時砂の王

小川一水が満を持して挑む、初の時間SF」
帯の文句を見ただけだと「筒井康隆時をかける少女』や新城カズマ『サマー・タイム・トラベラー』のようなタイムトラベル・ジュブナイルに、新世代SF作家の雄・小川一水が遂に挑戦したのか!?」と想像してしまうところだけど、表紙はなんだかジュブナイルな感じではないし、読み進めてみると前述の時間SFよりかは光瀬龍百億の昼と千億の夜』のような歴史SFモノなのだとわかる。


突如現れた凶悪な異星体に知恵も技術もないまま戦いを挑む邪馬台国の哀れな民と、その異星体を追って現れた未来の戦士オーヴィルのこれまでの経緯。2つの物語が卑弥呼、オーヴィル、2人の視点によって描かれることで、2000年の時を超える歴史の重みが浮き彫りになってくる。

タイムパラドックスに歴史改変、宇宙生物の侵略、人工生命と、SF的ガジェットがここぞとばかりに詰め込まれているが、これだけガチガチのSF設定であってもグイグイと物語の力で読者を引きずり込んでいくのはさすが小川一水。元々ジャンプノベル出身というだけあって、氏の著作のキャラクターはいつも個性的というか、良い意味でライトノベル的な魅力に溢れているのだが、本作もやはり、国を背負った気丈な卑弥呼と、人類の歴史を背負いその意味を求めて苦悩するオーヴィル、2人の心の交流を軸に物語が進んでいくので非常にエンタテインメント然としていてわかりやすい。そして文句なしに面白い。


「SF」の2文字を見ただけでわかりづらくてマニアックな本を想像してしまう人も少なくないだろうが、本作ならばそんな人であろうと気軽に読めるはず。SF入門書としてもオススメだし、もちろんSF好きなら必読ものの2007年傑作SF。心して読むべし。