『風ノ旅ビト』クリア後レビュー

  • 「花」から「旅」へ

PS3のゲームなら何がオススメ?」と聞かれた時に必ず答えてるのは『Flowery(フラアリー)』というタイトルだ。プレイヤーはただ一片の花びらとなって宙を舞い、世界に花を咲かせていくというシンプルで斬新なゲーム。そこには魅力的なキャラクターも、壮大なストーリーも無いけれど、花びらの飛翔感と、美麗で壮大な世界観に酔いしれ、感動する。とてもエモーショナルで、愛おしい、そんなPS3で一番大好きなゲームだ。
そんな『Flowery』を世に送り出したthatgamecompanyの新作が、3月15日より配信の始まった『風ノ旅ビト』(原題:『Journey』)だ。

  • 旅を形に

人はなぜ旅をするのだろうか。過去に行った海外旅行を思い出しながら考えると、「見たことのない景色に出会うこと」「言葉の通じ無い世界の人に触れ合うこと」が、最大の動機だったように思う。「未知の景色」と「未知の人」、そんな旅の核をゲームに落とし込んだのが、本作だ。

ゲームをスタートすると目の前に広がるのは砂漠と、遙か遠くにそびえる巨大な山。プレイヤーにできるのは、移動することと、ジャンプすることだけ。攻撃ボタンもなければ、そもそも敵もいない。ひたすら山を目指して歩いて行く、ただそれだけのシンプルなゲームシステム。
けれども、旅の過程で出会う目まぐるしく変わる景色(砂漠や、遺跡や、あれやこれや)は、時折息を呑むほど美しく、先へ進む度に心を洗われるよう。そしてオンラインの向こうから来てくれる同伴者(同じエリアにいる、世界の誰かとランダムマッチングされる)とは、言葉も交わせなければ名前も知ることができないけれど、長い道のりを共に過ごすだけで無二の親友にも思えてくる。
そこには明確なストーリーは語られないけれど、想像するのに充分な世界の謎は散りばめられているし、「未知の景色」と「未知の人」との出会いは、どんなに脚本の分厚いRPGよりも、雄弁で感動的な物語を形作ってくれる。

  • ゲームの原体験をもう一度

ゲームはいつだって僕らにモニタの向こうに広がる新しい世界を見せてくれた。同時に、友達の家で、ゲームセンターで、新しい人との出会いを生むきっかけになってくれた。『風ノ旅ビト』は「旅」をテーマにしながら、「ゲームの原体験」までをも、最新技術で表現した意欲作のように思う。ソーシャルゲームが隆盛し、DLC前提の未完成ゲームが大手を振るう最近のゲーム業界にはうんざりすることも少なくいけれど、本作を遊んでゲームの持つ楽しさを、可能性を再確認することができた。
1周に要する時間は2時間程ととても短いので、重厚長大なゲームを求める人には薦められないけれど、thatgamecompany製ゲームが好きな人はもちろん、『ICO』『ワンダと巨像』などの言葉の少ないシンプルで感動的ゲーム、斬新なゲームが好きな人にも文句なしでオススメ。今年のゲームオブザイヤー候補は早くも内定だ。


※最後に
未プレイ時点でオススメしたのに遊んでくれた「げーむびゅーあ」のkamiaさんありがとうございます!絶賛してくれて薦めた甲斐がありました。kamiaさんの感想はこちら→【風ノ旅ビト】プレイレビュー 名作には言葉も、文字も必要無い