に目覚めた松野氏の今後の活躍が楽しみになる、4本中最も敷居が高く、最も面白い秀作だ。

これでおしまい……と思いきや5本目は、全てのゲームで一定条件をクリアすると出現する、LEVEL5新作『タイムトラベラーズ』の体験版。『428』のイシイジロウ氏のLEVEL5移籍後初の新作ということで、どんな新しいアドベンチャーゲームが待っているのかと思いきや、複数の主人公のフラグを交互に成立させて1つの大きな事件を解決に導くというこのゲームデザインはどう考えても『428』そのまま。そして体験版EDで暴かれる主要スタッフリストによると、シナリオ、音楽も『428』メンバー。イベントシーンこそ全て3Dポリゴンムービーになったが、これは当に『428』の続編と言っていいのではないだろうか。
体験版でプレイできるのは1時間程度。『428』メンバー製だけに当然先の気になる幕引きなので、現在早く本編をプレイしたくて堪らない。
※ちなみに本作は、PSPPSVita3DSという嘗て無い3機種マルチハード同時展開なのだが、3DS版のグラフィックが充分綺麗だったこと、3D深度が控え目で疲れないこと、タイムスリップシーンの演出が3DSならではあることから、3DS版を購入するつもりでいる。

  • 4本のゲームを1本にパッケージングする意義

複数の人気ダウンロードゲームを1つのパッケージにする、という売り方は最近少なくないが、本作のようなオリジナルの、しかも方向性の全く違う新作ゲームを1つのパッケージにするというのは珍しい企画。「わざわざ金を払ってやりたくないゲームまで遊びたくない」という声も聞こえてきそうだが、本作の企画意図はどこにあったのだろうか。
思うに、「続編や大作ばかりが溢れるゲーム業界に風穴を開け、色んなゲームジャンルの、独創的なゲームを多くのプレイヤーに遊んでもらいたい」「有名ゲームクリエイターを起用することで、プレイヤーが普段は気にも留めないクリエイターの名前を覚えてもらい、過去作にも興味を抱いてほしい」といったところから、任天堂と同じく「ゲーム人口の拡大」を目指したのではないだろうか
この一歩が成功したかどうかは、今後の売れ行きや、『GUIL02』以降の動向を見守るしかない。けれど本作は前述の通り全てのゲーム面白いし、全く違うジャンルのゲームばかりなので、交互にプレイしていると早々飽きが来ない。それに各クリエイターが、自分の色を出しながらも新しい一面を見せており、ゲームクリエイター自身に興味が湧いてくる(実際私自身、斉藤由多加氏のゲームに惚れたので、未プレイの『大玉』を遊んでみたくなってしまった)。
想像の企画意図が正しいかはわからないが、企画意図に対して満点の回答を出すという意味では成功していると言えそうだ(……まあ普通の人ならヒいてしまう、パッケージのデスマスクが全てを台なしにしているのだが。求むパッケージ変更!)。