やどかりとペットボトル

池上永一の『シャングリ・ラ』を読んだときは、この人の頭の中はどーなってんの? どういう生き方をすればこんなキテる話が書けるの? と感心しきりだったのだが、エッセイ『やどかりとペットボトル』を読んだら合点がいった。


筆者の出身は沖縄県石垣島。子どものころは海と星に囲まれた雄大な自然の中で育って……とそれだけだったらまっすぐでまっとうな職に就いていたはずなのだが、エッセイに度々登場するのはおかしな母親。子どもの成長にまるで感心を抱かない曲がった母を持ったせいで、マネキンを母親に見立てて世話をしたり、仏壇掃除が日課になってしまったりと、筆者自身がかなり曲がった子ども生活を送ってしまったようだ。あまりにへんてこな氏の子ども時代には(克明に書かれすぎてて真偽が怪しいところだが)思わず何度も噴き出すほど笑わされた。

しかしこのエッセイ、笑えるだけではない。祭祀を重要視する島での生活や、米軍と隣合わせで生活する人たちにしかわからない心境は、平凡で安全であることが当たり前な身には考えさせられることも多かった。

魔術的リアリズムの旗手である筆者の原体験を知る手段としても、沖縄の文化を手軽に知る手段としても非常に良いエッセイ。ハードカバーで買ったために、既に文庫版が出ていることを知ったときにはビックリしたが、面白い本だったし、そんなに残念じゃないと思ってる。負け惜しみではない。