『FRAGILE さよなら月の廃墟』クリア後レビュー

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「ひとりで旅をして、ひとりで月を見上げるのはもうたくさんだよ!」
主人公セトがPVの最後に吐く、印象的な台詞。


PVを見ている段階では、これだけ熱い言葉を吐かせるなんてどれだけ孤独な旅を強いられるゲームなのだろう、若しくはこんな台詞を言わせるぐらいにヒロインのレンとの間に熱い恋心を抱くのだろうか、と多分に想像力を働かせていたのだが。
「ひとりで旅をして、ひとりで月を見上げるのはもうたくさんだよ!」
実際にゲームをプレイして、終盤セトからこの台詞が出てきた時。残念なことに孤独感からの人恋しさも、レンに対する恋愛感情も湧いてこなかった。意識できるのはセトと自分との、気持ちのズレ。


何せこのゲーム、プレイ時間の半分以上は常にパートナーがそばにいる。Wiiリモコンを縦に構えれば、リモコンのスピーカーからアドバイスまでくれるのだから、パートナーに対する気持ちは自然と芽生えてくる、のに、メインヒロインのレンは一度としてパートナーにはならない。
・序盤のパートナー「P・F」は、声を発するリュックサック。無機質な声質と、時折見せる人間的な感情のギャップが可愛らしい。
・後半のパートナーは「サイ」。幽霊。おせっかい。おっぱい。
終盤、イベントの端々にメインヒロインのレンが現れても、プレイヤーの気持ちはメカだろうが幽霊だろうが自然にP・Fかサイに向かうのが自然の摂理なわけで。そこにレンの入り込む隙間などあるはずもなく。


「ひとりで旅をして、ひとりで月を見上げるのはもうたくさんだよ!」
この台詞でプレイヤーキャラクター「セト」とプレイヤーの間には決定的に溝が深まる。プレイヤー側からしてみれば一人孤独な旅をしていた意識など全くなく、側には常にP・Fか、サイが。今更レンを求めてそんな熱い台詞を紡がれても、自分とセトは違う旅をしてきたのだろうか、と頭を抱えてしまう。

レンのデザインはすこぶる魅力的なのだから、ストーリー、ゲーム性の両面からもっと魅力的に、せめてメインヒロインらしく描かれていたならば、プレイヤーとセトとの乖離は生まれなかったのではないだろうか、と思わずにいられない。