『きみにしか聞こえない』


乙一の小説に初めて触れたのは今から5年も昔。私がまだ高校生だったころ。その頃あまり一般書籍を読んでいなかった私にとって(つまりラノベばっか読んでた)、小説の面白さがギュッと詰まった氏の数々の短編はとても魅力的で、本の持つ「力」を思い出させてくれるものだった。それを機にいろんな作家の本にも触れるようになって……いわば人生の師の1人といえるのかもしれない。そんな乙一の作品の中でも、とびきり甘酸っぱくて切ない話を映像化したのが今回の映画『きみにしか聞こえない』。


道端に落ちていたおもちゃの電話が突然鳴り出して、電話口には知らない男性の声が……。そんな不思議な体験をする女子高生を演じるのは、今年の春に公開された『神童』の主演をして以来メディアへの露出が一気に増えた成海璃子。今作でもその凛とした存在感は健在で、ストーリーの関係上、相手役の小出恵介との絡みがほとんどないにも関わらず、その演技力でほとんどのシーンを1人で引っ張っている。


60ページにも満たない短編を2時間弱の映画にしたために若干冗長な印象は拭えないものの、その分原作にはなかったかなりの新設定を加えることで、2人の気持ちが近づいていく過程が丁寧に描かれており、終盤の感動をより引き立たせることに成功している。


終盤の展開はさすがにあざといなーと思いつつも、気付いたら涙がボロボロと勝手に流れていた。私の負け。この映画は泣ける。