ゼルダの伝説 風のタクト

ほんの20年前は少ないドットで表示するしかなかったゲームのグラフィックは、ハード性能の進化によって表現できるキャラクターも、世界も、より精緻に広大になっていった。任天堂の『ゼルダの伝説』シリーズもやはりその恩恵を受け、ニンテンドー64の『時のオカリナ』においては等身の上がったリンクがハイラル高原を駆け抜け、世界的な大ヒットを記録した。

「でも本当にリアルなグラフィックのキャラクターを動かすことが、楽しさに繋がるの?」

そんな素朴な疑問から生まれたのかどうか知らないが、その後GC用ソフトとして発表された『風のタクト』は、主人公リンクの2頭身と大きなネコ目で世界中の度肝を抜くこととなった。


発表当時は批判的な意見も多かったこの2頭身化だが、実際に触ってみるとSFC時代までのゲームにはあった「ゲームのキャラを動かしている」感や心地よさがあり、走り回って、剣を振り回して、ディズニーアニメのような世界を眺めてるだけでも楽しい。

ゲーム全体もそれまでのゼルダシリーズのアンチテーゼの塊。ハイラルの緑の大地は掻き消え、目の前に広がるのは大海原。リンクは風を読み、船を操舵し、世界に散らばる風変わりな島々を巡ることになる。もちろん走りまわる広い大地がない以上、馬に乗って駆け回ることができない。ダンジョンの数まで以前の作品と比べると少ない。

それだけ変えようとも端々の丁寧さから「ゼルダらしさ」がにじみ出てくる辺りが流石は任天堂。趣向を変えた音楽やグラフィック面も含めて、これまでの形に囚われない新しいゼルダを本気で作ろうとしていたのがよくわかる。


・・・・・・のだが、まだまだ模索段階で発売されてしまった感もある。特にゲーム後半の冗長さが異常。「それと感じさせないおつかい感」が常だった『ゼルダ』シリーズにおいて、このゲームは非常に「おつかい感」「やらされてる感」を感じさせられることになる。いつもの『ゼルダ』だったら終盤に差し掛かると「もう終わっちゃうの?まだこの世界にいたいのに!」と思うところだが、この作品に限っては「やっと終われるのか・・・・・・」だった。もっと自然に、気付いたら全部の島を巡ってた!ぐらいに思わせてくれればぐっと評価が上がったのに、非常に残念。グラフィックを凝る前に、全体のゲームデザインをきちっと完成させてから発売してほしかった。

ただ、この反省が全部活かされた結果、傑作『夢幻の砂時計』が生まれたと思えば無駄ではないのだろう。今年の夏に続けてプレイしたことで、良いゲームが一朝一夕で生まれるわけではない、ということがよーーくわかった。天才的ゲームも時には悩み、成長するのだ。