ユウキズ・ダイアリー

アニメ・映画・ゲームについての雑記

小さな王様と約束の国 ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル

レベル20のギガース達が 襲いかかってきた!

ソニックバットの攻撃!
ソフィアに1ダメージ
ジェラルド詠唱を始めた。
ワトキンの攻撃!
ギガースに20ダメージ
キンバリーホーリーを唱えた。
ソニックバットに54ダメージ
ギガースに45ダメージ
ソフィアの攻撃!
ソニックバットに101ダメージ
ソニックバットを倒した!
ギガースプロテスを唱えた。
ギガースプロテス状態になった。



このテキストを読んでただの文章としか捉えられなかった人、そんな人でも充分このゲームを楽しむことは出来るだろう。しかし、冒険者たちが戦っている姿を容易に想像することが出来る、そんな才能のある人ならきっとこのゲームを人一倍楽しむことが出来るだろう。


小さな王様と約束の国』は、おなじみ『ファイナルファンタジー(以下FF)』シリーズのキャラクターや固有名詞を借りたアクションRPGファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル(以下FFCC)』シリーズの最新作。任天堂の新ダウンロードサービス「Wiiウェア」用に作られた作品なので「お店では売っていません」。ダウンロード専用タイトルとして1500円で発売中だ。

しかし本作はFFCCの冠を被っているものの、GCの『FFCC』やDSの『FFCC リングオブフェイト』のようなアクションRPGでは、ない。プレイヤーは「小さな王様」を操作して、冒険者をダンジョンに派遣→持ち帰った資材を使って家や店を建築→城下街を発展させる、という一風変わったシミュレーションゲーム。よって、FFらしいコマンドバトルもなければ、FFCCらしいアクションバトルも存在しない。そこにあるのはコツコツとした積み重ねだけ。

「FFの名前が付いているとはいえ、戦闘がないならつまらないんじゃないか?」と買わない人もいるだろう。しかし私は敢えて言いたい。FFCCシリーズのエグゼクティブプロデューサーは河津秋敏だ。河津ゲーの真髄と言えば「創造」と「想像」ではないか。そのエッセンスが最高にミックスされた『小さな王様と約束の国』がつまらないわけがあるものか、と。

河津ゲーといえば最も有名なのがSFC時のスクウェアを代表する『ロマンシング・サガ』。大量のバグ技や高すぎる難易度でも有名になってしまった作品だが、主人公を選ぶのもパーティのメンバーを選ぶのも、どんな順番でクエストをこなすのも自由。選択肢の選び方も何でもあれで、念願のアイスソードを手に入れたガラハドから殺してでも奪い取っていい、というあまりの自由奔放さが評判となった。
「神は人をつくり、人は物語をつくる」とはPS2で発売されたリメイク版のキャッチコピーだがまさにその通り。人の数だけ物語を「創造」出来る『ロマサガ』こそ、RPGの中のRPGといえよう。

どマイナーゲー。今となっては覚えている人の方が少ないだろうが、スクウェアは一時期バンダイの携帯ゲーム機「ワンダースワン」に注力しており、その過程で生み出されたのがカードRPGワイルドカード』だ。サガシリーズを踏襲し、やはり本作も主人公多数、パーティ構成自由、難易度激高。ただし1つだけ決定的に違うのが、キャラクターも武器も技も全てカード、ダンジョンまで全てカードという点だ。
「ダンジョンがカード」と聞くとなんだかわからないだろうが、プレイヤーは提示されたいくつかの道やドアを選択し、めくることでダンジョンの最奥へと突き進んでいく。よくある見下ろし型視点の冒険ではないため非常に淡白な印象だが、裏を返せば「想像」する余地が非常に多い。プレイ中は背景に表示される画と美麗なキャラクターのビジュアルだけで、冒険する姿をいくらでも「想像」させられた(想像でもして頭に絵を浮かべて遊ばないと、ダレるって理由もある)。
このプレイヤーに課す「想像」の余地は次作『アンリミテッド・サガ』にも受け継がれ、ダンジョンがテーブルトークRPGの盤型に。結果、あまりの取っ付きの悪さに「サガ」ブランドを大暴落をさせることとなったのはあまりにも有名な話だ。

さて、この2つの遺伝子は『小さな王様と約束の国』で見事に花開くことに成功した。
「創造」は街の発展というこのゲームの中核の要素に。
プレイヤーは「どこに」「何を」建てるかをゲーム側に要求されない。街の中の建築可能な場所であれば、家を武器屋を公園を、どこへなりとも建てることができる。プレイする人によって街並みは幾通りにも変化するし、思い通りの街にならなくとも、「もっと良い街をつくろう」と2週目以降へのモチベーションに繋がる。
「想像」は戦闘ログに。
バトルがない、とは言ったが、王様が戦わなくとも派遣した冒険者たちは街の外に広がる数々のダンジョンで、モンスターとの戦闘を繰り広げている。その模様はビジュアルとして提示されることはないが、戦闘ログ―日記冒頭で示したようなテキストで、何ターンにも渡って全ての戦闘の模様が表示される。プレイヤーがそれに目を通すかどうかは自由だし、最後まで見なくともクリアすることはできるだろう。しかし、ちょっと建築の手を休めてログを見ることにも時間を割けば、しだいに戦闘の様子が思い描けるようになり、冒険者に一層の愛着を持てるようになるはずだ。


河津ゲーの欠点ともいえる取っ付きの悪さは、FFCCのもつ可愛らしいビジュアルが完全にカバー。時間をかければ誰でもクリアできるので、従来の河津ゲーのように難易度がきつすぎるということもない。
ここまでシミュレーションゲーム寄りだといわゆる普通の「FF」とはとても言えないが、「創造」と「想像」に支えられた全く新しいゲームを(しかもたったの1500円で、だ)今すぐ遊ばない手はない。