裏大神としての『ベヨネッタ』

ベヨネッタ
『大神』が大好きだった人が『ベヨネッタ』をプレイすると、面食らうかもしれない。見た目も、歯ごたえも、あまりに違うから。でもこの2作を通してプレイして初めて、共通のディレクター「神谷英樹」の個性が見えてくるんじゃないかと思うのだ。



『大神』はPS2用に発売されたアクションアドベンチャーゲーム。犬、じゃなくて大神様が日本ぽい世界を走り回って、筆で桜を咲かせたり敵を倒したりする癒しゲー。
私はこのゲームが大好きでたまらないのだが、1つだけ納得いかなかったのが難易度の低さ。それまでの神谷監督の作品といえば難易度の高さを売りにするぐらいに難しいゲームばかりだったのに(『デビルメイクライ』『ビューティフルジョー』など)、『大神』では回復手段が異常に潤沢なため、回復アイテム大量に持ってのゴリ押しで誰でもなんとかなるゲームだった。おそらくアクションゲームに慣れていない女性ユーザーなどでもエンディングを見られるように、というような気遣いの結果なのだろうが、その難易度の緩さで若干メリハリを欠いていた、ように記憶している(いやしかし、それでもPS2ソフト中5本の指に入るくらいに素晴らしいゲームだというのは間違いない)。



さて久しぶりの神谷監督作品『ベヨネッタ』は、結構大神大神してる。限定されたバトルフィールドで1対複数の戦いをするアクションゲームというデザインは、まんま『大神』である。あとプレイヤーキャラクターで魔女であるところの「ベヨネッタ」が走ると黒豹になるのだが、走ると足元に植物がひょこひょこ生えてくるのは、完全に大神オマージュ。
大きく違うのはゲームがメインに据えているのが、「物語・世界観」ではなく「戦闘」であるところ。『大神』では純和風で個性的で癒しな「物語」や「世界観」を味わうのがメインで、アクセントとしての「戦闘」がある。だから戦闘の難易度は緩い。
対する『ベヨネッタ』は、もう完全に「戦闘」がメイン。ストーリーは戦闘のシチュエーションを用意するためだけに存在しているから、無駄に壮大で大仰で軽薄。戦闘と戦闘を繋ぐためにしかないが、それで充分。結果、戦闘機の甲板の上、高速道路、大海原などなど、幾多のシチュエーションで魔女が天使共を惨殺するという個性的なゲームの出来上がり。戦闘難易度は大分高く、ノーマルモードでも何度となくコンティニューしまくったが、最初から最後まで最高のテンションでプレイできる、やりごたえ充分のゲームだった。


『大神』の移動シークエンスをばっさり切って、ストーリーから感動も癒しも取っ払って、戦闘だけをキメキメに難しく、テンション高くしたのが『ベヨネッタ』。『大神』で足りなかった部分を保管する、まさに「裏大神」。どっちが良いわけではない。どっちも良い。
両方プレイした今だからこそ見えてきたが、「魅せるところを絞って、余計な部分(『大神』の戦闘難易度、『ベヨネッタ』のストーリー)をばっさり切りさる」。それこそが、神谷英樹ゲームの個性に違いない。