『たったひとつの冴えたやりかた』


星野の北方に位置し、星の密度が低いためにまるで黒雲が広がっているかのように見える地帯―通称「リフト」の周辺で起こった3つの歴史的事件を収録した作品集。

体内にまで侵入可能な超小型エイリアンから1つ目4本腕のエイリアン、ワープ航法に超高速通信、クローンまで、今では風化してしまったSF的ガジェットが当時の輝きを保ったままに詰め込まれており、古典SFとして充分な読み応えがある。


この小説の本質は、遠宇宙を舞台としながらも、言語の通じない相手との交流の困難さや、抗うことのできない時間と距離、自由と愛の問題など、人間の普遍的な課題に女性らしい視点で挑戦した筆者、ジェイムズ・ティプトリー・Jr.の優しさと厳しさを兼ね備えた見事な筆致にあるだろう。現在TBSの土曜夕方には竹宮惠子原作の『地球へ…』も放送されており、巡り巡って女性作家による古典SFが再び注目される時が来たのかもしれない。