スカイ・クロラ

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ボーリングのフォームの書き分けが巧い・バセットハウンドの動きが躍動的・空中戦の音の重さが良い・片手でマッチを擦るユーイチがすごい、、、、
個々のカットを挙げていけばどれも鮮烈で印象深いのだけれど、それが映画の本質なのかというとそうでもなく、なら全体として思い返そうにも、薄ぼんやりとして要領を得ない。押井映画はやはり2回は観ないとしっくりこない。しっくりこないなりの感想も残しておきたいので書いてみる。


監督の押井守はこの映画の宣伝で再三再四「若い人に観てもらいたい」ということを強調しており、わかりやすいエンタメ映画になっちゃったのかなーと一抹の不安を抱えて最新型押井映画を観に行ったわけだけど、そこにあったのは変わらない、代わりのない、従来型押井映画。押井ファンとして安心した反面、求めていたのであろう一般客に良い反応を得られるのだろうか、という新たな不安が。

前作『イノセンス』に比べれば随分とわかりやすいストーリー運びにはなったと思う。大人になれない「キルドレ」たちは、間延びした地上での生活と、苛烈な「ショーとしての戦争」を繰り返す。戦闘で命を失うものがいても、それは日常茶飯事であり、代わりはいくらでも補充される。日常という名の無限ループ。
何もしないで怠惰に生きる若者にも、同じような仕事を繰り返し徐々に磨耗していくだけの大人にも共通するテーマ、だろうか。


わかりやすいのはいいが、しかしこの映画、テーマ的にも観ているこっちはどんどん不安にさせられる。ループものは押井の得意とするテーマで、『ビューティフルドリーマー』なり『イノセンス』なりでもとり入れられてきたわけだけど、わかりやすいストーリー、感情移入しやすいキャラクターな分(ユーイチもスイトも人形みたいだけど、全てを拒むバトーくんに比べりゃ随分と感情移入しやすい)、無限ループから感じる不安感、そして(一見)夢も希望もない終わり方から感じる絶望感は『イノセンス』以上かも。不安感的には共に公開中である『崖の上のポニョ』にも通ずる。
押井の映画も、宮崎の映画も、今年は観客を不安に陥らせる迷宮映画。エンタメを求めるだけの人には薦めづらい。押井らしさと、熱いレシプロ戦と、職人芸の光る作画を求める人にしか薦める勇気がないのが今の自分で、この映画を「かっこいい空戦とラブストーリー」で飾ったエンタメ映画のように宣伝する新プロデューサーの石井氏はやり口が上手いし汚い。


つまり大変満足でした。また観に行きます。