原作ファンだけは必見!劇場版『逆転裁判』

ゲーム版『逆転裁判』は、元々はGBA用ソフトとして発売された法廷アドベンチャーゲームだが、今やゲーム機の枠を飛び出し携帯電話やiOSでも大人気となった作品。それが今度はまさかの実写映画化。初報を聞いたときはまるで期待していなかったが、予告篇を見ると思ったより(少なくとも『ストリートファイター』や『バイオハザード』よりは)原作らしさが出ているので、どんなものか期待半分、怖いもの見たさ半分で公開初日に足を運んでみた。


映画版の下敷きになっているのはゲーム版第一作で語られた「DL6号」事件。GBA版を数年前に遊んで以来なのですっかり話の筋は忘れてしまっていたのだが、見ているうちに「こんな展開あったあった」と思いだし懐かしくなりながら、自然にスクリーンに釘付けになってしまった。そんな映画への没入感を促してくれるのがキャストのゲーム版への忠実さ、特に成宮寛貴のナルホド君さ加減。突っ伏しながら震える姿、必至に証拠をかき集めるひたむきさ、そしてもちろん決めポーズの「異議あり!」、一挙手一投足がまさにナルホド君。初めは不自然に固めた髪にコスプレっぽさを感じていたが、中盤からナルホド君にしか見えなくなっていた。シナリオもあの長大な事件を2時間に圧縮しながらもおおむね忠実に再現しており、原作ファンとしては始終ニヤニヤしながら見てしまった。


反面、原作に忠実ゆえに映画としての面白さがスポイルされてしまったのは残念。「DL6号事件」はゲームのシナリオとしては完璧でも、映画的に面白い絵ヅラも見栄えのするアクションシーンもないし(基本的に法廷とひょうたん湖を行ったり来たりするだけ)、上映時間の8割方を使って「DL6号事件」を描いてしまったため、ナルホド君の精神的成長や御剣検事のキザなかっこよさ、真宵ちゃんの愛らしさといった、初めてこの世界に触れる人がキャラクターを好きになれる描写がまるで足りない。出てくるキャラクターが元々好きで、映画らしい派手な場面がないことをわかっている、そんな原作ファンだけが楽しめる内輪向けのファンムービーのようにしか、いち映画好きとしては思えてならなかった。


とはいえ原作無視の愛のない映画化よりは何万倍もマシ。いちゲーマーとしてはここまで愛のあるゲームの実写化は嬉しくて堪らないぐらいだ。ただ単に法廷コメディ映画を見たい映画好きになら『ステキな金縛り』を推すが、ゲーム版『逆転裁判』が好きな人だけには、この劇場版を全力でオススメしたい。