すばらしきこのせかい

ファミリースキー』&『スマブラX』の前にかかりっきりだったのがDS用のRPGすばらしきこのせかい』。
良ゲーが数多く発売された昨年のソフト群の中でも割と高評価だってのが個人的に調べたらわかったので手を出してみたのだが、シナリオ面では「死」をテーマに抱えているので、ショッキングなシーン、ホロリと来るシーンも多々ある反面、道玄坂ラーメン抗争やら消えたマイクの捜索やら、軽いノリのミッションを挟みながら進んでいくので緩急のさじ加減が上手い。スクエニのソフトに多い無駄な大作感はナリを潜め、小ぶりでもグサッとハートに突き刺さるシナリオはクリア後も後を引く。
バトル面ではタッチペンとボタンをフルに駆使したやたらに忙しい戦闘システムが目を引くが、基本はオートに任せて必要な部分ではボタンも使用、というスタイルを確立してからはあまり負担にもならず楽しくプレイできた。戦闘バランスは随時選択可能、バッジ(FFでいうアビリティみたいなもの)数は膨大、戦闘は任意、などプレイヤーに任される自由度が高いので、メリハリがあって飽きない。
音楽も特筆すべきものがある。OPやEDがボーカル入り、というゲームはさほど珍しいことではないが、ボス戦のみならず雑魚戦、マップ上まで随所でボーカル入りの曲で溢れており、舞台となっている渋谷の雑多な印象をより強く感じるアクセントになっている。次にどんな曲が待っているのか、というのもプレイを進める動機のひとつになるほどで、クリア後は即サントラを購入、残念ながら未収録のEDテーマはiTMSで落とした。


しかしさすがに昨年夏に発売されたソフト。この辺りの感想はすでにクリア済みの多くの人が抱いた想いとさして変わらないだろうと思うので長々と書き連ねてもしょうがない。最も面白いと感じた、携帯ゲーム機向けRPGとして非常に優秀なゲームデザインについて記して終えることにしよう。


一般的に『ドラクエ』『FF』に代表される家庭用RPGは、
   街
   │
  マップ
   │
 ダンジョン
という構造になっているので、ゲームの主目的である敵との戦闘をこなすには街から目的のダンジョンまでの移動が必要とされる。『Wiz』や『シレン』などのダンジョンRPGではマップが省略されることが多いが、それにしたって街とダンジョンは乖離しているのには変わりない。携帯ゲーム機向けの代表的RPGである『ポケモン』でさえこの構造をとっているので、RPGにおいて揺ぎ無いものと思われていることだろう。
だがこの構造はRPGが家庭内でどっしり腰を落ち着かせ、じっくりと時間をかけてプレイするのが前提としてあったからに過ぎない。電車の中など短時間でのプレイを前提とした携帯ゲーム機向けのRPGにおいては、果たしてこの構造は最適なのだろうか?


この疑問に1つの答えを導き出したのがこの『すばらしきこのせかい』だ。
このRPGの舞台は渋谷。物語は始まりから終わりまで渋谷内で完結するので、買い物も、戦闘も、すべて同一のマップ内で行われる。普段の渋谷の街は人ごみで溢れる平和な世界でしかなく、服に食べ物にと自由にショッピングを楽しむことができる。しかし一たびDSの下画面右下をポンとタッチすれば、モンスターの徘徊する非日常へと様変わり。任意にモンスターのアイコンをタッチすることで瞬時に戦闘モードに切り替えることができる。
  街─ダンジョン
すばらしきこのせかい』は全てが平行に存在しているので、電源をつければすぐに戦闘、それこそ駅から駅までのほんの3分の間に終えることだってできる。ゲーム内には各種バッジに固有の成長値が設定されているので、たった3分の戦闘でもバッジの成長のために戦闘する意味がある。食べ物を消化すればステータスアップもできる。短時間のプレイで満足を得ることができるのだ。


すばらしきこのせかい』が「携帯機向けRPGの最適解だ」などと断言はしないし、全てのRPGに適用できるものでもないが、この実験的なゲームが示したデザインは、携帯機向けゲームが主流になりつつある現在、もう少し注目されても良いのではないか。
スクエニはこの作品以外にも『チョコボの魔法の絵本』などDSにおいてチャレンジャブルな良作を出しているのだが、大作の影に隠れていまいち報われない印象が強いのが残念。次のスクエニの小ぶりな注目作は、Wiiダウンロード販売される『小さな王様と約束の国』や、ハ・ン・ド製のDS版『キングダムハーツ』といったところか。『すばせか』に続くジュピター×スクエニ作品にも期待大、だ。